狂気に堕ちた人狼
それが皆に牙を向く時
黄金の竜が
舞い降りる。
エピソード二十四 三位一体の竜
「いや~、先ほどはありがとうでござった!!おかげでこうしてピンピンしていられるでござる」
「いや~、たいした事はしてないッスよ」
「そうそう。横島は“アレ位”当たり前♪」
褒め称えるロウガに苦笑する横島とご満悦のタマモ。そう、二人はロウガの勧めで人狼の里に来ていたのだ。そうしている内に、他の人狼たちが集まってきた。
「ロウガ殿!!大丈夫でござったか!?」
「おう。この御方に命を救われたのだ!!」
そう言うと人狼たちの視線は自ずと横島の方を向いた。
「本当にたいした事やってないんスよ(汗)どっちかっていえばタマモの方が・・・」
「私はヨコシマがいなかったら勝てなかったわ。だから、ヨコシマのおかげなのよ」
タマモの言葉にがくりと首を垂らす横島。それを見た人狼たちは思わず微笑みを浮かべた。そんな中、人狼たちを掻き分けて一人の子供が飛び出してきた。
「父上!!」
「おおシロよ!!」
「大丈夫でござったか!?」
「無論だ・・・といいたいが、私の身体は結構ボロボロでな、そこにいる横島殿がいなければ、危うく命を失うところだった」
それを聞いたシロは横島の方を向いた。そして次の瞬間、シロは横島に飛びつきながら礼を言った。
「父上を助けてくださって、本当にありがとうでござる!!」
「いいって、気にすんな。俺は厄介ごとには首を突っ込みたくなる性分なんやから・・・」
「そうそう。そのせいで現在“幽霊少女”“伝説の剣豪の後継者×2”“貧乏神に憑かれた少女”“竜神”がヨコシマに惚れちゃったけど・・・」
ジト目でそう言われ思わず凹む横島。周りがその発言に驚く中、人狼たちの中から一人の老人が姿を現した。
「貴方様がロウガを犬塚を助けてくださった方ですか。わしはここの長をしておる者でございます」
そう言って長老は頭を下げると、一人の少年に横島たちを客間へを案内するように命じた。
「この者についていって下され」
「あ、はい」
そう言うとその少年は横島たちの先頭に立ち、建物に入っていった。そして縁側に出ると、周りの木々が豊かなことに横島は驚いていた。
「は~、都会じゃこんなにたくさんの木ってないよな~」
「やろ?分かるな兄ちゃん」
横島の言葉に前を歩いていた少年が軽く答えた。
「お前・・・都会に行った事あんのか?」
「おう!!今はちょっと帰郷してる状態や」
「何かすげえなぁ」
「そういや兄ちゃん。名前なんて言うんや?」
「俺か?俺は横島忠夫。で、こっちにいるのがタマモだ。お前は・・・?」
横島は尋ねるとその少年はニッと笑いながら答えた。
「オレの名は小太郎。犬神小太郎や!!」
「そっち行ったわよ、きたろう!!」
「任せぃ!!『戒めろ!!炎の鎖!!』」
きたろうは向かってきた悪霊に対し言霊を発動した。すると、悪霊は炎で出来た鎖によって拘束された。しかし諦めが悪い悪霊は鎖で縛られながらも暴れ狂う。
「いい加減に成仏しなさい!!このGS美神令子が・・・」
美神はそう言うと神通棍に霊波を集中させる。すると、神通棍の刀身が精霊石と化した。そしてそれを構えると、一気に駆け出す。
「極楽に・・・いかせてあげるわ!!」
美神は精霊神通棍を振りかざすと、悪霊を一刀両断にした。
「これでトドメよ!!吸引」
そして取り出した札に悪霊を吸引した。
「ふ~、これにて本日の仕事は終了ね」
「正直あんま手ごたえ無かったしな」
二人が一息ついていると、おキヌがビニール袋を持ってきた。
「お疲れ様です。はい、どうぞ」
「サンキューおキヌちゃん」
「すまねぇ」
そう言うと美神は缶ビール、きたろうは緑茶、おキヌはオレンジジュースを手に取り祝杯を挙げる。
「そういえば、横島さんたちはもう終わったんでしょうか?」
「う~んどうかしら。依頼にはランクC+って書いてあったから、今の横島君の力なら楽勝だと思うけど・・・」
「でも~~~やっぱり心配で(涙目)」
「あ~はいはい。じゃぁ今から横島君たちのところに行ってみるわよ」
そう言って歩き出そうとする美神。そんな時・・・。
≪ピリリリリリリリリリリリリリリリリリ≫
突如美神が持っていた携帯が鳴った。美神は携帯を手に取ると、通話ボタンを押した。
「もしもし・・・あ、西条さん!どうしたんですいきなり?・・・え、すぐに集合して欲しい?でも、私たちも今仕事を終えたばっかりで・・・え?・・・・・すぐ行きます♪」
美神は携帯の電源を切ると、胸元にしまいこみ荷物をまとめ始めた。
「美神さん、どうしたんですか?」
「どうしたよいきなり?」
二人の問いに美神はニコリと笑いながら・・・
「緊急の仕事よ・・・・・報酬1億の♪」
とのたもうた。
「フェンリル狼って・・・何スか?」
横島とタマモは離れの部屋で長老とロウガに事情を聞かされていた。
「フェンリル狼とは、我々人狼にとっての先祖である、強大な魔力を持った大神でございます。その力はかつて多くの神々を殺したとして恐れられております」
「犬飼はその凶悪な力を手にし、人狼の繁栄を取り戻そうとしているのでござる。私は止めようとしたのですが、八房の前では拙者の剣技も無力でござった」
長老の話に続いたロウガが悔しそうに呟く。
「あの、八房って何スか?」
「八房とは我等人狼族の凄腕の鍛冶屋が鍛え上げた最強の妖刀。その刀を握った者は一振りで八つの斬撃を放つ事が出来るのでござる」
「あ~、あれの事か」
横島は先ほど犬飼から受けた斬撃の事を思い出した。
「あれは確かにヤバイッスね。最大でも六発しか防げなかったッスから」
横島は苦笑しながら答えた。すると、それを聞いた長老の表情が驚きに変わった。
「ほ、本当なのですか!?八房の斬撃を六発も防いだというのは!?」
「本当でござるよ長」
長老の問いにロウガが答えた。ロウガの表情から何かを読み取ったのか長老はそれ以上の質問を止めた。
「それにしても、あの男は人間を凄く憎んでる感じがしてたわね」
タマモはふと先ほどの犬飼の様子を思い出していた。
「いえ、あれは本来の犬飼ではないでござる。犬飼は人間に憎しみを持ってはいますが、凶行に走るほど悪しき心は持っておらぬでござる」
「じゃぁ、何で“私”のヨコシマを傷つけたのよ!!」
タマモは激怒しながら全身から強大な妖気を放った。しかし、横島に撫でられた事ですぐに収まった。
「実はあれも、八房の仕業なのです」
「どういう事ッスか?」
「人狼族の鍛冶屋は、我々のために二本の刀を造りました。一つは誰にでも扱えるが力に呑まれかねない妖刀『八房』、そしてもう一つは使う者の心次第で力が変わる神刀『伏姫』」
「つまり・・・あの犬飼って奴がその八房に支配されているという事ッスか?」
「おそらくは・・・」
そう言って顔を俯かせる長老。その時・・・!!
「ちょ、長老!!大変や!!」
突如襖が開き小太郎が飛び出してきた。
「ど、どうしたのじゃ小太郎!?何があった!?」
「アイツが・・・シロが犬飼のおっさんを追って飛び出して行きやがった!!」
「な、何!?」
小太郎の言葉に愕然とするロウガ。
「はぁ~、あのちびっこい子犬ね、世話を焼かせるんだから。・・・・ヨコシマ、どうする?」
「追うしかないだろ」
「うん♪」
そういうと二人は立ち上がる。
「ど、どうなさるおつもりでござるか!?」
「アイツを連れ戻しに行ってきます」
「危険でござる!!それなら拙者が・・・」
「おっさんは怪我してるじゃないスか!!そんなんじゃ無理ッス!!だから・・・俺達が行きます。いくぞ、タマモ!!」
「おっけ♪」
そう言って部屋を出て行こうとする二人。
「お待ちくだされ!!ならば、ここにいる小太郎も連れてって下され!!こやつはまだ若いでござるが、腕は確かでござるし、戦いに関しては一級品の力を持っているでござる!!」
「頼むで!!俺もシロは妹みたいな奴なんや!!このまま放っておくのは性にあわん!!」
横島は二人の言葉に少し悩んだ末・・・
「よし、なら一緒にこいや!!」
そう言って了承した。
「で、今回の依頼はなんなの?西条さん?」
とある空き地で集合しているGSメンバー(美神・エミ・カオス・マリア・冥子・西条)。美神は依頼内容までは聞いていなかったので早速西条に聞いていた。
「実は、つい一、二時間前に市内で霊刀による辻斬りが起きているという連絡が入ったんだ。幸いまだ死亡者は出ていないが、このままではいずれ出るのは間違いないだろう」
「で、その辻斬りを倒せってワケ?」
「その通りだ」
エミの問いに答える西条。
「衛星から検索した結果、もうじきこの辺りに出没するらしい。皆、頼むよ!!」
西条がそう言った次の瞬間、辺りの空気が張り詰めた感じに変わった。
「ほう、霊能力者か。これは斬りがいがありそうだ」
その声に皆は後ろを振り返った。そこには、右手に八房を構えた犬飼の姿があった。
「・・・貴様か」
西条はそう言って腰からジャスティスを引き抜く。
「貴様も霊刀使いか・・・・やめておけ、この八房の前では無力なり」
「調子に乗るなよ。この殺人鬼が!!」
そう言ってジャスティスを振りかざす西条。しかし、それを犬飼は軽く受け止め、刀の腹で西条をぶっ飛ばした。
≪ずがががががががががががががががががががががががががががががががががが≫
凄まじい勢いで壁をぶち破り吹っ飛んでいく西条。すでにその姿は確認できない。
「な、何よあいつ!?」
「洒落にならないワケ!!」
美神とエミは即座に戦闘モードに頭を切り替える。(ついでに冥子はあまりの事に気絶。
「喰らいな!!」
「なめんじゃないわよ!!」
エミは破魔札を投げつけ、美神は精霊神通棍の霊波を放つ。
「ぬるいわ!!」
しかしそれを犬飼は軽々と切り裂き、霊波を八房でガードした。
「何て奴じゃ!!行け、マリア!!」
「イエス・ドクターカオス」
≪ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ≫
マリアは腕から小型マシンガンを取り出し連射するが、犬飼はそれをあっさりと弾き返し、マリアを殴り飛ばした。
「こんのぉ!!」
その一瞬の隙を突いて美神が神通棍を振りかざす。
「ふん!!」
しかしそれを素手で簡単に受け止められた。
「もう終りか・・・小娘」
「くっ!!」
絶対絶命であったその時・・・。
≪ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン≫
どこからか何かが射出される音が響いた。そして次の瞬間!!
≪ドシーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン≫
突如地鳴りでも鳴ったかのような音が辺りに響き渡った。
「ん?何だ一体?」
犬飼は神通棍を放りだしその音の方を見る。そこには・・・。
「よくも僕を吹っ飛ばしてくれたね。あのスーツは高いんだよ」
軽口を叩く青い鎧の着た戦士が立っていた。
「な、なんなのアレ!?」
エミが驚きの声を上げる中、美神はその戦士の声に聞き覚えがあった。
「まさか・・・西条さん!?」
「よく分かったね、令子ちゃん」
美神の声に軽く返す西条。
「な!?一体なんなのそれ!?何で西条さんがそんな物着てるの!?」
「どんどん凶悪化していく怪物に対応するため、Gメンと警察の力を持って開発された次世代型霊的戦闘装甲『G3』だ。時雨君にメインの設計を任せて開発したプロトタイプを着けてきたんだ」
そう言いつつ右腰にセットされた拳銃を引き抜く。それと同時にG3の小型コンピューターに通信が入る。
『西条君、そのユニットはまだ君を完全に適能者と認めていない。認めさせないと肉体が持たないよ』
「分かっている。どの道短時間で決着をつけるよ」
『了解だ。健闘を祈るよ』
そう言って通信が切れると、G3は銃を犬飼に向ける。
「さあ・・・行くぞ!!」
そう言うとG3は一気に駆け出した。そして走りながら銃を連射する。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!」
犬飼はそれを防ぐが、銃弾が重いために後ろに下がりだす。
「西洋かぶれが!!喰らえ!!」
犬飼はどうにか隙を突いて一撃を放つと、それはG3の持っていた銃の先端を切り払った。
「ちい!!」
「そこだ!!」
犬飼は銃弾の嵐が止んだと同時にG3に切りかかる。G3は間一髪ジャンプで回避した。
「時雨君!!スライダーアタッカーを!!」
『了解』
その声と共に空中に変わった形状のユニットが飛び出し、それがジャンプしていたG3の背中にドッキングすると、その形状はロボットのウイングのようなものに変わった。
「喰らえ!!ツインジャスティス!!」
G3はそのユニットから二本を西洋剣を引き抜くと、それを持って空中から犬飼に迫る。
「はあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そのスピードについていけなかったのか、犬飼はわき腹に西洋剣を切り込まれた。
「ぐぬう!!こ、ここは一旦引かせてもらおう!!」
そう言うと、犬飼はその俊敏力を使い姿を消した。
「ふぅ…こんなものかな」
そう言うとG3は西洋剣をウイングに収めた。
「す、凄いじゃない西条さん!!」
「半端じゃない強さなワケ!!」
「少し調べてみたいものじゃ」
「それは・後から・危険・招く・ドクターカオス」
四人がそれぞれの意見を上げる中、目を擦りながら冥子が目を覚ました。すると、突如泣きながら震え始めた。
「ど、どうしたの冥子?」
「ぐしゅ・・・何か・・・恐いのが来るの~~~」
冥子のその言葉を聞いた次の瞬間!!
≪バッチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン≫
「がはぁ!!」
突如G3の背中に何かが飛来し、直撃と同時に火花を散らした。
「な、何が起こったんだ!?」
G3はそう言いながら何かが飛来した方を見た。そこには、全身を黒い服で統一し、額に青いバンダナを巻いた青年が・・・浮いていた。
「な、何者だ君は!?」
G3は激しく問いかけるが、青年は黙ったまま空中に青色の渦を作り出した。そしてその中からは、それぞれ違う色のマフラーをつけた三匹のジャガーが姿を現した。
「そこにいるアギトになる可能性を持つ者を・・・殺して」
そう言って青年が指を指した先にいたのは・・・・・・・・・・・・・冥子だった。
「じゃあ・・・後はお願い」
そう言うと青年は姿を消した。それと同時にジャガー達が動き出す。
「させるか!!」
G3は皆の前に立ちはだかるが、三匹のうちの一匹がG3に向かい、もう一匹は美神たちのもとに向かった。
「ぐっ・・・・・・令子ちゃん!!六道君を・・・」
「分かってるけど・・・・こいつらが邪魔!!」
そうしている間に残っていたジャガーが冥子の前に立った。冥子は逃げようにも完全に腰を抜かしていた。ジャガーは空中の渦から剣を取り出すと、冥子に向けて振り下ろした。
「まー・・・・・・・くん」
冥子はふと自分の幼馴染の事を思い出していた。そして次の瞬間、目の前にいたジャガーは・・・・・一台のバイクに吹っ飛ばされた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
冥子が唖然とする中、バイクは冥子をかばう形で前に止まった。そして銀色のフルフェイスヘルメットをかぶった男がバイクから降りた。
「グルルルルルルルルルルルルルルルル」
ジャガーは邪魔された事により怒り心頭だった。
「大丈夫かいな・・・冥子はん」
そう言いつつ男はヘルメットを外した。するとそこにいたのは・・・。
「ま、ま~く~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」
きれいな顔立ちに似合う傷をたくさん持って帰ってきた、鬼道政樹だった。
「ま~くん!!ま~くん!!」
「もう大丈夫やで、冥子はん」
泣いて抱きつく冥子の頭を撫でながら落ち着かせる政樹。そして落ち着いた冥子を離すと、政樹はその表情を変えた。
「冥子はんを泣かした罪・・・・お前らに思い知らせてやりますわ!!」
その言葉と同時に、政樹の下腹部にベルトが現れた。そして左手を腰に溜め、右手を前に突き出した。
「変身!!」
その叫びと同時に、政樹の体を金・赤・青の三色の光を覆った。そしてその奥から現れたのは・・・・・・右腕に炎、左腕に風、体に大地を背負った・・・・アギトの姿だった。
あとがき
更新遅れました。色々案を考えている内に頭がごちゃごちゃしてしまい、どの案を採用するかに悩みました。
犬神小太郎ですが・・・・・分かる人は分かりますよね?さて、次は早めに更新できるようにがんばりたいと思いますです。では、煌鬼でしたw