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「最悪にも偶然なGS!!第5話(GS)」

R (2005-06-20 09:44)
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「俺はもー、この事件の後に死んでしまうかもしれん」
横島は、遠くにいる両親に送る言葉を考えていた。


最悪にも偶然なGS!
そのゴ:グッドナイト・ドラゴン!


「おいおい、こりゃスゲーな」
予想以上、という様子で、赤々と燃える空を見上げて雪之丞がつぶやく。
先ほど小竜姫が跳ね返した火の玉は、街の空を赤々と燃やしていた。先ほどタクシーを直撃したものは、美神たちが威力を削いだおかげであの程度の爆発で済んだのであろう。神と人間の底力の違いをまざまざと見せ付けられ、あっけに取られるよりも仕様の無いGSメンバーであった。
「ともかく、防げるだけは防ぐワケ!小竜姫の神通力もそんなに長く続かないのよッ!ほら、神父ッ!」
そういいながら、息も切れ切れな神父をたたき起こし、エミは結界の呪文をつむぎ出す。以前パピオラと戦ったときのように、聖と魔の二重結界にすれば多少の攻撃は防ぐことが出来るのだ。
「わ、わかった」
唐巣は立っているのもギリギリな様子だったが、結界を作るための呪文をつむいでいるようだ。その間、攻撃主体のメンバーは、美神の言葉に耳を傾けていた。
「いい?小竜姫がこっちに誘い出したら、神通棍で一気に眉間をたたくわ!みんな、力を私に送って!いいわね!」
「ま、特攻するにはお主が一番にあっとるからなー。そうするより他ないじゃろ」
「そうじゃノー。ワッシの力なんぞ、神様に効くとは思えんケン」
「頼みますよ、美神さん!」
タイガーの自虐ネタをさらりと流しつつ、全員が霊力を美神に与え始める。いくら急所があると言っても、相手は竜神だ。最大限まで能力を高めなければ、迎え撃つ事は出来ない。みんな精神を集中して、美神に最大限の霊力を与える。初めて妙神山に行った時よりも数段霊力が上がっている美神ならば、霊力を込めた神通棍を眉間に突き刺すことで小竜姫の暴走を止めたように童子の暴走も食い止められるはずだ。
霊力は次第に高まり、神通棍が強力な光を放ち始める。
「いい感じだわ・・・!来なさい、天龍童子!」
美神がそう叫んだのがまるで聞こえたように、ウォォンと竜の雄たけびが空に響いた。次の瞬間、雲間から竜の顔がこちらへ突進してきた。竜の顔の目の前には輝く光の筋が見える。きっと小竜姫が加速を使っているのだろう。
ぱっと光が消えたかと思うと、小竜姫が姿を表した。
「美神さん、チャンスです!眉間を!!」
息も絶え絶え、と言った様子で小竜姫が叫ぶ。
「オッケー!」
向かってくる竜に、怯えなど微塵も無い様子で美神が叫ぶ。
「天龍童子!ちょっと相手が悪かったみたいね!大人しく―――」
まさに結界に喰らいつかんと竜神の口がガバッと開いた瞬間、美神は飛び上がる。
「天界へ、戻してあげるわッ!!」
美神の声が夜の街に響き渡った。

ドォ・・・ンと、遠くから何かが爆発するような音がした。
ここは横島のアパート。隣室の、小鳩の部屋である。
「アレ・・・?花火かしら、ね、貧ちゃん」
「そやなー、もう夏も近いし、どっかで花火でも打ち上げとんかもしれんなー」
「ふふ、今年の夏祭り、横島さんを誘ってみようかな・・・」
そういいながら、遠くのほうで赤く燃える空を見て、小鳩はにっこりと微笑むのだった。

「や、やったの〜?」
冥子が緊張感の無い声で叫ぶ。結界のおかげで衝撃波は少なかったものの、あたりは土煙のおかげで何も見えない。
「美神さーんっ!」
口々に美神を呼ぶメンバーに、美神の返事は無かった。
その代わり―――
「ウォォォォォォン!!」
返事をしたのは、竜神であった。
「し、失敗したーッ?!」
同時に、全員がそう叫んでいた。絶体絶命、四面楚歌・死亡確認(by王大人)。いわゆるこういうことをいう四字熟語である。

大きな声を上げて、龍神は再び空へと昇っていった。その風圧に、土煙は跡形も無く吹き飛ばされる。
やっと視界の効くようになった周囲の状況に、結界の中のメンバーは目を見開いた。
まるでクレーターのように、地面がえぐられている。その中に美神が倒れているのだ。
「みっ、美神さーんっ!!返事してくださいッ!」
横島の声が、むなしく響く。横島の声にも、美神は返事をしなかった。ぴくりとも動かない。
美神は先ほどの攻撃の失敗で、かなりのダメージを受けているようだ。横島たちは結界から飛び出して美神に駆け寄る。
「み、美神さん!美神さん!!」
横島が抱き起こすと、美神は気がついたようで、苦痛に顔をゆがめた。
「・・・ぐっ」
「令子ちゃ〜ん!よかった〜!!」
冥子はすぐにショウトラを呼び出し、ヒーリングを行う。だが、冥子のヒーリングでも間に合わないほど傷はひどいようだ。外傷はそれほどひどくないものの、霊体が衝撃によって傷ついているらしい。
「くっ・・・情けないわ・・・!失敗しちゃった・・・!でも、ダメージはあるはず・・・だから・・・ッツ!!」
痛みを食いしばりながら、美神は体を起こそうとする。だが、思うように体が動かないようだ。とっさに、横島が美神を支える。
「令子!オタクは寝ときなさいよ!―――後は私たちが何とかするワケ!!」
無理に体を起こした美神に、エミが叱り付けるように怒鳴る。この中でももっとも攻撃に優れた美神がやられたとあって、エミの表情には焦りが浮かんでいた。美神の状態もかなり危険だ。長引かせれば何とか竜神の暴走も食い止められるかもしれないが、それでは美神の命が危うい。
痛みに顔をゆがませる美神を横目に見て、エミは天を見上げて苦渋の表情を浮かべた。
「どうすれば―――ッ!」
「・・・任せてください」
そんなエミに答えるように、横島が呟く。その表情は、いつもよりも険しい。
「しかし、あなただけでは―――!」
危険です、と続けようとする小竜姫を制して、横島は苦しむ美神をそっと地面に置くと立ち上がって叫んだ。
「あとは、俺たちが!」
そう言って、横島はYYKTPCの面々をぐるりと見渡す。みんなこれほど無いというくらいに真剣な表情だ。
「いいか、次にアイツが顔を出したとき―――それがチャンスだ!フォーメーション6、行くぞ!」
「おうっ!」
そう叫ぶと、メンバーはクレーターの中から駆け出していた。少しでも美神たちに衝撃波が与えられないようにするためである。エミが結界を作れるからといっても、直撃すれば危険も伴う。
「目標・降下・開始!」
マリアの言葉は、もうすでに横島たちには届いていないのだろう。
クレーターの中に取り残された女性陣は、いつもは頼りなさげな男性陣の変わりっぷりにあっけにとられつつ、うまくいくことを心のそこから願っていたのだった。

女性陣の期待を背に、6人は走り出していた。
今までずっとこういう止めの場面は美神たちに頼ってきたような気がする。でも、今回は違う。俺達がみんなを守らなければならないんだ―――と、いつもに無く正義のヒーローのように6人が6人とも責任感を背負っていた。
そう、それは「ここでやらなきゃ男じゃない」という、男としてのプライドなのかもしれない。女性を守るのが男の役目―――なんていうのはずいぶん昔の時代な気がするが、今も昔も、やっぱり女を守るのは男の仕事なのだ。
「やるぞ!」
「了解!」
そう叫ぶと、横島たちは、敷地の中央に固まり霊力を高め始めた。
フォーメーション6とは―――YYKTPCを設立するに当たって、自分たちの能力を最大限に生かす方法を話し合った結果生まれた作戦のひとつだった。万能な横島の文珠、身体能力に優れた雪之丞の魔装術、応用の利くタイガーの精神感応、知力が武器のカオスの魔法技術、聖と魔を併せ持つピート、聖なる力で悪をねじ伏せる唐巣の力―――それらをあわせれば、どんな悪霊だってひとたまりも無い。
まず、カオスが作り上げた連絡機用い、カオスの霊力でタイガーの精神感応を増幅させ強力な霊的磁場を作り出す。これによって霊はその場所にひきつけられるのだ。ピートと神父は結界を作り敵からの攻撃に備え、雪之丞は敵に対して攻撃を行う。横島はその場に応じて、雪之丞のサポートだ。
だが今回はあまりにも相手が大きすぎる事もあり、横島が先頭に立った。
このフォーメーションはただ口であわせだたけの空想の産物でしかなかったが、この二週間ひっきりなしに顔をつき合わせていたせいか、想像以上のシンクロを見せていた。相乗効果で、増幅された霊力はまさに目を見張るばかりだ。まさかこんな力を見習いGS達が出せるとは、本人たちだって思いつきもしなかっただろう。
「俺が奴の眉間に文珠を叩き込む!サポート、頼んだぞ」
「任せろ!・・・来るぞッ!」
ウォォォォンと雄たけびが再び空にこだまし、白い竜の腹が雲間から除いた。竜はいつの間にか作り上げられた強力な磁場に吸いつけられるように、一直線に横島たちに向かって急降下してくる。
「雪之丞!」
「おうッ!!」
横島の声に、雪之丞は横島の背を引っつかむ。魔装術で身体能力が飛躍的に上がっている雪之丞にとって、横島など発泡スチロール程度の軽さだ。思いっきり気合を込めて、雪之丞は横島を放り投げた。目標はもちろん、竜神の眉間である。
「ぬあーーーーッ!!」
なんとも言えぬ奇声を発し、横島は素晴らしいスピードで竜神へと突っ込んでいく。
それはほんの一瞬の出来事だった。急降下する竜神に、急上昇する横島。互いがまさに目の前、竜神とぶつかるその瞬間に横島はGにもまけず手を伸ばす。
その手の中にはヒスイ色の丸い物体―――「戻」の文珠が光り輝いていた。
「天界へ・・・戻してやるぜ!天龍童子ッ!!」

カッ―――っと、天が今までにも増してまばゆく光り、あたりはまるで真昼のように光に包まれた。


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Rです。今回は5・6話を前編後編として投稿させていただきます。
あとがきなどは最終話で。

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