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▽レス始

「最悪にも偶然なGS!!第4話(GS)」

R (2005-06-14 14:04)
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「こんな展開、子供でも思いつくわーッ!!」
夜の帳は、喧騒には目もくれず静かに下りていた。


最悪にも偶然なGS!
そのヨン:GS戦線異常アリ!


「は、早すぎるっ!そしてお約束過ぎるっ!俺ァもー、神なんてのは信じんぞッ!」
そう叫びながら鉄くずとなったタクシーを前にして、しりもちをついているのは横島である。目の前のタクシーであっただろう『モノ』は、夜の闇を明々と照らして火を噴いていた。都会のど真ん中でキャンプファイヤーにかけられるタクシー―――ついでだから木にぶっさしたマシュマロでも焼いてまえー!!と絶叫したくなるような、シュールな光景だ。
事件は、ほんの数分前にさかのぼる―――

カオスを迎えに行ったあと、睡魔に誘われるままに眠りに着いた横島は、聞き覚えのある音に不意に眠りを妨げられた。
そう、いつか聞いたことのあるこの音は―――何だったかな―――
「―――ッ!」
獣のごとき第六感で跳ね起きた横島は、運転手とカオスの首根っこを掴むと、文珠に力をこめた。文珠には「脱」という文字が浮かび上がる。瞬間、ヒスイ色の文珠はまばゆく輝き、横島たちはタクシーの外へと放り出されていた。
その刹那、恐ろしい音を立ててタクシーが爆発、炎上した。ビデオカメラを持っていれば、「危機一髪100連発」とかいう番組に送ることの出来そうな映像である。ともかく、都会のど真ん中で起こりうるような事故ではない。
ここは戦場だったか?と一瞬ポカーンとする横島だったが、すぐにこういう状況の原因を思いついた。
美神である。それしかない。
「は、早すぎるっ!そしてお約束過ぎるっ!俺ァもー、神なんてのは信じんぞッ!」
元々信じていない神に悪態をつきながら、横島は緊急連絡のボタンを押した。美神が付近に来ているのなら、これ以上の危険は無い。ボタンを押すと、向こうのほうで腰を抜かしている運転手には目もくれず、頭をしこたま打って目を回しているカオスの胸ぐらを掴んで揺さぶる。
「オッサン!起きろーッ!眠ったら死ぬぞーッ!!」
まさに八甲田山。いや、それよりも性質が悪いかもしれないが。カオスはやっとのことで気づくと、燃え上がるタクシーを見て状況を理解したらしい。
「オイ、小僧!お前、一ヶ月くらいは大丈夫とか言ってなかったか?!」
もうすっかり美神の急襲ということを理解したカオスは、とんでもない状況になったと横島を問い詰める。
「わ、わからん!俺は万全を尽くしたつもりやったんやーッ!じょーほーこーさくも万全だったはずなのにーッ!!」
そう叫ぶ横島は、哀れすぎるほどにテンパっていた。そう、彼の情報工作はほぼ完璧だったのである。「美神に知られない」という点でだけは。
横島の誤算は、もっと別の場所にあった。依頼主である。
最初の集会で決めたとおり、依頼を受ける人物・企業は美神とつながりの無い人物のみということにしていた。それならば、美神への依頼は減らないし営業を妨害しているわけでもない。知られさえしなければ、ある程度力をつけてから美神にばらして認めさせるという事も出来たのだ。最初の頃は一つ一つの依頼について美神がかかわっていないか、他のGSの営業の妨げにならないかと調査をしていた。しかしそれも徐々に難しくなり、企業の名前や人物の名前だけで判断するようになっていった。それを、企業が見逃すはずが無い。少しでも費用を浮かせようとする企業は、美神とつながりの無い子会社に霊的不良物件を売り、その子会社からYYKTPCへ依頼するという、コスい方法を取りだしたのだ。上の方々の考える金の回し方には舌を巻く。
まあ、パソコンだって保険だってマク○ナルドだって価格競争の時代に、当然といえば当然である。個人はおろか企業だって「早くて安くて安心ね♪」な除霊屋に頼むに決まっているのだ。口コミで「あそこはいい」となってしまえば、一瞬のうちに他人のシェアなんて奪ってしまえる。そんなことに頭の回らない横島ではなかったが、ついつい忙しさにまぎれて対応がなおざりになっていたのだった。
横島の誤算は、市場のニーズに答えすぎてしまったがゆえに起こったわけで―――なんにしても、魔鈴然り、市場の相場を勝手に崩すとロクなことがねーな、という教訓である。
「あ゛あ゛ッ!!ワイはワイは完璧だったはずやーッ!早く来てー!みんなーッ!!」
とうとう、横島は錯乱しっぱなしになってしまった。まあ、それも無理の無いことなのかもしれない。あの美神の恐ろしさを一番知っているのは横島なのだから。
「お、終わりやッ!全部終わってまうんやーッ!!」
タクシーのエンジンの爆音を背に、プラトーンもビックリの雄たけびがビルの合間にこだました。

「ッ!なんだありゃ!」
雪之丞が、タクシーの窓から見える、もうもうと立ち上がる煙を見て叫んだ。夜の道路を走りぬけるタクシーはスピード違反確実の速度で車と車の間をぬって走っていく。どう見てもかたぎの仕事はしていなさそうな雪之丞に睨まれたのが効いたのか、タイガーの精神感応でちょっとだけアレなものが見えているせいか、運転手はもはや警察なんて気にもしてないそぶりでクラクションを鳴らしまくって爆走している。
「どー見ても爆発しとるノー・・・」
タイガーが苦々しく笑った。それもそのはず、この状況を見て、一人の女性を思い浮かべない人間はYYKTPCの中にはいない。
「み、美神さんでしょうか、やっぱり・・・」
ピートが、小さく呟いた。三人の間の空気が、一瞬にして凍りつく。それをいっちゃあおしまいよ、というのはこういうことを言うのだろうか。
「おい、もっと飛ばしてくれ!!」
雪之丞は運転手にそう叫ぶと、小さく呟く。
「横島、死ぬなよ・・・」
出来るなら俺たちも死にたくないからな―――と、雪之丞は心の中で呟いていた。

「お、終わりやーッ!何もかも終わってしまうんやーッ!!」
横島の絶叫に反応したのか、夜空の星がひとつ、キラリと輝いて流れ落ちていった―――かと思うと、その流れ星は横島めがけて一直線に落ちてくるではないか。その星を見て、カオスがおおっと、声を上げた。
「マリア!来たか!!」
バシュウッっという蒸気音と共に、足のエンジンを逆噴射してマリアが降り立ってくる。緊急でやってきたからなのだろう、耳に当たる部分からは電話コードがぶら下がっていたりするが、この際そんなことはどうでもいい。
「イエス!ドクター・カオス!」
完全に地上に足をつけると、マリアは手に持っていたボロ雑巾のような物をどさりと落とす。マリアに首根っこを捕まれて空を飛んできた唐巣神父だ。
「か、神よ・・・許したまえ・・・」
ボロ雑巾となった唐巣ははそう呟くと、がっくりと力なく倒れてしまった。とはいえ、ピクピクと動いてはいるから死んではないのだろう。どこまでも不幸な男である。
そんな唐巣には目もくれず、マリアはカオスを抱き起こした。周囲の状況を見て、危機的状況であることを瞬時に判断する。瞬間、マリアが叫ぶ。
「高エネルギー・反応!こちらへ・接近中!!」
「なんじゃと!?」
マリアが視線を向けた先には、とても人間の生み出した武器ではない火の玉が向かってきていた。そう―――たとえるなら竜が吐き出した火の玉とでも言おうか。
「直撃・します!」
「のわーーーーーッ!!」
カオスと横島が同時に叫んだ瞬間、あたりはまばゆい光に包まれた。

まばゆい光があたりを包み込む。なぜか暖かなその光の中で、横島は中に浮いたような夢見心地でまどろんでいた。もし死んだとしたら、天国はこんな感じなんだろうか。いまだはっきりとする意識の中で短い人生を振り返りながら、横島はふっと笑った。
―――死んだか?俺・・・そうだよな、死んだんだ。あんな火の玉に直撃されちゃあな・・・。ふ、ま、それもいいか。いままでキレーなねーちゃんからは相手にされず、美神さんには奴隷にされて・・・生きてたってなーんもいい事無かったもんな・・・そう、いいんだ。いい―――
「・・・わけねーだろーッ!せめて最後に一発ーッ!!」
がばッとはね起きた横島は、目の前の状況に本当に天国に逝ったのかと勘違いした。
彼の目の前にたたずむ人物―――それは―――
「み・・・美神さん?!」
長者番付一位の美神令子、その人だったのである。

「そんなバカな!?!」
ようやく現場に着いた雪之丞、ピート、タイガーの三人は、目の前の光景に絶句した。
燃え上がるタクシー、倒れている神父、唖然としているカオスと横島とマリア。そして、彼らの前に立っているのは―――
美神令子、小笠原エミ、六道冥子、そして小竜姫だったのだ。小竜姫は、勇ましく剣を構え、美神は神通棍を、冥子は式神をとりだし、エミは結界を張っている。完全に戦闘体制だが、横島を狙っているというわけではなさそうだ。
「大丈夫ですか、皆さん!!」
小竜姫が叫ぶ。横島たちは、まるで状況が理解できないと言った様子でポカーンとしている。
「しっかりしなさい、横島君!死にたいのッ!」
美神の叱責に、ようやく金縛りが解けたように横島が反応した。
「こ、コレは一体?!」
ようやく驚きの呪縛から解き放たれたように、ピートたちも横島たちの元へと駆け寄る。
「すみません・・・!皆さんを巻き込むつもりはなかったのですが・・・ッ!!」
そう言って小竜姫は、苦渋に顔をゆがめた。どうも、この件は小竜姫が関わっているようだ。
「ど、どういうことなんすか、美神さん!」
横島がわけがわからない、と言った風にたずねると、美神は戦闘体制のせいか、ケンカ口調であらましを説明した。
「天龍童子、覚えてるでしょ!あの子が暴走したのよ!」
「天龍童子・・・って、あの?!」
そう、ずいぶん昔、人間界に降りてきた竜神王の息子―――それが天龍童子である。いまは天界で大人しくしていると聞いていたが、暴走したとはどういうことなのだ?と、横島含め事情を知っている人間ははてなマークを頭の上に浮かべていた。
その様子を見て、小竜姫が詳しく解説をする。
「以前、私が逆鱗に触れられて暴走したのを覚えていますね!今回はある者が天龍童子様の逆鱗に触れてしまったのです!それで、天界では暴走を食い止められず―――人間界に!」
「あ、な〜るほど!」
と、手をぽんと叩いて納得する面々。「納得しとる場合かッ!!」と美神がツッコむ。
「じゃ、さっきの爆発はあいつが?」
横島の問いに、あいも変わらずのんびりな冥子が答えた。
「そうよ〜〜。わたしたち〜、一生懸命とめたんだけど〜、火の玉が強力すぎて、方向を変えるのが〜やっとだったの〜。」
「つー事は、ワシらはとばっちりで死にそうになっとったんか・・・」
あんまりな事実に、カオスも二の句が次げないようだ。
ともかく、美神が襲ってきたわけではないと妙にほっとするメンバーであった。実際、暴走した竜神よりも美神のほうが強力というと・・・まあ、なんともいえないのだが。とりあえず、今のところは竜神を押さえ込めばこの場が丸く収まる、と俄然勢いを取り戻す。
「すみません、皆さん!協力していただけますか?!」
必死な小竜姫の叫びに、男性陣はもちろん、といった様子で頷いた。相手が美神でないならば、どんな相手でもYYKTPCに不足は無い。
「よっしゃ、じゃ、いっちょやったるか!」
気合を入れる横島に答えるように、「おう!」とYYKTPCメンバーが答える。神父もピートに支えられながら、何とか息を吹き返したようだ。
「来ます!!」
小竜姫が叫ぶと同時に、黒い雲に覆われた空が光りだす。稲妻の音を響かせながら、白く光る竜の腹が雲間に覗いた。さすが、子供とは言っても竜神王の子供である。その姿を見たとたんに、あまりの力の差に腰が抜けそうだ。
うねる白い腹がひとたび見えなくなったかと思うと、今までよりいっそう強い光が天から降り注いだ。
と、その刹那、光り輝く巨大な火の玉が、美神たちめがけて突撃してきたのだ。
「ここは私が!皆さんはあちらへ!あそこで取り押さえますッ!!」
そう言って小竜姫が指差した先には工場誘致用の敷地があった。あそこなら確かに被害は少なそうだ。
言うが早いか、加速して姿の見えなくなった小竜姫を後に、美神たちは敷地を目指して走り出す。
―――とんでもねー事になったなー
と思いつつも、横島は正直ほっとしていた。美神にばれていなかったのなら、まあ何とでも言ってしまえ、と思っていたのである。ともかくこの場を切り抜ければと必死な横島の肩を、美神が叩いた。
「横島君―――」
走りながら、美神が引きつった笑みを浮かべて呟く。
「今は緊急避難だけど、後から覚えてなさいよ」

ピシッ―――と音を立てて、横島は自分が崩れて行くような気がした。
その後ろで、もう一度、爆音が鳴り響いた。


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Rです。前回も暖かいコメントありがとうございます。
いつも励みにさせていただいております。
今回は少し物語を切る場所が悪いかな・・・と思いましたが、次回のことも考えてここで。やっと物語が進んだ気がして、ほっと一安心です。

オカルトGメンなのですが、私見では特に緊急を要する除霊、特に一般市民に危害が加わる危険性のある状況下での除霊を無料(?)でするのがGメンだと思っているので、今回のような企業関係にはGメンはあまり出張ってこないのじゃないのかなーっと思っております。
個人ならば利用はあるかもしれませんが、官公庁は緊急時以外動くのが大概遅いですし、書類もめんどくさそうなイメージがあるので、よっぽど困ってない限りGSに頼むのではないかな、と思っていました。そのあたりの住み分けが原作ではあまり触れられていないので、あやふやに書いてしまいました。すみません。
正しい見解などがあれば教えていただけると助かります。今後の参考にさせていただきたいので・・・

未熟ゆえ展開が強引かつ矛盾だらけかもしれませんので、ご指摘いただけると嬉しいです。
では、これで。

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