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▽レス始

「最悪にも偶然なGS!!第3話(GS)」

R (2005-06-09 13:44/2005-06-09 13:45)
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「絶対にぶっ潰す!!」
人工幽霊一号は、その声に無い背筋が凍る思いがした。

最悪にも偶然なGS!
そのサン:ミッドナイト・ランニング!

近所の浮遊霊たちがぎっしりと詰まった美神の事務所では、いまにもハルマゲドンが起こらんとするかのごとき殺気に満ち満ちていた。それもそのはず、美神に依頼が無いのは、最近出来たという「YYKTPC」―――男性GS特別編成事務所のせいだというのだから。
浮遊霊の一人が、近所で配られていたビラを見たという。そこには見慣れた顔が並んでいた。女性受けがいいのか、ピートが一番でかく載っていたそうだが。そこには、横島の名もでかでかと書かれていたと彼は証言した。
が、それがまずかった。まさしく、逆鱗に触れてしまったのだ。
美神は、いまや出会い頭に横島を殺しかねない殺気を放っている。
「よ〜こ〜し〜ま〜!!!ぶっ殺す!!!」
事の次第を聞いてからというもの、浮遊霊たちはまるで金縛りにあったかのように固まっていた。おキヌももちろん、口を挟むどころか身じろぎさえ出来ない。
そんな周囲を尻目に、美神はありったけの武器と霊具をとりだし、ブツブツと何かを呟きながら妖しく笑っている。きっと、横島をどうやって殺るかを考えているのだろう。そんな美神の様子に少しでも早くこの場を離れたいと思いながらも、やっぱり動けない霊たちであった。
そんな時、ジリリンと大きな音を立てて電話のベルが鳴った。慌てふためく周囲をまるで気にしないかのように、美神は乱暴に受話器を手に取る。
「こちら美神GS事務所!悪いけど今取り込んでるから依頼は―――!」
そこまで言ったとき、不意に美神の顔がこわばった。
「・・・アンタは・・・!!」

「いやー、助かったわい。小僧、お主もやるもんじゃなー」
「って、あんたがしっかりして無いだけだろーがッ!歩合減らすぞ!もーッ!」
朗らかに笑うカオスに対して、横島は苦々しい顔をする。緊急のサインで飛んできたのはいいが、カオスは一匹の巨大な地縛霊に慌てていたのだった。霊力が通じなかったといっていたのだが、実のところ本体が隠れていて、カオスは幻影を倒そうとしていた―――というお粗末な結果である。ほんとにこいつは昔名をはせたDr.カオスなんか?!と疑問が残るが・・・。まあ、彼はマリアあってのカオスともいえるのだから、なんとなく老体に鞭打つ感じがして、横島はそれ以上突っ込まなかった。
意外なことに、カオスは今回の兼を差し引いても、実は結構役に立っているのだ。彼の持つ魔法技術の知識のおかげで、ずいぶん楽が出来ている節がある。タイガーの精神感応を応用した携帯連絡機や疲労回復用の魔方陣、その他諸々を担当しているのがカオスなのである。それになんと言ってもマリアの情報処理能力を最大限に活かす技術を持っているのは、彼しかいない。
「まあいいけどさ。次からは気をつけてくれよ。最近忙しいんだから」
「わかっとるわかっとる!さて、今日は久々にすき焼きでも食うかのー!」
すっかりご隠居気分なカオスに給料減らしたろかっ!と美神事務所時代じゃ考えられないような考えを思い浮かべながら、横島たちは帰路に着いた。
横島がタクシーを使って帰路に着くのは、以前ICPOに美神が勤めにでて、所長代理で働いたとき以来だ。あれからずいぶん時間がたったように感じるなと多少感慨深く外を眺める。街はいつもと変わりなく、せわしなく動いていた。もうすぐ夜の帳が下りてくる。
街を眺めながら、今日は夜の仕事は無かったはずだなと考えながら、横島は不意に睡魔に襲われた。ここ最近忙しくてろくに眠っていなかったせいだろう。横にいるカオスはもうすっかり晩飯気分なのか、買い物の予定を考えているようだ。最近は食べ物がいいのか、すっかり見違えるように肌がつやつやとしている。大家とも上手く言ってるらしいから、そりゃ幸せぶとりもするだろう。
そんなカオスの隣で、横島は車の揺れに身を任せ、ほんの少しの休息をむさぼることにした。そう、この先何があるかわからないのだから―――

「おう、帰ったぞ」
「いやー、疲れたノー。手ごわい相手じゃった」
そういいながらどかどかと足音を立ててはいってきたのは、雪之丞とタイガーだ。この二人、凸凹コンビではあるのだが、それなりに相性がいいようだった。除霊にはパートナー制を採用したため、二人そろって出かけることが多い。一人だと今回のカオスのような危険もあるので、除霊に慣れていない見習いメンバーは二人で一人の計算なのである。タイガーも雪之丞もすばやく敵を倒すことが自分の保身にもつながることから、迅速な除霊で評判だった。
雪之丞はコートを脱ぐと、どかっとソファに身を沈めた。
「それにしても、ずいぶん繁盛してるよな。このままじゃ俺たちが先に参っちまいそうだ」
「そうだね・・・。先生もずいぶんお疲れみたいだし」
贅沢な愚痴だとは分かっていても、つい口に出てしまう。そんな雪之丞の言葉に苦笑いしながら、コーヒーを手にピートが台所から顔を出す。彼の視線の先には、前後不覚に陥った唐巣がいた。さっき帰ってきてから、ものの数分の間に眠ってしまったらしい。ピートが掛けたのだろう毛布が上下に動いていた。
「まあ、神父は一番働いとるケン、しょうがないとは思うんジャガノー・・・」
「まあ、そうだな。主力って事もあるし。お、サンキュ」
ピートから渡されたコーヒーをすすりながら、三人は一息つく。静かな教会に、マリアの機械音がこだました。
かれこれこの事務所で二週間。忙しいながらも確実にやれている自信がみんなについていた。まだまだ長者番付には程遠いものの、そこらのGSよりも確実にこちらが優勢になっている。いまや、YYKTPCは飛ぶ鳥も落とさん勢いの新勢力GS組織となりつつあるのだ。この分なら全国に支店を出したって上手くいくと横島が笑っていたが、まったくそのとおりである。
だが、いかんせん人が少なすぎる。このままでは依頼をこなせずYYKTPC自体がパンクする―――なんて事にもなりかねない。
「誰か適当な人間を引き抜いてくるか―――」
雪之丞の呟きに同意しつつも、いい人材が近くに見当たらない現状に、三人は頭を抱えるしかなかった。男だけで結成すると言ってしまったからには、知り合いの女性陣に頼み込む事も出来ない。みな、GSの知り合いには女性ばかりという事実に直面していたのである。
「なんで男のGSはこんなにもおらんのかノー」
「ほんと、思いつくのが女性ばっかりって・・・」
「この業界、割と狭いはずなんだがなー・・・」
長者番付のランクは世の中を表しているんだな、と再び思う三人であった。
そんな重苦しい雰囲気を切り裂くように、突然マリアが立ち上がった。
「エマージェンシー!横島・所長から・緊急連絡!!」
「なにッ!!」
突然の出来事に、三人は身をこわばらせる。横島からの緊急連絡は、よっぽどのときしかないはずだ。三人はあまりのことに、驚きを隠せない。
「どうした!マリア!」
「分かりません。エマージェンシー・レベル5!至急・現場に・急行せよ!」
そういったかと思うと、マリアの瞳から一筋の光線が走り、ホワイトボードに現場の地図を映し出した。地図は、カオスが出かけて言ったという廃屋の近くだ。その中でひときわ目立つ、赤く点滅している場所―――それが横島のいる場所らしい。
「いくぞ!」
「おう!」
雪之丞を先頭に、ピートとタイガーが教会を駆け出して行く。エマージェンシーレベル5などとは、YYKTPC始まって依頼の大事件だ。はやる気持ちを抑えるように、タクシーに乗り込む。
(まったく、一体なんだってんだ―――!)
予想も着かない展開に、三人はただただあせっていた。

一方、三人が出て行った教会では、一足遅く唐巣が動き出していた。どうもさっきの騒ぎで眠りから覚めたらしい。半分寝ぼけた様子で、近くに置いたメガネを探っている。メガネをやっと見つけると、突っ立っているマリアが目に飛び込んできた。
「マリア君・・・?アレ、他のみんなは・・・?」
「唐巣神父・エマージェンシー・レベル5.至急・現場に・急行せよ!」
「へっ?!」
驚いた神父がマリアの視線の先を見ると、地図の中に赤く点滅する場所がある。だが、話の見えていない唐巣はぽかんとしたままだ。
マリアは地図の表示を終了すると、唐巣の首根っこを掴んだ。驚く唐巣には眼もくれず、マリアの足下から白い蒸気が立ち上る。
「緊急につき・ジェット飛行で・急行・します」
「いっ?!ちょ、ちょっと待・・・」
唐巣が言うが早いか、マリアの足下のジェットが火を吹いた。哀れ唐巣神父。きっと彼はタクシーよりも現場に早く到着することだろう。生きているかどうかの保証は無いが。
バサバサと音を立てながら舞い散る書類の海に、天井にぽっかりと明いた穴から月の光が降り注いでいた。

その頃、横島は―――
「こんな展開、子供でも思いつくわーッ!!」
そう絶叫すると、泣いているのか笑っているのかわからない、恐怖に引きつった笑みを浮かべていた。


――――――――――――――――――――――――
Rです。前回もさまざまなレスを頂き、ありがとうございます。
励みにしつつ、参考にさせていただきつつ筆を進めております。

あまり進んでおりませんが、なんともお約束感の漂う続きで今回は終了です。次回は多少、皆さんを裏切れたらいいな・・・と思っております。
ここでとりあえず半分です。
では、また次回。

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