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「最悪にも偶然なGS!!第2話(GS)」

R (2005-05-31 17:41/2005-06-01 04:21)
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「コレでワシらも金持ちじゃー!!」
横島のまさに邪な声が、教会に響いた。


最悪にも偶然なGS!
そのニ:カトリック・ブルース


日曜だというのに、唐巣の境界に呼び出された男性GSメンバー・・・彼らは、今一丸となっていた。
それというのも、長者番付に女性GSばかりがしゃしゃり出ているという現実に直面し、ここらでいっちょ男が男であるところを見せてやるぜ!と息巻いているからなのだ。横島が提案した、「YYKTPC」という男性GSばかりの事務所の行く末―――それを今、話し合っているのである。
どうやら、こまごまとしたことは決まったようだ。経営はもちろん、横島に任せる。それゆえ責任者は横島でいいという事になった。まあ、表立っての代表者はGS免許の関係上唐巣になるのだが。
また、美神の耳にこの事務所のことが入らないよう、細心の注意を図る事も忘れない。横島は美神への仕事の依頼ルートを完璧に把握しているのだから、コレは案外簡単だった。美神と取引のある企業や人物には、出来うる限り接触しない。宣伝もおおっぴらにではなく、戸別訪問や電話案内で済ませる。あとは口コミやネット―――などなど、美神の守備範囲外から攻めていく手だ。まあ、美神のような高給取りに頼むような人物が自分たちに仕事を頼むはずが無いという、ちょっぴり悲しい自負もあってのことだ。
儲けは基本的には均等に分け、場合に応じて歩合が変動する。歩合の変動は週一回の会議で決めることにした。出来るかぎり民主的にやっていこうというのがおおむねの結論で、当面の問題は除霊に使うお札やその他もろもろの諸経費であった。身一つで除霊も出来るのだが、どう考えてもお札の無い除霊は体力的に無理である。霊はすべて消滅させればいいというものではないわけで、吸引も必要ならその他諸々―――ともかく、身を守るすべとしてニ三枚くらいは欲しい。とはいえ、一枚が十円からウン千万程度のものもある。百万とは言わないから、せめて十万円くらいの札は―――
「どうすっかなー。俺たちにそんなたくわえがあるわけじゃなし・・・」
横島がうーん、と悩んだように天を仰ぐ。
「今から除霊を受け付けると言っても、先立つもんが無いとなー。やっていけれんぞ」
「じーさん、あんたの発明で何とかならんのか?」
「そりゃ無理というもんじゃ。家賃ですらままならんのに、研究資材が買えるはずがなかろーが」
カオスと雪之丞の問答を聞いて、ピートも頭を抱えていた。
「せっかく面白い思いつきだと思ったんですけど・・・やっぱり、無理なんでしょうかね」
「そうじゃノー・・・。せめて担保か何かがあれば、銀行からでも金が借りれるんジャが・・・」
ふう、と大きなため息をつくタイガーの言葉に、横島が不意に目を光らせる。
「タ、タイガー!今なんて・・・!」
「へっ?!銀行から金を・・・」
「それだッ!!」
突然立ち上がった横島に、みんなが注目する。燭台を拭いていた唐巣神父も気づいたように目を向けた。
「この教会を担保に入れよう!!」
「こ、こらこらこらこらッ!」
突然の発言に、神父はずっこけながらもツッコミを入れる。
「おー、そりゃいい考えじゃ。こんなボロ教会でも、まあ百万くらい貸してくるじゃろ」
「よし、これで当面の資金は確保できたな!腕が鳴るぜ!」
「なんかワシ、役に立てたよーで嬉しいノー!」
「って、皆さん・・・」
やいのやいのと賑わうみんなに、もはや唐巣のツッコミは届かない。ピートがその場を制しようとするが、当然暴走気味のメンバーに敵うはずがない。話はころころと転がり、いつの間にやら「教会を担保に金を借りて元を取る」事は決定事項となってしまっていた。哀れ、唐巣神父。早速月曜には銀行へいって手続きをしてくると、雪之丞が息をまいていた。その間、もうすっかり経営者の横島はここはこーであーだこーだと担当地区を決めつつ、宣伝文句を練っていた。もちろん、勝手に唐巣もメンバー入りしている。
唐巣はもう、このメンバーから抜け出す事は出来ないんだな・・・と神に祈りつつ涙を流しているのだった。


「最近、横島クンどうしたのかしらねー」
美神は、最近静かな事務所で呟いた。
横島がしばらく休みをくれといって事務所を出て行ったの二週間前。どうしたのかと聞くと、ちょっと友達の用事に付き合うとか何とか言っていたような・・・と思いをめぐらせながら、美神はため息をついた。
別段横島がいないからと言って困る事は無い。むしろ静かでいいくらいなのだが、ストレス発散の道具が無いとやや張り合い無くも感じていた。
「ほんと、そうですね。どこ行っちゃったんだろ・・・」
美神に同調するように、おキヌも小さくつぶやいた。彼女はただ純粋に横島の行方を心配しているようである。アパートを訪ねてみたのだが、人の気配は無かった。横島がアパートに帰っていないという事は、妙神山にでも・・・?と思い、小竜姫に連絡してみたが、そうでは無いという。めっきり行方知れずになってしまった横島を、おキヌはここ数日、ずっと心配し続けているのだ。
「ま、死んでるなんて事は無いと思うけど―――気になるのよね」
と美神は、いかにも馬鹿馬鹿しげに片手を振った。もちろん、気になるのは横島の安否ではなく、動向だ。奴がいなくなるときは決まって何か事件のひとつふたつが起きる。ここのところ依頼の件数も減ってきているし、嫌な予感がするわ、と美神は厳しい顔をした。
「でも、ホント―――どうしちゃったのかな・・・」
美神とは正反対に、純粋に心配しているおキヌを見て、美神は人がいいんだからと苦笑する。
「ま、そんなこと考えてても仕方ないわ。さ、仕事仕事!どう、よさそうなのある?」
「え?あ、あの、美神さん、実は―――」
いつものごとく笑顔の美神に、おキヌはちょっと顔を曇らせる。そんなおキヌの表情に気づいたのか、美神は奇妙な胸騒ぎを覚えた。そう、こんなことが昔あったような―――
「仕事、無いんです。一件も―――」
「な、何ですってーーーッ!!」
絶叫が事務所にこだまする。
「お、落ち着いてください!!」
おキヌの制止も聞こえぬかのように、美神は怒りに震えていた。そのときである。某魔法使いが美神の仕事を取っていた―――そんな事件が脳裏をかすめ、美神は直感した。「今回もきっと、誰かが私の仕事を横取りしているのだ」と。
「・・・おキヌちゃん」
「は、はい?」
「今すぐ近所の浮遊霊たち集めてきてっ!早く!!」
「は、ハイッ!!」
浮遊霊ならここいらの情報には詳しいはず、と踏んで、美神は浮遊霊を呼びつけた。もしも何も知らないようなら、有益な情報が見つかるまでこき使ってやろうなどと考えていた。とことん幽霊使いの荒い人間である。今はおキヌは人間なのだから、浮遊霊を集めるのもちょっとした苦労ではあると思うのだが―――ま、そんなころは美神には関係ない。
美神はただただ、自分の仕事を横取りする何者かへの怒りと憎悪に燃えていた。


「主よ!我に力を!アーメン!」
「ダンピール・フラッシュ!!」
「グギャアァァァァァァァァァ!!」
断末魔の叫び声とともに、悪霊が消えていく。
「ふう、終わったね」
「先生、すみません・・・」
「いや、いいよ。とりあえず、教会を取り戻さないといけないからね。ハァ」
ピートがいかにも申し訳なさそうに唐巣に頭を下げる。唐巣も、弟子にそこまで言われてはきつく責める訳にもいかず、小さくため息をつくばかりだった。
ここは町外れにある古い工場だ。自殺した前経営者の霊が取り壊しを拒んでいた霊的不良物件で、工事会社が困っていたところ、横島の巧みな話術のおかげでYYKTPCに仕事が回ってきたのだ。
YYKTPCが実働してからはや二週間―――。教会を担保に借りた百万を元手に、厄珍からねぎりにねぎって買ったお札(定価10万円)10枚とビラ500枚を心の友に、さっそく仕事を開始したのだった。
料金は唐巣の強い主張もあり、世間一般の値段よりはずいぶん破格となっている。裕福で無い人のために無料で相談、除霊のサービスも行うという、ある意味「らしい」スタイルとなっていた。これにはカオスや雪之丞が反対したのだが、教会が担保という強みもあり、ピートも味方についたために無理やり押し切ったのだ。それでも、十分に利益は出る料金なのである。なんといったって、除霊の基本が魔装術だったり怪光線だったり精神感応だったり文珠だったり、聖書だったりするのだから。実際、お札は吸引とピンチのときだけの使用だ。
仕事というと、すこぶる順調だった。実力派、迅速、低料金とくれば、困っている人々が放っておかないはずが無い。今では教会はすっかり事務所と化し、日曜日もひっきりなしに電話がかかってくる。おかげで、ミサの最中のBGMは電話のベルだ。唐巣はそんな現状を苦々しく感じつつも、自分たちでGS界を変えてやると意気込んでいる横島たちに、失った若さを感じているのも事実だった。
まあ、そんなこんなで結果的に巻き込まれた唐巣は、それなりに満足しつつ仕事に励んでいるのである。一応は裕福で無い人々の助けにもなっているわけだし―――と自分を納得させながら。


「ただいま」
「帰りました!」
教会へ着くと、横島が出かけようとしているところだった。
「横島君、仕事かい?」
「あ、神父、お帰んなさい!カオスのオッサンから連絡があって・・・ちょっとややこしいことなってるらしいんすよ。じゃ、いってきます!」
多少の疲労が心地よいと言った顔をして、横島は教会のドアを駆け出していた。タクシー!と叫ぶ声が聞こえたから、割と遠くまで行くのだろう。
教会にはマリアが一人受付をしていた。事務処理能力が抜群なので、カオスが直接電話とつないで応対をさせているのである。こうでもしなければ始終電話のつながらない事務所になってしまうのだ。それほど忙しいということである。
本来なら「女人禁制」のYYKTPCに、マリアは持ち込み不可だった。だが、カオスの強い希望と事務処理の出来る人間の少なさから「ロボットだしいーじゃん!」という壮大な妥協の末に事務担当となったのである。ある種さっぱりした開き直り方だが、おキヌや小鳩に頼まないあたり、女GSを見返すという目的の強さが垣間見える。
「やあ、ただいま。ご苦労様、マリア君」
「お帰り・なさい・唐巣神父・ピート」
マリアは忙しそうに手を動かしながら、言葉だけをこちらに返してきた。またずいぶん忙しそうだなとピートを顔を見合わせて苦笑する。
出先を書いたホワイトボードには、それぞれ個性的な文字が並んでいた。こざっぱりした端正な字が唐巣神父のもの。流れるようで、時折英字のはいった字がピートのもの。無骨でやや乱れているが丁寧に書いてあるのがタイガー。かろうじて読める程度に乱暴に殴り書いてあるのが雪之丞。流暢過ぎて一瞬どういう文字なのかわからない、草書なのがDr.カオス。意外と綺麗で読みやすい文字を書くのが横島だ。こうしてホワイトボードを見るだけでもその人となりが見えてくるようで面白い。
「今日は他に、仕事はあるのかな?」
「ノー!仕事・今日は・ありません」
「そっか。じゃ、やっと休めるなー」
ホワイトボードを眺めていると、マリアとピートの会話が聞こえてきた。仕事が無いと聞いて、じゃあこれからしばらくはゆっくり出来るな、と唐巣はほっとしたようにソファに腰を下ろした。休息は短い。だが、ほんの一時平和な気分になれるだけましだ。普段からは想像もつかないように物の多い自宅の様子を見て、ため息混じりにメガネを外すと、唐巣は大きく背伸びをした。


その頃、Dr.カオスはというと―――
「な、何じゃこりゃーッ!わしゃきいとらんぞこんなのーッ!!たすけてくれ、マリアーッ!!」
と、巨大な地縛霊相手に大絶叫していた。


―――――――――――――――――――――――――――
Rです。前回は様々なレス、ありがとうございました!
今回は起承転結の「承」という事もあり、唐巣神父主体でののんびりした話です。
次回から物語は少しずつ進むかな・・・?
お約束を取り入れつつ、皆さんを裏切っていきたいと思います。
全6話となっておりますので、もうしばらくお付き合いください。
では、また次回。

修正:地縛霊→浮遊霊にさせていただきました。ご助言ありがとうございます。
ついつい、退治するもんのイメージが強くて・・・

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