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「最悪にも偶然なGS!!最終話(GS)」

R (2005-06-20 09:48)
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「天界へ・・・戻してやるぜ!!」
夜の帳は、一瞬、幕を上げた。


最悪にも偶然なGS!
そのロク:素晴らしき哉、GS!


「どうもすみませんでした!!ほんとに・・・!」
美神を運んだ病院で、へこへこと頭を下げる小竜姫に、むっとしている天龍童子が横にいる。以前見かけたときよりは幾分が大人になっているようだが、やっぱりまだまだ子供のようだ。本人は知らぬ間に暴走していたのだから、多少釈然としないのだろう。「さあ、殿下も!」と強い口調で諭されて、童子はようやく口を開いた。
「わかっておる、小竜姫!・・・今回は、余が迷惑をかけたようじゃな。・・・申し訳ないことをした」
むすっとしつつも、ちょっぴり申し訳なさそうにそういうと、天龍童子はぺこりと頭を下げる。
そんな様子に、横島たちは頬を緩ませた。あのとんでもない暴れ竜がこんな年端も行かぬような少年だと思うと、なんとなく不思議な気持ちになる。
「ッたく・・・次からは気をつけろよ」
そう言ってぽんと頭に手を置く横島に、フン、と照れ隠しのように反発する天龍童子であった。
話を聞くに、事の起こりはイームだかヤームだかが不注意で逆鱗に触れてしまったことらしい。いったいどんなシチュエーションで逆鱗に・・・?とも思ったが、なんだか想像するのもめんどくさいので話を濁す。聞くところによると、天界もさぞやひどい有様なのだろう。小竜姫は顔を青ざめながら、「彼らの処分は後々決めます」と力なくつぶやいていた。小竜姫も天界の尻拭いをさせられたわけだから、ちょっと気の毒である。「上がもうすこししっかりしてくれていれば・・・」とぼやく声が耳に届いた。
「それにしても・・・あなた方には驚きました。美神さんが倒れたときは、どうしようかと―――」
そういって、小竜姫が笑顔を向ける。YYKTPCの面々が、天龍童子の暴走を食い止めたおかげで、想像していたよりもずいぶん軽い被害ですんでいた。あのあと、文珠の効果で元に戻ったはいいが、無理やり戻したせいもあり、衝撃波が周囲に駆け抜け、建物に少々被害が出ていた。あの付近に住んでいる住人には、ご愁傷様というより他が無い。
「いやー、ワシらもここぞというときは役に立つじゃろ、な!」
「ええ、ほんとに」
得意げなカオスに笑顔を向けて、小竜姫は横島に向き直る。
「今回の件、上にも報告せねばなりませんね。YYKTPC・・・でしたか。あなた方の働きに深く感謝しています。美神さんたちには言っておきますから―――もうしばらく、活動を続けてください。私も今後を楽しみにしていますよ。それでは」
「また来るぞ。じゃあな!」
そういうと、小竜姫と天龍童子は掻き消えるように消えてしまった。
しばらくポカーンとしていた面々だったが、YYKTPCが神様に認められた、という事実に気づいた瞬間、ここが病院だという事も忘れて互いに手を取り合い抱き合い喜んでいた。
まさか、貧乏神父にボケジジイ、流浪人に見習い3人組みが神様にまでほめられる働きをするとは―――二週間前には、考えもつかなかったことである。
―――長者番付に載っていないGSだって、やるときゃやるんだ。
そんな風な声が、青く澄み渡った空に吸い込まれていった。

「―――認めないわけにはいかないわね。悔しいけど」
包帯を巻いた痛々しい姿で、美神は呟いた。周りには知らせを聞いて飛んできたおキヌ。エミも冥子もいる。病室の前から聞こえてくる万歳三唱が、うるさいくらいに耳に響いた。
認めたくない事実ではあるが、横島たちのYYKTPCとやらに自分のミスを補ってもらったというのは、曲げようの無い事実だった。小竜姫も帰り際によって帰って、「横島さんたちを許してあげてください、ね」と念を押されてしまったのだから、もう認めよう他が無い。
実際、横島たちはそれなりにきちんとした成果もあげているし、実力もあるわけで―――もっとも、美神の仕事を取ったことは許しがたいが―――もうそろそろ、横島も自分の手を離れる頃なのかもしれないな、と美神はらしくないことをボーっと考えていた。だがすぐに、頭を打ったのが良くないんだわ、と考え直す。
「ま、面白そうだからいいんじゃないの。男って、あーゆーの大好きなワケ。しばらくほっときゃいいんじゃない?」
そう言いながら、エミは病室の外へ目をやる。にぎやかに盛り上がる男性陣に、呆れたような羨ましそうな複雑な表情をしながらも、ふっと笑みをこぼした。
「そうよ〜。楽しそう〜。混ぜて欲しい〜」
冥子は、分かっているのかいないのかのんびりと病室の外の騒ぎを楽しんでいるようだ。
「でも、無事でよかった。横島さんたち。それに―――楽しそう。フフッ」
おキヌは心底安堵したように、優しく笑った。
―――ま、いっか。
しょうがない、という風に美神は笑う。
男の遊びに付き合ってやるのも、大人の女というものだ―――と、美神は眠りについた。しばらく事務所は休んじゃおうかな、と考えながら。

それから一ヶ月。
YYKTPCは解散することになった。その理由は、ある意味凄い。
「地域に根付いたサービスを」と、東京周辺のみでしか除霊を行っていなかったYYKTPCであったが、いつの間にやら噂が広まり、困りに困った人々からの出張の要望が全国各地から寄せられるなど、6人で経営するには限界が来たため、業績を認めたICPO超常現象課がYYKTPCを民間除霊の窓口として吸収することとなったのだ。ローコスト・迅速・営利企業、個人の依頼可(ただし条件あり)をモットーとする、今までのICPOにはない画期的な部署である。美智恵から話を受けた西条が主体となり実現した話だった。
公的機関となるため、代表者であった唐巣は形骸的に代表補佐として外部のICPO付きの役員となり、他のメンバーはそれぞれ帰る場所へと帰っていった。唐巣も、役員になったからと言って神父を辞めるわけではない。
吸収されるときには功績をたたえて表彰式が行われたというが、横島に表彰状を渡す西条の顔が引きつっていたのはいうまでも無いことだった。
この件には、実はちょっとだけ女性陣の活躍があったりもしたのだが―――それはYYKTPCの面々には知らされていなかった。美神たちがあんまりにも忙しすぎて見違えるほどやつれたYYKTPCメンバーを気の毒に思い、美智恵にそれとなく頼んだのだ。美智恵も噂には聞いていたYYKTPCを、パンクする前に吸収・活用しようと働きかけてくれたのであった。
この吸収にYYKTPCの面々は複雑な心境ながら、ある種の限界を迎えていた事もあり、さばききれない仕事からやっと解放されるのだと安堵すら覚えているようだった。
結果、YYKTPCは解散。
「長者番付に載ってみせる」という夢は費えたものの、それぞれ確かな「何か」を掴むことが出来たようだった。

カオスは相変わらず変な発明をしているが、このおかげで名声を得、時折企業や個人からの依頼を受け取るまでになったらしい。そのおかげか、マリアが見るたびに新しい機能を備えている。最近は音楽再生機能を備え付けたらしいが一体何に使うのやら。大家からは相変わらず家賃の催促が厳しいと、時折美神の事務所に顔を出すのは変わらない。
雪之丞は変わらず放浪を続けながら修行をすると言ってどこかへ出て行ったが、それなりに名も売れたのだ。もう仕事を取るのに苦労する事もあるまい。時折ふらりと東京へ帰ってきては、弓と会っていたり横島のアパートに顔を出したりと、いつものことながら何をやっているのか、自由気ままに暮らしているようだ。
タイガーはというと、今現在エミの元で必死に修行中だ。きっと、次回のGS試験では資格を取って、見習いGSに名を連ねることだろう。相変わらずの貧乏生活だが、最近では少々エミに給料を上げてもらったのか、弁当に梅干だけでなくめざしが付くようになった。これなら、一文字とデジャブーランドにいける日もそう遠くない。
ピートは、唐巣の元で修行しながら、時折ICPOに見学を兼ねて足を運んでいるらしい。高校を卒業したらオカルトGメンに入りたいといっていたが、どうやら西条や美智恵はピートのGメン入りを歓迎しているようである。夢にまで後もう一歩、と日々修行に余念が無い。
唐巣はというと、あいも変わらず教会で裕福で無い生活を続けている。業績と実力が認められてGS教会からお呼びがかかっているという話なのだが、あの人の事だ。きっと蹴ってしまうのだろう。だが、ピートたちの薦めもあって、まんざらではないようである。「10年後くらいに閑職が空いたらね」と苦笑しながら、今日も除霊に精を出していることだろう。
そして、横島はというと―――

「えーっと、横島君も多少は使えるようになってきたし・・・GSとしての許可をあげるってのも早いかもしれないけど―――ううん、でも、やっぱ早すぎか・・・」
ぶつぶつとそんなことを呟きながら、美神は事務所の廊下をうろうろしていた。部屋の中からは横島とおキヌの談笑が聞こえてくる。
GSとしてもうほとんど一人前の横島だが、いまだ美神からひとり立ちの「許可」は下りていない。今回の件も含め、許可をおろそうかどうか考えていた美神は、しばらく黙って考えると意を決したように扉に手をかけた。
「横島君、ちょっと―――」

むにゅっ

扉を開けた瞬間、妙な感覚が美神に走る。感覚の先に目をやると、まさにジャストフィット。横島の手のひらが美神の胸を覆っていたのである。
「み、美神さん・・・これは違―――ッ!!」
「えーかげんにせんかッ!!」
「のわーッ!!」
横島の弁解もなんのその。世界も真っ青の美神の右ストレートが横島に炸裂した。
帰らぬ美神を呼ぼうとしておキヌに答えながら扉を出た横島は、あまりに運が悪かった。
まさに、最悪にも偶然なタイミングである。

「よ、横島さんッ!しっかりしてください!」
「あんたはしばらく丁稚奉公決定よッ!この馬鹿!」
「こ、こんなオチ・・・こんなオチ、俺は認めん!認めんぞー!!」

結局、変わったようで何にも変わらなかったような日常が、再び彼らに訪れた。
だが、少しずつ少しずつ時代が進んで行くように、彼らもまた進んでいるのだ。
YYKTPCという名前がいつか消えてしまう頃、彼らもきっと、今とは違う道を進んでいるのだろう。

「どーせ殴られるならもんどきゃよかったー!もんどきゃよかったー!ああっ、あの感触がまだ手にーッ!」
「黙れ変態!」

・・・進んでいる、はずである。


ま、それはまた別のお話。


―――――――――――――――――――――――――――――――――
こんにちは、Rです。
「最悪にも偶然なGS」を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
まずは投稿のミスで更新情報を混乱させてしまったことをお許しください。申し訳ございませんでした。
初心者ゆえのお見苦しい点が多々あったとは思いますが、皆様の暖かいコメントやアドバイスに励まされて完結させることができました。こちらの掲示板で作品発表ができたことを嬉しくおもいます。

当初予想していたものとは別な方向に行っちゃったかなーとおもいつつ、あんまり活躍しないGS男性陣を描くことができて楽しかったです。西条は活躍してませんが(苦笑)
GSのキャラクターは色が強いので、自分の作り出したストーリーの中で動かす難しさを実感しました。にっちもさっちもという気分になって、最後あたり敵はオリジナルにしてやろうかと画策していたのですが、やっぱりGSキャラで締めるのがスジかとおもい、童子に出てきてもらいました。勝手に設定を捏造してごめんね、童子。
あと、おまけでこの作品の元になったGS男組のイラストをひっつけてみました。少し以前の作品ですが・・・。カオスが入っていないのは、趣味ではなくスペースの問題です・・・哀れカオス。西条をカオスに脳内変換してください。

描き終わった満足感と安堵感で今はいっぱいです。またこういった作品を書くかどうかはわかりませんが、いつかまた筆を取ることができればとおもいます。
ということで、10年後も20年後も楽しく生きるGSメンバーだったらいいなと願いを込めて。
最後までお付き合い、ありがとうございました。

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