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「心眼は眠らない その73(GS)」

hanlucky (2005-06-20 03:20/2005-06-20 07:33)
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「ナイスよ、横島クン!!」

魔体が崩壊する。
断末魔の叫びは、此方にも届き、皆は、横島の勝利を祝う。
だが、勝利者である横島は突然、吐血し始める。

「横島さん!? 美神さん、横島さんに何が!?」

おキヌが取り乱しながら、美神を問い詰める。
だが、美神にも事情がわからない。

「……ねぇ、心眼。」

ならば、悔しいがこの中で最も横島を理解している悠闇に聞くしかないだろう。

「案ずるな。横島を治す方法ならある。兎に角、今は横島の元へ――」

主<横島>の助けを求める声。
アシュタロスと会話していた横島が突然、悲鳴を上げだしたのだ。

「横島!! 今、行くぞ!!」

何も考えず、テレポートをする瞬間、悠闇のテレポートは失敗に終わった。

「くっ!? 何故だ!?」
「ダメよ。あの近辺、強力な結界が張られているわ。」

ヒャクメがすぐにテレポートが失敗した理由を突き止める。
霊視の達人の悠闇が、結界に気付かない。
彼女が非常に焦っている事がよく分かる。

「ヨコシマ!?」

横島の胸部から、あの魔方陣が発動しているのが分かる。

「テレポートが無理だったら、直接行くだけさ!!」
「止めな!!」

べスパが一直線、壁を破壊してでも最短距離を突っ切ろうをするが、それはメドーサが止める。
嫌な事が起こる。
アレに近づいてはいけない。
彼女の戦場で培ってきた勘が、アレの危険性を告げていた。
よく見れば、彼女の額から冷や汗が零れているのが分かる。

「ヨコシマと、アシュ様が!?」

横島は一つの光となり、そこに一つの闇となったアシュタロスと融合されていく。

「皆さん!! 私に協力してください!!」

小竜姫が、すぐに神魔達に伝達する。
内容は、神魔達の力を、小竜姫、ヒャクメ、ワルキューレ、ジークに託す事。
数は確かに武器になる。
しかし、アレの前では雑魚が幾ら居た所で、無駄。
ならば、精鋭である強者達の力を回復させるべきだ、と。
そして、アレの正体を見極めるヒャクメが必要。

「よし!! お前達は、すぐに周囲に散らばり、結界を張れ!! ジーク!! お前も、グラムを持ったな!!」
「大丈夫です、姉上!!」

急げ、急げ、急げ。
光、闇、光、闇と輝いていき、今、そこから何かが現れる。
いや、その姿を彼らは、彼女達は知っている。

「……横島……クン?」

その姿は、確かにいつも自分にセクハラ行為を働く横島忠夫のモノ。
だが、違う。アレは違う。

「――!? そ、そん、な……そんな馬鹿な!?」

悠闇が最悪の真実に気付いてしまう。
美神も聞きたくない。
だが、逃げるわけにはいかない。
そして、悠闇に尋ねる。
”何があったの?”と。

「………………横島が……感じられない。」

我が主は、今、消えた……


――心眼は眠らない その73――


「横島クンが、感じられない? じゃ、アレは一体なんなのよ!?」

悠闇の胸倉を掴んで、横島の姿をしたのが何か? と問い詰める。
だが、分かるわけがない。
アレは、この世全ての者の理解を超えている。
理解できる領域ではない。

「知らぬ。ただ、アレは横島ではない。その事だけは……」
「何? この震動――えっ!?」

突如、大地が震えだす。
それは、新たな創造主の誕生を祝うものか?
それとも、助けを求めるものか?

「ちょっと、何よコレ!?」
「まずいっ!? このままじゃ本部が倒壊する。皆、脱出するんだ!!」

神魔達に協力を仰ぎ、この半壊した、いや、今、正に全壊しようとする本部から脱出する皆。

「ヒャクメ!! この地震の原因は?」
「……信じられないけど、この地震はあの横島さんの姿をした者が文珠を使って、起こしたものなのね。」
「こんな大規模な事を文珠で!? まずいわね……」

『敵』の強さをこれ以上にない形で示されてしまった。
わざわざ文珠を使える事をアピールして、この威力。
だが、ヒャクメは美神以上に深刻そうな顔をしている。

「美神さん、この地震。範囲がどれほどか分かる?」
「範囲? この近辺じゃないの?」

ヒャクメは首を振り、信じられないことを言う。

「この地震、世界中で起きてるのね……ここは大丈夫だけど、他では津波による二次災害もあって被害は相当みたい。」
「世界中ですって!?」

信じられない現象だ。

「正確には、この日本みたいに地震が発生しうる地域のみなんだけど……それでも範囲が桁違いよ。」

ようやく地震も収まり始めたようなので、皆は本部から少し離れた海岸沿いに着陸する。

「何より、あの文珠、横島さんが使っていたものじゃなくて――!? 皆、何か来るわ!?」

ヒャクメがあの存在から何かが、飛んできた事を報告する。
それは光の弾丸。
それを見た悠闇は、己が熱くなっていっているのが分かる。
その技は、横島のものだ。
お前が使うんじゃない、と。

「――サイキックブレット。くっ!? ふざけるなよ……」

無数の光の弾丸が迫ってくる。
例え距離があろうと、これを防げるものなど、そうは居ない。
並の神魔では防ぐ事など出来ない。

「皆さんは、私の後ろに!!」
「仕方ないねぇ……」

そう、『並』の神魔では防ぐ事など出来はしない。

「私の足を引っ張るんじゃないよ。」
「何を!?……いえ、今はそれ所じゃありませんね。あなたとの決着は後で――」
「ふん、それじゃ――行くよ!!」

だが、ここにはあの二人が居る。

「超加速!!」
「超加速!!」

メドーサと小竜姫。
互いにいがみ合っていたあの二柱がここに来て、手を組んだのだ。
そして、妨害霊波がなくなった今、彼女達を縛るものも無し。

「そら!! 一発、二発、三発……」

メドーサの刺又が、

「この程度で!!」

小竜姫の神剣が、全ての弾丸を排除する。

「これで、ラスト!!」

最後の一発も取りこぼす事もなく、余裕の笑みを浮かべサイキックブレットを全て破壊して、超加速を解除する。


「――中々、やるものだ。」
「――!? 小竜姫、後ろだ!!」
「え?」


何時の間に?
その一言が今、この場に最も相応しい。
小竜姫の後ろに現れた外法<法から外れし者>。
小竜姫はとっさに振り返りながら、剣を振るおうとする。


「また、あなたは俺を斬るのですか?」
「――!?」


剣が、敵の左肩から部分で止まっている。
思い出すのは、逆天号が妙神山に侵攻してきた時。
小竜姫は、誤って横島に重傷を負わせてしまう。
そのせいで横島はヨコシマに支配されてしまった。

「どうしたんですか? 小竜姫さま?」

小竜姫の体が震えている。
コレは横島ではない。
そんな事は分かっている。
だが、その姿で言わないで欲しい。
その声で、喋らないで欲しい。

「ご、めん、なさい…ごめん、な、さい……」

認めよう。
小竜姫は、横島忠夫という男に淡い恋心を抱いていた。
自分が見込んだ男の活躍を聞くたび、熱におかされたように舞い上がってしまう。
でも今、その男の姿をした者から、自分が最も後悔している事を攻め立てられた。

「ごめんなさい! あの時は――」
「バカっ!? 何やって――」

小竜姫の剣が敵から離れる。
その隙、あまりにも大きい。

グシャ!?

「……あ。」

彼は、私を見ていない。
ただ、なんでもない。
アリを踏みつけたように、本当に彼にとってはどうでもいい事だった。

「ふん、服が汚れてしまったな……」

腹から大量の血を流し、海へ落ちていく小竜姫。
ワルキューレが他の神魔達に指示を出して、小竜姫の救助に向かわせているが、あの傷、助かるかどうかは分からない。

「あの甘ちゃんは!!」

メドーサは超加速を発動させて、あの外道を討とうとする。
敵は、超加速を使っていない。
ならば、勝つのは私だ!!

「――!? なっ!?」

思わず、後ろに引いてしまった。
敵に刺又が届く範囲に入った瞬間、恐ろしい殺気に包まれる。
こちらの動きは見えていないはずだ。
丁寧に敵の後ろへ回り、一気に急所を狙って仕留めようとしたが、何時の間にか、敵の眼光は此方に向いている。

「……見せてやろう。」
「なっ!? 何で、お前の声が聞こえるんだよ!?」

超加速空間に入ったメドーサと会話しようと思うなら、己も超加速を発動させるか、それに相当した事をしなくてはならない。

「本当の超加速というものを見せてやろう。」
「これは!? まさか月で――」

メドーサが最後まで喋る事を許さない。
豪快な水しぶきを上げて、海面に叩きつけられたメドーサ。

「メドーサ様!?」

タマモが、すぐにメドーサの救助へ向かう。
メドーサは一度、これと同じものを味わった事がある。
月での事だ。
圧倒的有利な立場であったのが、横島の超加速の重ねがけの前に撤退を余儀なくされた。
今の敵の超加速はそれに匹敵する。
そして、それの意味する事。

(……誰がアイツに勝てるんだよ。)

いい加減認めなければいけない。
敵は……

「あぁ、そろそろ君達にも自己紹介をしておこう。私の名はアシュタロス。魔神でも、人でも神でもない。この姿をしているのは、私が彼の力を引き継いでいるからだ。」

敵は、『あの横島』の『能力以上のもの』を有している。

「といっても私は彼を乗っ取ったわけではない。あくまでこれは融合だ。光と闇、決して交わる事が許されない、矛盾融合。」

では、あの横島とは何だ?
答えは、抑止力として完成した横島。
つまり《竜》《神》《重》《韋》《駄》《天》を使用した状態。
あの神眼が使用でき、あの二重超加速が使用できるというわけだ。
そして、神魔を相手にする時に発生する神魔耐性。
これがある限り、神魔は全力でアシュタロスと戦う事が出来なくなる。
さきほども、小竜姫の精神を乱し、メドーサを殺気のみで下がらせた。

「横島に、神魔共を大量に殺させ続けた意味が、やっと出てきたわけだよ。」

では、能力以上のものとは何だ?
答えは、アシュタロスと融合する事によって手に入れたアシュタロスの超魔力。
それによって、横島とは違い、限界の見えない文珠の生成数。

「そうそう、これは私も予定外だったよ。」

何より、文珠自体の進化。

《津/波》

「何と名づけるべきかな……一つの文珠に二つの字…………双文珠。これには双文珠という名が相応しいかな。どう、思うかね諸君?」

ぶっちゃけ、今はそれ所ではない。
美神達は迫り来る強大な津波から、避難するために本部から脱出したみたいに神魔達の協力してもらっていた。

「ふ〜〜……醜いな。たかが、この程度の事で大騒ぎとは……」

ちょうど今、上空で停滞しているアシュタロスの下を津波が通過する。
そして、海水は、全てを飲み込んでいく。

「そういえば、これを忘れていたな。」


《妨/害》《霊/波》


再び、閉じられるチャンネル。
これで、神界、魔界からの援軍は消えた。
いや、今、美神達の傍に居る神魔達の供給源すら絶たれてしまった。


「貴様らには、後々、私が有効利用してやるから、今は黙って見ておけ。」


殺すのは簡単だ。
だが、この状況になった今、もっと有効利用すればいい。

「……よかったよ。これで終わりでは、準備運動にもなってなかったからね。」

アシュタロスの視線の先には、津波から逃れた美神達が居た。
その場所に下りていくアシュタロス。

「……いい? よく聞きなさい!! 私は、あんたを横島クンとは見てないわ! そんな姿をしてあげようが……いいえ、そんな姿をしているからこそ――必ず、極楽へ行かしてあげる!!」

美神の叫びは皆に、士気を取り戻させる。
相手は究極を越えた存在だ。
今、自分達はそんな理解不能な者へ挑もうとしている。
だが、小竜姫を、慕っている女性を、傷つけた。
横島の姿でそれを行った以上、許すわけにはいかない。

「威勢がいいね……お前達もそちら側なのかい?」

アシュタロスは、三姉妹の方を向いて、優しく言う。
今、戻ってくれば許そう。

「…………私は……アシュ様、あなたは、最初からこのつもりだったのですか?」
「最初から……何がかね?」

ルシオラがギリっと歯をかみ締める。
コイツは分かっててやった。
今も、自分をからかう為に惚けているだけだ。

「あなたは、最初からヨコシマと融合するつもりだったのって聞いているのよ!!」
「当然だろう……全く、我が娘でありながら、気付くのが遅い。所詮は――道具だな。」
「っ!? うわぁぁぁあああああ!!!」
「ダメよ!! ルシオラ!!」

弾ける。
美神の制止も意味は無い。

「返して!! ヨコシマを――ぐっ!?」
「姉さん!?」
「ルシオラちゃん!?」

アシュタロスが、力を解放した瞬間、ルシオラは跪くように、アシュタロスの前に倒れこむ。
これは、神魔耐性と、親であるアシュタロスが持つ、三姉妹への強制力。
つまり、三姉妹ではこのアシュタロスとは戦う事すら許されないという事だ。

「下らんな……気持ちだけで、何が出来る?」

アシュタロスが栄光の手で、ルシオラを斬首する瞬間――

「――邪魔をするな。失敗作を自らの手で消すだけなのだから……」
「そうはさせないでござるよ!!」

シロの八房がそれを防ぐ。

「下がって!!」

シロと交代して美智恵が、悠闇から今、借りた竜の牙を剣に変えて、振るう。
それをアシュタロスは、栄光の手で防ぐ。
だが、即座に美智恵は左手に握っていた精霊石を発動させる。

「隊長どの!?」
「美智恵どの!?」
「ママ!?」

普通の人間ならば、死んでいる。
アレは横島ではないが、横島かもしれないのだ。
それを躊躇なく殺そうとする。

「いいね。私の部下に欲しいぐらいだよ……」
「そう簡単にはいかないっていう事ね……」

どうやら、見た目は横島でも、その全身を覆っている超魔力が、精霊石の爆発を無効にするらしい。
だが、横島の姿をした自分を躊躇いも無く殺しに来た美智恵を高く評価するアシュタロス。

「甘い考えは捨てなさい!! この敵を前に殺さない事を考えていたんじゃ、絶対勝てないわよ!!」

正論だが、アレには横島がいるはずなんだ。
アシュタロスを殺せば、横島も殺す事になると考えるのは当然。

「……あなた達なら、出来るわよね?」
「仕方ないわね〜。汚れ役は私がするわよ……」
「俺は、コイツが嫌いだから大歓迎だぜ!!」

美智恵は、横島とあまり縁のない勘九朗と、陰念を自分のサポートにつける事にする。
横島と縁が深い者達では無理だ。
美神も先ほどは、あんな事を言ったが、実際に横島の姿をした、いや、横島の魂があの中にあるはずなのだ。
それを殺す事など出来はしない。

「……よく考えなさい。私達がやらなくちゃいけないの。彼の姿をした、彼の能力を秘めた者が、私達を殺した事に気付いた時、彼はどう思うかしら?」
「そ、それは……」
「虫のいい話だけど、彼を救う方法は、もう、倒すことだけよ。令子、あなたが彼を解放してあげなくちゃいけないのよ?」

美神は横島の姿をした者を見る。
アレを倒した時、横島も消える。

「いやよ……」
「え?」

ふざけるな。

「横島には、私の下で、まだまだ働いてもらわなきゃいけないのよ!! だから、勝手に決めないで!!」

そうだ、勝手に決めるな。

「あのバカがそう簡単にくたばるもんですか!! とっととアシュタロスを倒して、引きずり出してやるわ!!」

倒すのは、アシュタロスのみ。
それがどれだけ難しいかなど関係ない。
出来るかどうかではなく、やるかやらないか。
まずはそれからだ。

「よく言った、美神どの……」
「心眼……」

美神と悠闇がハイタッチをするように、手を叩く。

ぱんっ!

それが、戦闘再開の合図だ。

「だったら、勝手になさい!! 私は、私のやり方でいくだけよ!!」

そう言いながらも娘の成長を喜ぶ美智恵。
娘は自分よりも険しい道を選んだ。
それが嬉しい。

「シロ、ピート、マリアは私のフォロー! 心眼は勝手に動いて!! 他の皆は、援護を!!」

この場で、接近戦ができ、連携を組める者を選び美神はアシュタロスへ向かう。
テレサも接近戦が出来ないわけじゃないが、この面子では厳しい上、連携が取れない。

「あなた達は、私の動きに合わせて、挟撃を!! 出来るわね!?」

右から美智恵チーム。
左から美神チーム。

そして――


「僕らも忘れんなや!!」
「横島の姿をしてようが、手加減はしねえぞ!!」


最高の援軍。


「まずは、私からよ!!」

アシュタロスに一番早くたどり着いたのは、美智恵。
剣から、槍に変えてなぎ払う。

「牽制か……」

それを易々かわして、美智恵に接近するアシュタロス。

「くっ!」

だが、追い込まれる前に、勘九朗と陰念が左右から霊波砲を放つ。

「遅いな……」

回避するアシュタロス。
だが、今度は美神達の番だ。
接近戦ならお任せと、シロの斬撃から始まり、美神の神通根を鞭にしての攻撃と、ピートのダンピール・フラッシュ。
止まらない。
GSチームは一気に畳み掛けようと、続けて雪之丞と鬼道が攻めてくる。

「魔槍術、発動!!」

だが、ここに来てアシュタロスの足が止まる。

「うぬぼれるなよ?」

魔槍は、アシュタロスを肩を貫こうと迫る。
だが、アシュタロスはそれを掴み――

「力の差を考えろ。」
「がぁぁぁああ!?」

――ねじ切る。

あまりの激痛にその場に倒れこむ雪之丞。
鬼道は、あえてそれを無視してアシュタロスへ向かう。
今の勢いを止めるわけにはいかない。

「憑依・夜叉丸!!」

夜叉丸を憑依させ、霊波刀を構えて突破してくる。

「そんな、直線な攻撃が決まると思っているのか?」

栄光の手を伸ばして、鬼道を貫く。

「それは分身や……」
「知っている。」

《入/替》

鬼道の式神と、鬼道本人の状態を入れ替える。

「ごふっ!?」
「まーくん!?」

鬼道の式神は、腹を貫かれていた。
つまり、その状態を鬼道が引き継いだ事になる。
そして、倒れこむ鬼道を見せられ、冥子の精神が不安定になっていく。

「結界が隙だらけだぞ? いいのか?」

ゆっくりと後衛の方を向くアシュタロス。

「つまらんな、準備運動の相手にぐらいなると思ったのだが……まぁ、もう少し遊ぶか。」


《煙/幕》


周囲が視界ゼロの状態になってからも、アシュタロスはさらにもう一つ、双文珠を使用する。


グサッ!?


途端、誰かが、アシュタロスの位置に居た誰かを、絶命させる事に成功する。
倒れこんだ者の胸からは、剣が生えていた。

「はぁ、はぁ、余裕を見せすぎよ。」

その後ろから現れる実知恵。
どうやら、槍から剣に変えて剣を投げつけたらしい。

「……? 思ったよりもあっさりしているわよね。」

美智恵が倒れこんだ者へと近づいていく。
地面は赤い。
人の血だ。

「え……?」

それはアシュタロスではない。

「な、なんで、よ……」

倒れている者は、既に絶命している。
取り返しはつかない。
自分の手で、やってしまった。

「嘘よ!! なんで!? なんで!?」

このコを生かすためなら、何だってやった。
自分の命だって惜しくなかった。
なのに……


「いやーーー!!!」


自分は今、娘を殺してしまった。


《悪/夢》


「少しは、遊べたかな?」


アシュタロスは、足元で気絶している美智恵を尻目に次の玩具を選ぶ。


ザァァァンッツ!!


煙幕の中から出たアシュタロスを襲う衝撃波。
その衝撃は、地面を抉り、アシュタロスを喰らおうとする。

「――!? 魔剣グラムか……」

だが、サイキックソーサーを張り、容易く防御に成功する。

「皆の力は俺が受け取った。」

全ては、魔族は、賭けに出てジークとワルキューレに魔力を託した。
ベレー帽を捨て、完全に軍人モードのジーク。

「後ろは任せろ。お前は唯ー―前だけ見ろ!」

神魔耐性がある以上、全力は出せない。
だが、それがどうした?

「貴様は俺が止めてみせる。行くぞ!!」


――心眼は眠らない その73・完――


あとがき

まずは、双文珠という名ですが、数々のSSを見て、これが一番語呂があっているなと思いましたので、それに便乗させて頂きました。
次々と脱落者が出て来て、戦いは終結へ向かっていきます。
最後の勝利者は、アシュタロスか、それとも人間達か……それはまだ分かりません。

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