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「世界はそこにあるか  第15話 (GS)」

仁成 (2005-06-19 01:01/2005-06-19 01:17)
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香港にある、とある屋敷。


メドーサは勘九郎からの報告を電話で受けていた。


「申し訳ありません、メドーサ様。針の奪取に失敗しました。
ですが奴らは必ず針を持って、香港にやってくるかと……」


勘九郎は日本での顛末を説明する。


「そう、残念ね。まあ、針がやってくるんならいいわ。
GSどもには怨みもあるし、こっちで私がじきじきに奪ってやってもいい。
お前もすぐに帰ってきなさい。
奴らが来るまでにこっちまでに、準備を抜かりなくしてしておきたいから」


「分かりました」


メドーサは電話を切ると、これからのことを考えながら、いすに深く座る。


妨害があるとは思っていた。

彼女がやっているのはそれだけのことだからだ。


だがその相手が裏切った雪之丞で、さらに今回の計画のキーとも言える針を奪われるなど、思ってもいなかったことだ。


さらに勘九郎が言うには、雪之丞が倉庫で針を奪うときに手助けをした、少女のようなものがいるらしい。

まだ実力のほどは不明だが、勘九郎が後れを取るのだから、水準以上のものがあることは容易に想像できる。


そして小竜姫。


彼女のことを考えると、メドーサは治ったはずの首筋がずきりと痛んだ。


雪之丞が日本のGSたちを頼ったのなら、GS試験で勘九郎を退けた、横島とかいう奴も来ることだろう。


そうなれば小竜姫もまた絡んでくるかもしれない。

彼女はなぜだか知らないが、あの男に御執心のようだ。


今進行している原始風水盤の計画が成功すれば、メドーサにとって小竜姫など恐るるに足りない存在である。


奴の首だけは自らの手で必ず落としてやる。

そう思っているのだ。


「もうすぐよ……。
まもなくアジア全域で、神族と魔族の勢力図が完全に書き換えられる……!」

メドーサはそう言って、邪悪に口を歪める。


その呟きを聞いて、彼女の側にいたものも、にやりと邪な笑みを浮かべた。


世界はそこにあるか  第15話


美神たちはまず唐巣の教会にやってきていた。

教会の中に入ると、そこはまさにぼろぼろだった。

いすもぼろぼろに破壊されているし、十字架も落ちてしまっている。

唐巣の部屋のタンスや、机も滅茶苦茶に荒らされている。

まさに家捜ししました、と言った感じだ。

さらに教会の中央には、石で固められた唐巣が立っていた。


「先生……」

美神が呟く。

実際に襲ってきたときにその場におらず、結果だけを見てしまえば、彼女でも言葉を失ってしまうのだろう。

「……いったい何があったの?」

美神の質問にピートが答えていく。

唐巣とピートが教会に帰ると、中が荒らされていた。

教会に金目のものはないはずなので、しばらく何があったのかを探っていると、雪之丞がやって来て、さらに勘九郎がゾンビをつれてやって来た。

唐巣が事の重大性と、教会を調べているときに隣の人が持ってきたものの重要性を、すぐさま認識し、彼がおとりとなり、二人を逃がしたのだ。

素晴らしい判断力と、それを実行する実力である。

だがその結果、土角結界で固められてしまったのだ。

「さすが神父っすねー」

横島が本当に感心した表情で言う。

「それでその針を持って来いって言ったのね?」

「はい。唐巣先生を治したければこれを持って、香港に来い、と。
逃げるときに後ろから聞こえてきました」

それを聞いて美神はこれからのことを考える。

「じゃあ、とりあえず香港に行くわよ」

「今すぐにっすか?」

美神の言葉に横島が尋ねる。

あくまでバイトとしてのものだ。

「ええ。無駄に行くのを遅らせて、事態が悪化しないとも限らないし。
とりあえず準備だけはしっかりするつもりだけど」

その言葉を聞いて横島も考える。

彼女の意見は今としては妥当なものだ。

彼は最初から人数を集めてと、計画していたが、この流れではどうも難しい。

エミのことを出しても、美神が難色を示すだろう。

幸いというべきか、成り行きからか冥子と鬼道がここにいるので、二人が行くなら人数的な問題は一応ないと言える。

カオスがいないのは万が一を考えると、少し不安ではあるが、ここでカオスの名前を出す必然性がないし、普段の彼から役に立つとも思われないだろう。

それにあまり余計なことを言い過ぎて、彼女に不信感を持たれてしまっては、それこそ元も子もないのである。

そこで思考を中断する。

彼は基本的にオプティミストなのだ。

美神の用意が――他の者はこれといって準備はなかった――終わると、空港へ行き、香港へと飛び立つのだった。


「ほんこんって空港ってとこにそっくしですねー」

おキヌが相変わらずお約束を言っている。

美神たちは香港に到着していた。

やはり冥子と鬼道も一緒にやって来ている。

都合がいいと言えば都合がいいのだが、横島は、なぜこんなところまで来たのか、聞いてみることにした。

「令子ちゃんが〜行くんだから、私もお手伝いしなくちゃ〜〜〜」

ある意味予想通りの答えを残し、さっさと美神のほうへ行ってしまう。

着いて早々彼女に絡まれて、美神も苦笑いを浮かべている。

「うーん……、まあ成り行きっていうんが一番多きいんやけどな。
でも、美神さんが言うとったやろ? 本当に命も惜しまず誰かに復讐するっというんはつまりああゆうことや。
でもボクがしたかったんは、そういうこととちゃうって気付いてん。
ただ十二神将でぼこぼこにされたんが悔しくて、見返したかっただけやねん。
それやったら、今の自分の未熟さを自覚して、もっと精進して彼女以上の式神使いになったろう思てな。それが復讐にもなると思うし」

実際は復讐なんて事はほとんど考えていないのだろう。

かなりさばさばとした表情だ。

横島はこの言葉を冥子にも聞かせてやりたかった。

頼むから自分の未熟さを理解して、十二神将をきちんと扱えるようになって欲しい。
失敗を分かち合える者がいればいいというものではない。

それにしても美神はここまで考えていたのだろうか。

きっとそうだろう。
あれが本気だったら怖すぎる。

「雪之丞、これからどうするの?」

空腹に耐え切れなかったのか、空港でソバをすすっている雪之丞に美神が尋ねる。

日本でふらふらだったのは、空腹と、睡眠不足からだったようだが、そっちの方は飛行機の中で寝て、ある程度解消されたようだ。

ソバはもちろん美神が買ってやったものである。

「ん? こっちに来てるはずなんだが……」

そう言って雪之丞は辺りをきょろきょろと見渡す。

すると人ごみの中に一人の少女を発見する。

その少女は、<歓迎 美神御一行様>と書かれた紙を持ち、これからの期待を押さえるかのように、無表情で立っている。

「おい!」

雪之丞が少女に呼びかける。

その声で、少女も美神たち――少女主観では横島たちだが――も見つけ、たちまちその顔を喜色に染める。

「横島!」

少女は横島に駆け寄ると、抱きつき、その胸に顔をうずめた。

横島も両手を広げて、少女を迎える。

「大丈夫だったか、タマモ?」

「うん!」

タマモは横島を下から見上げながら答える。

戻る前の彼女ならこんなことはまずしないだろうし、横島も簡単には受け入れられないだろうが、今の彼女は少女である。

こういう行動は少女の特権なのだ。

「ちょっと、誰よ!?」

美神が少し声を荒げる。

自分が置いていかれているような気がして、不機嫌になっているのだろう。

断じて横島に美少女が抱きついているからではないはずだ。

「あれ? タマモちゃん!?」

おキヌが声をあげる。

「何? おキヌちゃん知ってるの?」

彼女の機嫌がさらに悪くなる。

事務所のメンバーで自分だけが知らないと知れば当然だろうか。

「はい。この前横島さんの部屋に行ったときに、いたんですよー」

一応彼女はタマモに会っている。

「えぇっと……、タマモは俺の娘なんですよ」

「はぁっ!!!?」

全員の声が重なる。

タマモ自身も、ちょっと何言ってんの? といった顔だ。

「俺も最近知ったんですけど、実は俺が大阪から引っ越すときに、近所に住んでいたお姉さんに『思い出をちょうだい』とか言われて犯されたんですよ。その時できたのがタマモらしいっす。
いやー、あの時は大変だったなー」

やけに生々しいことを、簡単に言う横島。

「ちょっと! それホントなの!!?」

美神のこの言葉がその場にいた者の、気持ちを代弁していた。

「いや、冗談っす」

あれだけのことを言っておきながら、あっさりと言う。

実際タマモの外見年齢を考えれば、少し計算が合わない。

「冗談に聞こえんわぁぁぁぁーーー!!!!!」

美神の拳が横島にめり込み、吹っ飛ばされる。

事実、小学校時代の彼の姿は、あっち方面のお姉様方には堪らないものがあったであろうことは少し想像できる。

美神がそのことを知っているかは定かではないが。

それにしても空港の中でこれだけ騒ぎ、人が吹っ飛ばされたのに、周りを通る人々はほとんど無関心のようだ。

おそらく、こいつらには関わってはいけない、という空気が出ているのだろう。

『あの空気の中で、自分から地獄に歩を進めるとは……。
さすが横島っ! 俺達にできないことを平然とやってのけるっ! そこに痺れる! 憧れるうぅ!』

「ありがとな……」

そう言って横島は満足そうに意識を手放す。

ギャグモードの彼の意識を刈り取るとは、恐るべし美神の一撃。

だが彼のネタが、心眼のツッコミに食われているような気がするのは、気のせいだろうか。

彼が満足して眠ってよかったのか、甚だ疑問である。

美神たちは横島を回収すると、雪之丞の案内で香港の中心部に向かった。


美神たちは椎名大飯店で食事を取りながら雪之丞の話を聞き、これからのことについてを話し合っていた。

雪之丞が何をしていたのか。

あの針の秘密と、メドーサの計画。

タマモが小竜姫の知り合いの妖怪だということもここで話しておく。
嘘ではないし、本当のことを言っていないわけでもない。

「まず二つのチームに分けるわよ。
メドーサのいるところに乗り込むほうと、ホテルで針を守るほうね」

至極当然の意見に、全員頷く。

向こうの思惑が読めた以上、馬鹿正直に針を持っていってやる必要はない。

唐巣にしても、今すぐどうこうなるわけではないのだ。

「でも、どうやって分けるんですか?」

ピートが尋ねるが、もっともだろう。

このチームの編成が今回の作戦が成功するか否かの、大きな鍵の一つであることは簡単に分かることである。

「とりあえず、冥子はホテルで針を守ってちょうだい」

「え〜〜、私は令子ちゃんと一緒がいいわ〜〜〜」

美神がホテルで針を守る組に入るとは到底思えないので、冥子は不満を漏らす。

「出てくるのは、おそらくゾンビよ。それでもいいの?」

美神がそう言うと、それは嫌だったらしく、おとなしく従った。

ホテルで守るにしてもいても、襲ってくるかもしれないのはゾンビであろうということは、彼女には黙っておく。

彼女を置いていく理由は、狭い地下でプッツンされては堪らないからである。

確かに彼女のプッツンは威力が高く、使いようによっては切り札的に使えるのだが、いかんせんリスクが高すぎる。

作戦に組み込めないのだ。

ついでに言えば、彼女のプッツンが役に立ったことは今までにない。

「じゃあ、ボクも残ろか」

鬼道が言うが、誰も異論はない。
むしろ残ってくれてありがとう、といった感じだ。

元々冥子は万能であるし、式神使い同士で組んだほうが効率もいい。

「二人も残ればいいんじゃねーか?
メドーサとか勘九郎とかの強敵は向こうにいるだろうしな」

雪之丞は早く行きたいのだろう。

確かにメドーサが今原始風水盤の側を離れる可能性は低いし、それならば乗り込むほうに多くの戦力を割いたほうがいい。

それにもしメドーサが来たら、人数は関係ない。

「私からもいいですか?」

タマモの持っていたツノが、突然小竜姫の姿になった。

「小竜姫さま!?」

「ああ、こいつが一応俺の依頼人なんだ」

雪之丞が説明する。

「それで、タマモも雪之丞を手伝ってたわけね」

全く接点の浮かばなかった二人が、一緒に調査していたことにこれで納得する。

「はい、土地カンや能力を考慮した結果、私が雪之丞さんに依頼したんですが、皆さん方ではメドーサを倒すのは少し難しいと思います。
そこで私を、メドーサのところに連れて行って欲しいんです。
妙神山に括られている私は、香港での活動時間が極端に短いですから」

全員が頷いた。

「具体的には、乗り込んだら勘九郎やゾンビが出てくると思いますので、皆さんにその相手をしてもらって、横島さんに運んでいただくという……」

「ちょっと待ってよ!?
確かにこいつは強くなったけど、そんな危険なことやらせられないわ!
運ぶなら私が……!」

美神がすぐさま反論する。

先日のハーピーとの戦いもあるし、美神は横島が成長し、強くなったことを認めていないわけではない。

だが、アルバイトで見習いである彼にそんな役目をやらせるなど、彼女の自尊心が許さないし、何より危険だ。

「私がこの中で、一番戦力を正確に把握できているのが彼だからです。
それに美神さんが離れてしまえば、他の人はまだGSになって日が浅いですから、万が一のとき対応できない可能性があります。
それと危険を言えば、彼は誰とも戦わなくてすむかもしれない、一番安全なポジションとも言えますから」

「大丈夫っすよ、美神さん。そんないいポジション他人には譲れないっす」

横島にまでそう言われては、美神は何も言えない。

小竜姫が言うことももっともだからだ。

ピートも雪之丞も実力は確かに十分であるが、最近GSとなったばかりであり、経験不足の感は否めない。
横島は言わずもがなである。

タマモの実力もまだ分からない。

そして神族である小竜姫が提案したのだから、これ以上我を通すのなら、これを超える意見を出さなければならない。

それとチーム分け以上に問題だったのは、どうやってメドーサと戦わずに原始風水盤を壊すのか、ということだった。

それが彼女の登場で解消されている。

美神にしても、まあいいか、という気持ちがないわけではなかった。

「話もまとまったみたいだし、さっさと行こうぜ」

雪之丞が席を立ち、皆を促す。

「私は少し別行動取らせてもらうわ」

タマモも立ち上がる。

「何するつもりだ?」

「うーん、何かするかもしれないし、何もしないかも……」

そう言ってタマモは店から一人で出て行くが、横島もそれ以上は何も言わずに、彼女のうしろ姿を見送った。

タマモは団体行動が得意なわけでも、好きなわけでもないが、この場面で意味無く一人で行動するとは思えない。

タマモのことは置いておき、とにかく雪之丞の運転する車に乗り、メドーサのもとへと向かうのだった。


美神たちは事前に調べていた侵入ポイントにいる。

前のようにピートともう一人しか乗り込めない場所ではなく、横島から聞いていたタマモが全員で侵入できる場所を調べてある。

「行くわよ!」

美神の言葉に全員が乗り込む。

ここで横島は人生を考えるような出来事にあうのだった。


冥子と鬼道の二人はとあるホテルの部屋に入った。

すぐに冥子は大きなベットに飛び込む。

「そんなんしてへんで、とりあえず結界でもはらんと……」

鬼道が真面目に言う。

彼はなかなかに責任感の強い男である。

「その必要は無いわ……」

その声に入り口のほうを見ると、一人の女性が立っている。

「あ〜〜〜! メドーサ〜〜〜!!!」

「なっ!!?」

冥子の言葉に鬼道は驚愕する。

いくらなんでも早すぎるし、タイミングが良すぎる。

見張っていたのなら、いくら彼女であっても、心眼が気付くはずである。

実はメドーサは、香港の主要な場所、ホテルなどにあらかじめゾンビを張り付かせ、報告をさせていたのである。

「あんたはGS試験にいた女だね。そっちのは始めてみる顔か……。
まあいい。そこにあるものを渡しなさい」

二人は身構える。

「たとえ勝たれへんとしても、ボクもこれを任された以上、簡単には渡されへんな……」

メドーサの発するプレッシャーに押されながらもそう言う。

たとえ守りきれないにしても、多少の時間を稼がねば、と考えていた。

「クズが……! 調子に乗るな!!」

メドーサが二人に手をかざすと、呪縛により動けなくなる。

「ぐっ……!」

メドーサは動けなくなった二人を尻目に、針を回収する。

「とりあえず、今は殺さないであげる。
これから起こる絶望の中で殺してあげるわ……」

そう言うと、メドーサは部屋を出て行った。


針――奪取される。


あとがき
面白い作品を読むと、創作意欲が上がりますが、だからといって私の書くペースはなかなか上がりませんし、もちろん話の質が上がるということもなかなかないものです。
そのズレというが……、どうなんだろうw まあ戯れ言です。
というわけで、15話です。
今回はいろいろ詰め込んでみましたが、どうでしょうか。

この話が遅れたワケwは『かつて見た夢』という話で書いたわけですが、とある事情であの話は削除しました。
まあ美神事務所の三人を中心におくというコンセプトは気に入っているんですが。

次回で香港編はおそらく終わりです。

今回も読んでいただきありがとうございます。


>高足蟹さん
心眼に関しては擬人化マダー? といった感じですが、あの人のイベントも一応考えています。いつになるかは……w


>casaさん
いやいや、時給ですよ!w そこまで無意味に彼をいじめませんって。
10中12ってすでに確定!? いやけろってしてたけど。


>通行人Aさん
偽者呼ばわりとかそういうのは分かりませんが、彼が美神の荷物もちのバイトであることは変わらないので、時給でもおかしくないかと。


>柳野雫さん
親父は泣いて田舎に帰りましたw 出番無かったし。
鬼道も巻き込んだんですが、針奪われちゃいましたね。


>響さん
美神の言葉も一応考えていわれたんだと思います。
やっぱりさすがに……。


>文・ジュウさん
毎食カップうどんっていうのは凄いですねー。
常に一緒ってどういう感じなんだろ?


>ヴァイゼさん
感動的? ラブラブ?
どうなんでしょうw


では。

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