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「除霊部員シリーズ幕間話 「北海道夜話」(前編 死闘!温泉卓球!) (GS+オリ)」

犬雀 (2005-06-10 16:02)
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『死闘!温泉卓球!』


霧香たちに案内されて横島たち除霊部員一行が着いたのは、稚内市からかなり離れたところにある貸し別荘だった。
その外観は古びたとは言え旅館にしか見えない。
怪訝そうな横島に霧香はにっこりと笑うとここが元民宿で廃館になったものを貸し別荘としたものだと教えてくれた。

なるほどと納得し木で出来た門をくぐった横島たちはビシリと石化する。

なぜなら彼らの前に立っていたのは二本足で立つ羆と大きな狐だったのだから。
無論、横島は二匹が神様の化身であることは理解しているのだが、さすがに割烹着を着て立つ羆とピンクのフリフリエプロンをつけて顔を真っ赤に染めているキタキツネに出会えば驚くなという方が無理だ。

だけど驚かない人もいる。っていうかむしろ喜んだのは誰あろう、動物大好きお姉さんの魔鈴さんである。

「あー!熊さんだぁ!」

言うなり満面の笑みを浮かべて割烹着の羆に飛びつく魔鈴さん。
よほど昼間のあざらしショックがでかかったのか、微妙に退行している気がしないでもない。

美女に抱きつかれその広い胸板に頬ずりされて、羆は困ったようにその鋭い爪でポリポリと頬を掻いた。
そんなことは気にせずに巨大な羆に顔を埋め、ベアハッグをかますかのように抱きつく魔鈴さん。なんだかとっても幸せそう。

だがそんな彼女の幸せも長くは続かなかった。

「久しぶりだなタダッチ」

頭上から聞こえる困ったような野太い男の声に魔鈴さんの体がピシリと硬直する。
首の関節を軋ませて上を見れば、クマさんはいつの間にか「どうしたもんか?」と頭を掻いている髭面の大男と変わっていた。

「あ゛う…」

涙腺の堤防が決壊したことを自覚する魔鈴さんに更に横から追い討ちがかかる。

「待っていたぞ横島殿」

ダクダクと涙を流しながら隣を見れば、ピンクのフリフリエプロンつけた渋めの中年おじさんが立っていた。

「あ、アハハハハハ、あはははははは、あは、あーっははは…」

魔鈴は抑揚のない声で笑うと横島たちの方にゆっくりと振り向きパッタリと倒れた。

「あーっ!魔鈴さん!!」

慌てて気絶した魔鈴を抱き起こす横島たちに不思議そうな顔をしていたキムンカムイが霧香に尋ねる。

「なあ…この娘どうしたんだ?」

「聞かないであげて…」

霧香は懐から取り出したハンカチで目元を拭った。


気絶した魔鈴を一室に寝かせて、一同は元は宴会場と思われる広い部屋で互いを紹介しあう。
先ほどのトッカリやユクやモモなどを見ていたせいか熊の神やキツネの神と言われても違和感は湧かないようである。
魔鈴さんのは…動物好き故の悲劇であろう。
それはそうとして気になることがある横島。

「ところでその格好はなんすか?」

「ああコレか?お前たちが来るって言うからここを掃除しといたんだぜ。」

確かに振り返ったキムンカムイの視線の先にはホウキや塵取りを持った羆や、雑巾がけをしていたのかバケツを持ったキツネがうろうろしていた。
その中には小熊や小狐もいてヨチヨチと窓の桟を拭いていたりする。
魔鈴に意識があれば狂喜して写真を取り捲っただろう。

一服した一同に疲れの色を見たのか、気遣わしげな様子ながらキムンカムイが横島の肩を叩いた。

「んじゃ飯の買出しにいくか…トーコロ、車のキーを貸せ。おいタダッチ付き合え。」

「あ、いいっすよ。」
「僕らも行こうかタイガー」
「ジャノー」

「あ、でしたら私たちは食事の準備しますね。」

霧香の言葉に頷く少女たち。
こうして買出し部隊と食事準備部隊とに分かれることになったが、誰もキムンカムイとシュマリが少女たちにちらりと申し訳なさげな視線を向けたことに気がつかなかった。
そう…食材も無いのに何の準備があるのだろうと言う疑問さえ沸かないほど自然な流れゆえに…。


横島たちを乗せた4WDを見送って、さてどんな準備があるのだろうと霧香の指示を待つ少女たち。
しかし霧香は笑顔で少女たちをそれぞれの部屋に案内した。

「えーと…魔鈴さんは引率者ですから一人部屋で。他の女の子達はおっきな部屋にみんな一緒で良いかしら?」

特に異存はないが気になることが一つ。
愛子が霧香の前に進み出る。

「天本先生はどうしますか?」

「あの方はお加減が悪いようですね…離れで休んでいただきましょう。草木の神々を呼びますからお体にも良いと思いますよ。」

それならば問題は無いと引っ込む愛子に代わってシタっと手を上げるのはアリエス。

「霧香様たちはどちらでお休みですの?」

「私たちは適当に寝ますから…」

「うん。モモたちはいっつも外で寝ているもんねー。」

「ふふふ…気にしないで…」

そして三人は顔を見合わせると「「「ねー」」」と声を合わせて頷きあう。
その様子はいかにも事前に何かの打ち合わせをしていたように見えて少女たちに嫌な予感が走る。
だがここは相手が用意して掃除までしてくれた宿だ。
文句も言えず一抹の不安を感じながらも納得するしかない。


食器や炊事道具の点検を終えても横島たちは帰ってこない。
買い物の量が多いのか店が遠いのかのいずれかだろう。
天本は一室に敷かれた布団で休むことになり、霧香に呼ばれた草木の神々たちが天本の眠る離れの周囲に集まって簡単な結界を張った。
森林浴のような効果があるのか、はたまた彼らの霊力なのか天本の顔色も随分とよくなり今は夕飯まで仮眠をとっている。

対照的にどんよりした顔で起き出してきたのは魔鈴。
なんていうか…もう世の中すべてに絶望しましたと言うか、デパートの屋上の戦隊ヒーローショウを見に行って、つい楽屋に忍び込んだ子供が桃色の戦隊ヒロインの中身が禿げたおっさんであることを知ってしまったような顔をしている。って…そのまんまだが。

そんな魔鈴にいたわりの視線を向ける少女たちに霧香が突然、奇妙な提案をしてきた。

「えー。ではお風呂なんですが…ここは露天風呂が二つあります。一つは殿方に使っていただくとして、もう一つは私たち女性陣が交代で入りたいと思うんですが…宜しいですか?」

霧香の口元が一瞬だけ邪な形に歪んだような気もしたが特に異存はないから頷く一同。

「では順番ですが…横島さんと同じ時間に入浴するのは私とモモちゃんとユクちゃんということで…」

「待って下さい!」

咄嗟に待ったをかけたのはおキヌである。
なんとなく嫌な予感がしたが「横島さんと同じ時間」というところでそれは確信に変わったようだ。
霧香の横ではモモとユクが「アホ〜」といいたげな顔で霧香を見ている。

「横島さんと同じ時間ってどういう意味でしょうか?」

「え?あはは…えーと…深い意味はありませんよう。けっして壁を壊してなし崩し的に混浴にしちゃおうとか考えてませんから〜。当然、そのついでに目くるめく官能の世界になんてかけらも考えてませんよ〜。」

パタパタと手を振って誤魔化そうとするが本音がダダ漏れになっている。

「そんなことを考えていたんですか…」

「ふふふ」と含み笑いを漏らしつつユラリと近寄ってくる少女たちに「ひっ」と怯える北海道の神様たち。やはり自然神、策を巡らすのは苦手だったようだ。

「そんなことを許すわけにはいかない!」と詰め寄ってくる少女と魔女の迫力に神様たちも恐れをなしたか「それでは…」と提案してきた。

「えと…でしたら…卓球で勝ったチームに混浴権が与えられるってことでどうでしょうか?」

いつのまにか混浴は決定事項になったらしい。

「卓球ですか?」と聞く魔鈴に霧香はぐっと拳を握って答えた。

「はい!ここはやはり正々堂々とスポーツで決着をつけるのが正しいかと!温泉とスポーツと言えばやはり「卓球」!、幸い道具も台もありますし卓球ダブルスでなら公平ではないかと!」

「つまり勝ったチームが混浴権を手にすることが出来るというわけですね…いいでしょう受けて立ちます!ね。皆さん!!」

「「「「おーっ!!」」」」

一斉に手を上げて魔鈴に賛同する少女たち。それぞれの頭の中ではなにやら妄想が沸き起こっている。

(「小鳩ちゃん…君の胸はなんて柔らかいんだ…」、「あん♪そんなに触らないで下さい横島さん」)…触られるのは確定か花戸小鳩?

(「愛子…なんて美しい足なんだ。4本とも素晴らしい輝きだ…」、「いやねぇ。そんなにジロジロ見ないで♪」)…やはり本体を誉められるのも嬉しいのか愛子?

(「魔鈴さん…僕はこんな綺麗な大人の女性にずっと憧れてました…」、「ああ…横島さん…私みたいな年上でもいいんですか…うれしい」)…さすがは大人のお姉さん。そのちょっと耳学問ぽい妄想が具体的過ぎです魔鈴さん。その何かを握るような手つきは危険ですから止めてください。

(「おキヌちゃん…君はまるで野菊のようだ…」、「忠夫さん…わたし嬉しいです…」)…そのシチュエーションは混浴でないほうが似合うと思うぞおキヌちゃん。

(「あははは。忠夫様〜。追いついてごらんなさい〜。」、「待て〜」、「追いついたら挟んであげますわよ〜♪」)…清々しいんだか生々しいんだかわからんぞアリエス・ド・カパヌール10世。それより風呂で走るつもりかお前は?

(「ああ、唯ちゃん君は人魚のようだ…」、「うふふふ。泳ぎは得意ですぅ」)…風呂で泳ぐな天野唯。

「「「「うふふふふふふ…」」」」

それぞれの妄想からなにやら楽しい未来の予想図に行き着いたか不気味に笑う少女たちに引きながらも霧香は箱のようなものを持ってくる。

「では組み分けのクジビキです。一人ずつ取って下さい。」

「「「「はーい」」」」

妄想を引き摺ったままの少女たちと魔女は霧香がニヤリと笑ったことに気づかなかった。


「第一回 混浴権争奪チキチキ温泉卓球大会〜!!」

♪パフパフパフドンドンドン

古めかしい卓球台の前でやたらハイテンションに司会進行する浴衣姿の霧香さんとその横でラッパだ太鼓だを叩いている小熊に小狐。
壁にはトーナメント表が貼られているという手回しの良さだ。
どう考えてもクジビキ前から組み合わせが決まっていたとしか思えないのだが、熱くなった少女たちでそれに気がついたものはいないらしい。

「ではチーム入場〜!」

霧香の声と共に遊技場に入ってくるのは浴衣に着替えた少女たちと魔女。

先頭に立つのは小鳩ちゃん。

「まずはモモちゃんと花戸小鳩さんのGFレディーズ!!」

パフパフと小熊と小狐に煽られてちょっと照れくさそうな小鳩ちゃん。
その浴衣の胸元から覗く谷間は深い。多分、浴衣の下には下着をつけないタイプなのだろう。漢の浪漫を理解している良い娘である。モモは当然下着などつけてない。
その胸部の盛り上がりは今にも浴衣がはちきれそうだ。
すでに本気モードなのか普段は隠している角が頭から出ている。
卓球で必殺技は使わないと思うから角が出ていても問題ないだろう。

「次は魔鈴めぐみさんと愛子ちゃんの教師と生徒ーズ!」

浴衣姿に三つ編みで泣きぼくろがベストな魔鈴さん。
彼女もなかなかにツボをついてくる。
そして机を背負った愛子。
最近は普通の服を着る機会が増えたとはいえ浴衣姿の彼女は珍しい。

「そして〜。ユクちゃんとおキヌちゃんの低脂肪乳シスターズ!」

あんまりなチーム名にガーンと効果音を背負いつつ入場してくるおキヌちゃんとユク。
さすがにおキヌちゃんに浴衣は似合っているが、スラリとしたユクもなかなかに良い姿だ。

「最後はアリエスちゃんと唯ちゃんのスーパーマヌケブラザーズ!!」

「誰がスーパーですかっ!」
「わたくしまで巻き込むとは失礼ですわっ!」

そこに突っ込むのかい…と家庭教師役でもある愛子ががっくりと肩を落としながらも「帰ったら英語補習」と密かに決意した。

ところで…お気づきの通り一人抜けているわけで。

「えう?霧香さんが入ってませんです。」

ジト目で自分を見てくる唯の視線にパタパタと手を振りながら霧香は答える。

「だって私は審判兼コミッショナー兼スポンサーですから…」

何か腑に落ちない気もするが確かに宿は彼女の手配なのだからと納得してついに熱い女の戦いは始まった。


「それでは第一試合!モモちゃん小鳩ちゃんチーム対魔鈴さん愛子さんチーム!」

再びパフドンとラッパと太鼓が打ち鳴らされ卓球台の前に立つ4人、互いに礼をしてまずは小鳩のサーブから試合は始まった。

「えいっ!」

乳をプルンと大きく揺らして小鳩が掛け声も勇ましくラケットを振る。
確かに掛け声は勇ましいがその振りはどうみてもヘロヘロという擬音しか会いそうに無い。

だがしかし、ヘロヘロとラケットが当たった瞬間、ピンポン玉は凄まじい速度で打ち出され卓球台に音を立てて炸裂すると、魔鈴たちが反応する間もなくその間をすり抜け後ろで見ていたアリエスの眉間に直撃した。

「くえっ!」

奇声を発して倒れるアリエス。相当痛かったのが額を押さえてのた打ち回っていたが、やがて涙目のまま立ち上がってくる。
そして小鳩の第二撃はその横をズビシとすり抜けた。
壁でシュルルルルルと回転しているピンポン玉を見たアリエスの口から驚愕の叫びが上がる。

「あ、あれは!」

「う?知ってますかアリエスちゃん?」

「あれは伝説の技…巨乳振り子打法!!」

「なんですか?それ?」

なんとなく暢気なおキヌに対してアリエスは今にも額の瘤に「大往生」と言う文字を浮かべかねない勢いで説明しだした。

「インパクトの瞬間、腕の振りから刹那の差で遅れた乳の揺れによる振動が二度目の衝撃をボールに与え、その威力を数十倍にもするいわば二重の極み卓球版ですわ!」

「それって凄いんですか?」

「ええ…乳の形、重さ、張り、そして感度…その全ての条件が揃ったときになされるただの巨乳では不可能な言わば神の技!!」

乳の性能で負けたっぽいのが悔しいのか「くっ」と唇を噛みながらもおキヌに説明するアリエス。
その説明が終わらぬうちに小鳩のサーブが愛子と魔鈴の眉間や鳩尾を直撃し、その破壊力に二人はあっさりとKOされ、第一試合は小鳩とモモのGFレディーズのTKO勝ちで決着がついた。


続いて第二試合。

おキヌとユクの低脂肪乳シスターズ対スーパーマヌケブラザーズ。
意味は解らんがアリエスが赤、そして唯が緑の帽子をかぶっている。
浴衣に帽子は非常にミスマッチでよろしくない。萌えを理解してないところがヒロインとしては致命的だろう。

「「うるさいです!!」」

ナレーションに突っ込みいれつつ、霧香の合図とともに試合開始。
ユクがしなやかな肢体を閃かせて放つサーブは中々に早い。
運動神経が壊滅的な唯では返せないだろうと思ったが、実はここに伏兵がいた。

「甘いですわ!」

ユクのサーブを綺麗なフォームで掬い上げるように返したのはアリエスだった。
ドライブのかかったピンポン玉は急激な角度で台に落ち、台の表面を舐めるかのようにズビシとすり抜けた。

当然、運動能力では唯よりちょっとマシって程度のおキヌに返せるはずも無く呆然と見送るだけ。
その正統派の技に呆気にとられる観客にアリエスは激しいモーションのせいで飛び出た乳をプルプルと揺らしながら高笑い。

「おーっほっほっ。カッパ国立第二中学卓球部のキャプテンだったこの私に早いだけのサーブは通用しませんわよ!」

カッパの姫様…なかなかに侮れない過去をお持ちのようだ。

結局、唯がどれだけ足を引っ張っても正統派のアリエスにおキヌやユクがかなうはずも無く、第二試合はマヌケっ子ブラザーズの勝ちとなった。

「ふふふ…無念…ふぇ…ふぇーん…」

床にガックリと膝をつきベソをかくユクを慰めるおキヌの心中も複雑である。
負けたのは悔しいのだが、反面、冷静になってみれば混浴ってのも恥ずかしいと気がついたのだろう。どこかホッとしたような表情を浮かべていた。


さて、そしてついに決勝戦。
横島君との混浴権を賭けた最後の聖戦が今、始まろうとしていた。

いつもの温厚な態度に比べて珍しく闘志をむき出しにしている「巨乳振り子打法」の使い手、小鳩ちゃん。さすがにここまで来ては負けられないと思っているのだろう。

対するアリエスと唯も闘志を漲らせている。その証拠が帽子と鼻の下の付け髭ってのはいまいち常人には理解不能であるが、まあこの二人に何を言っても無駄だろう。

お互いの闘気が火花を散らす遊技場についに霧香の合図が響き渡った。

「いきます!」

真剣な目をしてヘロヘロとラケットを振るう小鳩。
インパクトの瞬間、破裂音とともに凄まじい勢いで放たれるピンポン玉はまさに魔弾である。

その速度はいかにカッパ中学卓球部のキャプテンといえども反応するのがやっとでまともに打ち返すことが出来ない。
アリエスの額に汗が滲む。

しかし人望が無いとはいえカッパ族の長は長、こんなことではへこたれはしないのだ。

「タイムですわ!」

審判の霧香にタイムを貰ったアリエスは部屋の隅っこに唯を連れて行くとなにやらモショモショと相談をし始めた。
唯は最初は驚愕し、恥ずかしげにイヤイヤしていたが洗脳技術に長けたアリエスに抗えるはずもなく。最後はコックリと頷く。
そして卓球台の前に戻ってきた二人は奇妙なフォーメーションを組んだ。
唯を前に立たせてアリエスはその後ろにピッタリと密着するというどうみても不利な陣形におキヌは戸惑いを覚える。

「あの…愛子さんあれって何か意味あるんでしょうか?」

「さあ…きっと唯ちゃんを盾にしようってことじゃないかしら?」

「うわっ…非道ですね…」

おキヌにもアリエスに人望の無い理由が理解できてきたらしい。

「いきます!」

再び放たれた小鳩のサーブが唯に直撃すると思われた瞬間、アリエスはガバッと唯の浴衣を下げその薄っぺらたい胸部を露出させて叫んだ。

「天野式盆地胸バリアー!!」

魔弾は唯の胸に当たるとスイっと滑って彼女のピンク色した乳頭を撫ぜ上げ、唯に「あん♪」と顔に似合わぬ色っぽい声をあげさせるとそこで弾ける様に方向を変え、あまりの不可思議さに口を開けて見ていたモモを直撃して昏倒させた。

「「「「「な?!!!」」」」」

驚く一同にまたまた高笑いで答えるアリエス。

「おーっほっほっほっ。見ましたか!これぞ凹面胸部のみになせる伝説の返し技、「盆地胸バリアー!」、もう小鳩様の技は通用しませんわ!!」

技の実行者の唯も呆然としていたが、アリエスの説明に聞き捨てなら無い言葉があったことに気がついてシタっと抗議の挙手一発。

「盆地胸ってなんですかっ?!!」

そんな唯にアリエスはかすかに憐憫を含んだ視線を向けた。

「唯様…ただの平面なら弾の衝撃をまともにくらいます。ですが盆地胸ならば衝撃をいなしつつ回転の方向を変えることで相手にそのまま跳ね返すことが出来るのです。」

「う?」と首を傾げる唯に向かって愛子が頭をポリポリと掻きながら補足する。

「つまり…今の唯ちゃんのおっぱいは……マイナス領域ってことなのよ…」

「マイナスっ!」

ガビーンと驚く唯に更におキヌちゃん追い討ち。悪気が無いだけに容赦も無い。

「えーと…だったら私が低脂肪乳ってことは…」

「唯様の場合は脱脂粉乳ってところでしょうか…」

「こなっ?!!」

完全に石化して崩れ落ちる唯に魔鈴がばつの悪そうな視線を向けた。

「あー…もしかして蜂に刺された毒を吸い出すときにおっぱいも吸っちゃったかも…」

(んなわきゃない…)と裏手突っ込みしようとして、一同は考え直した。
そう…その理屈の方が唯の精神にとっては幸せだろうと…。

素早くアイコンタクトをかわし会話を成立させると、一同を代表して意識を取り戻したモモが唯の方に手を置いて慰める。

「大丈夫だよ…ちょっと脂肪まで余計に吸われちゃっただけだから…後でモモの牛乳分けてあげるから…きっとすぐに元に戻るよ…。」

「えぐうぅぅぅぅぅぅぅ!!」

感極まって泣く唯の姿に遊戯場は少女と魔女と神様のもらい泣きの声が響きわたる。
ラッパを持ったクマちゃんやキツネちゃんも前足で目を拭う中、不意に聞こえるのは能天気な声。

「あれ?みんなで何してるんすか?」

遊技場を覗き込んでいるのは買い物から返ってきたのか横島たち。
咄嗟にワタワタと場を取り繕う少女たち。
霧香がハッと気がついてジャンプ一番「混浴権争奪」と書かれている横断幕を引き剥がした。

横島の後ろから覗き込むピートが羨ましそうに笑う。

「あ、温泉卓球ですか?いいなー。僕たちもやりたかったですね横島さん。」

「ああ、けどもう風呂入っちゃったしなぁ…」

「いいお湯でしたノー」

「「「「へ?」」」」

何だか聞いてはいけない台詞があったような…。

ギギギと関節という関節から異音を軋ませて霧香が恐る恐る浴衣姿でほかほかと湯気を立ててる横島に尋ねる。

「あの…もうお風呂入っちゃったんですか……」

その迫力にビビリつつも横島は頷いた。

「はあ。買い物から帰ってきて呼んでも誰も出てこないから、キムンカムイさんとシュマリさんが先に風呂にしたらどうか?って言ってくれて入ったっすけど…」

「なにかマズかったすか?」と首を傾げる横島に声も無い女性陣。

みんな真っ白な灰になって倒れこむ中、横島たちの能天気な会話が続く。

「ですが横島さんは残念じゃったノー。せっかく覗こうとしたのに…」

「ばかっ!そんなことばらすな!う、嘘だぞ!コイツは嘘を…ってどうしたの?」

皆倒れ伏し、答えるものが誰も居ない遊技場の床を、どこから吹いたかわからない木枯らしに煽られたピンポン玉がユラユラと転がっていった。


後編へ続く


後書き
ども。犬雀です。
えーと。除霊部の幕間話。投稿いたしますです。
遅れましてすんません。しかも前後編になっちゃいました。平謝りです。

何と言いますか短編の面白さにはまっちゃって、短編って長編とは違った難しさがあって書いてて凄く面白いです。
つきましては除霊部のアフター関係の短編(今まで登場しなかった原作キャラと絡めたり、メドさんその後とか)とまったく別個な短編をしばらく書いていきたいと思います。
ですが全ては山の天気任せ。それでも何とか今まで通り一日二時間、PCの前に向かうことを誓いますです。
お目汚しになるかとは存じますが宜しければお付き合いくださいませ。

末筆ですが最終話にレス下さいました皆様に厚くお礼申し上げます。


では次回 後編 「強襲!夜這峠?」にてお会いしましょう。(題名は変わるかもですorz

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