(物語をはじめるその前に)
「とりあえずBGMに、「LE TMPS DES CERISES(さくらんぼの実る頃)」を流して、少しダンディー気分でお読みください。
それでは・・・・スタート」
ダダダダダダダダダダ!!
「貴様いい加減しろ!!」
「そっちこそいい加減成仏しやがれ!!」
ダダダダダダダダ!!
アドリア海上空を支配する機関銃の音と、野郎2人の野太い声。
赤い飛空艇と青い飛空挺が、空を自由に駆け回る。
「2人とも纏めて死にやがれ!!」
「うるせー!!雑魚は黙ってろ!!」
「これは俺たちの決闘だぞ!!貴様たちは引っ込んでろ!!」
その2機の横から現れる大型の飛空挺。
これまた野太い声で2人一緒に打ち落とそうとするが、いかせん技量が違いすぎる。そして飛空艇の機能も・・・。
「ボス!!タンクがやられました!!」
「またか!!あの豚にアメリカ野郎!!」
ボスと呼ばれた男は、落ちてゆく自分の飛空挺から、忌々しげに今だ空を飛んでいる2機の飛空挺を睨みつける。
「覚えてろ豚野郎!!アメリカ野郎!!」
「はん!!俺がタンクを打ち落とした!!」
「貴様の弾は外れてたんだよ!!」
ダダダダダダダ!!
赤い飛空挺と青い飛空挺は、落ちていく大型の飛空挺を傍目で確認すると、どっちがタンクに穴をあけたか?で口論しながらもいまだに戦闘を楽しんでいた。
その場所から約50キロ離れた場所にある一つの小島。
昔の飛空挺乗り達は、空賊も賞金稼ぎもこの島から半径50キロ圏内は仕事をしなかったという島。
そこには小さなバーがあり、何故か夜は昔とかわらず客でいっぱいになる。
「・・・あの2人・・・まだやってるのね。」
「はい奥様・・・」
「今日は来るのかしら?」
「さあ・・・あの2人はアレを楽しんでる節がありますから・・・」
そのバーの裏にある庭園で、誰かを待っている女が一人。
「賭けは・・・またお流れしそうね・・・」
青く空と海を思わせるピアス。
いささか派手だが、その女にはよく似合い、白い大きな帽子が女の美しさを引き立てる。
「・・・・さあ、もうすぐ夜よ・・・準備をしましょう。」
「はい奥様・・・」
彼女はバーの歌姫。
アドリア海の飛空挺乗りは、かならず一度は彼女に恋をする。
「・・・・馬鹿・・・・」
女は執事を連れて部屋へと戻った。
旅の途中 赤と青の飛空挺編 プロローグ 「LE TMPS DES CERISES」
とりあえずカオスの家庭問題も解決し、俺達はイタリアを出ようと思っていたのだが、なんでも後1件仕事が残ってるとかで、俺達はいまだにイタリアにいたりする。
で、俺が今来ているのが依頼主との待ち合わせの場所。
アドリア海に浮かぶ小さな小島で、古い屋敷が経っていた。
どうやら中はバーとなっており、屋敷兼バーみたいで、昔はかなりの繁盛したんだろうなっと、寂れたバーの中で俺はそう思った。
人はいない・・・もう、何年も使われてないだろうこの店。
「・・・・」
少し早く来過ぎたかな?
約束は夜8時。
今は7時・・・1時間早いな。
なんでこんな時間に?っと思ったが、依頼主はその時間帯をどうしてもと依頼してきたらしい。
じゃあなんで俺が?っていうと・・・これ、一人で片付けたら依頼量50%ゲット!なのだ。
「マリアとデートする約束があるし・・・軍資金手に入れらないかんもんな。」
俺は誰もいないバーのカウンター席に座り、依頼主が来るのを待つ。
すると・・・
「・・・え?」
瞬きをした瞬間だった。
乾いてきた目を潤すために目を閉じ、そして開ける。
たったこんだけの、1秒も掛からない時間。
その一瞬で、店の中は、客でいっぱいになり、タバコの臭い、酒の臭い、男のコロンの臭いに、女の香水の臭いでいっぱいになったんだ。
「な!?」
俺から一番離れたテーブルに集まっているのは、ガラの悪い連中。
だけど大人しく・・・。
金持ちそうな・・・上流階級っていうのかあれ?そんな連中もいるし、何日も風呂に入ってなさそうな連中もいる。
「あの船を襲って・・・」
「いやいや、それより豚を・・・」
「ああ、あの会社は・・・」
「わたくしとしてはそれよりも・・・」
最初の物騒な話をしているのが、何日も風呂に入ってなさそうな連中。
その後のが上流階級・・・つーか金持ちそうな連中の会話。
ワイワイガヤガヤと、料理、そして酒・・・会話を楽しむ連中。
まるで俺が此処に来る前からそれを楽しんでいるかのような・・・そんな雰囲気。
「・・・・・」
・・・まあ普通の人達ならコレで驚くんだろうけど、俺はいちをGSだからな。
これぐらいじゃ驚かない。
窓から外を見ると、沢山の船や飛空挺が・・・ああ、この連中のか。
さっきまでは無かったんだが、ま、驚きはしないな。
ちなみに俺は文字通り飛んできた。
「お客さん・・・」
「ん・・・軽いやつを・・・」
「わかりました。」
バーテンの人が俺に注文を頼んできた。
俺は酒の種類なんて知らないし、とりあえず軽くてお任せ。
「この中に依頼人がいるのか?」
目に霊力を集中させるも、どうやら此処にいる連中は全て幽霊・・・ありがたい事に無害そうだ、がらの悪い連中も含めてな。
「・・・・とりあえず待ってみるか・・・」
「お待たせしました。」
俺はそう決めた後、良いタイミングでバーテンの持ってきたお酒を口に含んだ。
・・・・ちょっと強い。
これが軽いお酒か?
やっぱ幽霊が持ってくる酒は別?
お、あの人綺麗だな・・・あ、アイツは臭そうだ・・・
そうこうしているうちに時間は8時になった。
「・・・・」
「・・・・」
「あれ?」
段々と会話が少なくなり、静まり返る店の中。
俺はというと・・・少し酔っていた。
「なんで誰も喋らないん「シーーー!!」・・・ん?」
俺が一人呟こうとすると、いつの間にか隣にいた青い服を着た男。
黄色いスカーフ(なのか?)を首に巻き、鼻の下にはちょび髭が生えている。
身長は高い。
「今から歌姫が歌うんだ・・・黙って聞いてろ坊主。」
「・・・・・」
坊主って部分にカチン!とくるが、とりあえず歌姫・・・・つまり美人!!
俺は青い服の男に言われるまま、黙ってステージのほうを眺めていた。
ステージにあるピアノに男の幽霊。
その男がゆっくりとピアノを引き始める。
♪〜・・・♪〜〜・・・
ジャズの音楽だろうか?
俺にはよくわからないが、ピアノの奏でる曲はとても綺麗で静かな曲。
そして俺は一瞬思考が停止する。
呼吸を忘れ・・・階段から降りてくる女性に魅入られた。
「・・・・・」
「・・・坊主には少し刺激が強すぎるんじゃないのか?」
「・・・おっさん五月蠅い。」
おお怖って感じで肩をあげるおっさんの態度にはムカツクが、今はそんなのを気にしていたくなかった。
ムラサキ色のドレスに身を包み、金色の大きな耳飾をつけ、胸元にはこれまた金色の玉の付いたネックレス。
だけど派手じゃない。下品じゃない。
美しく・・・それでいて・・・気品があって・・・・
俺の拙い脳じゃあ表す事が出来ない。
が、この人のためにあるんだろう・・・美人って言葉は、
(・・・こんな事考えるなんてガラじゃないよな・・・)
だけどどうしても考えてしまう。
俺はその女性の歌声に、その姿に、立ち振る舞いに、魅入られていた。
♪〜・・・
Quand nous chanterons le temps des cerises
「アドリア海の飛空挺乗りは、必ず一度は彼女に恋をするんだ・・・」
「・・・・」
おっさんが俺に小声でそう言ってきた。
ああ、なんとなくわかると、俺はおっさんに顔で合図する。
「・・・・ん、来たか・・・」
どうでもいいけど、人に注意しときながらおっさんのほうが喋ってるよな?
そう思いながらも、俺はおっさんが向いた方向・・・窓の外のほうを見る。
そこには青い飛空挺のとなりに、今しがた停泊したと思われる赤い飛空挺。
服の色からして、青の飛空挺はおっさんのだろう。
あれは確か・・・・ああ!?
「カーチスR3C−O非公然(密告)水上戦闘機・・・」
「知ってるのか坊主?」
知ってる・・・昔プラモデルで作った・・・
俺は凝り性でね、作ったプラモデルの、本物の性能まで知っている。
「ジェナイダーカップで2年連続優勝スピードレーサーを改造したやつだろ?エンジンは・・・今は積み替えているだろうからわからんけど・・・」
「ほう、詳しいな坊主?」
「あれ、おっさんの飛空挺か?じゃあアンタがあのミスター・カーチス?」
・・・幽霊か・・・でもなんでイタリアにいるんだ?
そう思いながらもその飛空挺を見ていると・・・隣の赤い飛空挺も俺には見覚えがあった。
「サボイアS−21試作戦闘艇・・・あまりに過激な性能のために乗りこなす奴がいなかったっていう・・・」
「・・・」
「確かエンジン位置による視界の悪さと、高速運動性を無視したために低速時における取り扱いの難しさで、誰も扱えなかったはずじゃ・・・」
・・・この辺は俺が飛空挺のプラモ作りに熱を上げていた時期に、親父から教わった事だ。
「誰が乗ってるんだ?」
「・・・・豚さ。」
「・・・はあ?」
そんな会話していると、いつの間にか女性の歌は・・・多分中盤ぐらいまでいってしまっていた。
(もったいないな〜)
あの歌声をBGMに飛空挺の話をかの有名なミスターカーチスとする。
かなりの贅沢なんだろうけど・・・俺におっさんの趣味はない。
そんな事を考えていると、誰かが店に入ってきた。
赤い飛空挺の操縦者か・・・どんな奴なんだ?
カランカラン
「・・・・」
「あれがあのサボイアS−21試作戦闘艇を操ってる奴さ・・・」
コートに身を包み、丸いサングラス・・・そして帽子。
えらく渋い格好で・・・だけど豚で・・・
「!?!?!?」
「まずこの店に初めて来た奴は3つの事に驚く。」
めちゃくちゃ驚いている俺の横で話しを進めるおっさん・・・いや、カーチス。
「1つはあの女性・・ジーナの美しさと歌声・・・」
「2つ目はこの俺ミスターカーチスに・・・って坊主は驚かなかったけどな。」
「で、3つ目が・・・あの豚の姿に・・・」
そりゃ驚く。
俺も一回豚になった経験があるけど・・・あの豚は、そんな感じじゃなくて、えらく渋い。
なんでだ?同じ豚なのに?
Et le souvenir que ie garde au coeur.
あ、歌が終わってしまった。
豚はこっちに近づき、歌姫・・・ジーナさんもこっちに来ている。
「よう、ずい分と若い奴とつるんでるじゃねーかカーチス?」
「ほんと、お友達カーチス?」
「ああ、俺達の船に興味がありそうだったんで・・・教えていたんだジーナ。」
おっさん・・・豚は無視ですか?
「こんにちわ、ジーナよ、よろしくね。」
「あ、横島 忠夫です・・・こ、こちらこそよろしく・・・」
ジーナさんの差し出した手を、俺は焦りながらも握った。
「坊主、こういう時は手の甲にキスするもんだぜ?」
「な!?///」
「もう、カーチスったら・・・」
俺は一瞬どうするか迷ったが・・・結局キスは出来なかった。
いや、無理だってマジで・・・。
「ほらポルコ・・・あなたも挨拶したら?」
ポルコ・・・どうやら豚の名前らしい。
その呼ばれたポルコはカーチスの後で、いつの間にか頼んでいた酒を飲んでいた。
「・・・・ポルコ・パゴットだ・・・」
「あ、横島・・・忠夫ッス・・・」
握手は・・・無し。
グラスを手で持っているところを見ると、どうやら手は蹄じゃないらしいな。
「相変わらず無愛想ね・・・まあいいわ・・・横島くん。」
「は、はい!」
俺は急にジーナさんに呼ばれて、緊張した。
「少し話があるの・・・いいかしら?」
「は、はい!!」
お、おおおおおお、俺に話!?
な、なんだろう!?
俺はジーナさんが・・・ああ、お店の奥に・・・つまり2人っきりで・・・
「おい、ジーナに変な事したら・・・」
「わ、わかってるってカーチス・・・だ、だからその銃しまえ。」
ちなみにこの時、俺に銃口を向けていたのはカーチスだけじゃない。
男性客・・・ちったあ女性客も混じってたかな?
客のほとんどが俺に銃を向けていた。
(愛に障害は付き物・・ってか?)
◇
「お飲み物は?」
「水かジュースを、いちをこれから仕事ですし、まだ未成年っすから。」
「あら、私は18の時から仕事前にワインを飲んでいたわよ?」
そう言って少し笑い、ジーナさんは部屋を出た。
飲み物を取ってくるのだろう。
今俺とジーナさんは店の奥の個室にきている。
って言っても結構広いけど・・・。
辺りを見回すと、壁に掛かっている写真を見つけた・・ジーナさんの若い時の写真だろう。
飛空挺とジーナさん。
あと4人の男性・・・2人は飛空挺の前に立ち、ジーナさんと1人は飛空挺の操縦席に座り、もう一人は・・・マジックかなにかで顔を塗りつぶされていた。
「・・・・」
「それはね・・・ポルコが人間だった時の唯一の写真なの。」
その時のジーナさんの表情を見て、俺は確信した。
彼女は・・・ポルコを・・・
いや、違うな・・・待ってるんだきっと。
「酷い人よね・・・死んだ後もこうして待っているのに・・・」
「・・・・」
「空に夢中で・・・女を泣かせて・・・」
どう答えればいいのか・・・俺にはちょっと無理があるな。
若すぎる・・・自分が。
大人になれば何か気の利いた台詞の一つでも出そうなもんなんだけど。
「ねえ横島くん?」
「はい・・」
「・・・依頼、受けてくれる?」
・・・その質問はちょっとずるいっすよジーナさん。
俺はまだ依頼内容を聞いてないし・・・。
ま、だけどいい男ってのは此処で断ったりはしないんだろうな。
「ええ、いいですよ・・・」
「・・・ありがとう横島くん・・・」
いまだ未定の依頼内容。
だけど・・・俺は出来そうな気がするよ。
{あとがき}
ども〜旅の途中 赤と青の飛空挺編スタートってことで、義王です。
とりあえず渋く・・・かっこよく・・・泥臭く書こうと思うのでよろしくお願いします。
では、700年編ラストでもらったレスへのレス返し・・・いってみよう!!
>煌鬼様
どもどもお疲れ様です。
マールとキラ、そしてカニさんの出番は学園編あたりに出す予定ですんで、少しお待ちください。
>キリアス様
あ、ばれた・・・。
とりあえず豚のほうです。
>アンスリウム様
感動していただければ何よりっすよ。
カオス 「ふん、言われんでもこの子は幸せにするわい。」
>カニ五郎様
あ、やっぱりバレバレ?
そうです、3倍早い豚さんです。
>柳野雫様
じいちゃん 「わ、ワシはただお小遣いをあげようかと・・・」
アシュ 「ふむ・・・いまだに将棋で勝てないのだよ。」
>桜葉 愛様
お、俺の所為!?
いやいや、カオスの所為ですから・・・。
フィオも出ます。つーか出します。出さないでかーー!!
はい、それではまた次回に!!
シーユー♪