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「除霊部員と幽霊列車 第13話 (GS+オリキャラ)」

犬雀 (2005-05-21 19:11)
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第13話   「騒乱節に踊る巫女」


西条の電話で我に返った美神親子。
美智恵が受話器をとるために自分から離れたとき、ふと令子の顔に不審げな色が浮かぶ。
なにやら首を捻って考え込んでいたが、やがてチーンと鐘を叩くような音とともにその表情がズーンと暗くなった。

どうやら実は美智恵が自分を庇っていなかったということに気がついちゃったようである。
令子は呆けた表情でゆっくりとベッドに登ると毛布を体に巻きつけサナギのように丸くなるとプルプルと震えだした。
時々、毛布の中から「えぐっ…えぐっ…」と聞こえてくる嗚咽にかける言葉も無い一同である。
そんな令子の悲痛な有様に文珠の効果を検査できないで困っている白井医師も流石に手を出せずにいた。
美神令子…どうやら明日の退院は無理のようである。


「そう…ありがと。わかったわ。ええ。私も明日には退院できると思う。え?ああ、横島君の文珠で治してもらったの……あ、それでね西条君悪いんだけどこの件が終わったらちょっと休暇欲しいのよね。申請書用意しておいてくれる?ええ…頼むわ。」

チンと受話器を置いて美智恵はフウと息を吐く。
隣のベッドで震えている毛布を横目で見ながら、ちょっとだけ額に汗しつつ手にしたメモ用紙を横島たちに渡した。

「その砂津川さんって人だけどレイテで戦死ってことになっているわね。正確には行方不明だそうだけど…だから遺骨も無いでしょうね。」

「で、隊長これは?」

横島がメモに書かれた内容に首を傾げた。

「それは砂津川さんの遺族の方々の住所よ。私の感だけどその譜面をその場所に届けることで何かわかると思うわ。」

「んじゃここに行けば…」

「そうね。頼める?」

「いいっすよ。「わしも行くぞ!」…へ?」

突然の声に振り向いた皆の前には病室のドアを開け、杖をついて立つ天本の姿があった。

「天本先生…」

「すまんな。愛子君…小便に来たら君たちの声が聞こえてな。悪いとは知りつつつい聞いてしまった。」

深々と頭を下げる天本に美智恵は戸惑いを隠せない。
その様子を察して魔鈴が美智恵に天本の素性を告げた。

「横島君の学校の先生でしたか…ですが見たところお加減が悪いようですけど…」

「なんの、もう大丈夫じゃ!そうじゃろ白井先生…」

天本に話を向けられた白井は一瞬戸惑いの表情を浮かべたがすぐに顔に満面の笑みを浮かべて大きく頷く。

「がっはっはっ。この白井が太鼓判を押しましょう。もう大丈夫ですぞ!」

「すまんの先生…」

白井に向かって白髪頭をペコリと下げる天本に唯が不思議そうに聞いた。

「う?でも天本先生は行き先もわからないんじゃないですか?」

何を隠そう横島と美智恵以外はメモの内容を見ていないのだから、天本だけじゃなく唯も愛子も魔鈴も行き先はわからない。
にも関わらず天本はニヤリと笑う。その笑顔はある確信に満ちていた。

「行き先は北海道じゃろ。違うか?」

「そうっす…」

驚きの表情とともに横島が皆に見せたメモには確かに「北海道 稚内市」の地名があった。


翌日、再び準備をして河川敷に集まる一堂であるが、今回は前回と若干メンバーが変わっている。
まずシロタマがいない。どうやら感覚の鋭い彼女たちにとって次元跳躍はかなりの負担がかかるらしく、「北海道でござるか!」と一度は喜んだものの再び「轟沈」で行くと聞いてしり込みしたのだった。

結局、シロタマはカトちゃんと一緒に事務所でお留守番ということになった。
勿論、横島たちがお土産を言い付かったのは言うまでもない。

今回のメンバーは横島、愛子、唯、小鳩、タイガー、ピートの除霊部員。
病身ではあるが同行を願った天本と美智恵の連絡で学校が公休扱いになったおキヌ。

そして「さあ横島さん!いざ「あざらしの国」へ!」と妙なテンションで張り切っている魔鈴であった。
そのカバンから覗いているのは表紙にあざらしの写真が載った「北海道観光ガイドブック」。
その影にチラホラ見える金属の球体を意識から除外しながら溜め息を吐く横島である。

いざ出発しようという段になってひのめを抱いた美智恵が白井医師を伴って見送りにきた。

「あ、隊長。わざわざすいません。」と頭を下げる横島に美智恵は手にした封筒を渡す。

「へ?なんすか?」

「餞別よ。」

「餞別って…旅行じゃないんですから…」

「でも…」
そう言って美智恵が指さした魔鈴を見れば、確かにカメラとか水筒とかぶら下げていて気分はすっかりツアー客である。

「はあ…だったら遠慮なく…」

「そうね。あ、そうそう…お土産とか気にしなくていいからね♪」

「そうっすね…」

「気にしてなくていいからね♪」

「はあ…」

「気・に・し・な・い・で・ね♪」

「何がいいんすか…」

「…カニ……あらイヤねぇ。若い子がそんなこと気にしちゃ駄目よ♪」

「前向きに善処します…」

出発前からすでに力尽きている気がする横島である。


アリエスに従って川に消えていく一行をニコニコと見送っていた美智恵だが、彼らの姿が完全に消えるとその顔を真顔に戻して隣で手を振っていた白井医師に向き直った。

「なんですかな?」

「白井先生…あの天本先生という方、本当に大丈夫なんですか?」

美智恵の問いに白井はその顔に苦い表情を浮かべ、眼鏡を外すと懐から取り出したハンカチで拭く。

「ターミナル…ですよ」

白井の口がそう動いたがそれは美智恵の耳にはかすかにしか届かない。そこに簡単に聞くことの出来ぬ何かを悟って美智恵も口をつぐんだ。


轟沈の士官食堂で皆はメイド姿のカッパの女官が出してくれたお茶を飲んで到着を待っていた。神宮寺は国内旅行には興味が無いのか今日のバイトは欠席らしい。
蛇もあのダメージなら当分は襲ってくることはないだろう。
事実、今回の航行は順調であった。

目を閉じて茶を啜る天本を小鳩が心配そうに労わっている。
話しかけていいものかどうかしばし考えて魔鈴は天本の前のイスに腰掛けた。

「あの…天本先生?」

うっすらと目を開けて魔鈴を見る天本ではあるが顔色はかなり悪い。
だが彼の目は決意の光に満ちていた。

「わしがなぜここに居るか…じゃろ?」

「はい…」

「菊姉ちゃんが夢に出てきての…お主らと共に船に乗れと言うんじゃよ。それでこうしてお邪魔しているんじゃ。」

「菊姉ちゃんってこの間の人ですか?」

気遣わしげなピートに天本は静かに頷くとまた目を閉じる。
唯がその天本の肩に毛布をかけて彼に聞いた。

「先生はどうして私たちが北海道に行くと知っていたんですかぁ?それもその人が教えてくれたんですかぁ?」

天本は目を閉じたまま薄く笑う。

「菊姉ちゃんが言うからにはお主らの行き先は北海道しかあるまい?」

「それはなぜですか?」

片目だけ開けて魔鈴の方を見ながら吐息を吐く天本。

「わしの生まれ育った場所じゃからな…」

「先生は北海道出身じゃったんかノー?」

「いや…違うな…わしが本当に行くべき場所。わしの生まれたところはな…」

そして彼は過去を懐かしむかのように柔らかな視線を食堂の天井に向けてポツリと呟く。

「樺太じゃよ…」

その地名の意味することがどういうことか理解できたのは魔鈴と愛子だけだった。


轟沈は稚内市から離れた天塩川にて横島たちを下ろす。
妙神山と違ってこれ以上市街地に近づくのはさすがにまずいと判断したからである。
だが国道に設置された「稚内市まで直進120キロ」との標識を前にして途方にくれていた。
どうやら早く下艦しすぎたようである。
とりあえず辛そうにしている天本を愛子に収容して横島たちはバス停を探しに歩き出した。

幸い天気は良く広大な原野とあちこちに点在する牧草地が牧歌的で、何とはなしに生気が満ちてくる気がする。
その陽気に誘われて散歩気分でバス停まで歩く一同ではあるが、見ようによってはかなり異様な光景である。
無理をすればバックパッカーの集団に見えないこともないけど…。

歩いても中々バス停は見えてこないが、かわりに様々な野生動物が横島たちの目を楽しませた。

「えう!タダオくん!あそこに鹿が!」

「忠夫様!あそこに牛が!」

「横島さん!あそこにイリオモテヤマネコが!」

「いや…それはいないからね。おキヌちゃん…」

野良ネコを指差して感激するおキヌをやんわりといなしつつ、ふと見れば魔鈴がカメラを構えてパシャパシャとシャッターを切りまくっている。

呆気にとられている横島に気がついたのか魔鈴はペロッと舌を出すと、トテトテと彼に近寄ってきた。

「横島さん!凄いです!さすが北海道です!!ああ〜。やっぱり新婚旅行は北海道がいいですよね。ね?ね?きっとあざらしも可愛いですよ〜♪」

いつの間にか興奮して横島の手を握る魔鈴に危機感を抱いた唯とアリエスが無理矢理、間に割って入ると両側から横島に抱きついた。

「私は新婚旅行はバリ島がいいですぅ!」

「わたくしとでしたら世界中どこでもOKですわ!」

意外にミーハーな唯と、ここぞとばかりにアピールするアリエスに邪魔されて「むー」と膨れる魔鈴。その後ろでおキヌが呟いた「私は熱海がいいなぁ…」という台詞は風に飛ばされて海に消えちゃった。
ぐっすん…とちょっと悲しくなったおキヌが原野に目を向けると土煙がこちらに向かって一直線に近づいてくるのに気がつく。

「へ?」と思う間もなくその煙は凄まじい速度でこちらに突っ込んできた。

「何ですかこれは!」

「あ、暴れ鹿ですジャー!!」

ピートとタイガーの悲鳴と同時にボベンと音を立てて横島に抱きついていた唯が吹っ飛ばされる。

「のっひょぉぉぉ!」

愉快な悲鳴とともに宙に飛ばされ地面に落ちた唯の上を次々に通り過ぎていくエゾシカの群れ。

「えうぅ!おげっ!あだっ!」

「唯ちゃん!」と愛子が悲鳴を上げた時、反対側の牧草地からも土煙が地響きとともに突っ込んできた。

「こんどはなんですかっ!」

「暴れ牛ジャァァァ!」

「あきゃぁぁぁぁ!」

牛に引っ掛けられて宙に舞うアリエス。
ペチッと地面に落ちたカッパの姫様の上を縦横無尽に走り回る乳牛たち。

「はうっ!いだっ!うきょ!」

鹿だの牛だのにもみくちゃにされる唯とアリエスを助けようと進み出た横島の前にスイッと立ちはだかるのは一頭の鹿と牛である。

「え?」と驚くおキヌに大丈夫と目配せして横島は軽く手を上げてニッコリと笑った。

「よう!」

その声に答えるように牛と鹿はブルッと体を震わせて、着ぐるみでも脱ぐかのようにその体から獣皮を振り落とす。
中から出てきたのは古い民族衣装に身を包んだスレンダーな美少女と童顔にアンバランスな巨乳の少女。
鹿の神「ユク」と横島が命名した牛の神「モモ」だった。

「タダッチ〜!!」

叫び声をあげて飛びついてくるモモを咄嗟に受け止める横島。
モニュと胸に当たる柔らかな二つの肉の感触と先ほど感じた唯のフラットな感触をつい比較して「はっ」と思い出した。

恐る恐る首を回してみれば…ボロボロになった唯とアリエスを背に乗せて牛と鹿が森に向かって歩いていったりして…きっと埋める気だろう。

「待て待て!」

「えー。だってあの娘たちタダッチを襲っていたじゃん!」

「ふふふ…彼女たちも食物連鎖の一部に…木の栄養?」

「腐敗させるなっ!」

「ん、わかった。タダッチがそう言うなら…」

そう言ってモモとユクは渋々といった様子で口笛を吹く。
途端に牛と鹿は唯たちをポテンと地面に落としそのまま森へと消えていった。

「あうぅぅぅぅ。死ぬかと思いましたぁぁ」

「まったくですわ…」

体じゅうにヒズメの跡をつけた唯たちが戻ってきて、横島に抱きついている少女たちを見て固まった。

「た、た、た、タダオくん!そのなんか顔とおっぱいのバランスがすっげー挑戦的な子は誰ですかっ?!」

なんか微妙に険悪な唯の台詞に「え?」ともう一度見てみれば、確かにモモにがっちり抱きしめられ開いた手をちゃっかりとユクに取られている自分の姿。

「そうです。横島さん…その人たちは誰ですか?」

なんか暗い声のおキヌに小鳩も愛子も同調する。
今まではいきなり鹿と牛が少女に化けて硬直していたのだが、我に返ってみれば看過できるような事態ではない。

魔鈴にいたっては嫉妬心と動物好きの心が激しい葛藤を続けているのか「うーうー」とカメラ片手に唸っている。

「ああ、この子たちは前に北海道に来た時に世話になったユクちゃんとモモちゃんだ。ユクちゃんは鹿の神様でモモちゃんは牛の神様なんだ。」

横島の言葉に合わせるかのようにユクとモモがペコリと頭を下げた。
その名前に心あたりがあるのは今や横島家の台所を預かる愛子と小鳩である。


「あれ?もしかしたらお肉と牛乳を送ってきてくれてる神様?こんな女の子だったの?!」

まさか神様が自分と同い年ぐらいの容姿をしているとは思っていなかったのだろう。驚く愛子の言葉に横島も肝心なことを思い出し慌ててユクとモモに礼を言った。

「ああ、そうだった。いっつもスマンな。」

「いいんだよ〜。お乳なら一杯あるから〜♪」

「お肉も…いっぱい…」

「くっ…確かにお乳はいっぱいありそうですねぃ…」

すっかり荒んだ目をした唯はぶちぶちと道端の草を毟っている。
乳自慢のアリエスもなんだか悔しいのか唇を噛んでいる。
唯一張り合えるのは小鳩ぐらいだろう。
対身長比では負けているがそれは気にしても仕方ない。
何しろ相手は牛の神なのだ。

「ところでタダッチ〜。来るなら最初に言っておいてよ!たまたま眷属が見つけたから良かったけど!」

「す、すまん!なんつーか急に来ることになって!そういや霧香さんは?」

「元気だよ〜。タダッチのおかげだね!」

「…ふふふ…毛もばっちし…」

「生えたんかっ?!」

「うん…まだ前ほど長くはないけどね。そろそろ来るかなぁ?」

「へ?来るって?」

「…連絡しといた…」

そう言ってユクは悪戯っぽく笑う。普段無表情な彼女が笑うと思いのほか可愛らしかった。
その思いが顔に出たのかおキヌが澱んだ声音で話しかけてくる。

「それはそうと…私たちも紹介してもらえませんか…横島さん…」

「え…あ、んと…まず彼女が俺の同僚のおキヌちゃん。いっつもシロタマの世話とかしてくれている優しい人ね。」

「そんな…優しいだなんて♪」とたちまち機嫌が直るおキヌ。

「んで、こっちが俺の同級生のタイガーとピートと愛子。それと後輩の小鳩ちゃん。愛子と小鳩ちゃんはお隣さんで俺の飯の支度とか色々してくれるんだ。いっつも世話になってる。」

「そんなお世話なんて…私こそ横島さんにいつもお世話に…」と頬を染める小鳩。
「よろしくね。」と頭を下げる愛子。一緒に紹介されたのがちょっとだけ不満。
「初めまして」とピートとタイガーも頭を下げる。

「そして…この人が…そうは見えないけどカッパの女王様のアリエスちゃん。まあ見てて飽きない人だ。」

「そうは見えない……そんなぁ…」と一瞬萎れるアリエスだが「見てて飽きない」と誉められ?瞬時に立ち直ると優雅にお辞儀して見せた。

「この人は魔法使いで俺たちのコーチ役の魔鈴さんね。美人だけどとっても強いよ。」

「強い…」
横島の紹介に美人と言われて頬を染めたものの「強い」と言われて複雑な魔鈴さんである。
(しまったぁぁぁぁ!!変なイメージを持たれちゃってるぅぅぅ!)とちょびっと涙目になりながらもなんとか頭を下げた。

「んで…この子が問題の…」と指差さされのは、まだいじけて道端の草を毟っていた唯。だが流石に聞き捨てならない「問題の…」という台詞にピシッと立ち上がる。

「問題って何ですかっ!」

「あ、すまん…んじゃ…特別天然突っ込まれ記念物の唯ちゃんね。」

「へうぅぅぅ…私は保護対象…ヤンバルクイナと一緒…」とまたまたいじけた唯を見てモモがポンと手を叩いた。

「あ、この子が寝ていたって子?そっか〜目が覚めたんだ。良かったね♪」

「う?」

「ああ、唯ちゃんを目覚めさせる方法を探しにきたときにお世話になったのさ」

「そうでしたかぁ…それはどうもご迷惑をおかけしましたぁ」

ペコリと頭を下げる唯にユクはニッコリと微笑んだ。

「…別に礼はいらない…私たちは何もしてないし…」

「うん。頑張ったのはタダッチと霧香ちんだね。」

「えう?霧香さんって人も助けてくれたんですかぁ?」

「そうだよ。」とニコニコ笑いながら頷くモモに何となく嫌な予感を感じておキヌが話に割り込んでくる。

「その霧香さんって人はどんな人なんですか?」

「ん?霧香ちん?んーとね。湖の神様で美人だよ。」

「…ふふふ…そしてタダッチの初めての相手…」

………沈黙………

海岸で「ニシンが来るぞ〜」と鳴くウミネコの声が聞こえる。
そして…


「「「「「「「何いぃぃぃぃぃぃ!!!!!」」」」」」


「待てっ!それは凄まじく誤解だっ!そうだろ!シロっタマモっ…ってそういや来てねぇぇぇ!!」

横島君、弁護人不在である。いても役に立ったかどうかは怪しいけど。

「よ〜こ〜し〜ま〜さ〜ん〜」

「ひいぃぃぃ。小鳩ちゃん!目がマジっ!!うおっ!魔鈴さん!何の安全ピン抜いてんすかっ?!!」

目以外の部分で爽やかに微笑みながら近づいてくる小鳩とカバンから取り出した鉄球のピンを口にくわえる魔鈴に横島君の目から涙が飛び散る。

「えうぅぅぅぅぅ!!!!」

「忠夫様…実はこっそり大人の13階段を…」

「だから違うって!唯ちゃん痛い痛い!ケツに齧りつくのは止めてっ!アリエスちゃんもっ!その後ろに立っている筋肉質のカッパは誰?!」

錯乱のあまりガルルルルと獣に戻って横島の尻に喰らいつく唯と実家?から急遽すたー・かっぱーを呼び戻したアリエスに横島君ますます大慌て。
愛子は机を振り上げたものの中に天本が居ることに気がついてかろうじて自制に成功した。

だが真の恐怖は彼の横から瘴気と共にやってきた。

「うふふふふ…横島さん…汚れてしまったんですね…」

「ひいっ!おキヌちゃん!!なんか黒いっ?!」

「タイガーさん…横島さんを押さえてあげてください…」

昼だというのにおキヌの周りだけは影がまとわりついていて真夜中のように暗い。
そこから放たれる瘴気にタイガーが勝てるはずもなく彼は心の中で友に詫びながらも横島を背後から羽交い絞めにした。

「裏切ったなタイガー!おキヌちゃん!その手に持っているのわっ?!」

「うふふ…コレですか?太鼓のバチです。待っていてくださいね…今、私が横島さんの体を清めてあげます…」

「清めるってなにいぃぃぃぃ?!!」

「うふふ…これで横島さんの体に清めの音を叩き込んであげます…行きますよ。音撃鼓!憧帝怪福の型!」

怪しげな技名とともに振りかぶられたおキヌの手がバチも折れよとばかりに横島の股間に振り下ろされた。

キキン!

「ばうわうっ!」

一撃で白目を剥く横島、抱きかかえるタイガーの目からも涙が溢れる。
ピートはとっくに草叢に逃げ込んでガクガクと震えていた。

「えうっ!おキヌちゃん落ち着いてっ!!」

「そうです。おキヌさん!!気持ちはわかりますが落ち着いてください!」

唯と魔鈴が第二撃をドンドコドンと振り下ろそうとするおキヌにしがみつく。

「だって〜だって〜!!ヤっちゃったことよりそれを内緒にしていたなんてヒドイですぅ〜!そりゃ私は横島さんの彼女じゃないけど…パンツだって捧げたのに〜!」

「おキヌ様!まだセカンドが残ってますわ!使い物にならなくなったらそれすら失われてしまいますのよ!!」

アリエスの説得?におキヌの手がピタリと止まった。
涙を含んだ目で今や完璧にぐったりした横島を見つめるおキヌの手からポタリとバチが落ちる。

「ぐすっ…ふえぇぇぇぇぇぇん!横島さ〜ん!!ごめんなさいぃぃぃ!」

泣きじゃくって横島にすがりつき許しを請うおキヌに少女たちは一様にホッとした。
魔鈴も安堵の息を吐いて額の汗を拭おうとしたが…。

ピン!

「え?」

まだ手に持っていたままだった魔法?の安全ピンが帽子に引っかかって抜ける。

「え?え?」

慌てて遠くに投げようとした彼女の手からポロリと零れ落ちる爆炎の魔法はゴトンと音を立てて転がって…チュドーンと炸裂した。

「「「「あきゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」


数分後、意識を取り戻した横島が見たものは、黒く焦げたアスファルトの上に倒れてピクピクしている少女たちと魔女だった。

「た、助かったのか…って!それどこじゃねえっ!」

慌てて文珠片手に微妙に焦げてピクピクしている少女たちを助けようとした横島の手をモモが引く。
振り返った横島にモモは悲しげな視線を向けた。

「タダッチ…本番はまだこれからだと思うよ…」

「え゛…なんで…」

青ざめる横島にモモはスイッと後の国道を指差す。

原野の中を一直線に抜ける国道。
その遥か彼方から一台の4WDがもの凄いスピードでこちらに向かって驀進してきていた。

「…ふふふ…来たみたい…」

ユクの呟きが新たな騒乱の始まりを告げた。


後書き
ども。犬雀です。
最後の目的地は北海道稚内。カニの産地であります。
つまり最後の敵はタラバガニ!!…大嘘であります。
外伝読んでない方にはサッパリの展開でありますな。すんませんです。
えー。おキヌちゃん暴走…でもでも本当の彼女は違うであります。
まだマヌケ時空に馴染んでないのです!馴染めばきっと……

さて…次回「対決!魔女と女神」
なるべく早く更新する予定…かな?
では…


1>AC04アタッカー様
確かに蛇さんかわいそうですね。
轟沈は実はお腹に水中モーターがついてますw(嘘)

2>オロチ様
おおっ。言われてみれば韋駄天が先にやられてますなw
規模が違いますが…w

3>まるい55号様
ナチュラルに愛読していると思います。最近は動物(特にアザラシ)物がお好きのようで。

4>ジェミナス様
必殺技が突っ込みの戦艦でありますから。突っ込まれるのも得意でありますw

5>紫苑様
やってませんて…w
同志…プロレスつながりですな。

6>柳野雫様
白井先生は治療となると突き進むタイプと勝手に決めました。
んでなきゃ病魔とプロレスせんかなぁ…とか考えましてw

7>ザビンガ様
はい。実は予定話数をかなりオーバーしてますんで…あんまし長いと皆さん飽きるかなぁと思ってサラリと。
でも今回も横に逸れすぎましたorz

9>法師陰陽師様
ごめんなさいです。神宮寺さんは今回お休みでありました。
でも轟沈あるところ彼女ありであります。

10>ヴァイゼ様
にはは。爆弾は今回一発、次回で二発ってことでどうでしょうか?w

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