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「世界はそこにあるか  第7話 (GS)」

仁成 (2005-05-16 11:21/2005-05-16 23:32)
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深い思考の中


横島は瞑想しながら、様々なことに思いをめぐらせていた。


修業する前の自分

今の自分

これからの自分


神族
魔族


老師、小竜姫様、タマモ


時間移動


この修業の生活の中で何度も考えてきたことだ。

幸い、考える時間だけはたくさんあった。
修行を始めてから、もう何年経ったか分からないぐらいである。

思考はあちこちへと移ろい、唯一つの解など出てくるはずもない。


だが決して思考することはやめることはない。

まるでそれが“義務”であるように……。


そんな思考の海に沈んだ彼の意識は、老師により再び浮かび上がるのだった。


世界はそこにあるか  第7話


「小僧……」

老師が呼びかけるが、もちろんこの程度では、深く瞑想している横島が目覚めるはずもない。

瞑想とは元々そういうものだ。

老師はやれやれといった感じで如意棒を出し、横島の額をこづいた。

「がっっ!!?」

横島は衝撃で後ろに仰け反る。

あまりに突然のことに、自分に何が起こったのか、状況を把握できない。

「なっ、何すか!?」

横島が体勢を立て直すと、目の前には老師だけではなく、小竜姫とタマモも並んで立っていた。

小竜姫の姿は変わっていないが、さすがにタマモは中学生といった感じではなく、二十歳ぐらいになっていた。

「出るぞ」

「へっ?」

老師の言葉に横島が間の抜けた声を上げる。

「だから、修行を終わらせてここから出ると言っとるんじゃ」

「終わりっすか?」

「終わりじゃ」

横島の言葉に老師が簡素に答える。

「でも修業の最後は俺と老師が戦って、苦戦しつつも一撃を入れて免許皆伝だ、みたいな感じにしなくいいんすか?」

彼は当然そうだと思っていた。

「なんじゃそれは……。お主とは日頃から何度も戦っておるし、すでに一撃入れるくらいはしておるだろう」

老師がにやりと笑う。

「それじゃあ盛り上がらないすよ!
俺なんか『νヨコシマは伊達じゃないっ!』とか盛り上げるために前々からいろいろ考えてたんすから」

それで盛り上がるのかは甚だ疑問だが、これで終わりでいいのかという疑問は小竜姫やタマモにもあった。

「……ふむ。確かにこのままではまずいかもしれんのう。
ではわしから小僧に餞別をくれてやろう」

“あの”斉天大聖だ。
何を出してもおかしくない。

だが老師は何も出すことなく彼にただ手をかざした。

「これからお主の力を封印してやろう。今のお主の霊圧は3万マイトほどあるからの。人界では大きすぎる」

「俺も穏行の術は使えますけど……」

「そんなことは分かっとるわい。だがお主はどこか抜けとるところがあるからのう。
時間移動してもあっさりばれてしまってはいろいろ困るじゃろう」

その言葉に小竜姫もタマモも同意する。

確かに彼は強くなったし、戦闘中も隙など見せはしない。

だが実生活となると、どこか抜けたところがあるのだ。
そんなところも二人には輝いて見えるのだが。

「あっ、あっさりって……」

ちょっと落ち込む。

「今からお主に四重の封印を施す。それを戦闘中に“解けば”段階的に強くなれる仕組みじゃ。一気に上がるよりそのほうが良かろう」

老師がかざした手に力をこめ、なにやらぶつぶつと呟いている。

「よしできた。では出るとしようか」

「これでもやっぱり盛り上がらんかったな……」

横島があきらめたように呟く。

「文句の多いやつじゃのう。では四つの封印式に名前でも付けてやる。
順に八卦・四象・両儀・太極じゃ。これで満足か?」

何だそのやっつけ仕事的な、明らかに今考えましたと言わんばかりの適当な名前は。
と横島は心の中で思ったがもう口には出さなかった。

小竜姫は横島のあからさまに文句のありそうな顔に苦笑し、タマモは呆れたような視線を彼に向けている。


それはそれとして四人は、

『お帰りはこちらです』

と書かれた扉をくぐり、久しぶりに妙神山に帰るのだった。


四人は修業に行く前、鍋を食べていた部屋に出てきた。
ここからあの空間に入ったので当然なのかもしれない。

部屋ではもう鍋は片付けられ、パピリオの要望なのかゲームをしていた。

「あ、ヨコシマ! お帰りでちゅ!」

「おう。ただいま」

パピリオが横島を見て目を輝かせる。

ほかの四人も顔をほころばせるとともに、彼がどう変わったのか、どれほど強くなったのか観察している。

「あれ? 強くなってるんでちゅか?」

「強なってるでー。今は封印しとるみたいやけどな」

最高指導者二人が突如現れる。

自分達の空間だから出てきたこともすぐに分かったのだろう。

サッちゃんがパピリオの質問に答えた。

今の横島は修行に入る前の半分ほどである、80マイトほどの力しか出していない。

「思っていたよりも早かったですね。少なく見積もって10年だったんですが、まだ9時間とちょっとしか経ってません」

「さすが横っちやな。あっ、ここはさすが妙神山担当の斉天大聖と小竜姫て言うたほうがええんか……。
まあええわ。嬉しい誤算やな!」

そう言ってサッちゃんは横島の肩を叩く。

相変わらずやたらとフレンドリーだ。

「ではさっそく行きましょうか。さっき言っていたことはちゃんと実行しますので、最後のお別れとかは不要です」

横島にとっては十年近く昔のことなので、さっきというのもおかしいがそのことは当然覚えている。

「じゃあ、ちょっと行って来ますね」

そう言って残りのみんなに微笑むと、横島は最高指導者二人と部屋を出て行くのだった。


「行きましたね……」

小竜姫が寂しそうな、それでいて嬉しそうな顔をする。

「心配はいらんじゃろ。わしがあれだけ鍛えてやったんじゃ。
まあ封印を解くためにはまた修業が必要じゃが、それも何とかするじゃろ」

老師はキセルを吹かしながらそう言う。
どこか誇らしげだ。

「でもあの御二方は横島さんの要望をどう叶えるつもりなんでしょうか?
そしてそれが出来たと仮定して、彼が歴史を変えたとき、私達や周りははどうなるんでしょうか?」

ジークの疑問を投げかけるが、もっともなことである。

皆大なり小なり同じ疑問を持っていたことであろう。

「どう叶えるのかは分からんが、起こるとすれば私達の認識の変化だと思う。
例えばルシオラが死ななければ、私達の認識は最初からルシオラが死んでいないということになるんじゃないか?」

姉であるワルキューレが疑問としてではあるが答える。
だがルシオラという単語が出たときは、べスパとパピリオの顔が若干陰っていた。

「まああの二人を信じるなら別に横島はいなくなったわけじゃないんだから、そのうち出てくるわよ。
元々あいつはここに就職の相談に来たみたいだから、そのことでも話しながら気楽に待ちましょ」

あの空間での生活でタマモは肉体だけでなく精神も成長している。
彼女からはかなり余裕が感じられた。

「ではとりあえずお茶でも入れましょうか。ヒャクメ、手伝ってください」

「わかったのねー」

小竜姫とヒャクメが立ち上がり部屋から出て行こうとする。

だがそれよりも早く、最高指導者二人が再び入ってきた。


「横っちは送ってきたで。……で、あんたらはどうする?」

突然の言葉に全員がえっ?という顔で二人を見る。

「私達はこれから彼の願いをかなえるための作業に入ります。
ですが貴方たちも彼と同じところに行きたいと仰るんでしたらそうしてあげようと。彼に対するささやかなプレゼントですね」

「神魔族は肉体がないぶん簡単やからな。
まあ、横っちとの約束は守るから別にどっちでもええっちゃあええんやけど、一人やったらしんどいこともあるやろしな」

二人の言葉に周囲は考え込む。

が、悩むまでもないと言わんばかりに一人の女性が声をあげた。

「行かせてください。私は今度こそ彼の役に立ちたいですから」

小竜姫である。

その顔は清清しいまでの決意に満ちていた。

彼女もあの修業の日々で霊格はさすがにほとんど上がらなかったものの、いろいろな面で成長しているのだ。

「そうゆうことなら私も行くわ。もう役立たずとは呼ばせないのねー」

ヒャクメが小竜姫に呼応するように声をあげる。

「ふむ……。また小僧を鍛えてやるとしようかの」

「ジーク! 分かっているな!」

「はい、姉上! 彼は大事な戦友です。
彼を助けるのに何を惜しみましょう!」

そして連鎖的に声があがる。

だが彼らと違い浮かない顔の二人がいる。

べスパとパピリオだ。

「ベスパちゃん……。ワタチ達はどうちまちょう」

この二人の選択はかなり大きい。
ここで分岐が二つに分かれるほどだろう。

「私達は……やめておいたほうがいいと思う……。
敵である私達が今の記憶を持っていたら、あいつがうまく立ち回れない可能性もあるし……」

「そうでちゅね……。でももうヨコシマにワタチ達と戦って欲しくないんでちゅ。たぶんそれだけであいつは傷つくと思うんでちゅよ。
そんなあいつだからルシオラちゃんは……」

最後のほうは声が震えていた。

そんな彼女をベスパは優しく抱きしめる。

姉として、今はいないもう一人の姉の分の慈愛も込めて……。

「あいつを信じよう。そして…姉さんを信じよう……」

「うん………」

姉の心からの優しい言葉に妹は一言そう呟いた。


「では始めましょうか」

「…ちょっと……」

先ほどまで沈黙を続けてきた女性が低い声を出す。

「私はどうなるのよ! 神魔族じゃないんですけど!」

「きっ、狐さんはお留守番やな…。過去に行ってもまだ生まれてへんわけやし」

タマモのあまりの迫力に最高指導者の声がうわずっている。

「ちょっと、それぐらいどうにかしてよ! 私だって横島の役に立ちたいんだから!
最高指導者なんでしょ!!!」

さっきまでの余裕はどこに行ったんだという勢いで、サッちゃんの首を絞めながら前後に大きく揺さぶる。

「ちょ、待っ……、最近こんなんばっかしやし……! 
……でもちょっと嬉し…………!!」

「落ち着いてくださいタマモさん。
それと貴方も不穏当な発言はやめなさい」

キーやんが二人を引き離す。

サッちゃんは咳き込みながら肩で息をしていた。

「分かりました。
あなたが望むのであればその程度のことは調整しましょう」

それを聞いてタマモもようやく落ち着く。

「肉体は今の状態がいいんだけど」

「贅沢言わないでください……」

やっぱり少し押されていた。


そうしてパピリオとベスパを残して、残りは出て行き、先ほどまで横島がいた空間から過去へと向かうのだった。


今までと違い二人になった部屋。

がらんどうにすら感じてしまうのは気のせいではないだろう。

「大丈夫でちゅ。ワタチにはベスパちゃんがいるから寂しくありまちぇん……。
それにすぐヨコシマが来るはずでちゅ。ルシオラちゃんと一緒に……」

「ああ……」

ベスパはさっきまでよりも強く、ぎゅっとパピリオを抱きしめ続けた。


「『みんな仲良くしあわせしあわせ』 こんな世界がほんまにあるんかな……。
そんな都合のいい……」


「そんなこと私には分かりませんよ。私は全知でもなければ全能でもありませんから。
それを知っているのは『あれ』だけですし、それが出来る可能性があるのは彼だけです。
それにしても魔族らしからぬ発言ですね」


「魔族とか関係あらへんわ。誰でもそれが一番ええに決まってるやん。
もちろんそれは魔族として、っていうことやけどな。
それにしても『あれ』か……。ほんまに存在してるんか?」


「私は全知全能でないと言ったところでしょう……。
それにこんなところで愚痴をこぼす前に、出来ることと、やらなくてはいけないことがあるはずです」


「そうやな……。じゃあ始めよか」


「ええ」


『彼に無上の光を』


『彼に永久の闇を』


『世界の優しさを彼に』


『世界の美しさを彼に』


『それは無かったもの』


『そして無くてはならぬもの』


『『世界に彼の願いを』』


その瞬間世界は―――


あとがき
ν=Newではないんです、と説明を入れつつ第7話です。
予定よりかなり遅くなってしまいました。
ベスパとパピリオをどうするか最後まで悩みまして……。
ですが彼がどう強くなったのかも分からぬままですが修業も終わり、逆行前も終了です。

今回もお読みいただきありがとうございました。


>tentenさん
私も邪眼使いが一番好きですね。
かなり王道って感じですけど。


>皇 翠輝さん
そうですね。どんどんスタンドが複雑化してますから。
レクイエムとかかなり難しそう。


>ルーさん
もう出さないってことは無いと思いますけど、そんなには。
さすがに反則くさいですしw


>ジョースターさん
ワムウ様っすか。
第四部好きがいてくれて嬉しいです。


>casaさん
何をするだーッ! の第一部ですねw
あれからすべてが始まったわけですからね。
老師がやたらノリノリなのは狙ってます。


>ヴァイゼさん
確かに、使えるスタンドは長いかも。
あ、でも『世界』が……w


>ジュミナスさん
UUURRRYYYどころか、無駄無駄無駄ァアア!とか、貧弱貧弱ゥ〜!とか言いそうですね。
いやむしろ言ってほし(ry


レス返しほぼジョジョだしw

では。
To Be Continued…

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