横島は思った。何で俺がツッコミばっかやっとるのかと。
本来俺はボケなのだ。なのに何故ツッコミに甘んじている?慣れない役回りゆえにツッコミも「爆笑○題のツッコミの方」並にイケてないコト山の如し。本場者ウェスタン(関西人)としてあるまじき醜態。
何故自分がこのような不遇を背負わねばならんのか?その答えを思案している時、「それ」は起こった。起こってしまったのだ。背後にから忍び寄る黒い影に気付かずに・・・。
(どうしたらよかですカイノー?横島さんのネタも尽きてしもうたし、話すコトが思いつかんデスジャー・・・。ああ!魔理しゃんが退屈そうに俯いとりますジャー!?)
などとタイガーが友人のネタを暴露しつくした頃、魔理は思い切った行動に出た。
そっ・・・とタイガーの手を握り、さらにそのまま腕を絡ませたのだ。
タイガーの脳は突如襲い掛かる柔らかい感触にエラーを起こし、魔理は魔理で恥ずかしそうに頬を染める。
「まマMA魔理しゃん!!?」
「・・・イヤ・・・かな?」
「と、とんでも無いですケン!!」
鼻息も荒く、周囲から白い目で見られていても魔理は平気だった。魔理は、本当にタイガーを愛していたから。彼が誰にどんな目で見られようと、自分がタイガーを見る目が変わる事は無い・・・と、確信していた。
「横島さん!!タイガーのヤツ、タイガーのヤツゥゥゥゥウウウウ!!!!」
「魔理ちゃん!そんなはしたないコだったなんてェェェェェェェェ!!!あの「血のバレンタイン」の誓いは何処に行ったのォォォォォ!?」
もう、言うまでも無くこのSSで理不尽極まりないほど真っ黒に染まっている「例の二人」が血の涙を流す。
全身から湯気が立ち上り、拳からは血が流れ、噛み締めた奥歯はギリギリと人体で最も硬い物質であるエナメル質に亀裂を走らせている。
「横島さん!?アレを見てもまだ・・・?」
ピートが横島を見たとき、其処にいたのはピートの知る横島ではなかった。
かつて世界を救った「魔神殺し」でも「文殊使い」でも、「時給255円の美神の奴隷」でも、女性と見れば幽霊にでも襲い掛かる「メガプレ○ボーイ(違)」でも無く。
「わぁ〜ん わぁ〜ん、おとうさ〜ん(泣)
怒れ、怒るんだゴ○ン
怒りのパワーが俺をスーパーヨコシマンに!
皆の怒りを俺に分けてくれ!!」
そう、横島の周囲には静電気が走り、額には破裂しそうな血管だ浮かび、目は血走っている。もう少しで○ーパー○イヤ人を超えたス○パーサ○ヤ人くらいにはなりそうだ。緑色のセミだかトカゲだかよく解らないニクイアンチクショウも片手でドカンですよ。
横島は全てを悟った。何故こんな役回りを俺が?
その答えは、日和っていた自分自身にあったのだ。
さっさと帰って寝ちまおうなんて腑抜けた思想が、横島に「本来タイガーが背負うべき不遇」を強いていたのだと。
真理に目覚めた横島は後光すら背負っていた。
「ピート。チーズ餡シメ鯖バーガー、まだ持ってるな?」
「勿論です。こうして懐で温めておきました。」
仕えるべき主君を見つけたピートは、恭しくも横島に跪く。
「よくやったピート。魔鈴さん、痺れ薬か何か持ってないスか?」
「常備していますよ?今日だってホラ・・・何か妙案でも思いついたんですか?」
完全に横島の指揮権に服した魔鈴も、さっきまでとは彼を見る目が変わっている。
「いえ、大した事じゃないンですが・・・
そろそろタイガーに本来の姿を思い出してもらうべきかな、とね。」
OPERATION TIGER 〜お前は虎になるのだ〜 Vol. 4
先ほど腕を組んでから、二人の間に会話は無かった。
タイガーの目は明後日の方向を見ているし、魔理は俯いたまま。だが、その下を向いたまま確認できていない表情は、決してネガティヴなそれでは無い。その事はタイガーも流石に認識していた。
が、直前まで悩んでいた「間がもたない」と言う問題は依然として解決しておらず、タイガーは幸せを噛み締めつつ、やっぱり悩んでいた。
(どげんしたらよかですカイノー!?何かこう、気の利いた言葉の一つや二つも・・・ああああああああああーーー!!経験不足の自分がコレほど怨めしく思った事はなかったデスジャー!!!」
「声に出てるぞ、タイガー(笑)。」
「は!?またしても!?」
「・・・そんなコト気にするなよ。アタシだって・・・腕組んだりするの初めてなんだからさ。」
腕組んだりするの初めてなんだからである
しつこいようだが、初めてなんだからである!
コレは、彼女いない暦と年齢がイコールな男にとっては「一度は聞いてみたい台詞No.1」と言っても過言ではない。
タイガーは、一生叶うことは無いであろうと諦めていた夢を掴んだのだ。
嗚呼、タイガー。夢を掴んだお前は輝いている。
そう、お前はもうお天道様があまねく照らす世界の住人になったのだ。誰に後ろ指さされる事も無く・・・・・・え?
しまった。失念していた。このSSの主題は、タイガーが幸せになる話ではなかったのだ。オウシット。
ほら、ちょいと後ろに目をやれば・・・ってアレ?「実行部隊」の面々が・・・・・・・・・・・・・・いない。
ヤバイ。唯でさえ俺(作者)の手を離れ気味だった実行部隊を見逃してしまった。
ヤバイ。前からだったけど、もはやヤツ等の動きに全く予想がつかない。
ヤバイ。作者に残された最後の良心が警告している。
やっぱり俺の声なんて聞こえはしないんだろうけど、言わせてくれ。
なんかこのシーン書いてると、「タイガー×魔理のラブラブSS」にしたくなってきてんだ。そのためにも・・・
逃げろタイガー!!!逃げてくれ!!!
ふと、タイガーがこちらを振り返った。まさか、俺の声が聞こえたのか!?
彼は嬉しそうに微笑みながら、親指を突きたてた拳をグッと突き出す。
違うって!おまっ、そんなん悠長に勝ち誇ってる場合じゃねぇってばよ!!ナニ満足そうに笑ってんだよ!
一瞬の後、彼は恐怖としか言い様の無い表情をあらわにする。それを喩えるなら、「休日に美神、おキヌ、小竜姫、ワルキューレ」に四方を囲まれた横島のソレと言えば解って頂けるだろうか?
タイガーの視線の先にはまさしく、その横島がいた。第一話で見せた、「その顔でナンパしたら〜〜」ってな笑顔の彼が。横島はその笑顔を崩さずにタイガーと同じく親指を立てた拳を突き出す。綻ぶタイガーの表情。
嗚呼、彼はとうとう友人からも祝福を得たのだろうか?もはや彼の行く手を阻む者は何処にもいない・・・筈だった。
横島の親指がクルリと下を向かなければ。
「!!」
悲鳴を上げるよりも早く、タイガーの巨体が揺れた。
突然圧しかかられた魔理は「こんな真昼間から!?」と驚きを隠せなかったが、無論事実は違う。横島とは別の地点から魔鈴が「たまたま持っていた痺れ薬」を塗った「たまたま持っていた吹き矢」を放ったのだ。横島に気を取られていたタイガーは、完全にその毒矢を受けてしまった。
「タイガー!?しっかりしろ、大丈夫か!?」
恋人の異変に気付き慌てふためく魔理。其処にピートと横島が駆けつける。
「横島さん!?ピートさん!?なんでココに・・・!?」
突然の乱入者に身を硬くする魔理。
「落ち着いてくれ魔理ちゃん。実はタイガーはこんな図体してるけど病気を抱えているんだ。俺たちがいつも一緒にいるのは、発作が起きた時に薬を飲ませるためなんだよ。」
「今日は体調がいいから大丈夫ですケン!って言ってはいたけどやっぱり心配だったんです。それで、魔理さんが一人になった時にこの特効薬を渡しておこうと思って後をつけてしまってたんです。最も、その前に発作が起きてしまったようですが・・・。」
冷静に話しながら、痙攣を起こしているタイガーにハンカチを噛ませるピート。飽く迄、「舌を噛まない様にする為」と言わんばかりの手際の良さである。
「じゃあ早くその薬を!!」
「勿論、用意してあるさ!
コレがその漢方配合ファーストフード風特効薬、
スグナオールGSXだっ!!」
某ネコ型ロボット銅鑼衛門風に懐から取り出したのは、言うまでも無く例のブツ。
包み紙に「漢方!良く利く!!直ぐ治る!!!」と書かれ、余計に怪しさ満点である。
タイガーの顔が青ざめる。包装が違っても、その匂いまでは変えられない。しかし全身の筋肉が弛緩し、ご丁寧にハンカチまで口に突っ込まれた状態ではソレを拒否することが出来ない。
「・・・なんかタイガー、微妙に嫌がってるように見えるんだけど?」
「そりゃ嫌がるさ。だってコレ、漢方配合ハンバーガーだよ?「良薬口に何とやら」ってヤツで、ビックリするぐらいマズイんだ。」
ビックリするくらい、で済むかー!!
タイガーは涙目になって訴えるが、唯一の味方であるはずの魔理は、
「そっか・・・でもマズくても、食べなきゃ治らないんだろ?
それになんてったって
漢方配合だし!
スグナオールだし!!
GSXだし!!!」
そう、魔理は「チーズ餡シメ鯖バーガー」の存在を知らないのだ!そして至極単純なのだッ!漢方とか風水とか、そういう単語に怪しさを感じるよりも先に「何か凄そう!」と言う反応を示してしまうヒトなのだッ!!六道女学院生徒会調べ「宗教とかに引っかかりそうな人No.1」の名は伊達ではないッ!!(また勝手な設定が増えた・・・)
「さぁタイガー!早く食べて元気になってくれ!!」
(魔理しゃん!それは違うんデスジャー!!横島さんの陰謀デスジャー!騙され易すぎデスジャー!!)
「横島さん、このコ頭弱いですよ!」
「うむ、流石にココまで思惑通りだとイタイ気もするが、それはそれとしてOKだッ!!」
小声で喜びながら涙を流す二人。
ふと見ると分隊の魔鈴とジークも涙を流してサムズアップ。
四人は作戦の成功を確信していた。
「さぁ、タイガー!食べなきゃ死んじまうんだぞ!?マズイくらいでそんなに拒んでる場合じゃないって!」
いつの間にか「食べなきゃ死んじゃう」設定になっているタイガー。誰もそんなコトは一ッ言も言っちゃいないのだが、「食わない虎はただの虎だ!」とか訳のわからん理屈すら持ち出す魔理。やっぱりオツムはちょい弱め。
(ぐっ・・・此処で・・・此処で根性見せんと、ワッシはホントに張子の虎デスジャー!!)
「其処までです、横島さん!!」
なんともご都合主義的に現れた袴姿の少女。デジャブーランドにおいて浮いてる事山の如しだが、当人はまったくもって周囲から寄せられるサムーい視線は気にならないご様子。私服もコレなん・・・?
「おキヌちゃん!?」
そう、現れた少女は氷室キヌ。GS美神で唯一の常識人キャラって設定は何処へ行ったのか!?今ではすっかり黒くなったり黒くなったり黒くなったりとPaint It Blackな心底真っ黒キャラにデフォルトで設定され気味な、元正統派清純ヒロインである。
「横島さんの企みは全て見ていました!私とのお買い物をほっぽり出して、どうしてこんな酷いコトするんですか!?」
横島は驚きを隠せなかった。隠せる訳が無かった。「私とのお買い物」ってナニ!?そんなアポイントメントはマジで記憶に無いぞ!?ってゆーか真偽はともかくこの場でその台詞はマズ・・・!!
「ちょ、ちょっ何の話・・・!!」
「「・・・横島さん?」」
まるでThe W○rldを背負っているDI○の様な気配で横島に向き直る二つの影。
それは勿論、ヤツラである。
ジリリ、と二人のスタ○ド使いから遠ざかる横島は、この場で最も立場の弱いヤツに声をかけた。
「じ、ジーク!お前は誤解だって解ってくれるよな!?な!?」
「・・・横島さん。」
「そ、そうだ!俺秘蔵、幻のククルス・ドアン専用ザクを君に譲りたいと思っていたトコロなんだよ!だからさ、だからさ・・・」
「裏切りは、軍人として最も忌むべき、恥ずべき行為です!!」
そう、おキヌの一言で部隊内において下克上が成ってしまったのだ!横島の居場所はもう、かつての仲間の照準の先にしかなかったのだ。
「ま、まって・・・!!!」
さぁ、四面楚歌に追いやられた横島。
さぁ、どうなる横島!そしてどうする俺!?タイガーを幸せにしてやれるのか!?
続け・・・(切実)
おめおめと皮の厚い顔を出させていただきます、GAULOISES46ですこんにちわ。
もう、理由(言い訳)はありません。強いて言えば、見直ししたらほぼ全部書き直しになったくらいです(←言い訳)。
さて、それでは生意気にもレス返しとかさせて頂きます。
>柳野雫さま
魔鈴真っ黒化は二話で登場した時には決定しておりました。でも何か、ホントにほぼ全てのキャラが真っ黒になっちゃって・・・タイトルを「Paint It Black」に変えようかと真剣に悩んだくらいw
>偽バルタンさま
魔鈴違和感無いですかそうですか。
やはり魔女ですからねぁ。部屋も趣味悪いですモンねぇ。
>この先どんどんヤバくなって行きそーな・・・
収集着けたいです。なのに風呂敷ばっかり広がっていくゥゥ!!(ToT)
>通りすがり損ねて転んだ人さま
足引っ掛けて申し訳ありません。自分への戒めの意も込めて置いておきました(決して放置ではないと言ってみる・・・)が、直しておきましたので。
>リーマンさま
ハイ、このSSは総キャラ黒化ですから。特に女性は酷いですw
書きかけのSSがお亡くなりですか・・・やっぱりコレは避けて通れない宿命ですよね、PC使いなら。
>朧霞さま
ハラショー!魔鈴の可愛さが解っていただけましたか!w
今回、横島には黒化復活させましたが、直後に襲う「元祖黒キャラ」の魔の手が!!
・・・次で何とか完結にしたいGAULOISES46でした。それでわっ!
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