まず最初に、これを読んでいる方にお詫びとお礼を申し上げます。言い訳は最後に書いてますんで・・・。
西条はほくそ笑んでいた。
原作及び多くのSSで不遇を被っていた自分の身にいい加減嫌気が指していた頃、魔鈴からの
「私、実はデジャブーランドって行った事無いんですよねぇ・・・。」
と言うアプローチ。
勝った。
コレはもはや勝ったと言っても過言ではない。
カードの準備は済ませたか?
ホテルの予約は?
鉢合わせたりせぬ様、令子ちゃんの予定の確認はOK?
全て滞りなく済ませております、マスター。
素晴らしい、パーフェクトだウォルター。
目の前には魔女の格好をした憐れな子羊。
ボクの手にかかれば美味しく丸焼きでイタダキマス、だ。
さっきはつい自分の中の何かが抑えきれずに叫んでしまったが、それも彼女の前を離れ万全の距離を取った上での行動。彼女に見られている可能性は全く、無い。
恐ろしい。ココまで全てが上手く運ぶとは。
やはり正義に身を投じるボクの姿に、世界の因果力は味方するのさ。
「やぁ、待たせたね魔鈴くん。」
「いえ、全然気にしてませんよ?具合でも悪いんですか?」
「最近忙しかったからね。だから今日くらいは思う存分羽を伸ばすつもりさ。じゃ、行こうか。」
「ハイ♪」
「待て!!」
む、何奴!?
振り向いた西条の目に映ったのは、
口元をバンダナで隠したテロリストの拳だった。
OPERATION TIGER 〜お前は虎になるのだ〜 Vol.3
「何をするんですか横島さん!!」
理不尽な襲撃に激昂する魔鈴。膝枕に抱きかかえるはロン毛貴族の屍。
そりゃそうである。折角カネヅルを確保して夢であったおとぎの国で存分に楽しむつもりだったのに。(西条は夜伽の国しか見えていなかったのだが)
「それはこっちの台詞ですよ魔鈴さん!見損ないましたよ!?」
「うッ、ピートさん!?」
逆ギレするピート。全くいわれの無い非難のハズなのに、魔鈴は何故か身を硬くする。
「有象無象の恋人達を血の海に沈めてきた、あの「西洋魔術の弁財天」と呼ばれた魔鈴さんは何処に行ってしまったんですか!?」
「「何ィ!?」」
(注:コレを読んでる方には説明の必要も無いとは思いますが、この場合の弁財天は嫉妬の神の意であります。)
意外すぎる魔鈴の一面に驚きを隠せない横島とジーク。
魔鈴は痛いところを突かれた様にギリッと歯を噛み締める。
「だ、だって!西条先輩はアレでもお金持ってる上に国家公務員のエリート街道まっしぐらなんですよ!?」
呆然とする横島とジーク。彼らの知っている魔鈴の姿とは明らかにかけ離れている。
そんな2人を他所に真剣な眼差しで重く言葉を吐くピート。
「・・・・・・・魔鈴さん、今日このデジャブーランドでタイガーが魔理さんとデートしています。」
「なッ!?ピートさん、それは本当なんですか?!」
「ボクだって何かの間違いだと思いたいですよ。だけど、現にタイガーはこの中にいます。女子高生を連れてイチャイチャとストロベリってるんです。魔鈴さん、コレを聞いて貴女は如何するんですか?」
(そんな、在り得ない!タイガーさんが!?とうとう其処までプライドを捨てたの魔理ちゃん!?と言うか私に何の断りも無く彼氏を作ったというの?!)
「僕の知っている同志なら、コレを聞いて体の奥から沸き立つ衝動を抑えきれるハズはありません。貴女が僕の知っている魔鈴さんなら、ね。」
「・・・・・・・・・ない。」
「え?」
魔鈴の囁きを聞き逃した横島。しかしジークは魔族の超感覚によってソレを聞き取ってしまった様でガタガタと肩を震わせている。
「許せない。」
「えぇえぇぇぇえッ!!!!?」
「ピートさん、何をモタモタしているんですか?現状を迅速かつ正確に報告してください。」
「貴女ならそう言ってくれると信じていましたよ、魔鈴さん。ジーク、状況を閣下に報告せよ!」
「は、ハイ!「虎」が「ヤンキー女」と共に入場したのを確認したのが約五分前!現在我々は資金面の問題で入場出来ずに状況を打破する為作戦を思案しているトコロで在ります!」
「そんな事で五分も潰してしまったんですか?状況は刻一刻と変化しているのよ!?貴方はそれでも将校ですかッ!?」
「魔鈴さん、現在の彼は三等兵です。そこまで要求するのは酷と言うものですよ。」
「三等兵であろうがなんだろうが、選ばれた兵隊にそんな悠長な事は許されません!そんなザマで良くおめおめと生き残れたものですね。」
「えーと、魔鈴さん。そうすると何か妙案があると?」
横島が投げ遣りに聞く。
「案というのもおこがましいですよ、こんなコト。三等兵、そこのロンゲから財布を抜き取りなさい!」
「「えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!」」
「早くなさい!それから、財布の無いソレはちゃんと処分しておいて下さいね?」
「しょ、処分って・・・!!」
「今日は生ゴミの日じゃないから、海にでも放り込んで来て下さい。」
確かに埋立地だけあって、少し歩けば海は間近にある。
しかしソレ、ヒトとして大丈夫なのか?
「さぁ、地獄へ行きましょう♪」
そう言って、魔女は嬉しそうに微笑んだ。
このシリーズにおいて主役であるはずの彼は、ようやく巡ってきた出番に歓喜していた。
横島(と言うかピート)達の動きを知らぬ彼は、このSSが自分と魔理のラブラブな作品だと勘違いしている。
筆者の声が彼に届くかどうかは解らない。が、一つ言ってく。
甘いッ!!
クライベイビー・サクラの超特濃カクテル(ガムシロップに蜂蜜のブレンドジョッキ飲み)よりも甘いッ!!
貴様に安息の日は訪れないッ!GSスキーな人の中にはお前に彼女がいるコトを忘れているどころか知らない人もいるかも知れないくらいだッ!!
ブルッ
筆者の声が届いたのかどーかは全然分からないが、魔理が急に悪寒を感じる。
「どうかしたんですカイノー?」
「い、いや…なんかとんでもなく嫌な予感がしたンだけど…。」
(気のせいだよな?まさか魔鈴さんがこんな場所にいるはず無いモンな?あんな悪趣味な人に彼氏が出来るわけ無いよな?さらに言えば一人で来るなんてそこまでプライド捨てたりしないよな?)
魔鈴と同レベルの危険発言を心中に仕舞い込み、笑顔を取り繕う魔理。
その後方100m程に、未曾有の危機が忍び寄るのにも気づかず・・・。
さて。入場間も無く既に追撃隊はタイガーと魔理の動きを捕捉していた。
「魔鈴さん、どうするんですか?」
「ここは必殺のアレを使うしかないわね。そう…エミさんすら知りえない太古に失われたグレイシー呪術を!!」
「グレイシー呪術!?どこでそんな危険なワザを?!」
説明しよう!
グレイシー呪術とは幕野高校呪い部の歴代部長にのみ相伝される、それはそれはおっそろしい呪術なのだ!
その効力は恋愛を成就させたり破綻させたり、五円玉を使用して対象を幼児退行させ古き記憶を呼び覚ますなど多岐に渡るッ!!
「それってフツーに催眠術じゃん」とか言っちゃダメのダメダメなのだッ!!
「ココに呪いの基本アイテム、ステレオタイプなワラ人形があります。」
取り出したるは言葉通り、誰が何処から見ても他に使い道が無さそうなワラ人形。
「コレにタイガーさんの髪の毛(多分)を一本入れます。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ魔鈴さん!その(多分)って何ですか!?」
「お店で拾ったものだからタイガーさんのとは限らないんですよね。まぁ、細かいことは良いじゃないですか、他にも幾つかあるし♪」
嬉しそうに語る魔鈴。台詞が違えば、横島も萌え尽きていたほどにその笑顔は眩しい。
「ッてことは度々行ってる俺とか雪乃丞の髪かもしんないンすか!?」
「そうですね、充分在り得るどころかフツーの一般人のお客さんかもしれないですよね。」
「ってなんでそんなノンキなんだピート?」
「だってコレ黒髪だし、ボクのじゃ無いですから♪」
「それでは呪いの儀式を執り行います♪」
「頼もしーでスよ魔鈴さん!!」
「止めろ馬鹿ッ!!」
横島の必死の制止も虚しく、魔鈴は嬉しそうに銀の杭をワラ人形の胸に当てる。
「この銀の杭を心臓あたりに打ち込めばアラ不思議!タイガーさんは悶絶すること間違い無し!!」
それを聞いた横島がそわそわしている。胸を掻き毟り、何か言いたくて仕方無さそうだ。
うむ。お前の気持ちはよく分かるぞ横島。ウェスタン(関西人)の血が騒ぐのだろう。だから俺が代わりに言ってやろう。
「それって至極一般的な呪いとどう違うんですか?」
迂闊発言のジーク。魔鈴は予備のワラ人形に銀髪を入れ、迷う事無く杭を打ち込む!
「ギャァァアァァァァァァアアアア!!!!」
ほーら、言わんこっちゃ無い。だから俺が言おうと思ったのに。作者様の台詞を遮るからだ、ケッ
「今何か凄く不穏な発言があったような気もしますが?」
「完全無欠に気のせいです!気にせずやっちゃって下さいッ!!」
魔鈴の恐ろしさを目の当たりにした横島は、もはや抵抗できる相手ではないと判断していた。
舞網近辺の東京湾に流れるロンゲ公務員、極貧教会に住まう人の良い神父、ガングロ呪い女などの犠牲を払っても、タイガーは倒れなかった。つまり、魔鈴の持っていた髪の毛にアタリは無かったのである。その他多くの一般ピーポーが胸を押さえて苦しんでいる間にも、タイガーはのほほんとデートを楽しんでいた。
「おかしいですね…コレだけ打ち込んでもタイガーさんは無事だなんて…。」
「犠牲を恐れて進歩はありません!さぁ、早く次のを…!!」
「やめんか阿呆ッ!!自分のが入ってないからって強気になりやがって!!見ろ、この屍の山を!!」
横島が指差した方向には「死屍累々」と言うほか無い光景が広がっていた。魔鈴の店の客が多く来場していたらしい。もはや前回横島が危惧した以上の地獄が、ココにはあるのだ。
(まさか魔鈴さんまでヤツの同類だったとは…とりあえず魔鈴フラグはこれ以上進めるわけにはいかんな…!!)
なんかスッゴイ危険発言をやっぱり心に仕舞い込み、横島は魔鈴を戒める。
「兎に角これ以上の犠牲者を出すわけには行きません!なんか他の手立てを考えてください!」
「「え〜?」」
「ムスっとしても可愛くない!いや、魔鈴さんは可愛いんだけどソレはソレとして!あんな幸せそうな親子連れを毒牙にかけてもまだ目を覚ませないんスか!?」
横島の問いにハッとする魔鈴。指の先には胸を押さえてうずくまるアットホームパパと、父を心配する小学生ほどの娘、そして母親と思しき女性。
魔鈴の肩が震え、唇に血が滲む。
「幸せそうな親子連れ…と言う事は、かつて幸せに恋愛してその賜物を授かりやがった背信者と言う事ですよね?」
「その解釈やめぃーーーーー!!」
続・・・けマス(汗)
m(_ _)m
投稿が大変遅れてしまい言い訳の仕様もございません、まだ生き恥を晒しておりますGAULOIRSES46です。
実は第二話を投稿した直後、PCのシステムがイカレてしまいまして、必死こいてデータをサルベージし、復旧を行っておりました。
更に現在、横島並みの極貧生活を送っている真っ最中でイカレたHDDを購入するのも容易ではなく、加えて春休みが終わり、バイトを見つけたのも理由として挙げられます。
PCの復旧が完了したのは一週間ほど前ですが筆が進まず今回もこの様に短くなっております。
とどのつまりはPCがイカレたのを切っ掛けに私生活の忙しさに追われ、電波も降りてこなかったので「アイツ、続きが書けなくて放り出しやがったなゴルァ?」と思われても仕方が無い程の期間が開いてしまったと言うことです。
何と責められてもコレ以上申し開き出来ません。本当に申し訳無いです。
第一話から第二話までの期間が異様に短かったのは奇跡だったので今後はトラブルの無い限り安定した投稿ができるようにしたいと思っております。
この話はそう長引かせる予定は無いので、もう少しだけお付き合い頂けると幸いです。第四話のネタは降りてきましたんで、1〜2週間の内にお見せできる・・・と思います。
最後になりましたが今までレスを下さったYOUKAIさま、酔っ払い?さま、偽バルタンさま、MAGIふぁさま、柳野雫さま、リーマンさま、AC04アタッカーさま、Danさま、LINUSさま、朧霞さま、そしてコレを読んでくださっている方にもう一度謝罪とお礼を申し上げます。