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▽レス始

「陰界第十二話 後(GS+??)」

ルナ (2005-05-15 12:29)
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「え!?今……なんて……」
「ほえ?」
『ん?』
 自分の影法師と談話していた横島の耳に、美神の声が聞こえてきた。
 一体何事だろう?と思い、顔を上げると。
「ですから『最後は私が相手をしますよ、美神さん』と言ったんです。
 何か不満でも?」
 軽く首を傾げる小竜姫に美神は『不満だらけです!』と表情が訴えていた。
 力の一部を解放しただけで自分達が吹っ飛んだのを思い出し。


『霊格の桁が違うのよ?流石にこんなのと真っ向勝負して……勝てる?』
 軽く自分に問いかけ。


『絶対無理』

 一秒で答えは出た。

「……!」
 そんな時、まだ出たままになっている横島の影法師へと目を着けた。
 横島の頭に乗っかり、美神達の会話を聞いている。
 ピートの影法師は既に戻っているのに……
 疑問よりも先に、案の方が早かった。


「……ねぇ……小竜姫さん、しばらく私達だけにしてくれないかしら?
 最後になるかもしれないし……今の内に、皆と話をしておきたいの」
 少し寂しそうな表情を浮かべ、横島達を見つめる美神。
 その姿に色々と思う所があったのだろう。
「……良いでしょう」
 小竜姫は脱衣場のドアを開け、そのまま消えて行った。


『さ、最後って……そんな弱気になっちゃ』
 キヌはオロオロと美神へと近づいた。
 ピートや横島も不安げに寄って来る。
「そうですよ、美神さんらしくない」
「病は気からだよぉ!!」
 ちょっと見当違いな事を言っている横島、その頭の上に乗っている影法師は不敵に笑っていた。
『で、どんな悪巧みをしてるんだ?』
「ふえ?」
 影法師の言葉に美神は。
「失礼ねぇ!作戦と言いなさい!」
 少し怒りつつ、美神は横島へ視線を向けた。
『え?作戦……って?』
 涙目のキヌの問いには答えず、美神は横島の影法師だけを呼んだ。
 その場にしゃがみ、相談を始める二人。


 ピートはその姿を見つつ。


「美神さんは……本当に先生の弟子なんでしょうか?」
 軽く見上げた空に唐巣を描き、ピートは遠い目をした。

 影法師と話をする美神を見、横島は「ずるいー!」と悔しがっている。
 どうやら仲間はずれにされている気がするのだろう。


「話は済みましたか?」
「やだー!!!全然済んでない〜!!」
 そろそろ話も終わっただろうと思った小竜姫が戻ってきた。
 むしろ会話自体をしていない横島は大騒ぎ。
 だが、それを寂しがっていると思う小竜姫は「あらあら」と呟いた。
「けれど、そっちの方はもう……済んだみたいですよ?」
「えぇ……とりあえずはね」
 返事をしつつも、その視線は横島の影法師へと向いていた。


「……何の話してたの?」
 隣へと戻ってきた影法師へ問い掛ける横島、にやりと笑い。

『大人の世界は『勝てば良い』って事さ』

 その言葉に横島は懸命に考える。
「……大人??」
「大人……ですか?」
『……ぽっ』
 影法師の言葉に頬を染め、キヌは『いやん』と身体を回転させた。
 一体何を考えたのかは……謎である。


『先に言っておく事がある』
「ふえ?」
 闘技場の上では、既に小竜姫と美神の影法師が対峙している。
 これから戦う小竜姫が美神の身体の疲労を癒しているらしく、傷を直していた。
 今ならば誰も横島を見てはいない。
『これから……ちょっと夢を見るかもしれねぇ』
「ゆめ?」
 影法師は肩に手を乗せ、優しく微笑んだ。
 まるで子を見守る親の様な瞳で。
『下手すれば……ショックで気絶するかもしれないけど……安心しろよ


 『あれ』はお前じゃないんだから』

「え?」


 問い返す前に、闘技場の上で動きがあった。
 小竜姫の身体が同じ霊体、影法師へと変化した。
『準備は良いですか?それでは……行きますよ!!!』


 相手が構えたのを見、小竜姫は腰に下げていた剣へと手を伸ばした。
『はっ!!』
「っ!」
 その動きを見、美神は反射的に身体を逸らす。
 紙一重でかわし、小竜姫から距離を取る。
 一瞬の隙を懸命に探しつつ。
『さぁ!打って来なさい!!』
 逃げる美神を追い、小竜姫は距離を縮めた。
 そこに隙は全く存在しない。

『「美神さん!」』
 このままではやられてしまう。
 焦るキヌとピートの言葉に横島の影法師は笑う。
『隙が無い……ならば』
 周囲を舞う球へと手を伸ばした。
 無造作に右手で掴んだ球は、蒼き光を放っていた。

『作れば良いのさ』

 ピンと指先で弾き、闘技場のど真ん中へと転がす。
 転がした球の近くに居たのは……小竜姫。

『なっ!?』
 突然転がってきた球は一瞬で小竜姫の足を凍らせた。
「でかしたわ!!」
 今まで逃げていた美神が小竜姫へと駆け寄る。
 持っている槍を思いっきり掲げ……振り下ろす。

「っ!!!」
 戦いを見て居た筈なのに、横島は違う世界に立っていた。
 見える景色は歪み、聞こえる声は小さくなっていく。

 まるで……自分の身体と心が離れていくかの様。


『お姉さんの夢を見たの』
「え?」
 何も見えず、何も聞こえない空間でハッキリと聞こえてきたのは……女の声だった。
 何処か寂しげで、けれど凛としている声。
『姉は言ったわ、ファイアの日に逢えるって……』
「ファイア……?」
 横島は聞こえる声の主を必死に探すも、その眼は何も映さない。

『君がここへ呼ばれた理由、それはもう分かっている筈だ』
 再び唐突に聞こえて来る声、それは先程とは違う男の声。
 その声は冷たく、突き飛ばすような印象を与える。
『四神獣となるべき存在を探すのだ』
「ししんじゅう……?」

 聞いた事も無い単語達。
 その筈なのに、横島の記憶は悲鳴を上げる。

 行かねば。

 行かねば。
 行かねば。


 行かねば。

 行かねば。

 いかねば。


 何処へ?


 自らに問う。
 けれど、答えは見つからない。

『小さな問題は必ず大きな摂理と繋がっている……』

『妄想が尽きる……尽きる……つき……るぅ』

『水銀は薬なんだ』

 多くの言葉の渦、横島の意識は……段々と深い所へと落ちていく。
 だが、それを止める『物』が出現する。

 目の前に出現する……巨大な力。

 それは……禍々しい邪気だった。


 思いっきり槍をかざすのだが……当たる前に、目の前から小竜姫の姿が消えてしまう。
「へ?」
 視線を下に向けて見ると、霊体から肉体へと戻っている小竜姫の姿が。
 先程まで凍っていた足は肉体へ戻ったので無くなっていた。
「ずっるーい!!途中で元に戻るなんてー!!」
 戦いは勝てば良い、そう豪語しているのだが……何故か相手がした場合は絡む。
「先にずるしたのは貴方です!!」
 足元に転がっていた球を睨みつけ、小竜姫は怒りの声を上げた。
 横島の影法師はただ横島を見つめるだけで、話には口を出そうとしない。
「何よ!さっきは特例として助っ人を認めたじゃない!」
「あれは先程の試合限定です!!」
「そんな事、いつ誰が何時何分に言ったの!?私は聞いて無いわ!!」
 半分程子供の喧嘩レベルに落ちてしまった。

「……この場合……どうなるんでしょう?」
『さぁ……?』
 顔を見合わせ戸惑う事しか出来ないピートとキヌ。

 その間も……影法師は横島を凝視するだけ。


「ぅ……あ……」
 横島は必死に身体を震えを抑えようとしていた。
 だが、身体は言う事を聞かず……
『?』
「横島さん?どうしたんですか?」
 闘技場での戦いが子供の喧嘩になり、キヌ達は横島の様子にようやく気付く事が出来た。

 顔は青ざめ、今にも倒れそうな雰囲気を宿していた。
『横島さん!?どうしたんですか!?』
 キヌは横島の袖を引っ張り、懸命に呼びかける。
 横島からの返事は……無かった。

 かわりに……返って来たのは……

『っ……きゃ!!!』
 禍々しい邪気だった。
 ピートが反射的に身体を引っ張ったので、キヌは無傷で済んだ。
 だが……邪気は真っ直ぐ小竜姫へと飛び。
「ですから、今の無効で……っ!?」

 紫色の靄をまともに浴びてしまった。

「な、何!?」
 口喧嘩の最中、突然出現した靄。
 靄に包まれ、小竜姫まで様子がおかしくなっていく。
 横島同様、身体が震え出す。
 大きく痙攣し、勝手に身体が動いてしまう。
『ちっ!!陰界の邪気がここまで来やがったか……流石に、まだ早かったか?』
 横島の影法師が苦々しく呟き、持っていた球を横島の身体へと押しやる。
 身体から漏れ出していた紫の靄は、球を押し付けられた瞬間……消えて無くなった。
『次はアンタだ!小竜姫……』
 先程押し付けた球を小竜姫へと向けようとするのだが……それよりも早く。

 一匹の竜が出現していた。

「でぇぇ!!?」
 突如闘技場へ出現した竜は炎を吐き、辺り構わず暴れ回った。
 その姿に理性は感じられなかった。
 先程まで見た目はただの女性だった筈の小竜姫の身は、巨大な竜と化していた。
「いっ……一体どうなってるんですか!?」
『えっと……小竜姫さんと美神さんが戦って……反則して……えっとえっと……??』
 事態を把握しようと必死に考えるキヌだが、把握する所か……混乱を招くだけだった。
『しかたねぇ……目を覚ませ!!』
 腕の中で眠る横島へ呼びかける、喉から出る声ではなく……心の声で。


 ―お前の仕事は何だ?
 言ってみろ―


 その声により、横島は目を覚ました。

 その髪の色を……銀色へと変えて。

「我的仕事邪気祓……」
 ポケットの中に手を伸ばし、横島は目の前の竜へと目を向けた。
 脱衣所で荷物置きに置いて来た筈の小太刀を握り締めて……

「査!!」

「「『っ!?』」」
 その声に、横島の人格が変化している事に気がつく。
「やったわ!あの状態なら助かるかも!!」
『横島さん!頑張って下さい!!』
 相手は神、レベルが違うのだ。
 自分達では敵わない、だが……実力が未知数なあの存在ならば?
 美神達は期待していた。
 強力な助っ人の登場に。
『ぐおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!』
 身体の周りに白い線が出現し、周囲を囲む。
 動く事が出来ず、苦しげに身体を揺らす竜。
「禍々的邪気!汝無還!!!」
 そう叫び、横島は小太刀を思いっきり上へと振り上げる。
 しかし……竜は放たれる力を弾き、そのまま白い線からも逃げてしまう。
 竜は線から出、脱衣所のドア目掛けて頭突きをする。
 一回の頭突きにより、空間は壊れてしまった。
「きゃあ!?」
 空間は壊れ、凄まじい音を発する。
 あまりの事に全員が顔を歪ませて、耳を押さえた。
『ぐおおおおおおん!!!!!』
 小竜姫はその音に更に興奮したのか、動きを大きくして行った。

『……神と言えども、陰界の邪気にはこのざまか』
 そう呟き、暴れ狂う小竜姫から目を離す。
 視線の先には小太刀を構え、呼吸を整える横島の姿が。

『そんな邪気の中で……お前は……俺達は……』

 影法師は小さく舌打ちし、何処か悔しそうに呟いた。
 その拳は強く握りすぎ、微かに血が滲んでいた。

『人間として……生きる事も……死ぬ事も出来なかったなんてな……』


 脱衣所を抜け、巨大な身体を揺らしつつ修行場を破壊していく小竜姫。
 修行場には結界があり、門を通る以外に表に出る方法は無い。
 もしも……小竜姫が門の所まで行けば、山全体が焼け野原になってしまうだろう。
『いやだー!!死にとうなーい!!』
 何処から野太い悲鳴が聞こえてきたが、横島は構わず。

 ただ精神を集中させていた。
 そして。


「破ぁ!!!」

 思いっきり小太刀に力を込め、横へと斬った。
 距離はかなりあったのだが、小太刀から強大な力が発生して小竜姫まで飛んで行った。
 まるで吸い込まれるように小竜姫の額に当たり、身体から紫の靄がゆっくりと放出される。
 放出された靄はそのまま空気の溶け、消えてしまう。
 それをきっかけに、一匹の竜と姿を変えていた小竜姫の身体が元の女性へと戻っていく。
 額には小さなこぶが一つある程度。

「やっ……やった?」
「……成功……也」


 靄が出、小竜姫が元に戻るのを確認し。
 横島は膝を着き、荒々しく呼吸をする。先程整えた分、その呼吸は乱れていた。
『だ、大丈夫ですか!?』
「横島君!?」
「よ、横島さん!!!」
 その姿は、まるで魚が陸に打ち上げられてしまったかの様に見えた。
 呼吸が上手く出来ず、手にしていた小太刀を必死に握り締める。
 握り締めた所で呼吸が出来る訳では無いのだが、それでも掴まずにはいられない。

『あれは過去の事』

 全員が動揺し、隣で見ている事しか出来ない中……影法師が声を掛けた。
 その声に横島は霞む目で必死に影法師を見上げた。

『あれはお前であり、お前ではない……』

 影法師は静かに呟き、横島の肩に手を伸ばした。
 肩を掴み、優しく撫でると呼吸も段々と楽になっていく。
『今は眠れ……まだ、まだその時じゃないのだから』
 美神達には全く分からない言葉達。
 それでも横島にはそれで理解出来たらしく、小さく微笑みを作った。
 髪の色はすぐに戻り、そのまま横島は眠りに着いた。
「……ちょっと、アンタ」
 今まで事態を傍観していた美神だったが、影法師へと声を掛けた。

 こいつは、何かを知っている。
 横島の何かを。
 聞かなければ。

 美神が一歩足を前に出し、言葉を吐き出そうとする前に。
『何だ?』
 振り向いた影法師の両目、それは青色に染まっていた。
 その瞳を見た瞬間、一同は立ちくらみを覚えた。
 そして……

「……あれ?私達、一体どうしてここに?」
 自分の額を押さえ、美神は怪訝な表情を浮かべた。
 記憶の一部が喪失しており、上手く思い出す事が出来ない。
 それはピートやキヌも同様だった。
『小竜姫、元に戻ったぞ』
 不思議そうに辺りを見回す一同へ向かって、影法師が笑う。
 既にその両目は元の色に戻っている。
 指差す方へと目を向け、記憶は繋がる。
 覚えていなければならない事を喪失して……

「うぅん……あぁ!!?修行場が!!!」
 美神達が小竜姫へと視線を向けていると、ゆっくりと目を覚ました。
 そして……目の前の惨劇に驚きの声を上げる。
「一体誰がこんな酷い事をぉ!!」
「アンタが全部やったんじゃない」
 頭を抱える小竜姫へと突っ込みを入れる美神。
 一体何故小竜姫が破壊をしたのか、その辺りの記憶は捏造されていた。
 その辺りを美神達は全く疑問に思っていなかった。
「こ、こんな不祥事が天界に知られたら……わ、わたし……どどど……どうしよう」
 動揺し、足がふらつく小竜姫を見……美神は何かを思いついた。
 これ以上無い位良い笑顔を浮かべ、小竜姫の肩を叩く。
「大丈夫、こっそり直せばばれないって」
「けど、私建物を作る能力なんて無いですよ!?直すって言っても……どうすれば……?」
 その提案に小竜姫は泣きながら問い掛ける。

「私がお金出してあげる、五十億もあれば一週間で直るって♪」

 だから修行の最後のパワーを寄越せv

 笑顔の裏にその言葉を隠し、美神はそう言った。
 金で能力を買おうとしている相手に小竜姫は一瞬口元を痙攣させる。
 だが……抵抗は出来ない。
 すればこの不祥事を天界に知られてしまうのだから。
 小竜姫に選択の余地は無かった。


「こ、これで良いんでしょうか……?」
『地獄の沙汰も金次第って……神様にも使えるんですね』
 美神の行動を見、冷や汗を流す二人。
 適当に繋がれた記憶の中、眠ってしまった横島の面倒を見つつ。
「う〜ん……お腹一杯ぃ」
 ピートの腕の中で眠っている横島を見、影法師はゆっくりとその姿を消して行った。

 今は……まだその時ではないから。

 影法師が消えた後、その場には一つの球が……小太刀の隣に転がっていた。

 第十二話 終


 どうにか新しい職場にも慣れ、続きが書けました。
 少しでも楽しみにしている人が居れば、幸いです。
 微妙な時期に職場変えし、四月の給料が恐ろしい程少ないと言うハプニングに見舞われつつも……
 とりあえず、生きております。
 ま……まさか、原作横島君の受け取り給料よりも少ないとは……

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