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▽レス始

「陰界第十二話 中(GS+??)」

ルナ (2005-03-29 22:16)
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 脱衣所のドアを開けると、そこは広い世界だった。
 まるで闘技場の様な舞台と地平線の果てまで岩が所々に存在するだけの世界。
 黒髪に戻った横島は辺りを見回し。
「ずっと居たら、視力が良くなりそうですね〜」
 ちょっと見当違いな事を考えていた。


 周囲を見回しつつ、ピートは眉をひそめた。
「あの……ここは?」
 ピートの言葉に答えたのは美神。
「異空間で稽古しようっていうのね」
 腕を組み、余裕の表情を美神は浮かべていた。
 他の者達は辺りをキョロキョロしていて、余裕は無い。
「うふふ。
 人間界では、肉体を通してしか精神や霊力を鍛える事は出来ませんがここでは直接霊力を鍛える事が出来るのです」
 ここに来る修行者は大抵が美神の様な反応を示す。
 なのでここまで素直に驚く三人に小竜姫は嬉しくなったのだろう。
 微笑んでいるのが……横島を見つめるその瞳だけは笑ってはいないが。
 横島から目を逸らし、足元に描かれた法円を指差す。
「その法円を踏みなさい」
「初めて見る法円ね……踏むとどうなっ……!?」
 興味心身で法円へと足を踏み入れる。
 すると、美神の身体から何かが飛び出して来る。
「ふえぇ!?」
『美神さん!?』
 驚く一同の目の前に立っているのは、美神に良く似た容姿の槍を持った女戦士だった。
 自分の身体の中から飛び出して来た存在へ小竜姫は説明をする。
「これは貴女の『影法師』(シャドウ)です。
 霊格、霊力、その他貴女の力を取り出して形にした物です。
 『影法師』はその名の通り、貴方の分身。
 彼女が強くなる事が貴方の霊能力のパワーアップに繋がります。


 これから貴方には三つの敵と戦って貰います。
 勝つごとに一つパワーを授けますので……全部に勝てば三つのパワーが手に入ります。


 ただし、一度でも負ければ……命は無い物と覚悟して下さい」

 小竜姫の言葉に反応したのは見学の三人だけ。
「もしも影法師が傷つけば、霊体も同じだけの傷を負います。
 気を付けて下さいね」
「真剣勝負上等よ!!早いとこ始めましょう!!」
 小竜姫の最後の忠告を軽く聞き流し、美神は闘技場の中で影法師に構えを取らせる。


「剛練武(ゴーレム)!」
 その掛け声と共に、闘技場の中央より一匹の鬼が出現した。
 全身を岩に包まれた一つ目の鬼。
「ピートお兄ちゃん、昔あんな感じのが出る怪獣漫画見た事ある!!」
 出てきた剛練武を指差し、横島大喜び。
 先程の小竜姫の言葉は左から右に流れたのか、美神にもそれを報告していた。
『よ、横島さん……これから美神さんは修行するんですから』
「あっ!!そうだった!!」
 キヌの言葉にしゅんと横島は落ち込んでしまう。


「……それでは、始め!!」
 その姿を見つめつつ、小竜姫は合図を出した。
 剛練武はその言葉を聞き、雄たけびを上げつつ突進して来た。
 美神は向かってくる剛練武の勢いに乗せ、胸に槍を刺そうとする。


 ギィン!!


 だが、槍は刺さる事無く……弾かれてしまった。
「硬っ!まともに組んだら危ない……離れて!!」
 影法師の手に伝わる痺れを取る為、美神は手を軽く振りつつ離れるように指示を出す。
 剛練武が影法師へ攻撃をしようとするが、それよりも早く背後へ回り込む。
「現役ゴーストスイーパーを……」
 慌てて背後の影法師の方を向く剛練武へ。

「舐めるんじゃないわよ!!」

 一つしかない瞳へ、思いっきり美神は槍を突きたてた。
 腕が影法師へ届く前に、剛練武は煙と共に消滅した。


「「『やった!!』」」


「流石ですね」
 美神は一瞬で剛練武の身体がとてもじゃないが槍で突破出来ないと判断し、最も脆いと思える眼球へ攻撃を仕掛けた。
 見学していたピートは驚きつつも、美神の戦い方に感心していた。
 もしも自分だったら……離れるタイミングを間違えていたかもしれない。
 横島とキヌの方は大喜びで、一体何時作ったのか……紙吹雪を飛ばしていた。


 剛練武が完全に煙に消えた瞬間、影法師の身体には鎧が装着された。
「鎧……防御がアップしたって所かしら?」
「はい、これで霊の攻撃に対する防御力が今までとは比較にならない程アップしました。
 それでは……次の試合を始めてもよろしいですか?」
 訪ねられ、美神は軽く頷いた。
「禍刀羅守(カトラス)!出ませい!!」
 再び声に反応し、闘技場の中央に鬼が出現する。
 今度は漆黒の四本足を持ち、何処かアメンボを連想させる姿。
 その両手両足は鋭い刃となっている。
「……悪趣味」
『い、痛そうですねぇ……』
 ポツリと呟いた言葉が聞こえたのか、禍刀羅守は近くに合った岩を前足で切り裂いた。
『グケケケ!!』
 さも『どうだい!?俺の刃は!』と自慢げに笑う。
 自分に酔っている禍刀羅守に頭を抱える美神。
 楽しげに岩を切り裂いたすぐ後、禍刀羅守は影法師へと思いっきり足を振り上げた。
「あっ!!」
「え?」
 横島の声に顔を上げると、影法師へ襲い掛かる禍刀羅守の姿。
 反射的に身体を逸らして直撃を免れるも、先程装着した鎧と左手ごと切り裂かれてしまった。
「卑怯な!!」
 真っ直ぐな性格から、卑怯な行為を嫌うピートが怒りの声を上げた。
 それは小竜姫も同じらしく。
「こら!禍刀羅守!!私はまだ開始の合図をしていませんよ!!」
 その声に禍刀羅守は前足を揺らして『しっしっ!』と言わんばかり行動をする。
「私の言う事が聞けないと!?ならば試合はやめです!!私が……」
 怒りの表情のまま、闘技場へ向かおうとする小竜姫だが……その足を止める者が居た。
 止めたのは美神だった。
「駄目!!こいつを倒さないとパワーアップ出来ないんでしょう!?」
「そっ……それはどうですけど……」
 美神は小竜姫の言葉に答えず、影法師へ突進を指示する。
「この……くされ妖怪がー!!!」
 槍で頭部を狙って駆けるが、相手の方が素早さは上だった。
 身体を一瞬の内に背後へ回り込む。
 防御しようと身体を動かすも、それよりも前に禍刀羅守の刃が肩へ刺さる。
「くっ!!」
「美神さん!!」
 最初に受けた攻撃のダメージが重く、美神の動きは良くなかった。
 それだけで無く、美神は現在頭に血が上っている。
 冷静な判断が出来なければ、戦いを制する事は出来ない。
「仕方ありませんね……特例として助太刀を認めます」
 そう言い、小竜姫は闘技場から目を離した。
 手の届く範囲に居たピートの額に振れ、軽く力を込める。
「貴方方の影法師を抜き出します」
「えっ?」
 驚くピートの身体から飛び出してくる影法師。
 漆黒のマントに身を包んだピートそっくりの男性。
 閉じた口からは長い牙が見え、頬には文様が描かれている。
 美神の影法師同様、表情は無い。
「こ……これが、僕の……シャドウ?」


「次は貴方です」
「ふえ!?けど……オレは見学……」
 横島が慌てて身体を離そうとするが、小竜姫からは逃れられなかった。
 空中で横島の身体から出てきた影法師が姿を形作る。
 出来てたのは道化の様なメイクを施した……右目は金目、左目は緑色。
 髪の色は前髪が銀、それ以外が赤で長い後ろ髪が黒で肌も褐色。
 周辺には六つの球が浮き、神主の様な服を着ていた。
 横島の容姿とは……あまり似ていない。


『よっ!!良いお日和だな!!』


 そう言って横島に挨拶をした。
「ふえ……?えっと、そうですね?」
 呆気に取られつつも返事を返すと、影法師は上機嫌に笑う。
『うんうん、やっぱ外に出た時良い日和だと気分が良いなぁ!』 
 一体どこから出したのか、扇子で横島の前髪を揺らした。


「……喋る影法師なんて……始めて見ました」
 驚く小竜姫にピートは「そうなんですか?」と少し苦笑いを浮かべた。
 見た目と喋りのギャップに驚いているのだ。
『横島さん!美神さんが!!』
 キヌの言葉に顔を上げて見ると、美神の影法師は禍刀羅守に押し倒されていた。
 戦いの途中で持っていた槍も遠くに落ちて、手が届かない。
 腕も刃によって貫かれ、動かす事が出来なくなっている。
「こ、このままじゃ……折角の鎧も駄目になっちゃう!」
 しかし、動く事も出来ない。
 美神は法円の中で座りこみ、身体を掛けぬけて行く痛みに耐える。
 闘技場の中には試合の当事者の許可が無ければ小竜姫も入る事が出来ない。
「今回の試合は助太刀を認めます」
「はい!!行きます!!」
 小竜姫の言葉に頷き、ピートは意識を集中させた。
 漆黒のマントを揺らしつつ、影法師は闘技場の中へと飛び込んだ。


「……行かないの?」
『ん?行って欲しいのか?』
 ピートは中へ入ったのに、横島の影法師は隣に立ったまま。
 横島の頭に肘を置き、戦いを見ているだけ。
「この中には生身の人間は入れません、貴方が影法師をコントロールするしかありません」
「こんとろ〜る?」
 そう言われても、横島はどうすれば良いのか分からず……とりあえず影法師を見上げる。
 見られても、影法師は笑うだけで動こうとしない。
 まるで何かを待っているかの様。
「……えっと、お願いします!美神さんを助けて下さい!」
 ペコリと影法師へ頭を下げると、持っていた扇子を懐に入れ。


『頭を下げなくても、お前が『行け』って命令すれば良いんだよ』


 横島の頭を優しく撫で、影法師は軽く闘技場の中へと飛び込んだ。
 残された横島は……撫でられた頭を抑えていた。

 先に飛び込んで行ったピートは禍刀羅守の刃へと手を伸ばした。
 美神の影法師へトドメを刺そうとする刃へと。
 突然入った邪魔に禍刀羅守はいらついたらしく、思いっきり捕まれた刃を振り払った。
「くっ!」
 身体に走る鈍い痛み。
 軽く服を握り締め、ピートは再び禍刀羅守へと向かっていく。
『馬鹿正直に前から行く必要は無いっての』
「え?」
 そこへ入ってくる横島の影法師。
 身体の周囲に浮いていた球を一つ掴み、にやりと笑う。
 掴んだ球は真紅に輝き、炎を宿す。
『行け!』
 言葉に反応し、球は思いっきり禍刀羅守の頬目掛けて飛んで行った。
『グギャ!?』
 先程向かってきたピートの影法師に目を向けていたので、不意打ちを食らった。
 頬に激突した球はそのまま燃え、禍刀羅守の身体を熱した。
 驚き、身体を揺らすが炎は消えない。
 その隙にピートは美神の影法師を引き摺り、禍刀羅守から離した。
『折角仲間が居るんだ、ちょっと頭を使えばこんなの楽勝だっての』
 そう言うと、見ていた横島の方へ顔を向け。


『どうだ?ちゃんと助けたぞー』
 まるで子供の様にはしゃいでいた。
「すっごーい!!その玉なぁに!?」
 横島の方も無邪気にはしゃいでいる。
『これか?秘密だー』
「え〜!?ケチー」
 まだ戦いは終わってないのに、二人は談話していた。


「美神さん!」
 ピートは影法師を動かし、遠くに落ちてしまった槍を拾い上げた。
 まだ痛みで身体を起こせないのだが、根性で槍を受け取り。
「こん……のぉぉぉ!!!!」
 炎に焼かれている禍刀羅守の腹へと思いっきり槍を突く。
 槍は勢い良く腹を貫通し、そのまま姿を消して行った。


「勝負ありましたね」
 戦いが終わったのを見、小竜姫は軽く溜め息をついた。
 それと同時に、美神の槍に光が走った。
「槍が!」
 薙刀の様な刃が槍の両側に生え、攻撃部分が多くなっていた。
 これで防御、攻撃の力を手に入れた事になる。
 だが、美神は息も絶え絶えとなっていた。


後半へ続く……


突然ですが、仕事場を変えました。
親分「本当に突然だなぁ」
なので……一日にPCの前に座る時間が激減です!
親分「ほぉほぉ……?」
これから……ものすごーくゆっくりなペースになりますが……この作品の事、忘れないで下さいね。

親分「それはおめぇのやる気と実力次第だな、忘れられない位の文を書いてみろ」

うわーん!親分の馬鹿ー!


Dan様>妙神山の所までどうにか来る事が出来ました。
実はそうなのです。
何故そんな状況になってしまったのか、それをこれからの展開で明かしていきたいと思います。
まぁ……そんな驚く展開が待ってるとは……(待て)

紫苑様>・・・・・・・・・・・・あがっ!!
親分「忘れてたんだな」
色々とドタバタしていたので幸の事をすっかり忘れてました!!
やっちまったー!
本当に……失礼致しました!!!!

柳野雫様>もしも美神さんが知っても、調べる事は出来ません。
しっかりと邪魔されます。
今回、横島のシャドウが出て来ました。やっぱり喋ります。
楽しみを裏切っていないと嬉しいです。

突発感想人ぴええる様>今回で……分かった事は『魂が多数』って事位でしょうか?
あとは……『六』これだと思います。
本当はシャドウで中の人を出そうとも思ったんですが……色々考えて、シャドウのままにしました。
理由ですか?『何となく』ですv

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