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「陰界第十二話 前(GS+??)」

ルナ (2005-03-21 20:12)
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 ここ最近、美神や唐巣は調子が悪かった。
 前ならば一撃で退治出来る程度の悪霊に勝てなかったり、防げる攻撃が当たってしまったり……

 ちょっとのミスが続けば、この仕事は死へ繋がってしまう。

「近頃は除霊も盛んになったからね……沢山の悪霊が除霊される一方で、強大な力を持った存在も生まれ始めているのかもしれないねぇ……」

 教会の一室で唐巣の考えを一同は聞いていた。
 横島の隣にはお茶を配っているピートの姿があった。

「そうなんですか?」
 お茶をすすりつつ、不安げな表情を横島は浮かべる。
 ただでさえ怖い存在がもっと怖くなる。
 想像しただけで、横島は顔色が悪くなってしまった。
「ただの推測だけどね」
「けれど、もしそうだとしたら……こちらも力をつけないと駄目ですね」
 ピートは「頑張ります!」と闘志を燃やす。
 横島とキヌは闘志を燃やすピートを心から応援していた。


 ピートが闘志を燃やしている隣で、ずっと何かを考えていた美神は。
「こうなったら……」
 何かを決意した。
『?どうするんですか?』
 キヌの言葉に美神は微笑を浮かべ。

「妙神山に行くわ!!」

「みょうじんさん……?」
 早く一人前になり、島の者達の生活を支えたいと思っているピートだが……まだこちらの事はよく分かっていない。
 なので唐巣へと問い掛ける。
「先生、妙神山って……?」
「世界でも有数の霊格の高い山、神と人間の接点の一つと言われている修行場だよ……
 しかし、まだ君には早いんじゃないかい?」
 ピートの問いに答えつつ、美神の勢いを止めようとする。
 妙神山はかなり危険で命の保障が出来ない修行場。
「先生も昔そこで強くなったんでしょう?

 何事もやってみないと……ね」

 にやりと笑うその表情を見、長い付き合いの唐巣は悟った。


『これは……止めても無駄だな……』と。

「……無事に、戻ってきてくれよ?」
 唐巣には、それだけしか言えなかった。


 妙神山へ旅立ったのは美神、横島、キヌ、そしてピートだった。
 今はただの見学、という事で唐巣に着いていくのを許可して貰ったのだ。
 まるで中国の山奥の様な険しい山道を一同は進む。
『凄いですね〜』
 とてもじゃないが道とは呼べない様な場所をキヌ以外、無言で歩き続けていた。
 色んな意味で横島に限界が来る前に、一同は目的に着く事が出来た。

『妙神山修業場』

 そう書かれた看板が寺の山門に似た門の上に掲げられていた。
 門には巨大な鬼の顔二つと、その身体らしき石象が両側に置かれている。
 鬼の顔の下には『この門をくぐる者、汝一切の望みを捨てよ 管理人』と刻み込まれていた。
「……管理人?」
 高まった緊張が『管理人』で削がれてしまった。
 横島の脳内ではエプロンを着けた美人の未亡人の姿が過ぎった。
「何だか……嫌な予感がします」
『わ……私もです」
 不安がるピートとキヌの言葉を無視し、美神は門を叩いた。
 こんな所でノンビリしている暇など無いのだから。

『無礼者が!!!!』

「にゃー!!!!!!?」

 叩いた瞬間、門に貼り付けてあった鬼の顔が思いっきり大声で叫んだ。
 至近距離で聞いた大声と、鬼が喋った事に驚き……横島はピートの腕にしがみ付いた。
『我らはこの門を守る鬼、許可無き者我らをくぐる事まかりならん!!!!』

『この右の鬼門!』

『そして左の鬼門ある限り、お主の様な未熟者にはけしてこの門開きはせん!!!』

 それでも世の中は、どうにも上手く行かない時がある。


「あら。お客様?」
 けして開きはしない!と大声で言い放ったと同時に、その門はゆっくりと開かれた。
 門の中から出来たのは古風な胴衣に身を包み、二本の角を生やした一人の赤髪の女性。
 鱗模様のヘアバンドとリストバンドをつけ、にっこりと微笑んでいた。
『小竜姫様!不用意に門を開かれては困ります!』
『我らにも『役目』と言う物が……』
 今にも泣き出しそうな声で訴える鬼門。
 ピートの腕にまだしがみ付いていた横島は、その声に顔を上げた。
「?」
 顔を上げた瞬間、小竜姫と目が合った。
 先程までにこやかな笑顔を浮かべていた小竜姫だったが、横島の顔を見た瞬間……
「……?貴方が、ここに修行に来た方ですか?」
 少しばかり表情が変わった。
「ふえ!?ち、違います!オレは……」
「ここに修行に来たのは私よ、この子達は付き添いと荷物持ち」
 美神は唐巣から渡された紹介状を小竜姫へ見せた。
「荷物持ち……?」
 紹介状に視線を向けつつも、意識は横島の方へ。
 ピートの後ろに隠れ、横島は不安げに。
「あの、なんですか?」
「……いえ。一つの身体に多数の魂が宿って居たんで……珍しい方だなぁと思っただけですよ。
 あら、唐巣さんからの紹介ですか。人間にしては上出来の部類だった人ですね」
 紹介状を見つつ、小竜姫は楽しげに笑った。
 どうやら唐巣の事を思い出している様子。

『一つの身体に多数の魂って……ど〜いう意味でしょう?』
「さぁ……??」
 小竜姫の呟きに美神以外の者達は首を傾げた。
 美神は少し離れた所に居たので、最初の呟きは聞こえなかった。

「では、始めて下さい」
『承知!!』
 美神と少し会話をした後、小竜姫は鬼門達へ声を掛けた。
 そして門の両側に立っていた首無き胴体が突然動き出した。
「うわっ!?!」
『何ですか!?』
 驚く横島達に美神は「落ち着いて!」と声を掛けた。
「貴方達はそこを動かないで、すぐに片付けるわ!!」
 皆に動かないよう言い、美神は素早く動き出した胴体の股を潜り抜けた。
 先程まで美神が立っていた場所を胴体の太い腕が殴りつけた。
「えい!」
『ぐわ!?』
 一体何処に持っていたのだろう?特大の破魔札で鬼門の目を覆い隠した。
 首無き胴体の顔は門に張り付いている鬼門。
 なのでその目を隠してしまえば……胴体は何も見えず、ただ転ぶだけ。
「あら、新記録ですね。やり方はかなり変則的ですが。
 戦いの最中、仲間を落ち着かせてから動き出した事も……なかなか」
 目の前で思いっきり転ぶ胴体を見、小竜姫は目を細めた。
「こんな馬鹿鬼やアンタじゃ話にならないわ、管理人とやらに会わせてよ!」
 貼り付けた札が勿体無いのだろうか、美神は少し不機嫌そうに小竜姫へ言い放った。
「ふふ」
 にこやかに小竜姫は微笑む、だが次の瞬間。

 バシュッ!!

 リィン……
「っ!!!?」
 小竜姫の身体から抑えていた力の一部が解放され、美神達の身体を門へと叩きつけた。
 ただ一人……横島を残して。
「ふえ?大丈夫!?」
 突然宙を飛んで行った事に驚き、横島は慌てて皆の所へ駆け寄った。
 どうやら今回も小太刀の鈴が横島を守ってくれた様子。
「あら……私の霊圧に耐えるなんて……凄いですね。
 美神さんは霊能者のくせに目や頭に頼りすぎですよ。

 私がここの管理人、小竜姫です」

 爽やかに自己紹介し、小竜姫は軽く頭を下げた。
「こ……ここの管理人?アンタが?」
 横島に身体を起こして貰いつつ、美神は小竜姫の顔を見上げた。
「外見で判断して貰っては困ります。私はこれでも龍神の端くれなんですよ」
 相変わらず穏やかな表情をしているのだが、今は少し迫力があった。
「一瞬前までは何の気配もさせなかったのに……。今はただ立っているだけで凄まじい霊圧だわ……」
 美神は目の前に立っている小柄な女性に、気圧されていた。
『殆ど普通の人レベルに抑えていた霊気の圧力を解放しただけでこれ……あんなのが本気になったら……』
 自分の考えに、美神は身震いした。
 心の底から『神様にだけは喧嘩売らないでおこう』と決意しつつ。
「やっぱり、神様って凄いんですねぇ……」
 ピートの言葉にキヌは深々と頷いた。
 鈴の力で守られていた横島としては……突然飛んで行った皆の方が凄く映ったらしい。
「鬼門を倒した者は中で修業を受ける権利があります。さ、どーぞ」
 解放していた力を再び抑え、小竜姫は皆を修行場の中へと招き入れた。
 先程打ち付けた腰を押さえながら立ち上がり、美神は小竜姫の後を追いかけた。
 歩きつつ、思う事は多数あれど。

『どうか……ここに居る間は……横島君が赤髪になりませんよぉに!!』


「それでは生きている方は俗界の衣服をここで着替えて下さい」
 そう言って説明する小竜姫だったが、目の前に建っているのはどうしても銭湯の入り口にしか見えない。
 見上げる美神はかなり呆れていた。

「…何なのよ。このセンスは……」

 横島は入り口を見、楽しげに風呂の歌を歌っている。
 ピートは日本独特な雰囲気に驚き、キヌは横島の住んでいる近くに建っている銭湯を思い出していた。
「見学の方も着替えてくださいね」
 そう言い、小竜姫は番台に座った。
「はーい」
 元気良く答え、横島はピートと共に暖簾を潜って行った。
 次の瞬間。
「美神さん!!着替え手伝いましょうか!?」
 髪の色が変化した。
「ピート、おキヌちゃん。横島君……お願いね」

「離せー!おキヌちゃん!男には、やらねばならない使命があるんだー!!」
「横島さん!落ち着いて下さいよ!」
「えぇい!!男が触るなー!!!」
『美神さん、早く着替えて下さい〜』

 隣から聞こえてくる声に、美神は軽く溜め息をついた。
「何か、緊張感が抜けたわ」
 それは隣だけのせいでは無く、この場所の雰囲気も原因の一つだった。
「本当にそんな凄い修業場なの……?」
 ここを管理している小竜姫に聞こえない程度の声で呟いた。
「当修業場には色々なコースがありますけど、どういう修業をしたいんです?」
 ストッキングを脱ぎつつ、美神は笑顔で言い放った。
 小竜姫は美神の呟きが聞こえていたのか、少しムッとした表情を浮かべていたが。
「そりゃ決まってるわ! なるべく短時間でドーンとパワーアップ出来るヤツ!
 この際だから唐巣先生より強くなりたいわね」
「ふふ……威勢がよろしいこと!」
 口に手を当てて小竜姫は笑う、その表情の方はかなり真面目だった。
「良いでしょう。今日一日で修業を終えて俗界に帰して差し上げます。
 ただし、強くなっているか死んでいるかのどちらかになりますよ。構いませんね」
 美神の覚悟を問う、用意してあった胴衣に美神は袖を通し。
「上等! それでこそありがたみがあるってもんね」
 そう答えた美神の表情に怯えが無いのを確かめ、小竜姫は番台から身を乗り出した。
「よろしい!奥へどうぞ!」

 隣からは……今だ横島の暴走を止めようとする二人の声が聞こえていた。


中篇へ続く


あまりこの辺りの話は変わってません。
敢えて言うなら、横島への反応位でしょうかね。


レスを下さる方は神様です。
本当にいつも有難う御座います。
他の作者様の様に面白い作品を書けるよう、努力しますので……見捨てないで下さいね。


Dan様>ポエム以上に成仏出来ない物は確実にこれでしょう!!
うっかり処理を先延ばしにし……こんな事になったら……(想像)
想像しただけで……もう駄目です。
うぁぁぁぁ!!

MAGIふぁ様>うっかり死に、寝床やPCの中を漁られたりしたら……と思うと夜も眠れないです。
ある日突然失踪してしまった人を捜索する番組を見ていると、大抵がメールや日記を確かめるます。
それを見る度思う事。
『頼む!!その辺りは漁らないでやってくれぇぇぇ!!』

自分だけでしょうか??

柳野雫様>このまま腐女子になって、うっかり本を作っていたらビックリです。
意外に美神さんも好きだったりして……
冒頭の夢は後に色々と絡む予定です。実はその部分を早く書きたくてうずうずしております。

紫苑様>とりあえず、ここの横島(黒髪)はそれに分類されます
幸ですか?
え〜っと……すみません、質問の意味が微妙に理解出来てません。
ごめんなさい。

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