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▽レス始

「陰界第十一話 (GS+??)」

ルナ (2005-03-16 20:31)
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 銀髪の少年が漆黒の闇の中を歩く。
 闇の中でも少年はけして迷いはしない。
 その手には小太刀が握られ、一歩歩く度鈴の音が辺りに鳴り響く。

 ふと、立ち止まると……目の前に紫色の靄が出現する。

『フルルルルルルルルル……』

 靄の中から声がし、何かが少年目掛けて襲って来た。
 それは眼球のついた野球のボールだった。
 少年は躊躇う事なく小太刀を構え、横へと切り裂く。
 ボールは小太刀に触れてもいないのに、その姿を消した。

『カチャ』

 何処かで鍵の開く音が聞こえ、少年は軽く顔を上げた。
 そして口が動き、何かを言っている。

 だが……その声は聞こえてこない。


「……ん?」
 横島は窓から差し込んでくる朝日に目を細めた。
 軽く上半身を起こし、辺りを見回す。
 視界に入ってくるのは日常過ごしている部屋。
 いびきをかいているカオスやハンモックの上で揺れている幸の姿。
 マリアは既に起動し、朝ご飯を用意している様子。
「おはようございます・横島さん」
「ん……おはよう」
 目を擦り、横島は立ち上がった。
 顔を洗う為に洗面所へと向かう途中。

 チリン……

 その手に持っている小太刀を見つめ、横島は首を傾げた。
 一体いつからこれを持っているのか……全く記憶に無い。
 寝る前、確かに学生鞄の中に入れて居た筈なのに。
 そう思いつつも、横島はポケットに小太刀を突っ込んだ。


「さぁ!!今日も仕事よぉ!!」
 テンション高く、腰を上げる美神。
 本日の仕事は時価数億円の不動産に憑いた悪霊祓い。
 取り壊そうとすれば関係者が次々に謎の死を遂げる……そんな事が三十年前に起き、ずっと放置されていた。
 不動産屋も困り果て、遂に最もギャラの高い美神へと仕事の依頼をした。


 着いた現場はいかにもホラー物で出て来そうな屋敷。
 ガラスは全て割れ、昼間でも近寄りたいとは思わない場所だった。
『わ〜凄い大きな屋敷ですねー』
「あんま趣味は良いとは言えないけどね」
 その前でもホノボノ会話をしている者は居たが。
『凄いですねー!横島さん……?』
 辺りをキョロキョロしながら横島の袖を引っ張るキヌ。
 だが、普段ならば何かしらの反応が返ってくる筈の横島は無反応。
 何処か上の空で屋敷を見ているだけ。
「?どうしたの」
 顔の辺りで手を上下させる美神に横島は。
「へ?」
 初めて声をかけられた事に気が付いた。
 目をパチクリさせ、首を傾げている。
「えっと……何ですか?」
 まるで何事も無かったかのように笑顔を浮かべた。
「平気?何か様子が変だけど……」
『大丈夫ですか?風邪ですか??』
「平気です!ちょっとここ最近……寝不足で……」

 近頃、横島はおかしな夢を見る。
 自分ではない誰かが廃墟を歩き続け、異形としか表現出来ない相手と戦う。
 怖いと思う前に異形は誰かに倒されて姿を消す。
 見た事が無い筈なのに……見覚えのある闇の中。

 横島は二人に心配をかけたくない為、慌てて笑顔を浮かべた。
「ほら!オレは平気ですから、仕事しましょう!!」
 あまりにも不自然な笑顔だったが、二人は敢えて追及はしなかった。
 寝不足と言っても、この前学校で試験があった。
 なのでそれが原因では?と思っていた。
「事務所に帰ったら、温かいココアでも入れて上げるわ」
 そう一言言い、美神は屋敷へと向かった。
『くすっ……美神さんってやっぱり優しい』
「美神さんはいつでも優しいよ〜?」
 赤髪状態の扱いを見てもそう言えるのならば……君は神だ。


 リィン


「っ!」
 ドアを開けようとノブに手を伸ばした瞬間、鈴が鳴り響いた。
 反射的にノブから手を離す美神。

『立ち去れ!死にたくなければ失せろ!!』

 突如、ドアに巨大な人の顔が出現した。
「にゃー!!?」
『きゃ?』
 何かが出るのは分かっていたが、まさかドアから人の顔が飛び出してくるとは思ってなかった。
 横島はキヌに抱き着き、キヌは突然抱きつかれて驚いていた。
『ここはワシの家じゃ…ぎゃが!!』
 脅す途中、美神の膝蹴りを顔面に受け……顔は溶けて無くなる。
 霊力を纏った攻撃に顔は耐え切れなかったのだろう。
 そのままドアは倒れるようにして開いた。
『い……今のは?』
 抱きついている横島の頭を優しく撫でつつ、キヌは美神へ問い掛けた。
 ポケットに入れてあった写真を出し、説明をはじめる。
「今のは死んだここの主よ、名前は鬼塚畜三郎。
 残忍非道、冷酷無比。
 その凶暴さで十代にして一大勢力を築いたの。最も……三十二歳で部下に殺されたけどね」
 写真の中には部下に銃を突きつけて、笑っている姿が写し出されている。
 その姿に横島もキヌも複雑そうな顔をしている。

「でもまぁ!死んだら私の敵じゃないわ。パッパ〜♪と片付けましょう」
 先に中へ入っていく美神。
 キヌもその後を追おうとするが……横島が着いて来て居ないのに気が付く。
『?横島さん?』
 横島は廃墟とかした屋敷を見つめ、遠い目をしていた。
 何処か寂しげな……今にも消えてしまいそうな虚ろな雰囲気。
 ブラドー島と同じように……
『横島さ……』
「ん?なぁに?」
 だが、次の瞬間には普段と同じに戻っていた。

「二人ともー荷物〜」
「あっ!はーい!」
 奥の方から美神の声が聞こえ、横島が小走りで向かう。
『……横島さん……』
 残されたキヌは少し……戸惑いがちに後を着いて行った。


 美神は鬼塚を呼び出し、何故この世に留まり続けるのか……その理由を聞く事にした。
 話が出来ない状態ならばさっさと祓うが、先程はちゃんと喋っていた。
 除霊用の札は一枚が三百万円程する。
 もしも使わないで済むのならば、かなりの儲けだ。
「さてと……」
 家に放置されていた机と椅子を用意し、蝋燭を灯した。
 横島とキヌはその姿をジッと見つめている。
「我が名は美神令子、この館に棲む者よ。何故死してなお現を彷徨うか。
 降り来たりて、我に告げよ……」

 しばし間があり、横島のポケットに入れてあった鈴が高らかに鳴り響いた。
 それを合図に。

『んごー!!なめとったらあかんどー!』
 先程美神の膝が命中した鼻にテープを張り、再び鬼塚は出現した。
 しかも……横島の目の前に。
「にゃああ!!!!!!?」
『けぇーれっちゅっとんのにズカズカ上がりこみゃがって!
 ドタマかち割ってラッキョの入れもんにしたるど、ボケッ!!』
 美神を相手にすれば先程同様、返り撃ちに合うのは分かっている。
 なので目標を横島にしたのだろう。
 だが……

 リィン!!

「ちゃんとした日本語で喋りなさい」
『げふっ!?』
 鈴の音と美神の踵落としが同時に決まり、鬼塚はかなりの衝撃を受けた。
 生きている間は人に足蹴にされた事など無かった。
 身を引き裂かれる程の痛みを感じた事など無かった。

「全く……人が折角話し合いをしてあげよーってのに、喧嘩腰は止めなさいよねぇ?」
 リィン!

 まるで『その通りだ』と言いたげな鈴。
 その音で更に鬼塚は苦しそうな声を上げた。
 横島は怖かったのでキヌにまた慰めて貰っている。

『うぅ……何故だぁ?何でわしがこんな小娘に……』
「私はそこらの霊能力者とは『格』が違うのよ」
 にやりと笑い、美神は更に足に力を入れた。
 足蹴にされている鬼塚は、悔しげにそのまま消えて行った。
『消えちゃいましたね』
「えぇ……けど一時的に逃げただけね……何か企んでるみたい」
 辺りを見回し、気配を探るも……近くにキヌ以外の幽霊は居ない様子。
「結界を張って相手を出方を見ましょう、これは長期戦になりそうねぇ……」
 軽く溜め息を吐く美神。その耳に……良いタイミングで聞こえてきた声。

「お……おキヌちゃん?何で俺の頭撫でてるの?」

 振り向いて見れば、そこには赤髪横島が立っていた。

「……チャ〜ンスv」
「へ?」
 妙な気配を感じ、身震いする横島に近づき。
「ねぇ……横島君?寝袋を『一つ』だけ出してくれるかしら?」
 頬を軽く赤らめ、美神は横島の顎に手を添える。
「私のお願い……聞いてく・れ・る?」
 わざとらしく胸元を見せつつ、美神は横島の身体に擦り寄った。
「……ぶっ!」

 髪の色と同じ位真っ赤な血が……噴出した。

 普段、赤髪になれば瞬時に女に飛びつく。
 だが……あからさまなアピールには純な反応をしてしまう。
 頭に血が上り、横島は何も考えられなくなり……

「んじゃ私は寝るけど、不寝番よろしくv
 結界の中なら安全だから〜」

 気が付いたら不寝番が決定していた。
「ふっ……どうせおいらは……」
『一緒に色んなお話しましょうね〜v』

 結界の中で体育座りをし、涙する横島の隣で……キヌは楽しげに笑っていた。


 時刻は深夜を回っていた。
 既に赤髪から黒髪に戻り、半分眠そうに船を漕いでいた。
 何度もキヌは自分が見張っているから眠っても良いと言ったのだが、横島は首を上下に振らない。
「駄目!キヌ姉ちゃんだけじゃ駄目!」
 キヌを守りたい、そう思う横島の言葉にキヌは微笑を浮かべた。
『有難う、横島さんはまるで武士様みたいねv』
 キヌが現代に生きる娘ならば、武士では無く騎士と言ったのだろうが。
 同じ天然同士、それでも意味は通じた様子。
「えへへ……」
『私、荷物の中からお菓子出して来ますね』
 そろそろ小腹が空く頃と思い、キヌは壁をすり抜けて荷物の元へと向かった。
 一応荷物も結界の中に入っているのだが、除霊道具以外の物は別のリュックに入れてある。
「有難う。出来ればポップコーンが良い〜」
『はーい』
 壁から手だけ生やし、キヌはそのまま消えて行った。

 まるでそれを待っていたかの様に。


 リィン……

 鈴が鳴り、一匹の仔猫が結界の前に出現する。
「?」
 一瞬ポケットの中の鈴が鳴ったのかと思うも、仔猫の首にも鈴。
 どちらが鳴ったのだろう?と不思議がる横島を誘う仔猫の誘惑。
『にゃ〜』
 可愛らしく鳴く仔猫は結界に爪を立て、尻尾を振っている。
 結界の中に入って来れない仔猫は寂しげに耳を垂らす。
 横島は掌サイズの仔猫を見、瞳を輝かせていた。
「可愛い……v」
 その愛らしさに惹かれ、横島は結界の外へ出てしまった。
 手を伸ばせば少し動き、手の届かない範囲へ。
 少し追えば猫も少し逃げる。
 まるで何処かに連れて行こうとしているかの様。


『横島さん、お菓子ありまし……あれ?』
 壁を通り抜けて来たキヌは辺りを見回した。
 先程までそこに居た筈の横島の姿が無いのだ。
『み、美神さーん!!』
 キヌは慌てて壁の中に戻って行った。


「待って〜」
『にゃーん』
 尻尾を元気に振り、仔猫は小走り。
 横島は仔猫を追って随分と美神達から離れてしまっていた。
 だが横島はそれに気が付かない。
 その足元に……ある印が描かれている事も。

『にゃ』
 足元に描かれた印、その中央で仔猫は立ち止まった。
 可愛らしく瞳を細め、顔を洗う仔猫。
 ゆっくりと手を伸ばし、仔猫を抱き上げようとする横島だったが。

「横島君!」
「ふえ!?」
 印に入り込む寸前、名を呼ばれた。
 横島は驚いて動きを止め、仔猫の首には細い糸が巻き着いてくる。
『にゃっ!?にゃあ!!!!』
 慌てて糸から逃れる為、仔猫はその場から離れる。

『大丈夫ですか!?横島さん!』
 事態が把握出来ない横島を引っ張り、キヌは不安げに問い掛けた。
「えっと……?」
「話は後よ、あの猫を追うのよ!」
 手に青白い光を放つ糸を持ち、美神は仔猫を追いかけて行った。

 仔猫は壁の中に消え、糸は壁の中に通じていた。
「ここね……あの仔猫はね、鬼塚がばけた姿なの」
 不思議がる横島に説明をする。
「えぇ!?あの怖い顔が!!」
『仔猫、結構可愛かったですよね』
 驚く横島と楽しげに笑うキヌ。
「あそこまで鬼塚を痛めつけたから、ターゲットは私になると思ったけど。
 どうやら奴は横島君の身体を乗っ取るつもりだったみたい。
 埃で気付かなかったけど、さっきの場所には霊の入り口印が書かれていたのよ」
 霊の入り口印。
 それは身体を持たない幽霊が身体に入り込む為に必要な印の事。
 無害な霊ならば相手が意識を失えば入る事も可能なのだが、悪霊は印を使わねば入れない。
『じゃあ……横島さんの身体を狙ってたんですね』
「みたいね、人外に好かれやすいっての……忘れてたわ」
 糸を手繰り寄せ、強引に引っ張ると……中から仔猫が転がり出てきた。
『くっ……くそったれぇー!!!』
 折角可愛い仔猫が台無しである。
 一瞬で元の姿に戻った鬼塚に……横島は眩暈を感じていた。
 美神は悔しがる鬼塚を見、何処か悪者っぽい顔で笑う。
「さぁて……この壁の裏に何があるのかしら?ここに逃げ込もうとしたって事は……
 ここに何かあるのねぇ?」
『無い!!何も無い!!』
 その反応を見ればすぐに何か隠されているのが理解出来る。
『これ、すいっちですか?』
 微妙に他と違う出っ張りを見つけ、キヌが何となく押してしまう。
『ぎゃー!!』
 首に糸を巻きつけたまま、鬼塚は悶える。
 動こうとするも、美神に足蹴にされてしまうのだ。

 スイッチを入れると、壁はゆっくりと開き……隠し部屋が出現した。
 その向こうは……別世界だった。

「……美神さん、これ何ですか?」
 隠し部屋の中に詰まれていた雑誌、その一冊に手を伸ばす。
 そこには……半ズボンの少年の絵が描かれていた。
「……中は見ない方が身の為よ」
「??」
『きゃ〜!男の子同士でー!!?』
 先に雑誌を開いてしまったキヌは恥ずかしそうに悲鳴を上げた。
 興味本位でキヌの開いたページを見、横島は赤くなり……青くなった。

 雑誌は全てが(腐)女性向け雑誌。
 妙に薄っぺらい本が隠し部屋には所狭しと置かれていた。


「鬼塚……アンタ、ショタコンがばれるのが嫌で化けて出てたの?」
『うががががー!!!!』
 ばれてしまったショックで壊れる鬼塚。

「よし、そろそろトドメよ……横島君。奴に向かってこー言ってくれない?ごにょごにょ……」
「ふえ……は、はい……」
 まだショックから立ち直れてない横島の耳元で何かを伝え、美神は意地悪そうな笑みを浮かべた。
「はい、頑張ってね」
 持っていたある物を使い、横島の背を押す。


「お兄ちゃん……」
 美神の持っていた目薬で潤んだ瞳で鬼塚を見上げ、横島は言い切った。

「大嫌い!!」

 それはけして大きな声ではなかったが……鬼塚を消すには十分だった。
『ぁ……ぁぁぁぁ』
 もしも鬼塚が『そっち』に萌えを感じていれば、力を取り戻していたかもしれない。
 だが、部屋に飾ってある少女にしか見えない少年達のポスターには。
 皆油性で『お兄ちゃん、大好きv』と書かれていた。
 これはかなり暗い。

「ふっ……最後の拠り所を失って、成仏したみたいね」
 消えて行った鬼塚を見届け、美神は笑う。
 キヌは悲鳴を上げつつも本から目を離せず、横島は何故自分の一言で消えたのか理解出来ずに居た。


 もしも……鬼塚が横島の身体に入り込んでいたとしたら、一体どんな事が起きていたのか。
 それを思い、美神は背筋が冷えるのを感じていた。

 第十一話 終


ポエムより見つかったら痛い物は何だろう?と思い……こうなりました。
もしも……自分が死んだ後、見つかったら死んでるけど死ねねぇ!!
絶対ばけて出る!!!
そう思いました。


nao様>ブラドーは駄目駄目です。
とりあえず、駄目になったのは……この人が二人目です。
一人目は……まだ出てませんが。
他の人は……とりあえずまだまだです。

AC04アタッカー様>困ったチャンは一人見つかれば百人は見つかると……(ゴキ?)
タイガーは活躍らしい活躍が出てません。
というより、どう扱えば良いのか分からないです。
ブラドーがどうなるか……それは作者と神様しか知りませんv

紫苑様>ピートは黒髪を弟として、赤髪を友達として見ます。
親父があぁなったので、必死に守り抜こう!と思っています。
タイガーが活躍出来るように頑張りたい……のですが、多分あのままかと。

柳野雫様>はい、落ちました。
けれど、皆がただショタで●モな訳ではありません。
ちゃんと理由がありますので。
ブラドーがピートと仲良くなる日が来るのか……ちょっと不安です。
神父は……もう手遅れです。(涙)

山神アキラ様>楽しみにして下さって、有難う御座います。
やっぱり『ちょっとだけ』活躍するのが良いんですね〜
個人的に原作では居なかったキャラをこれからも出して行きたいと思います!!

もしも『このキャラ』を出してくれ!!という要望がある場合は聞かせて下さい。

出来る範囲でやりたいと思います!

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