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▽レス始

「陰界第十話 後編(GS+??)」

ルナ (2005-03-10 10:19)
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 一同は、とりあえず落ち着いて話をする為に通路を抜けた。
 出た場所はちょっとした広場だった。
 そこにはまだブラドーに支配されない吸血鬼達が大勢居た。
「ん〜……」
「どうしたんか?横島さん、さっきからずっと唸っとるが……」
 悩む視線の先には……ピートが立っている。
「……」
 ピートは見られつつ、小さく笑みを返す事しか出来なかった。

 自分は人間ではない。
 半分とはいえ、吸血鬼だ。
 怖がられても無理はない……

 そう思っていた。
 だが、現実はちょっと違っていた。
「ピート……爺ちゃん?ピエトロ……兄ちゃん??ピーちゃん?」
 ただ、横島はピートの呼び方に悩んでいるだけだった。
 初めて会った時から年上かな?と思っていたのだが……実際には七百歳。
 見た目が若いのだが、中身は完全老人のカオスならばこんなに迷う事は無いのだが。
「っ!ピート兄ちゃん!!!」
 しばらくし……瞳を輝かせ、横島はピートの手を握り締めた。
「え?」
「えへへ〜」
 悩みは『兄ちゃん』で解決した様子。
 だが、今度はピートが悩み出す番だった。
「えっと……はい??」
 とりあえず、返事を返してみると……横島は更に嬉しそうに微笑んだ。
「改めて、よろしく!ピート兄ちゃん!!」
 不思議な感覚だった。
 この少年の笑顔を見ていると……心が暖かくなっていく。
 心に存在する不安が全て、浄化されていく。
 そんな感覚だった。
「はい、こちらこそ……お願いします。横島さん」


「えぇ〜!!?わ、私なのぉ〜?」

 横島とピートの会話を遮ったのは、吸血鬼達に群がられている冥子だった。
 皆、この島へ来てくれたゴーストスイーパーへ期待の眼差しを向けている。
 中には拝んでいる者まで居る。
「頼むよ、冥子君!この場で免許を持っているのは私と君だけだ」
 横島やタイガーは普通の者とは違う力を持っている。
 だが……ゴーストスイーパーの免許を持ってないので、一般人にくくられる。
「で……でもぉ……」
 オロオロし、辺りを見回す冥子。
 その目には涙が浮かび、今にも式神が影から飛び出しそうな雰囲気があった。
「うっ……?」
 エミから冥子の危険性を聞いた事のあるタイガーは顔を引きつらせる。
「でも……わ……私ぃ……」
「落ち着け」
 何をすれば良いのか分からず、泣きそうになる冥子だったが……聞こえてきた声に顔を上げた。
 先程まで泣いていた顔は少しだけ微笑んでいた。
「「「「!」」」」
 冥子が顔を上げると、そこには……かなり前に一度だけ会った褐色の肌を持つ女性が立っていた。
「よ、横島さん……?」
「お、おなごになっ……!!!?」
 目の前で女になった相手に驚きの表情を浮かべるピートとタイガー。
 横島本人は特に気にせず、冥子へと近寄っていく。
「落ち着いて考えろ、お前がここで泣いても……意味はねぇ」
 その言葉達は荒いのだが、声は何処までも優しい。
 冥子の頬を優しく撫で。
「動かなければ、お前の友達は戻ってこねーぜ」
「……っ!!」
 聞こえてきた言葉に冥子は身体をびくつかせる。

「それとも、お前はあいつらを友達と思ってねーのか?」
 わざと挑発的な言葉を言うと、冥子は横島を力一杯睨み付けた。
「そんな事無いわ〜!!令子ちゃんは!!!」
 冥子の額と自分の額を合わせ、小さく横島は微笑む。

「なら、悩むよりも動け。
 お前を信じ……助けに来るのを待っているかもしれねぇーだろ?」

「……令子ちゃんは……友達だもの〜私……やるわ!!」
 二人の会話に吸血鬼一同、涙を流し……感動していた。
 最も、美神やエミの事を知っている唐巣とタイガーは少し遠い目をしていたが。

 しかし、やる気になったからと言って……作戦が出てくる筈も無く。
「け、けど〜……どうしよう〜??」
 先程に比べれば落ち着いているのだが、冥子は困っていた。
 一体どうすれば???
 悩む冥子の耳に、頼もしい言葉が返って来た。

「我に、考えがある」
「え?」
 声の主を探すと、それは目の前の人物。
 銀髪の横島だった。
 横島は小さく微笑み、右手を真っ直ぐ横へ伸ばした。
 すると、右腕が一瞬だけ膨らみ……中から一匹の鷹が姿を出現させた。
 鷹は真っ直ぐ幸の肩へと飛び乗り、小さく鳴いた。
『よ……横島さん?この子は……?』
 キヌの問いかけに、横島は笑みを浮かべ。


「仲間さ」
『ギィ』
 鷹は大きく翼を広げ、その言葉に同意した。


「何?逃げられただと?」
「はい……ブラドー様」
「申し訳ありません、地下室に抜け穴を『私』が見つけて探したのですが……既に穴は塞がれており。
 周辺を探すも、見つかりませんでした」
 エミの言葉に、隣に居た美神は額に血管を浮き上がらせる。
 ブラドーは小さく舌打ちし、息子の事を思い出す。
「ピートめ……あくまで余に逆らうつもりだな、たとえ息子と言えども……我が野望を妨げる者は許さん!!」
 自らの拳を思いっきり握り締め、ブラドーは壁にかけてある地図へ目を向けた。
 つられて、二人も顔を上げる。
 そこにあった地図は大昔信じられていた世界地図、かなり古びており……一部は読めなくなっている。
「……えっと……ブラドー様?それは……」
 そこにあったのは亀の上に象が立ち、その上に大きな大陸が乗っている絵。
 かなり象が馬鹿っぽい顔をしている。
「何だ?世界地図も見た事が無いのか?」
 呆気に取られる二人を見、怪訝な表情を浮かべる。

『こ……こいつ、完全に脳みそが中世で腐ってる……』
『理屈ではこいつがボケだって分かってるのにぃ……』
 頭の中ではそんな事を思っているのだが、二人は笑顔を浮かべて『ブラドー様ばんざーい』と拳を上げていた。
『魔力で完全服従しちゃう……何でこんな奴に噛まれちゃったワケ?!』
『くぅぅ……敵に回ったのがエミならドジって苛められたのにぃ!!』

「ぐっ……」
「?ブラドー様?どうしただか?」
 突然胸を抑え、身体を小さく揺らすブラドーへ問い掛ける他の吸血鬼。
「くっ……何でも無い、気にするな」
「へ……へぇ」

 ブラドーは深く深呼吸し、態勢を整えた。


 その姿を、窓の外から……一羽の鷹がジッと見ていた。


「あ〜!戻って来たわ〜」
「どうだった?」
『ギィ!』
 城から戻って来た鷹を腕に乗せ、幸は何を見てきたかを問い掛ける。
 元々は鳥の幸、鷹の言葉も理解出来るのだ。
「ふぅ〜ん?敵さんはどうやら……まだ頭が覚めてないみたいじゃん?
 そんで、胸に何かあるみたいだってさ……」
 その言葉に反応するカオス。
「ん……?ブラドー……伯爵、吸血鬼……十三世紀……?」
 何かを思い出しかけるが、微妙に衰えた脳では上手く思い出せない様子。
「ど……どうしたんか?」
「とにかく、僕達は横島さんの作戦通りに行きましょう」
 頭を抱え、考え込むカオスをタイガーは心配する。
 カオスを気にしつつも、ピートは他の吸血鬼へ指示を出した。
 既に大まかな作戦は銀髪時に聞かされている。

 他の支配されている吸血鬼達は雑魚と考えると、大ボスがブラドー……そして中ボス・裏大ボスは美神達コンビとなる。
 なので、美神とエミをどうにか引き付けねばならない。
 雑魚吸血鬼一同はタイガーの力で幻を見せ、隙を見てマリアが退治。(殺さない程度の力で)
 囮は幸と鷹の空を飛べる二羽が引き受ける事になった。

 美神とエミは冥子が無邪気に向かえば相手をするしかない。
 下手に攻撃をすればプッツンするので、少しの時間は稼げるだろう。
 冥子だけでは心許無いので、唐巣がサポート役に。

 そして……ブラドーの元へは横島とピート、カオスが向かう事になった。

 ちなみにキヌはお留守番。

「問題は……」
 軽く視線を動かし、キヌと一緒に子供と遊んでいる横島へ目を向けた。
 全ての作戦を告げると……銀色の時間は終了してしまった。
「先生……横島さんは、やはり何かに憑かれているのでは?」
「うむ……そこは、私も気になっているのだよ」
 小さく頷き、二人は横島へと視線を向ける。
「美神君も……まだ私の元に居た頃、色々と書物を調べてたのだが……ある日止めてしまったのだよ」
「え?止めた?」
 ピートの言葉に唐巣は頷き、小さく笑った。
 その笑みは……何処か悲しげだった。
「そう。止めてしまったのだ……私も書物を調べていたのだが……ある日突然、これ以上調べても無駄だと思ってしまったのだよ」
 自らの手を見つめ、唐巣は眉をひそめる。
「今思っても分からない……何故かやる気が失われてしまったんだ。
 だが、何故か調べようとすると突然体調が悪くなったり……意識が遠のいたりするのだよ」
 それは後に聞いた事なのだが、美神も同様だった。
 まるで横島の中の人格を消す。
 それを誰かが止めようとしているかの様だった。
 いくらこのままの方が使えるとは言え、美神とて無邪気な子供が悲しんでいる姿は見たくない。
 だから何度も書物を調べ、治療をしようとした。

 その度、唐巣の言った通り……身体に異変が起きたのだ。


「うぅ〜ん???」
 カオスはいまだに頭を抱えていた。
 ずっと考えていたので、良く見ると頭から煙を出していた。
「爺ちゃん。まだ悩んでるの??」
 悩むカオスの元へ横島が近寄ってくる、カオスはその問いかけには答えず……唸り続けるのみ。
 その姿を見、一瞬だけ横島の目に異変が起きた。
 まるで外国人の様に……瞳の色が青に染まったのだ。
 瞳の色が元に戻ると同時に、カオスは何かを思い出した様子。
「おぉ!!そうじゃあ!!!やっと思い出したぞ!!」
「そっか!良かったね!」
『おめでとうございます』
 小躍りをするカオスを見、にこやかに笑う横島とキヌ。


「ねぇ〜早く令子ちゃんを迎えに行きましょうよ〜!」
「は……早(はよ)ぉエミさんを迎えに行きたい……」
 余ってしまった二人が寂しげに呟いた。


「それじゃあ……行くじゃん!!!!」
『ギィ!!』
 幸と鷹は同時に空へ飛び立ち、城へと向かった。
「それじゃあ……わしらも」
「イエス」
 翼部隊の後を追いかける二人。

「冥子……頑張る〜!」
「主よ……」
 珍しくやる気の冥子と……必死に皆の無事を願う唐巣。
 ある意味、冥子がプッツンしない事を神へ願っているのかもしれない。


 頭が中世で停止しているボスはその作戦に見事に引っかかってくれた。
 空を舞う二羽を吸血鬼全員で迎え撃つように指示を出した。
 こんな時、戦いの駆け引きに慣れている美神達は自ら待機をする。
 銀髪の考えた通り……


「馬鹿正直なあの連中に……作戦なんて出来ないでしょうけどねぇ」
 何気ない呟き。
「そうね……特にあっちには冥子が居るワケ、プッツンに巻き込まれて終わりじゃない?」
 何気ない呟きである。
「下手すりゃ、あの子のドジで皆おしまいかもね」

 だが……その言葉は、あまりにも危険な言葉だった。

「わ……わた〜し〜……」
「「っ!!!?」」
 突然、壁の向こうから聞き覚えるのある声が聞こえてきた。
 驚いて身構えようとするが、それよりも……向こうの方が早かった。
 壁を巨大な林檎……ビカラが破壊して来た。
「きゃあ!?」
「し……式神?……じゃあ!?」
 突進して来た式神を素早くかわすと、壁の向こうから涙目の冥子と唐巣が出てきた。
 島中に存在している通路は……この城の中にも通じており、そこを冥子達は通ってきた。
「令子ちゃん……エミちゃん……」
「め、冥子君。穏便に……ね?」
 まだ何もしていないのに、冥子は限界が近い。
 それでも臨界点を突破しないのは、ある言葉を聞いたから。

『なら、悩むよりも動け。
 お前を信じ……助けに来るのを待っているかもしれねぇーだろ?』

 だが……吸血鬼となった美神達を見、プッツンとは違う衝動が冥子の中に起きる。
「令子ちゃん……エミちゃん……」
「「はっ……はい!?」」

「私が〜……絶対に助けて上げる〜!!!」

 そう叫び、影の中から式神達を呼び出す。
 銀髪時に……こう言われたのだ。

『色々と動き回られると、吸血鬼から人間に戻せなくなるからな。
 お前は二人の動きを止めるんだ。
 相手は吸血鬼だ……友だと思うならば手加減せず、全力で迎え撃ち……勝て』

「「ぎゃー!!!!!」」
 たとえ吸血鬼となっても……冥子には勝てない二人だった。


「ふん!!」
 気合を入れ、襲ってくる吸血鬼達へ幻を見せるタイガー。
 動きが止まった所をマリアのキックが決まる。
「ぎゃあ!?」
 一人を蹴り飛ばし、他の者達を巻き添えにして倒れていく。
 ここまで連れてきた幸や鷹も攻撃に加わるので、吸血鬼達はドンドンと減っていく。
 勿論、皆気絶しているだけ。
 タイガーに限界が来ると同時に……ここへやって来た吸血鬼達は全滅していた。
「お疲れ様・です」
 息も絶え絶えのタイガーの背を撫でるマリア、その行動に……

「うおおおおおおおん!!!」

「?」

 力を使ってもいないのに、そこには虎人が居た。


 ブラドーの居る部屋の前に立ち、一同は息を飲んだ。
「良いか?開けるぞ……先程の話、忘れるでないぞ」
 そう一言注意し、カオスはゆっくりとドアに手を掛けた。
 ドアは軋んだ音をたてて開いた。
「ほう……来たか」
 にやりと笑うブラドーをピートは睨みつけ。
 カオスは軽く溜め息をつき。


「うわぁー!!本当にお兄ちゃんそっくりだぁ!!!」

 横島は感心していた。

「久しぶりだなぁ……?ブラドー?」
「ぬ?貴様は……」
 不適に笑うカオスを見、ブラドーは軽く首を傾げ。

「誰だ?」
「ふふふふ……わしか?
 わしの名はドクターカオス!!天才錬金術師で世界に名を轟かせる男じゃ!!」
 大笑いする姿は……どう見ても悪者だった。
 何処から吹いているのか、マントもはためく。
 横島に拍手されつつ、カオスは続ける。
「わし特製の弾の味はどうじゃ?ブラドーよ」
 そう言い、自らの胸を指差す。
「っ!!?まさか……貴様」
 反射的にブラドーは左胸を抑えた。
 唇を軽く噛み、カオスを睨み付けた。
「まさか……あの時の人間か!?」
 眠り続け、まだ寝ぼけている頭でも覚えている。
 吸血鬼最強である自分を島へ追いやり、眠りにつかせた原因。
 それはある人間によって負わされた傷。
「先程思い出したぞい、まだわしの頭がはっきりしておった頃……『カオスフライヤー一号』で貴様にとどめを刺そうとした事をな」


「えっと……」
 話についていけない横島は、とりあえず隣のピートの袖を引っ張り。
「兄ちゃんのお父さんを熟睡させてたのって、爺ちゃん?」
「はぁ……そうみたい……ですねぇ」
 話を短くすると、その様子。

 その時の思いを思い出し、ブラドーは叫ぶ。
「あの時の恨み、今ここで晴らしてくれる!!」
「ふっ!!面白い!!受けてたとう!マリア!!」
 軽く後ろを見、横を見……上を見。

「……しまった!!マリアは別行動じゃったぁ!!」
「普段どれだけ頼っているか……分かりますね」
 カオスの前に立ち、ブラドーから守るピートは苦笑いを浮かべた。
「えぇい!!小僧!!先程の話を忘れておらんじゃろうな!!」
「へっ!!忘れてねぇーぜ!!爺さん!」
 瞳に黄を宿し、横島はブラドーの元へと向かった。
 タイミング良く人格が変わり、カオスは軽く息を吐いた。
「やはり……緊急時の記憶は別の人格にも伝わっているようじゃな」
「一体何人中に居るんですか?横島さんは……」
 頬を引きつらせているピートにカオスはにやりと笑い。
「今の所、わしの推測では……六人じゃな」
 推測と言っているが、ただの勘だったりする。


「くっ!!!人間如きに!!」
「その『如き』に眠らせれたのは何処の誰だっけか?えぇ?ブラドーさんよぉ!」
 拳に力を込め、殴りかかる。
 噛みつこうと顔を近づけようとすれば、顔面を叩かれる。
 そうなれば……不死身だが危ないだろう。
「ふざけるな!」
「っ!」
 身体を霧に変え、ブラドーは姿を消した。
 突然対象者が居なくなり、横島は大きく身体を傾けてしまった。
 自らを霧に変化させる、これも吸血鬼の能力の一つである。

「少しは出来るようだが……ここまでだ!」

 背後に出現し、その首筋へと向かう。

「危ない!!横島さん!!」
 ピートの言葉が聞こえるが、横島は反応出来なかった。
 この者が配下に加われば、他の二人は手が出せないだろう。
 その間に態勢を整えようと……ブラドーは考えていた。

 だが。


リィン!!! 


 横島には……邪気を祓う鈴がある。
「ぬっ?!」
 鈴の音と共に、身体の自由が無くなり……ブラドーは目を見開いた。
「へっ……お前の助けなんていらなかったのに……」
 横島はポケットから顔を出している鈴を指先で弾き、笑った。
 そして……そのままブラドーの左胸へと思いっきり拳を叩きつけた。

「ぐああああああ!!!!!!!」


 ブラドーは昔、カオスによって眠りにつかされた。
 その時カオスは銀の弾丸を使用し、ある力の込められた弾を体内へ入れる事に成功した。
 一度身体の中に入ると、その身が滅ぶまでけして表には出て来ない魔力入りの弾。
 最も……作るのにかなり時間がかかり、一つしか出来なかった物だったりする。
 本来ならばその身を滅ぼす力入り弾も入れる筈が……その弾は命中せず、外れた。

 だからブラドーは生き残り、島で復活の為に眠る事が出来た。
 復活し、他の傷は治ったのだが……その弾だけは表に出す事は出来なかった。

 弾丸はブラドーの急所となり、多くある弱点の一つに加えられてしまった。


 横島に急所を叩きつけられ、ブラドーはその場に倒れこんだ。
 弾の作用により、魔力も絶たれていた。
 もう吸血鬼化した者達も元に戻っただろう。

「よし……またこんな事が起きぬ様、今こそトドメを「駄目!!」……そう、駄目……って?」
 言葉を遮る声にカオスは呆気に取られる。
 発言者は元に戻っている横島だった。
「駄目だよ!この人はピートお兄ちゃんのお父さんだよ!そんなの可哀想だよ」
 まるでカオス達から守るかの様に、倒れているブラドーの前に立つ。
「しかし……またこんな事があったら……殺すのでは無く、封印なら……」
 ピートの言葉にも。

「だ・め!!」

 怒る横島へカオスが切れる。
「なら、どうすれば良いと言うのじゃー!?」
 青年が地団駄する姿はかなり滑稽だが、この場にそれを笑う者は居ない。
「んと……こーする!」
「「?」」
 倒れているブラドーのマントを掴み、上下に揺らし出す横島。
 その動きはちょっと乱暴。
「ぬっ……?」
 がくんがくんと痙攣するかの様に顔を動かされ、ブラドーは意識を取り戻した。
「ブラドーさん、ブラドーさん。

 良い?もう他の子に迷惑かけちゃ駄目だよ?
 今度こんないけない事したら、お尻ぺんぺんだよ?

 その対処の仕方にカオスは思いっきりすっ転ぶ。
『小学生でもこんなお説教無い……』
 傍観するしか出来なかった二人をよそに、話は進む。
「(何故だ……?何故かこやつの言う事に……逆らえない……)
 …………分かった」
 長い沈黙の末、ブラドーは頷いた。
「うん、良い子だね〜」
 満面の笑みを浮かべ、ブラドーのくしゃくしゃになった髪を撫でる。
 年上に向かった良い子は無いだろう。と思うカオス。
 後でブラドーの血を吸って支配しておこう……と決意するピート。

 ブラドーの方は……


「……おい、貴様」
 顔を真っ赤にして、横島の手を握り締めていた。
「ふえ?」
 そして、爆弾は落とされた。

「余のモノにならぬか?」


「十字架クラッシュー!!!」
「ぐはー!!!!」

 横島に当たる事無く、巨大な十字架がブラドー目掛けて飛んできた。
 そして十字架はブラドーを連れて、壁へ。
 投げた者は……ピートだった。
「い、いきなり何をするか!!いくら余でも聖水まみれの十字架はキツイぞ!!」
「五月蝿い!」
 壁に埋め込まれている父親へ力一杯叫ぶ。
 その姿を見、ブラドーは前髪をかきあげる。
 美形なので絵になっているのだが……なにぶん壁に半分はまっているのでギャグ絵にしかならない。
「ふっ……分かったぞ?さては余がこやつを落とすのが嫌なんじゃな?」


「これ以上、身内の恥を晒してなるものか……」

 いそいそとマスクを装着し、ピートは何かのキャップを開けた。
「ぬっ……そ!!それは!!!!!」
 ピートの手には……『ガーリックパウダー』と書かれていた。


 叫ぶ親子の隣で……横島はきょとんとし。

「『よのもの』って……なぁに?」
「さぁて……子供は知らんで良い事じゃよ」
 マリアを迎えに部屋を出るカオスに連れられ、横島も部屋を出て行った。
「親子、仲良くね」
 そんな一言を残し。


「ぎゃああああああああああああ」


 その日ブラドー島では、様々な場所から悲鳴が上げられていた。

 息子の友人に手を出そうとし、殺されかける父親。
 ロボットとはいえ、女に触れられ……興奮してしまった虎。
 友人を助ける為奮闘するも……既に戻っている事に気が付かず、プッツンした娘。
 止める事も出来ず、ただ逃げ惑う娘達。

 そんな一同を見、平和を心から求める神父。

 この島に……安息の時が来るのは……一体いつになる事やら。


 第十話 終


面白い『壊れ』ってどうすれば良いんだ?と首を傾げる今日この頃・・・
もっとブラドーを壊したかったのに……力不足であまり壊れませんでした。
ちょっと寂しい。

現在右手を捻り、キーボードが打ち難い状態です。
ここ最近、身体を痛めてばかり・・・(泣)

山神アキラ様>タイガーはあまり前に出ようとしない割に、力はあり!って感じで。
そうでないと……キャラがあまり立たない!!
後編、どうでしたでしょう?
少しでも楽しんで頂けたら、幸いです。

柳野雫様>とりあえず、神父様がやってくれたのではないでしょうか?
美神さんもあまり良く分かっているワケではないので……あまり深く説明は出来ないんですがね。
廃墟を悲しげに見ているのは……とりあえず『横島』です。誰とは敢えて言いませんv(ルナは廃墟好き)
冥子と横島・タイガータッグは後の式神騒動に通じる物が……(今気がついた)

AC04アタッカー様>じゃあ最初に噛んだ者は……

自分は小説を書く時、キャラは基本的設定を作り……少し書いてから人格を固めます。
黒髪は『幼い・子供っぽい』と設定し、少し書いたら『むしろ子供』になりました。
なので、その範囲で大いに動いちゃうんで……ルナの静止を振り切ってしまうんです。

まぁ……簡単に言うと、勝手に動くんですけどね。
とりあえず、物語自体に支障は無いので………暴走し放題!!(流石に物語に関わる部分は暴走しませんが)

紫苑様>元に戻すのに活躍したのは……冥子(?)でした。
吸血鬼側は漫画と同じ動きをし、主人公側はちょっと違う動き程度。
虚を突く作戦が思い浮かばなかった自分が憎い。


次回は漫画の外伝(読みきり)話になる予定。
ちなみに、ピートはブラドーへの最後の攻撃に自滅。

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