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「妖物のお医者さんR 第15話(GS&動物のお医者さん他複数)」

闇色の騎士 (2005-05-11 08:05)
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〜第15話〜


今はもう秋。

色々食べモノが美味しい秋。

除霊学部に新人(2年生)の入ってくる季節である。

始めに共通基礎オカルト知識をやり、2年の秋学部に分かれるのだが……

「初々しい〜」
懐かしそうな表情で冥子が言った。

「僕達もそんな時代がありましたね…」
何だかサワヤカな涙をほろろっと流しながらピートがのたまう。

「忘れろ、昔の事だ」
横島は少しヒキながら呟く。

何か最近ツラい事でもあったか?ピート。

「わぉう(知らない人がぞろぞろでござるな)」
「ケェン…(面白いヤツいないかしら…)」
シロタマコンビが横島の足元でてんで勝手な事をやっている。

「タマモ……飼い主どうした…(大汗)」
横島が汗ジトで聞く。

「ケェェン(補習中だって…ネクなんとかの笛がなかなか吹けないらしいわ)」
あまり興味無さそうである。

と言うかおキヌとコミニュケート取れているのだろうか?

殆ど横島の飼い狐と化しているよーな気がするのは、作者の気のせいではあるまい。

「そっか…」
ネクなんとかの笛って何だろう?そう思った横島だったが、後ろに居た人物に思考を邪魔された。

鬼になる笛ではないらしい。

「今年はちょっとコワい人が入って来たのね〜」
何故かいきなり弱気発言かましているのは、除霊所の非常勤助教授の「ヒャクメ」である。

一応この方は神様なのだが、霊的格闘の方々と比べれば…

そりゃもうこれ以上はない!くらいに頼りない。

まあサーチ系の能力に長けた方なので仕方が無いのだが…

更に何故だか、横島の背中にゴロニャンと縋り付いていた。

「ナニやってんです先生…」
顔面に無数の縦線を刻んだ横島がぎぎいっと振り向く。

「甘えてるのね〜久しぶりだし〜(はぁと)」
そう、神族のヒャクメはそうそうここに来られる訳ではない。

いわば通常任務との掛け持ちの形なのだ。

……まあイロイロ助けたりしたせいもあって、横島はみょ〜にこの女性神族に懐かれているのである。

講座が決まった横島達の前に初めて登場した時も、横島の頭上に出現。


ぼんっ!

「うあ!?」
「え?きゃっ!?」

ぼふ!

お互いびっくりの、お姫様抱っこ対面。

「………(絶句)」
「………(ぽっ)」

とっさに受け止めたは良いが…きっちり凍りつく横島と、何故か頬を赤らめるヒャクメ。

「…何よ?今の「ぽっ」は?」
美神はきっちりおかんむり。

「うぅぅ(なんだかとっても不愉快でござるな)」
シロも不機嫌気味。

「…くぅ、何で横島さんだけあんな美味しいメに?」
何故か羨ましがるピート。


ホモじゃなかったか。

ちなみに、この抱かれ具合が気に入ったらしく…

自己紹介が終わるまで、ヒャクメはそのままだったという。

横島は立ったまま(現実逃避の最終手段か?)気絶していたが。


「わぅ…?(またこの女でござるか…何故こうもせんせーに纏わりつくのでござろう?)」
「ケェェェン…!(む〜…神だからって横島にベタベタするとただじゃおかないわよ…!)」
いきりたつタマモに解ってないシロ。

「で、恐そうな奴って誰なんス?」
横島が気を取り直して聞く。

なんだか急にギスギスし始めた空気にうんざりしたからだろう。

「あれなのね〜」
あれ扱いされるのも難だが。

ともかくヒャクメが指した方向に目をやってみれば……

「………」

ぽん!

横島は納得したふうに手を叩いた。

その人物は、背はそれほど高く無い…というかはっきりいって低い。

更に目つきが決定的に悪かった。

あの葦原涼や草加雅人よりも。

しかも漂う「武闘派!」と言う雰囲気が全てを物語っている。

ヒャクメはその名の通り百の感覚器官が全身にあり、文字通り「この世に見えぬモノ無し」なのだが…

従って、その彼の放つ”気”になにか物騒なモノでも見えてしまったに違いない。

なるほど…今年は恐いのが入って来た。


「髪の毛ツンツン〜〜」
冥子が見たまんまの感想を述べる。

「あの身長…色々苦労してそうですね…」
ピートは妙な所で同情していたり。

「恐いからウチには来ないで欲しいぃぃのぉぉ〜!!」
横島の後ろからこっそり様子を伺いながら、ヒャクメが嘆く。

「それとあちらの女の人も恐いのよね〜ある意味」
「まだあるんスか…」
なんでこの人(神)こんなにビビリなんだろう?

疑問が拭えない横島だった。

だが、今回ばかりは横島もビビらざるを得ないのだ!

何故ならその女とは……


「うふふふふふふふ…この妖刀「ヒトキリマル」でやっと斬れるのよね…うふふふふふふふふ…」


などと刀に向かってぶつぶつ言っている、忍者装束の女だったからだ。


「………………何なんだあれは」
珍しく呆気に取られる横島。

「見なかった事にしませんか?」
ピートも現実逃避したい様だ。

「わぅ(ふむ、そこそこの業物でござるな?)」
女はスルーし刀に目が行くシロ。


「ケェン?(人間ってヘンなの多いわね…何故かしら?)」

それが人間なんだよ、タマモ。


多分。


所変わって除霊所、美神教授の執務室。

「ああ、あのツリ目ね…ウチに来るわよきっと」
美神教授はこともなげに答える。

「え〜〜〜〜(泣)」
泣き出しそうな表情のヒャクメ。

「あのぶつぶつアブナイ事口走ってた女の人はどうっスか?」
横島が気になる質問をぶつけてみた。

「……なによ…気になるの?」
美神教授は何となく不満気だ。

「いえ…関わりあいになりたくないかな〜っと思って」
あはははは〜っと乾いた笑いを浮かべる横島。

「うんうん、同じく関わりあいたくないです」
ピートも同意する。

「そう(にっこり)アレは多分来ないわよ、霊的格闘の方へ行くんじゃないかしら?」
あっさり機嫌の直った美神教授。

「それよ〜〜何故あの男霊的格闘に行かないのね〜?」
涙をぶわわっと放ちながら、ヒャクメがアップで迫る!

「ああ、それね…あの男…名前は確か「伊達雪之丞」なんでも以前モグリのGSやってたらしいんだけど、モグリやめてGS資格を正式に取得して事務所開業したい様なの」
よいしょとヒャクメを押し戻しながら、美神教授が言った。

「ふうん…考える事は同じか」
横島はニヤリと笑う、恐らく奴は実務の経験をさらに積みたいのだろう。

横島がここを選んだのと同じ理由である。

……それに経営のイロハは美神教授から吸収出来そうだし。

「面白そうな奴だな…」
秘かにその出会いを楽しみにする横島だった。

バトルマニア化しつつある横島、なんだかまずい方向に行っている様な…

「え〜ん…厳しい〜〜…とほほ〜」
だう〜〜っと涙を流すヒャクメの心、横島知らず。


場所は変わって構内。

「横島くん達〜いなかったから〜知らないでしょうけど〜」
冥子がのてのてと喋る。

「はぁ」

「あの伊達くんって子〜新歓コンパの時にね〜」


コンパの会場にて。

「2年生の諸君!除霊学部へようこそ!」

「……来たくて来たんじゃねぇ」

シーン………


戻って現在。

「〜〜って言ってたのよ〜」

「それはまた…」
苦笑するピート。

「言っても仕方ない事言ってんやな〜」
横島は久しぶりの大阪弁で言った。

「でもまあ、モグリだと開業出来ないから嫌でも来なくちゃならないんですよね…そういう意味では可哀相と言えない事はない…かも知れません」
微妙な言い回しをするピート。


横島とピートは2年生の式神飼育実習の世話をしていた。

……ちなみに美神教授の命令である。


「2年生も始めのうちはみんな好き勝手にオシャレやらなんやらしてるんだけど…」
横島が溜息を吐きながら言う。

「結局、厳しい現実の前に敗北するんですよね…」
遠い目をして呟くピート。

経験者か?

除霊学部に入った学生は月日の経過とともに、お洒落をする意欲を無くしてくる。

赤い口紅やウサ耳やメイド服を着けたって、見てくれるモノは式神や悪霊や背後霊くらいしかいない事に気付くからだ。

………つーかウサ耳とメイド服は違うだろ。

しかし…次々と学生が染まって行く中、ひとり伊達雪之丞だけは孤高を保っているのであった。

某黒ずくめの男程では無いが。


その頃の黒ずくめの男。


「……」
茫然としていた。

目の前では…

「今夜はカレーだって言ってるだろ!?」
「愚か者!今夜はステーキと決まっている!!」
二大地上最強女が、しょーもない事で言い合っている。


「…おい」


「こっちはじっくり煮込んだまろやかカレーだよ!美味いんだ!!」
「何の!こちらは厳選松坂牛の肉を豪華に使った極上ステーキだ!負けはせん!!」
カレー鍋片手に怒鳴る涼女に、肉を掲げて叫ぶ魔奈美。

どっ○の料理シ○ーか?

どこかから農家やら牧場やらの応援の声が聞こえて来そうであった。

それを見ていた黒ずくめが一言。

…俺は刺身が食べたいのだが…


「そうかい!なら勝負だ!!」
「よかろう!我が最高ステーキの恐ろしさ!じっくりと思い知れ!!」
睨み合いながらキッチンへと駆け込む二人。


誰も聞いちゃいねぇ。


ひゅぅぅぅぅぅ…

部屋の中なのに吹く、やけに冷たい木枯らし。

「………」


ある意味、孤高であった。


戻って大学近くのそば屋さん。


「性格なんでしょうねきっと」
ピートがしみじみと言う。

「嫌だけど来てやってんだ!という気持ちの象徴があのバトルマニアな性格なんですよねぇ…」

「でも…弱い者には意外と親切だぞ、GSとしての適正はあるんじゃないか?」
何となく雪之丞を弁護する横島。

「でもキャラが〜葦原くんと〜かぶるのよね〜」
冥子が言うてはならん事をのたまう。

ライバルは仮面ライダー?

…厳しいな…ユッキー。

しかもそのせいで(読者に)忘れ去られていたようで。

不憫。


「わぅ?(まだでござるか?)」
外で横島達を待っているシロ。

「よう、人狼の子」
突然ぶっきらぼうな声が頭上から降ってくる。

そこに立っていたのは、噂の伊達雪之丞であった。

「わぅ…(この男は…せんせーの言ってたバトルマニア…)」
それで覚えてるのかシロよ。

「お前のご主人はこの中か」
「わう?(そうでござるが?)」

「って狼語なんか理解出来ねぇがな」
洒落のつもりか、ニヤリと笑って見せる雪之丞。

その時、横島達が店から出てきた。

「あ〜〜伊達くんだ〜〜」
冥子がビシッと指さす。

「なんで名前を知ってるんだよおい!」
いきなり名前を言われて雪之丞が突っ込む。


「ゆ〜めいだし〜目立つし〜一人だけ浮いてるもん〜」

それはアンタにも当てはまるんじゃないかと。

「フン…どうせツッパリだとか不良っぽいとか思ってんじゃねえか?人間ってヤツは外見で人を判断するからな」
少々スネた様な口調で雪之丞が言った。

「ツッパリって…表現古いぞ」
すかさず横島が突っ込み返す。

「古いですかね?」
ピートが何かズレた事をのたもーている。

「黙れ700才

ギュイン!

げいん!!

「あべしっ!?」

横島が瞬間”幻影烈拳”ファントムブレイカーで、ピートを黙らせる。


べしゃっ!

生ゴミと化したピート(以下略)

数分後。


「痛たたた…最近ツッコミに容赦無いんじゃないですか?」
泣きながら抗議するピート。

「そういうお前も復活早っ!?」
ちょっと引く横島だった。


「えっと〜外見からすると〜友達少ない〜?

さくっ!!

「くはっ!?」
冥子の遠慮のカケラも無い一言が、無情にも雪之丞に突き刺さる。

「それで、バトルが大好き
横島がさらに追い打ちをかけた。

「ぐ…」←3度の飯より大好き

「お父さんが横暴で、お母さんは離婚して女手一つで君を育てたが…もう亡くなっているとか」
何となく想像して言ってみるピート。

「な………!?」←その通り


「つまり〜荒んだ家庭で育ったので〜ひねくれているけど〜本当は寂しがり屋さんね〜?」
冥子が無理矢理結論を出す。

しかも微妙に当たっているから恐い。

「何だ、ほぼ外見通りじゃないか」
深く納得する横島達。

「ほっとけ!というかそこのキンキラ野郎!見てきたよーな事言うんじゃねぇ!!」
思わず雪之丞が吠える。

「がーん!き…キンキラ野郎……」
無意味にショックを受けるピート。

どうも美形&金髪からのイメージらしい。

「そんな事はどうでもいい、横島忠夫!俺は貴様と戦いたくて会いに来たんだ」

「俺とか?」
横島が自分を指さす。

「ああ、貴様は有名だからな!悪霊軍団を秒殺したとか、カラスをブラックホールに叩き込んだとか…果ては式神軍団を竜巻き殺したとか…俺は貴様の様な強いヤツを見ると我慢出来なくなるんだよ…!戦いたくてなぁ!」
やる気満々の雪之丞。

「げっ……」
横島は絶句した。

みんなホントーの事なので反論出来ないのだ。

しかし…横島が修行中、仮想データとはいえ西洋怪物軍団を始めとして…

果てはショッカー怪人やらアンノウンまでブチ倒していた事を知ったら、流石の雪之丞も平然とはしていられなかっただろう。


ちなみにその仮想データを作ったのは、一説には自分自身も仮想データの、無限城という物騒な場所に住む少年だというが…

真相は定かではない。


「まあ機会があったらな」
するりとかわす横島。

「王者の余裕か?まあいい…必ずやる気にさせてやるぜ」
そう言って雪之丞は去っていった。


「……あまり意味の無い戦いはしたくないんだがなぁ」
横島はふうと溜息を吐いた。


”ヨコシマは優しいから…”


そう言う蛍の声が、横島には聞こえた気がした。

「蛍……俺は優しくなんか無いよ…」
呟いてから思わず苦笑する横島。

幻であろう声に答えてしまった自分がちょっと可笑しくなったのだが。

「何か言いました?」
「いや、なんでもない」
ピートの問いに横島は笑って誤魔化した。


”幻なんかじゃないんだけどね…ふふ”

その声は、横島に届く事無く意識下の海に消えて行った。


翌日、初歩の除霊実習にて。


「えい!」
学生の一人が破魔札を、ふよふよ浮いてる浮遊霊目掛けて投げつける……が

ぺしょん…

なんにも起こらず空しく床に落ちた。

その様な光景があちらこちらで見られる。

破魔札は一応GSにとって、基本アイテムの一つであるのだが…

解説の必要も無いであろうが、破魔札とはダイナマン…じゃなくてダイナマイトみたいなもので…

小量の霊気で封印されているパワーを起爆させ、敵にダメージを与えるのだ。

だがまだまだズブの素人さんから抜け切れていない2年生では、そのコツを掴むのがまず難しい。

ヘタをすれば手元でぼん!と自爆して高いお札がパ〜なんて事もありうるのだ。

で……


「この札ただの紙なんじゃ?誰がやっても起爆しませんよ…」

という苦情が横島達に来るのである。


「解った…それじゃ実演してみようか」
横島がさっき床に落ちた札を拾いあげて、目の前を漂う霊に狙いを付けた。

「ほいっ」
軽い声とともに、札をひょいっと浮遊霊に向かって飛ばす。

ぼしゅうううん!

「ぐえ〜…」
札が爆裂し、浮遊霊は短い悲鳴をあげて消滅した。

「…………………」
呆然とその光景を眺める2年生達(約一名除く)

なるほど、起爆する事は確認されたが…

そんな調子では日が暮れて朝がくるのでは無いだろーかと、純真な2年生は思った。(くどいよーだが約一名除く)

「さあ練習を続けて!」
横島の言葉に再び破魔札起爆練習が再開される。


しばらくして………

「おい伊達…あとお前だけだぞ」
2年生の一人が、後ろの壁にもたれかかってサボっている雪之丞に声をかけた。

「フン…」
雪之丞は面白くも無さそうな表情で札を受け取ると、浮遊霊に向けてピンと弾いた。

ボシュッ!!

「ぐぉぉぉ…」

あっさり浮遊霊は消滅する。

「凄い…」
「一撃で…一撃で撃破か!?」
「ほぇ〜…」

辺りからは感嘆の声が洩れていた。

「下らんな」
雪之丞はムッとした表情で外に飛び出して行く。

「……サボリだな」
何故か冷静に呟く横島。

「まあ気が済んだら帰ってくるんじゃないですか?」
ピートもサラリと流してしまう。


「馬鹿馬鹿しくてやってられるかよ」
雪之丞はブチブチ文句を垂れながら構内を歩いて行く。


出た後すぐに彼は六道冥子に出会った。

「戦うのが〜好きなの〜?でも〜そのウチ〜すっごく強い人に〜やられちゃうかも〜知れないわよ〜〜?」
そんな事をしれっと予言?して彼女は、インダラに乗ってぱっかぱっかと去って行ったのだ。

「馬鹿な…俺は負けねぇ!ガキだった俺を置いて、年も取れずに死んじまったママに誓ってな…!」

ドン!

誰かと擦れ違いざまに肩がぶつかった。

「貴様!」
その誰かが凄く悪く恐い目つきで睨みつけてくる。

「何だ?てめぇ?」
雪之丞もその態度にカチンと来たのか、ガンを飛ばし返す。

「やるのか?なら相手になってやる!」
男は携帯電話のよーなモノを取り出してナニかを入力した。

”913 ENTER”

「変身!!」

男ー草加雅人は、瞬時にして仮面ライダー913(カイザ)に変貌する!

「ほう…面白ェ!やってやるぜ!!」
雪之丞が”奥の手”を発動させた!

「な…貴様!?」
カイザが驚きの声を上げる………


「…………」
葦原涼は無言で赤いオフロードバイクを磨いていた。

これから津上翔一を探しに行くつもりなのである。

昨日…

「最近おかしな気配を感じるんですよ、ちょっと例の原子力発電所まで様子を見て来ますね」
と言って出かけたまままだ帰って来ていないのだ。

「ふう…何も無ければいいが」
涼が布をしまい、さてメットをかぶろうとした時。

向こうから歩いてくる男と目があった。

自分も目つきが良い方だとは思ってなかったが、あっちはさらに悪い。

「……アンタ、強いのか?」
男ー伊達雪之丞が先に口を開いた。

「いきなりだな」
涼がニコリともせずに答える。

「さっきの見掛け倒し野郎じゃ不完全燃焼なんだよな…アンタ相手してくんねーか?」
「見掛け倒し野郎だと?」
話が見えない涼。


その頃の草加。

「………………(ノックアウト中)」

やっぱりというかなんというか、ボコボコのボロボロで地面にすっ転がっていた。

ベルトはもちろんすっ飛ばされて近くに放り出されている。

「おい草加、こんな所で寝てんなよ」
通りがかりの乾巧がつんつん突付いていたり。

「タッ君、草加さん眠いんだよ…昨日も徹夜でカラスと戦ってたらしいし…そっとしておいてあげないと可哀相だよ」
見当違いもはなただしい意見を述べる啓太郎。

「ああ、解った解った」
「でももしかしてカイザのベルトって特別外れやすくなってるって事ない?」
「うーん、草加がやけにやられるから外れ癖でも付いたか?」
あっさり納得し、無責任に語り合いながら去っていく二人。

放置された草加の上に、お馴染み真・マケタカが巣づくりを始める。

……誰か病院に運んでやれ。


「悪いが急いでるんでな」
涼は相手にせず準備を進めようとした。

「おっと…やる気にさせてやるぜ!」
雪之丞が霊気を全身に集中させる!

「おおおおおおおっ!!」

ばしゅぅぅん!!

彼の体を霊気の鎧が覆う!

「……お前…」
少し驚いたふうに涼が言う。

「クッククク…驚いたか、これが俺の奥の手”魔装術”だ」
雪之丞がニヤリと笑った…

と言っても出ている箇所が目だけなので、あくまでもニュアンス的にだが。

「ほう…世の中には面白い奴が多いな」
驚きは左程でもない様で、普通に喋る涼。

ドン!!

いきなり霊波砲を放つ雪之丞、それが涼の足元に突き刺さる!

ドゴォォン!!

「くっ…問答無用か!…変身ッ!!!」

ドシュゥゥゥゥン!!

緑の光が涼を包み、彼は仮面ライダーギルスに変身した!

「ム…貴様も変身しやがるのか!?」
今度は雪之丞の方が驚きの声をあげる。

「ウォォォォ!」

ガキィィィッ!

ギルスが素早く放った拳を、雪之丞が防ぐ。

「やるじゃねぇか!」
今度は雪之丞が回し蹴りを放つ!

「ちぃ!」
ギルスは身をかがめてかわす。

「なら!これでどうだ!!」
走りながら霊波砲を連射する雪之丞。

ドドドドン!

「ウォッ!?」
ギルスは驚きながらも前転を繰り返して攻撃を避けた。

「オラオラオラ!!」
調子に乗ってブチかます雪之丞。

「ちっ!喰らえ!!」
ギルスが隙を見て、黄金のチェーン「ギルスフィーラー」を飛ばす!

ギュルルルン!

「うわ!?」
攻撃の合間に飛んできたそれを、慌てて弾く雪之丞。

「くっそぅ、やりやがる」
肩で息をしながら敵を睨みつける。


「こいつ…強いな」
冷静にギルスは雪之丞の戦闘力を分析していた。

(これ以上の長期戦は面倒だな、津上も心配だし…決めるか)


「ウォォォォォォォォォォオッ!!!」


突然!

ギルスが凄まじい雄叫びを放った!

「な、何だ!?」
驚く雪之丞。

更に肩から、膝から、次々と鋭いブレード状の突起物が出現し、胸に黄色い”目”の様な物が開く!

「ま……まだ変わるのかよ!?」

赤く凶悪な爪が両腕の甲から生え…

「仮面ライダーエクシードギルス」が爆誕する!

「……こっちも”奥の手”だ」
エクシードギルスがボソッと言った。

「何て奴だ…感じるパワーも威圧感も違う…まさにバケモンじゃねぇか」

シュルルルルン!

その背中から赤い触手「ギルススティンガー」が放たれ、茫然としている雪之丞に容赦なく絡みついた!

「うぁぁッ!?くそっ…動けねぇ……!?」
もがく雪之丞、動ける筈もない。

このギルススティンガーは、(美神の)ミサイルすら叩き落すパワーと頑丈さを誇っているのだ。


「ウォォォォォォォォォォォォォオオオッ!!!」


最大級の雄叫びをエクシードギルスが上げた………


「何処行ったんだろうな?アイツ」
横島とピートとシロはぽくぽくと構内を歩いている。

「そういやさっき草加さんが真・マケタカの巣になってましたよ」
ピートがあまり興味無さそうに言った。

何時もの事だろ」
横島もさらりと流す。

………再三酷い扱いだな草加。


「わぅ?(何でござるか?このボロは?)」
シロがボロゾーキンと化した物体を発見する。

「……人かな?」
横島もまじまじと観察した。

「どうでしょう?」
ピートは棒でツンツンと突付いてみる。

「く………やられたぜ……」
ボロゾーキンが何故か声を発した。

「この声は…雪之丞か?」
「人だったんですねぇ、一体何にやられたんでしょう?」
横島は何がなんだか解らなかったが、仕方無いので医務室に引きずって行く。


全身の痛みが失せていく心地よい感覚に癒されながら、ゆっくりと雪之丞は覚醒していく。

”負けちまったのか…俺は”

覚えているのは、振り下ろされるエクシードギルスの両足…

しかもブレード付き両足カカト落とし。

良く生きてたな?

”あのホニャララした女の予言したのはこの事だったのか…”

………さあそれはどーだろう?

冥子だしね。

「まあいい…修行して…次は……勝つさ…」
雪之丞は新たな闘志を静かに燃やしていた。


「これで大丈夫、すぐ良くなりますよ」
魔女学講座教授、魔鈴めぐみが治療を終えて言った。

「すんません魔鈴さん」
すまなそうな表情の横島。

「いいんですよ(横島さんの為だし)
ちょっと顔を赤らめながらめぐみが微笑する。

アンタもか…魔鈴めぐみ。

”む〜……所構わず魅き付けまくってるわね…”

横島には、また蛍の声が聞こえた気がした。

「そんな訳無いだろ?俺を好いてくれたのはお前だけだって」

”驚異的にニブチンよね…”

「どうしました?」
めぐみが?を頭の上に浮かべて聞いた。

「い…いえ、何でも無いっス」
慌てて横島は誤魔化す。

(……最近変だな俺…蛍の声が聞こえる訳なんて無いのに)

思わず考え込む横島。

だが、彼は失念していた。

師匠「宮本武蔵」が言っていた、自分が「二つの魂」を持つと言う言葉の意味を。

「あ…気が付いたみたいですよ」
めぐみが明るい声で告げる。


この敗北が効いたのか、伊達雪之丞は多少地味になり…

誰彼構わずバトルを仕掛ける事は少なくなった。


でもこれで彼が美神教授の講座に入(れ)る望みが出てきた。

まあ希望すればの話だが…

「ヒャクメ助教授、彼どうっスか?」
横島がヒャクメを横目で見ながら聞く。

「少し地味になりましたけど」
ピートも同じ表情で言う。

「う〜ん………」
悩むヒャクメ。

こうしてオシャレやらなんやら、いろんなモノを諦めたり妥協したりする頃には…

2年生はすっかり除霊学部に馴染んでいるのである。


〜次回に続く〜


今回は特に捻り無しです、申し訳ない;;


それでは前回のレス返しです。


casa様>
九頭龍剣はたまたま被っただけで、某幕末漫画とは関係ないです。
むしろ書き直し前に横島が使った時、なんとなく技違いネタを想いついたんですよ。
というか、一刀で九発は流石に無理っぽいかなぁなんて思ってみたりしてましたんではい^^;


ATK51様>
たまには真っ当な師弟対決もありでしょ?と思いましたんでw

裏目に出るかもですね、過剰反応はこの頃から始まってますし…龍音は出来る限り出す方向性で検討したいと思います。


それでは次回でお逢いしましょ〜でわでわ〜〜

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