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「除霊部員と幽霊列車 第9話 (GS+オリキャラ)」

犬雀 (2005-05-05 22:13)
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第9話  「鉄の蛇」


夜の学校…人っ子一人いない校舎。
たまに見回りに歩く宿直の教師の足音。

誰も居ない教室で長いことそんな音を聞いてきた愛子だが今は一人で夜を過ごすことは無い。
まだ短いとはいえ唯との生活はすでに彼女にとって日常のものになっている。

今の愛子にとって久々に見る夜の校舎はどことなく新鮮に感じられた。

校庭には死魔の部下だろうか、複数の死神が折畳み机とかパイプ椅子とかを設置していており一人の死神が机のそれぞれに「〇番窓口」と墨書された紙を貼ったりしている。

どうやら霊たちの冥界行きの手続きはあの机で行われるらしい。
合理的というか事務的というか、想像してたのとはちょっと違うようだ。

他の死神はと言えば、死魔の指揮の下で学校から借り受けたらしいライン引きを使って校庭に石灰で魔法陣と思しきものを書いている。

てきぱきと作業を進める死神たちをぼんやりと見つめている除霊部員たち。

ちなみに加藤や摩耶も本業の部活の対抗試合が近かったので今回は参加していない。剣道部はともかく科学部の対抗戦…どんなものか気になるが気にしないほうが賢明だろう。

替わりに「横島さ〜ん」と走り寄ってくるのは美神除霊事務所の面々である。

おキヌはいつもの巫女装束。シロタマも普段と同じ格好だ。
どうやら本当に見学に来たようだが本当の理由は別なところにあるだろう。
愛子や唯たちと目配せする様子からは例の「会」の会合も兼ねているようである。

けれどネクロマンサーのおキヌが死神の浄霊儀式を見ることは勉強になると言う大義名分があるため横島は不思議には思わなかった。
シロタマにしたところでほぼ毎朝散歩のついでに修行とやらをしているのだ、むしろ来ないと言う方がおかしいわな。なんて考えている。

そんな皆がそれぞれ挨拶を交わしていると美智恵が近寄ってきた。
その顔には警戒心が剥き出しになって仮面のように張り付いていた。
どうやらマヌケの怖さが骨身に沁みたらしい。
内心では出来ればコイツらに関わりたくないと思っているのかも知れない。
というかこの学校に来て再起不能寸前で帰ってきた西条のことが頭を掠めたのもあるだろう。

「みんな揃ったわね。もう少ししたら地下の霊たちを解放するわ。特に問題は無いと思うけど、もし不測の事態が起きたら…魔鈴さん頼むわね。」

やっぱしどこか警戒した顔色で魔鈴に確認をとるが…魔鈴さん聞いちゃいませんでした。
だって…なんとか横島のそばに行こうとしてはさり気無く…というか結構あからさまに唯だとかアリエスだとか小鳩に邪魔されていてそれどころじゃなかったのである。

「あの…横島さん…「えう?タダオくんアレはなんですかぁ?」…」

「よ、横島さん…「忠夫様。お腹はすかないですか?」…あうっ…」

「えーと…横…「あの横島さん私ここにいてもいいですか?」…ぐすぅ…」

もっとも少女たちにも言い分はある。
多分に事故とはいえ「横島君にとことん気持ちよくさせてもらえた人」と「それを見ているしかなかった奴」と言う区分が彼女たちを嫉妬パワーに目覚めさせたのだ。
だから少女たちには意地悪をしているという意識は無い。
単に昨日の流れのまま会話をされると、「なんだかとんでもなく距離を開けられそう」という危機感が無意識にこういう行動をさせているのである。

美智恵はそのあたりの事情を何となく察して声を挟めなかった。
どうしたものか…と彼女らしくも無くオロオロとしているあたり、再びマヌケの世界に片足を突っ込んでしまったようである。本人には自覚が無いが…自覚無き者をマヌケに誘うのがこの時空の醍醐味でもある。

そんな美智恵に魔法陣を描き終わった死魔が話しかけてきた。

「あの〜。そろそろ準備も出来ましたので〜。冥界の門を開いても宜しいでしょうか〜?」

「静かなる横島君攻防戦」は次の局面を迎えつつあった。


シュゥゥゥゥゥゥ

鉄の蛇は歓喜に震える…

冥府に落とされぬよう必死に抵抗し、この姿を得た、だが力足りずにこの狭間に囚われ、どれほどの時間が経ったのか…時の流れから外れたこの場所ではわからぬが、門が開く気配がする…
すでに幾度と無く門は開いていた…
だがそのどれもが自分を呼ぶものではなかった…

神々の気まぐれか、はたまた偶然という超越者の意思に次元の狭間に捕らえられた蛇は願う…

早く呼べ…我を呼べ…

蛇の呪いの声が闇に溶けていく…


魔法陣の周りに並べられた椅子に座って儀式を見学することになった一同。
横島の右隣にはおキヌが…そして左隣にはピートが座っていた。

実は今までの少女たちの妨害から一気に劣勢を挽回しようと横島の隣を狙っていた魔鈴だったが、「コーチですからここに…」と一番端の席(一応上座にあたるらしい)をピートに勧められてしまったのである。

先ほどまで涙目になっていて心が脆くなっていた彼女にはピートの好意と他の少女たちのプレッシャーを跳ね返すことは出来なかったのだろう、泣く泣く端っこに座るその姿は見事に背中が煤けていた。

心なしか安堵の表情を浮かべた少女たちがいつの間に用意したのかクジ引きを始めるのを黙って見ているしかない魔鈴さん。
せめて自分の隣に横島さんが座ってくれますように…とかすかな願いは無残にも打ち砕かれた。

「魔鈴さん…すまんですノー…」

「いいえ…」

彼女の落胆の理由を察知して縮こまるタイガーに返す声はあまりに暗い。
凄まじく居心地の悪い思いにますます縮まるタイガーである。

しかし今、一番居心地の悪い思いをしているのはピートであろう。

二つしかない横島の隣という当たりクジを引いてしまって初めて彼は自分の過ちに気がついちゃった。
自分に向けられる横島の隣を引き当てたおキヌ以外の少女たちの視線がチクチクと氷の針のように突き刺さる。

(な、なぜ僕はクジ引きに参加してしまったんだぁぁ…)

横島の次に軽い気持ちで引いたクジ…その時の少女たちの視線の意味が今になってハッキリと理解できた。その視線の意味は…。

(空気読めやゴルァ!)

かといって今更誰かに代わればそれ以外の人に恨まれる…そう思って自縄自縛に陥るピートである。
体にチクチクと突き刺さる視線はすでに針を通り越して竹やりのレベルまで上がっている。
そのプレッシャーに混乱するピートは何とか現状を変えようと無駄な思考を働かせていた。

(あああ…なんで僕がこんな目に…僕はなんでクジなんか引いちゃったんだ…)

後悔

(そもそも横島さんがいけないんです!彼がもっとこういうことに敏感なら!)

責任転嫁

(だいたいですね。これだけ想われていてですよ。誰かに決めないってのがおかしいんです!)

怒り(八つ当たりでも可)

(はっ!そうか…彼の隣に座るのが彼とラブラブな人なら彼女たちも文句は無いんですよね!)

解決策…だろうか?

(そういえば…横島さんの隣に座ってから心臓のドキドキが止まらない…これって恋?…僕は心の奥底で横島さんに恋している!!)

それはきっと吊り橋効果です…。

(つまり…僕と横島さんがラブラブになればっ!!)

大間違い…。

ピエトロ・ド・ブラドー…追い詰められたあまりに危険な解答を導き出したようである。

ゾクリ…

横島だけではなく超感覚を持つシロタマや別な意味での超感覚を持つ少女たちの背筋に冷たいものが走る。
嫌な予感…危険な香り…。
霊能者たちがこれから起こる出来事に不吉な思いを感じ、お互いに目配せしようとしてその原因?を見つけた。

思考のあみだくじの結果、「大スカ」を引いて不気味に笑うピートである。

「うふ…うふふふ…」

(((コイツかぁぁぁぁ!!!)))

頬を染めチラチラと隣の少年を横目で見ながら笑うピートの発する、瘴気にも似た気配にその場に居た全ての霊能者は嫌な予感のことを考えるのを止めた。
正確に言えば考えたくなくなっちゃったんだけどね。


「それでは〜。始めますので〜。魂さんを呼んで下さい〜。」

死魔の宣言に美智恵は頷いて部下のGメン職員に封印の解除を命じた。
封印のお札が剥がされ、地下と通じていた穴を閉じていた対霊処理された装甲板が退けられる。
息を飲み見つめる一同の前におずおずと言った感じで穴から現れたのは旧軍の制服を着た軍人達であった。
最初は数人の軍人が当たりの様子を見回していたが、安全だと確認できたのか穴の中に向けて合図をする。
それに応ずるかのように穴の中からは周りを軍服の霊たちに囲まれた老若男女の霊たちが現れた。
皆、解放されたことを喜んでいるのか霊なのに明るい顔をしている。

解き放たれた霊たちは案内役の死神の誘導に従ってそれぞれの窓口へと並び出した。

やがて手続きも完了したのか霊たちが整然と並び始めるのを確認した死魔は魔法陣の中心に立ち着ていたローブを勢いよく脱ぎ捨てた。
薄闇の中にほんのりと浮かび上がる白い裸身。後ろでまとめた長い黒髪とのコントラストが美しい。
ローブで隠されていたとはいえ予想外にメリハリの利いた肢体である。

「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」

すかさず上がる横島の煩悩パワーに隣のおキヌちゃんとピート君むくれ顔だ。

「「横島さん!」」

同時に叫ぶおキヌとピート。

「ああっ…だって全裸だし!」

なんでピートも怒っとるん?と思いつつも言い訳をする横島にカトちゃんが噛み付いた。

「全裸じゃないわよ!よく見なさい!!」

「へ?」と死魔の姿をよく見れば確かに薄い羽衣のようなものを身に纏っている。
横島君の心の眼は華麗にスルーしていたようだが、気づいてみればそれは全裸よりも色気を感じさせた。

背後で高まる霊圧と何となく感じる嫌な視線に多少ビビリながらも死魔は死神としての仕事を始める。伊達に管理職ではないのだろう。

両手を天に掲げ呪文を唱えながら魔法陣の中で舞い始める死魔。
その姿はやはり美しい。
静かに見守る霊たちや死神、Gメン職員の間を死魔の呪文の詠唱が通り抜けていく。

「天と地、人と神、生と死、六つの力それぞれに集え…」

死魔の詠唱とともにあたりの霊気が神域のそれに近づいていく。
踊りとともに舞う汗や揺れる乳房が神々しいエロチシズムを感じさせた。

「えう…エロイですねぇ…」

劣等感もあってやっかみ半分なのかちょぃと渋めの唯の感想にカトちゃんが乗る。

「そうよ!死魔課長はエロさでこの地位についたと言われているんだから!!」

ピキッ

踊る死魔の額に井桁が浮かぶがそれでも踊りと詠唱は止めない。見上げた根性だ。

「ふふっ…しかしエロさならわたくしも負けてませんわよ!」

何やら妙なところに反発したアリエスが叫ぶなりドレスの肩ひもを威勢良く外した。
プルンと形のよい乳が零れ落ちる。

「アリエスちゃん!もう乳は出さないと言ったはずですっ!」

怒りの声を上げる唯にニパッと笑うとアリエスは得意満面といった様子で乳を突き出して見せた。

「ですからほら!ちゃんと乳首にはセロテープを貼ってますわ!!」

「おおっ!それならエロくないですっ!!」

「アホかぁぁぁぁ!!」

「「ふえ?」」

たまりかねて突っ込む愛子にキョトンとした顔を向ける唯とアリエス。

「透明のテープを貼って何の意味があるのよっ!!」

言うなりすかさず手を伸ばしてアリエスの乳首のあたりに貼られたテープを引っぺがそうとする愛子。完全にキレたか目がもの凄くマジ。

「あだっ!愛子様痛い痛い!!乳首が取れるっ!!」

「取れてしまえっ!!」

「あだだだだ。いっそ一思いに剥がしてくださいぃぃぃ!!」

「黙んなさい!!」

そんな何時に無く怒り狂う愛子の姿にびびる少年少女たちを見回してカトちゃんは勝ち誇った。

「おほほほほ。人間やカッパ風情が死魔課長のエロさに敵うわけが無いのよ!「う〜る〜さ〜い!!」…はひっ!!」

得意満面だったカトちゃんに流石にたまりかねたのか呪文の詠唱を中断した死魔課長の叱責が飛ぶ。
その背後に立つ不動明王にも似た怒りのオーラを見たカトちゃんはガクガクと震えだした。

「まったく〜!さっきから黙っていれば大事な儀式の最中なのに人のことを「エロイエロイ」と〜。今度騒いだらボーナスカットですよ〜!!」

「はいっ!」

口を押さえて席につくカトちゃんを軽く睨んで死魔はコホンと咳払い一つすると呪文の詠唱を再開した。

「エロイムエッサイム・エロイムエッサイム我は求め訴えたりっ!!」

「あれ?呪文変わってない?」と見守る彼らが不思議に思った瞬間に魔法陣は赤い光に包まれる。

「しまった〜。間違えちゃいましたあ〜。あなたたちが「エロイ」とか言うから〜。どうしましょう変な門が開いちゃいます〜。」

「「「「なんですと〜!!!」」」」

大慌てで魔法陣の中から逃げてくる死魔に突っ込む一同の前、脈動する赤い光の中からソレは現れた。

魔法陣から鎌首をもたげて開け放たれた血の様な紅さの口腔からシュゥゥゥと吐くは澱んだ瘴気。
ズルズルと引きずり出された体は漆黒の鱗に覆われ、爛々と輝く赤い目を持つソレはまさしく全長150メートルにも及ぼうかという鉄の蛇。

鉄の蛇はその蛇眼で集まった霊たちを認めるとカッと大口を開けて襲い掛かる。
驚き逃げ惑う霊たち。
あまりの展開にGメンも咄嗟には動けない。
だが迫り来る蛇の前に数十人の兵士の霊が手を広げて立ちはだかるのを見て横島たちのスイッチが入った。

「アイツは霊を狙っているわ!援護してっ!!」

美智恵の指示にGメンたちはそれぞれ霊体ボウガンで応戦するが鉄の蛇の硬い鱗には何の効果も無いのかあっさりと跳ね返されていく。

「くっ…」

まさかこのような展開になるとは予想も出来ず、破魔札マシンガン等の重火器の装備を忘れた自分を責める美智恵であるがそれは流石に酷というものだろう。
しかしボウガン程度では鉄の蛇に打撃を与えるのは不可能なのも事実である。

人間どもが効果的な攻撃をしてこないことを察知した蛇が霊たちにズリズリとゆっくり近寄っていく。

「シ〜ニ〜ヤ〜ン〜」

「はいっ!」

地の底から響くような死魔の声に震え上がるカトちゃん。
その上ずった声に気づきながら死魔はカトちゃんに非常の命令を下した。

「あなたが行って奴の気を逸らしなさい〜。」

「ええぇぇぇぇ!無理ですぅ!死にますって!!」

「死んだら二階級特進ですよ〜。生きて帰ればボーナス倍〜。」

「ふふふ…このシニヤンにお任せください!」

ボーナスに釣られたかカトちゃんは不敵に笑うとその手に大ガマを顕現させた。
所謂、死神の鎌、デスサイズである。

「くっくっくっ…死ぬわよ〜。この私の姿を見たものはみんな死んでしまうわよ〜!!」

意味不明なことを叫びつつ突っ込んで行ったカトちゃんの大ガマが蛇の横腹を目掛けて振り下ろされようとして…

ポペン

「ひぃあぁぁぁぁぁぁぁ」

ドテチン

尻尾に跳ね飛ばされて地面に突き刺さるカトちゃん。
ボーナスアップは夢と消えたようだ。
ピクピクと動いているから二階級特進も無理っぽい。

時間稼ぎにもならぬ死神の攻撃をあっさりいなした蛇が女子供の前に立ちふさがる男たちの霊を一飲みにしようと鎌首を持ち上げた瞬間、一条の光の矢がその首筋に突き刺さって爆散した。

シュアァァァァァァ

瘴気を吐きつつ一瞬怯む蛇に横島の放つ第二第三の矢が突き刺さる。

「ヨコシマっ!アレやるわよ!!」

「よしっ!」

横島の背後にタマモが密着し彼の構えた光の弓の中に破壊に特化した霊波の矢が次々と現れては連射されていく。
機関砲弾にも似たその速度と破壊力に流石の蛇も体のあちこちを穿たれ苦悶の声を上げてのた打ち回った。

「今よ!」

美智恵の指示に従ってGメンたちはおキヌや魔鈴と協力しつつ霊たちを誘導し始めた。その彼らを守るように死神たちが鎌を構えて兵士の霊のかわりに立ちふさがる。
小鳩と愛子を守るようにピートとタイガーが立ちふさがる中で光の弓を連射し続ける横島とタマモにシロが叫んだ。

「先生!拙者らもアレをやるでござるっ!」

タマモと横島のコンビネーションを見て奮起したのだろうシロの声は真剣そのものである。

「いや…あれはまだ無理だろ。」

「ガビーン…タマモとは共同攻撃出来て拙者とは出来んというでござるか?!!」

「あのねぇ…練習でさえ成功したの半分以下じゃない。そりゃ決まれば一撃必殺だけど今の場面じゃ無理よ。」

「むう…でも火事場の馬鹿力ってのもあるでござろう!!」

「幸運に頼るようじゃ戦いは出来ないわよ!」

ある意味、両者とも正解であるだけに横島も口を挟めない。
常識で言えばタマモのほうが正論なのだが、自分の過去を思い浮かべれば死地に放り込まれてからそれこそ火事場の馬鹿力で切り抜けた来たのも事実なのだ。

だが事態はそんなシロタマのにらみ合いを許容してくれるほど甘くは無かった。

霊波の矢による連撃から立ち直った蛇が横島たちを倒すべき敵と認めたのか、その真紅の双眸を光らせて高々と鎌首を持ち上げる。

「くっ!こうなったらやってみるか!!シロ合わせろっ!」

「承知!!」

左右に分かれて走り出す師弟。
蛇を挟むように左からシロが最大出力の霊波刀を真横に伸ばし、そして右に走った横島がそれに重ねるように自身の霊波刀を発動させる。

両側から伸びた霊波刀が一つに重なった瞬間、パキーンと木が裂けるような音が響いたかと思ったら横島君が吹っ飛んでいた。

「のひょぉっ!」

マヌケな悲鳴とともにはじけ飛び地面をコロコロと転がる横島の姿にシロの悲鳴がかぶさる。

「ああっ!先生っ!!」

「やっぱ失敗か…」

世の中そう上手くは行かないわよねぇと溜め息をつきながらも、煙を吹いて倒れる横島の援護のために今度は光に特化した霊波の矢を放つタマモ。
横島と共同で放つソレと比べれば、さすがにスピードは落ちるが蛇の眼前で夥しい光芒を放つその矢にさしもの蛇も目がくらんだかに見えた。
しかし蛇は赤い舌をチロチロと伸ばして横島の倒れる場所を察知すると彼に向かって一直線に突っ込んでいく。
元々蛇はそれほど視覚に頼っていないことをうっかり失念したタマモのミスである。

「おのれ!」

シュアァァァァァと鎌首をもたげて今や横島を飲み込もうと大口を開ける蛇と横島の間にシロが割って入るが、蛇の口腔の大きさは二人同時に飲み込むことも可能だった。

「タダオくんっ!!」

絶体絶命のシロと横島を飲み込もうとする蛇に横から鉄の巨体が体当たりをかます。
たまらず吹っ飛んで腹を向ける蛇に追い討ちのケリをかますのは、みんなの希望、マヌケの化身、雄叫びとともにただ今参上「唯ちゃんとロボ」だ!!

唯に呼ばれ科学部の部室格納庫からシャッター破って登場した唯ちゃんとロボが夜空に向けて「ま゛っ」と吠える。

「な、な、な、何なのっ!!アレはっ!!」

驚く美智恵とGメンたち。もちろん死神も驚いている。
シリアスな霊能戦かと思いきや、いつの間にか怪獣大決戦の様相を呈してきたのだ。
驚くなと言うほうが無理だろう。
これが巨人と蛇の戦いなら神話にもあることだから耐性もあるだろうが、今目の前に居るのは人の顔のようなものがついているとは言えどう見ても家電品の集まりである。
それが「ま゛っ」とか喋って蛇を殴るわ蹴るわやりたい放題である。
思わずポカンと口を開けてみている美智恵だったが、ロボはそんな常識人たちには目もくれず、今はひっくり返った蛇の腹に向けてストンピングの雨あられだ。

だがロボ優勢に気をよくした唯のマヌケな指示が一気にロボをピンチに追い込んだ。

「唯ちゃんとロボ!コブラツイスト!!」

「ま゛っ?」

悩みつつも何とか指示に従おうと悪戦苦闘するロボであるが…傍から見ていれば自分から蛇に絡みつかれにいっているとしか見えない。

「唯さん…あれはまずいんじゃないですか…」

額に汗を垂らしながらピートが呟く。

「へう?」

見れば案の定、蛇にギリギリ締め上げられて身動きの取れないロボ。
その体の各部が軋み始める。

「あわわっ!ロボっ!!オープンゲットっ!!」

「ま゛っ!」

間一髪圧壊する寸前でロボは再び家電品の群れに戻ると唯の前でもう一度組みあがった。

その背中にヨジヨジと登っていく唯。
身動きの止まったロボと唯に襲い掛かろうとする蛇に対し、今度はアリエスの呪文が炸裂した。

「緑魔法究極奥義!「蛇武血界」!!」

蛇の横に忽然と現れた水の壁がいきなり蛇に向かって倒れ掛かるように襲い掛かった。
その水量は「水仙鞭如」の比ではない。
津波のような水圧を受け、再びもんどりうってひっくり返る蛇に対して、ついに合体を終えた唯ちゃんとロボの砲撃戦形態がその両肩に装備された大口径砲(元は何かの配管だろう。すでに家電品ですらない。)を向ける。

「唯キャノン!キャノン砲発射!」

背中にしがみついた唯 ―その行為にどんな意味があるかはまったく不明だけど― の声とともに両肩のキャノン砲から水流が一直線に放たれ、それはまともに蛇の顔面を直撃した。

「ギャァァァァァァァ!!」

顔面に受けた異臭を放つ水流の威力に七転八倒する蛇が叫ぶのは女の悲鳴。

「喋った!アレはメスなんですかいノー!!」

虎覆面と化していたタイガーに答えるように蛇は泣き喚く。

「臭いぃぃぃぃ!!ひどいぃぃぃぃぃ!!」

「唯ちゃん…もしかして…あの水はノイエ・汁?」

「ですっ!」

(((うわぁ…)))

青ざめる一同の前でのた打ち回っていた蛇はさすがに堪らなかったのか口から黒い煙を吐くと、闇に紛れるように次元の狭間へと再び消えていった。


「何だったの…アレは…」

ポツリと呟く美智恵の脳裏に坂上の言葉が蘇る。

(鉄の蛇…アレがそうなの?)

その問いに答えるものは誰も居ない…そのことを美智恵は誰よりも知っていた。


後書き

ども。犬雀です。
えーと…今回はまあこういう展開です。
ついに出ました唯ちゃんとロボ新形態その名も「唯キャノン」。
両肩に装備された220ミリ水流砲だけが主武器であります。役に立つんかコレ?
あともう一機種、唯ちゃんとロボとは別系統の廃品メカがありますです。

さて今回は魔鈴さんイジメ。令子さんはお休みです。
うーむ…流石に人が多すぎですね。おキヌちゃんが意外に目立たなかったなぁ。
次回は彼女にも活躍してもらいましょう。
あ、ピート君はあくまでも勘違いですのでそっちには走りませんです。はい。
まあギャグとしてならありかも…といきなり日和つつ。

では…


1>之様
すんません。まだ核心には至れませんです。orz

2>NK様
いえいえたまたま休みで早かっただけであります。
やはり仕事がある日は二時間ぐらいしかつかえませんです。
スタンレーの魔女ですかぁ…アレも好きな話です。実は悩んだんですけど一式陸攻が続くので止めちゃいました。すんませんです。

3>AC04アタッカー様
いつもいつもご教授感謝であります。今度読んでみますね。
冷蔵庫の肉は勿論…。w

4>通りすがり様
今回は魔鈴さんイジメです。次回以降でちょっと旅行モードに入りますのでそこで甘えてもらおうかなぁと。

5>なまけもの様
そうですね。一応、今回の大元の原因は炎式も関係がありますです。
ただ本来の蛇…いやいやコレはまだ内緒であります。

6>紫苑様
割烹着愛子…頂きますです。ふむ…幕間あたりで。

7>とろもろ様
ゆうのう…正解であります。w
犬もあのシリーズは好きです。
最新刊でとんでもないことになってますが。

8>ジェミナス様
国外出ますよ〜。でも本命の目的地はあそこです。ヒントは…わかんない〜。(小首を傾げつつ可愛い子ぶって)

9>柳野雫様
今後はもう少し悲しいお話になるかと…とりあえずシリアスとギャグを混ぜるのが難しいです。

10>法師陰陽師様
そうですね。一種の残留思念かと…ですが、それを呼び出した原因は実は彼にあったり…なんて考えてますがまだどうなるか。実は犬も先が読めてません。

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