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!警告!壊れキャラ有り

「除霊部員と幽霊列車 第7話 (GS+オリキャラ)」

犬雀 (2005-04-29 13:31/2005-04-30 22:36)
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第7話   「死神さんいらっしゃい」


校門での立ち話も妙な話であると横島たちは台場と名乗る飛行服の男を伴って教室に入った。
ドサクサに紛れてカトちゃんとアリエスもちゃっかり入っているがクラスの誰もそれを咎めようとしない。
今や台場の姿はクラスの全員に見えるようだった。
やがて保健室でカッパ軟膏を塗ってきたのか落ち着いた顔色に戻った魔鈴と連れ立って相沢がやってくる。
一瞬だけ台場に視線を向け黙礼すると出席をとり、後は除霊部に任せると言って出て行った。

台場を囲む形で除霊部員が席につき、それを他のクラスメートが見守る中で真っ先に口を開いたのは唯だった。

「あなたは「悔い」さんなんですかぁ?」

台場は頭を掻きながら曖昧な表情を浮かべる。

「悔いと言われればそんな気もするな。まあ死んだのは確かだ。」

澄み渡った夏の青空をその隻眼で見上げながら懐かしそうな顔になる台場であったが、何かを問いたげな一同に気がつくと語りだした。

「俺の乗っていたキ―99は音速を超える戦闘機の実験機だったんだ。」

「第二次大戦中に音速ですか?」

驚いた声を発したのは浦木である。彼はそういう方面に詳しいのか台場を見る目に熱が篭り始めた。

「ジェット機ですか?それともロケット機?」

「レシプロ機さ。」

「う?レシプロ?」

「簡単に言えばピストンエンジンを使った飛行機、所謂プロペラ機のことだよ。」


浦木の補足でも唯はよく解らなかったようだが台場が頷いたの見て納得したことにした。

「でもプロペラ機で音速を超えるって…」

魔鈴の言いたいことを察したのか台場は後を続ける。

「ああ、俺は最後のキ―99で高度一万メートルから垂直降下した、落下速度と合わせての音速突破だったんだ。だが…最後のダイブの時、俺の機体は激しい振動に襲われ機体が捩れだした。そして目の前が真っ白になった瞬間、世界から一切の音が消えた。その時、俺は死んでいたのだと思う…なぜなら俺の目の前をバラバラになった愛機のコクピットが落ちていったからな…。」

「そうなんですか…」

「…だから俺は知りたいんだ。貴様は音速を超えて生きているんだろ?!どうなんだ?あの音の無い世界は俺が音の壁を越えた証なのか?それとも死後の世界なのか?!!」

先ほどのどこか懐かしむかのように空を見上げていた表情とはうってかわって真剣な眼差しで自分に問いかけてくる台場に横島も真剣な表情で答えた。

「俺も一回しか経験ないんすけど…確かに炎の狐で音速を超えたとき、すっげー衝撃にぶつかった後で音が聞こえなくなりましたね…」

「音の壁…音よりも早い世界ですからね。飛行機の中と違って生身で越えればそういうこともあるかも…」

横島のとんでもねー体験談に「本当はコイツ宇宙人じゃないのか?」と思いながらも浦木が後を続けた。
自信無さげなのは仕方ない。
実際に生身で音速を超えたケースは無いのだからこればかりは何ともいえないのだ。
「チミちょっと生身で音の壁にぶつかってみね?」なんて言われて了承するテストパイロットなぞ居ないだろう。それをパイロットと言えるかどうかも怪しいし。
だが台場はその言葉に満足したのか歓喜の表情を浮かべた。
彼の口からこぼれる言葉が震える。

「そうか…そうなのか…俺は音の壁に勝ったのか…勝ってから死んだのか…」

「台場さん…」

今や歓喜にうち震える台場にピートが遠慮がちの声をかける。
我に返って振り返る台場の顔には子供のような笑顔が浮かんでいた。

「ん?ああ…すまんな。だがこれで俺にはなんの悔いも無い。俺にとっては戦争よりも、俺の手足を奪った音の壁に勝つことが目的だったからな。」

いつしか台場の周りを包むように淡い光が現れた。
その光に溶けるように彼の体が薄れていく。

「う?台場さんが…」

「横島と言ったか?貴様のおかげで俺の悔いは晴れた。感謝する。」

「いえ…」

「だが…どうやら貴様は、いや、この学校はとんでもないものに見込まれたようだ。おそらく俺と同じような奴が次々と集まってくるだろう…勝手な願いとは思うが頼まれてくれんか?奴らの想いも満たしてやってくれ…」

「俺で役に立つなら…」

「重ね重ねすまん…」

そして台場は敬礼とともに光に溶けて消えていった。
その姿に思わず答礼を返す一同。

台場が消えた後、振り返った横島が見たのは自分と同じように不器用な敬礼で彼を見送るクラスメートたちの姿だった。
女子の敬礼姿ってなんかいいなぁ…と場違いな感想を持つ横島に心配そうな目を向けるのは魔鈴である。
台場の最後の台詞が気になるのだ。
それに…

(今までの横島さんなら男の頼みなんか聞けるかぁ…とか言いそうな気がしたんですけど「男子三日会わざれば活目して見よ」ってのは本当なんですね…)

なんて考えちゃってほっぺた赤く染めてホンヤリしちゃっているもんだから、それに気づいた横島君が「まだ腹が痛いのか?」と心配しちゃった。
どうも美神の病気入院がショックだったか、他人の体調には過敏になった傾向のある彼は考える間もなく魔鈴に近寄って朝と同じように腹をさする。
さすってから「あ、触られたら痛いんだっけ?」と思い出した時は後の祭り…って言うか朝とは別な彼女のリアクションが彼を硬直させた。

「はにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「へ?」とお腹をひとさすり。

「あ、あ、あの…横島さん…あひゃあぁぁぁぁ」

「へ?へ?」とお腹をふたこすり。

「へにゃあぁぁぁぁぁぁ」

いつぞやのクリーピングコインのブレス?攻撃を耳にくらった時の様なリアクションを返す魔鈴さん。
でも、あの時よりも過激に乱れている。
膝もガクガク言っているし、立ってられないのか横島の腕にすがりつきながらの吐息も桃色だ。
気の早い男子生徒の一部は前屈みになって女子から軽蔑の視線を向けられている。
もう一息すればトイレに駆け込む奴続出であろう。

「えう?魔鈴さんが変です?」

「まさかっ!カッパ軟膏の副作用?!!」

「どういうことよアリエスちゃん?」

「はあ…」と汗をかきながら説明するアリエス。

「実はカッパ軟膏EXは体の新陳代謝を無茶苦茶活性化して傷を癒すんですが、その時にどうやら神経まで活性化しちゃったようですわねぇ…」

「…それってどういうことですかいノー?」

「えーと…今の魔鈴様は…って言いますか魔鈴様の体のカッパ軟膏が塗られた部分は…その…あの…」

語尾がゴニョゴニョと聞き取れない。
だけど皆の射るような視線に晒されたアリエスは意を決して叫んだ。

「つまり…どこもかしこも性感帯なのですわ!!」

「「「「なんだとぉぉぉぉ!!!」」」」

言ってしまってから耳まで真っ赤に染めて両手で顔を押さえるアリエス。
やはりカッパの羞恥心の基準は人と違うらしい。

肝心の横島はあまりの展開にフリーズしている。
だが思考が停止したってことは「手の動きを止めろ」という思考も伝達されないわけで、彼の右手は脳が最後に発した指令を忠実に実行し続けた。

「あ、あふっ…あ、駄目です…こんな人前で…ひっ!…そんなっ…あ、あ、わたしもう…」

青いエナジーに満ち満ちた男子高校生にとって大人の女性、しかも飛び切りの美女が艶かしく喘ぐ姿を見せたらどうなるか…。
阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるのは世の必然!

「叫び返せ!ハッスル!マッスル♪」

意味不明の歌とともにスクワットを始める奴とか。

「大尉っ。もう俺はどうしたらっ!!」
「そういう時は身を隠すんだっ!!」

上官と部下になって叱咤しあいながらトイレに全力疾走する奴とか。

「おー ヤブキ…ゆーあーべりーすとろんぐねー」と虚ろに学生服のボタンを外そうとして失敗する奴とか。

その騒ぎは元凶の横島がもう頂上寸前といった感じで「へにゃっ」っている魔鈴から、愛子の机チョップで吹っ飛ばされ騒ぎを聞きつけた教師達が駆けつけるまで続いた。


保健室というのは心の避難場所という側面もある。
もっとも横島みたいな心身ともに無闇に丈夫な学生には縁の無い場所ではあったが、今、そこのベッドに横たわっているのは頭にでっけーコブをこさえた横島君。
その様子を「ザマアミロ」と言いたげに覗き込んで笑うカトちゃん。なかなか良い笑顔である。
愛子もさすがにやり過ぎたかと反省しているし、アリエスは試作品のカッパ軟膏のことで唯に責められてやはりしょんぼりしてる。
魔鈴さんはと言えば…とろんとした目で横島の横のベッドに座っていた。
目元がまだほんのりと赤い。
もしかしたら色々と目覚めちゃったかも知れない。
カッパ軟膏EXは本来の用途とは別な形でバカ売れする可能性を秘めた商品になりそうだ。

タイガーやピートがどうしたもんか?と頭を抱えているとドアが開き制服姿の美智恵が入ってきてその瞬間固まった。
どうやらこの微妙な空気を敏感に感じ取って判断力が一時的に麻痺したようだ。
それでもすぐに気を取り直すあたりは流石である。

「えー…何が起きたかは聞かないけど…魔鈴さん今話せるかしら?」

「はにゃ?」

「え?!」

キャラ変わっているし…。美智恵さんまたまたフリーズ。
そんな彼女を気の毒そうに唯が見ている。
時折、魔鈴に向ける視線には心配も含まれているが…無理も無いだろう。

「こほん…どうしたの魔鈴さん…どっか調子が…」

「うにゅ?」

美智恵の顔からどっと嫌な汗が流れ出す。
(落ち着きなさい私!…何があったかは知らないけど…彼女は一時的に錯乱しているのよ!そうなのよ!…だって彼女は魔法使いなのよ!…そういえばこの前ひのめと見た戦隊物なんて言ったかしら?…あの呪文が「アルマジロ〜」って聞こえるの私だけ?)

錯乱しているのはどっちかわからないようなことを考えながらもその顔色には変化は無い。けれどさすがに発汗は抑えられないようだ。

なにやらマヌケな空気が流れる保健室。
誰も動かない、いや動けない。次に何が起こるか予想がつかないのだ。
そんな中、やはり場を動かすのはコイツしかいないとの皆の視線を浴びたせいか横島が「うーん」とうめいて意識を取り戻した。

「えう!タダオくん!!うげっ!」と場の空気に半泣きになった唯が飛びつこうとして横からのタックルに吹っ飛ばされる。

「横島さん…ご無事でしたかぁ〜♪」

「え゛?魔鈴さん…」

「はい♪」

先ほどまでの呆けた様子から一変して横島に抱きつきながら心配そうな目で彼を見上げる魔女。
なんというか…その目つきがやっぱりちょっと変。まだどっか蕩けている。
どちらかと言えば魔女の帽子より耳系が似合いそうなオーラを発しているし。
美智恵にはその表情とか仕草とかに覚えがあった。
頬が熱くなる。

(こ、これは魔鈴さん…女として満足した?!横島君もしかしてヤっちゃった?!…え?でもここって学校よね?…えええええ!まさかぁぁぁぁ!!学校の保健室でなんてそんなマニアックなフュージョンをぉぉぉ!!!」

「何を不穏当な発言してるんですかぁぁぁ!!」

ゴロゴロと喉を鳴らしそうな表情で自分の胸に頭をこすりつける魔鈴に戸惑いながら横島が叫ぶ。

「へ?」

「声に出てましたっ!!」

「嘘っ?!」

私がそんな凡ミスを…と周りを見れば皆さん横島君に同意して頷いてました。
美智恵はこのとき初めてマヌケ時空の怖さを思い知った。


それでも自分が来た目的を果たすべく精神の再建を図る美智恵である。
素早く脳をフル活動させる切り替えの速さは彼女がGメンの要職をこなしていける武器の一つでもある。
そして彼女はあっさりと「はにゃはにゃ♪」と横島の胸に頭をこすり付けている魔鈴を「当分の間、使用不能」と判定した。
いったい何があって、それがどれほどの衝撃であったかを魔鈴に聞きたいと彼女のおばさん部分が提案してくるが、意志の力でそれをねじ伏せ、現在最も当事者能力が残っていると思えるピートに話しかける。

「ところで地下の浄霊のことなんだけど…」

「えうっ!それならカトちゃんがいますっ!」

「カトちゃん?あの「ぺっ」って人?」

「違あうぅぅぅぅぅ!!」

抗議の声とともに割って入ったのは見覚えの無いツインテールの少女。

「あら?貴方は?」

「私は死神っ!」

「死神がなんでここに?」

もう多少のことでは驚かない美智恵であった。

「だから!私はこの男に死神検定の邪魔をされた責任をとらせにっ!!」

ズキズキと痛み始めたこめかみを押さえて美智恵は嘆息した。
ここに来て10分と立ってないのに酷く疲れた気がする。

「…とにかく最初から詳しく話してちょうだい…」

流石の彼女をもってしても話の流れについていけなかったのは無理もないことだろう。

・・・・・・・・・

「つまり、あなたはその検定の失敗を取り返すために地下の霊たちを冥界へと案内してくれるってことかしら?」

「そうよ!私の生活がかかっているのよ!!まだローンとか色々残っているのっ!クビになったらきっと私、売り飛ばされちゃうわよぉぉ!!」

生々しい発言であるがカトちゃん目が真剣。
死神の世界もなかなか俗っぽいらしい。

「でもね。地下の霊は1000人以上居るわよ。あなた一人で大丈夫?」

「う…でも私が見つけたってことにすれば無問題だし…応援を呼ぶわ。」

「応援?」

「うん!ちょっと待ってて…」

そう言うとカトちゃんは懐から携帯を取り出した。
こしょこしょと操作して耳に当てる。
やがて相手が出たらしい。カトちゃんの顔が緊張で青く染まった。

「あ、あの…営業二課のシニヤンですけど死魔課長いますか?」

(((営業?!!)))

「あ、課長ですか!あのですね。大口の契約が成立しましたっ!!はい。…って嘘じゃありませんよぉぉぉ。1000人分の魂ですってば!!」

「やってません!そんな私が自ら手を下すわけないじゃありませんかっ!!ええ…色んな事情がありまして…それでですね、応援をお願いしたくて…は?」

通話を中断して美智恵を見つめるカトちゃん…その目がうるうると潤んでいる。

「どどどどどうしょう〜。課長が来るってぇぇぇ」

「呼べば?」

「う…そ、そうね…怒られないわよね…わかった!」

そしてカトちゃんは電話に向かってペコペコと頭を下げながらもなんとか通話を終わらせた。

「ほひー」と息を吐くカトちゃんに唯の冷たい視線が刺さる。

「ちょっといいですかぁ?」

「何?」

「もしかして死神さんって自分で人を殺しちゃ駄目なんですかぁ?」

「そうよ」

そんなことも知らないの?と言いたそうに胸を張るカトちゃん。
自分より幼い感じなのに負けている胸のボリュームに怯みつつ目だけはジト目の唯である。

「私、命狙われていた気がするんですがぁ?」

「あー。あの時ね。だって、あんたこっそりあのブラつける気だったでしょ?」

「うえっ!」

(((つけようとしてたんだ…)))

「アレつければそのうちポックリ逝ってたし…ブラに絞め殺された魂なんてプレミアものよっ!!」

「えうぅぅぅぅ…そんな付加価値いらないですぅ…」

なんだか踏んだり蹴ったりの唯が床にのの字を書き始めた時、突然壁際に置かれていた薬品戸棚がバンと開いて中から飛び出してきたのは黒いフードを纏った骸骨である。

驚く一同の前で骸骨はペコリと頭を下げてフードを脱いだ。
中から現れるのは長い黒髪を後ろでまとめ、目元のキリリとした20代のお姉さん。
ざっと見渡して美智恵がこの場の責任者と判断したのだろう。
つかつかと彼女に歩み寄ってくるとシパッと手を差し出した。
その手に握られたのは白い紙…名刺である。
呆気にとられる美智恵にペコペコと頭を下げつつお姉さんは丁重なご挨拶を始めた。

「どうも〜。始めまして〜。死神営業二課課長の死魔です〜。この度は私たちと取引いただけるそうで〜。」

口調そのものは激しく気が抜けたものであるが…。

「は…はあ…」

「いや〜。シニヤンから連絡もらったときは嘘かと思ったんですよ〜。でも確かに凄い数の魂が集まってますね〜。あ、これお土産です〜。」

そう言って懐から取り出したのはいかにも菓子折りといった風情の包み。
どうやって入っていたのかは不明だが、神様なんだからその程度の芸当はやるだろう。
似たようなことをやるカッパの姫様を見慣れた横島たちもそんなことでは驚かない。

「あれ?…ここで「どっから出したんや〜」って突っ込みが来ると…」

なんとなく寂しそうな死魔に「あはは」と虚ろの入った笑いを見せながら美智恵は渡された包みを見た。
やっぱりそれはありふれた菓子折りにしか見えない。包み紙に印刷されているドクロが無ければの話だが…。毒入り?と考えちゃうのは仕方ないだろう。

「あ、これはですね〜。死神銘菓「デス饅頭」です〜。「天国への美味」ってのが売りなんですよ〜」

(((への?!!)))

「あ、ありがとうございます…」

どうにもつかみ所の無い死神に何だか圧倒される美智恵である。
とりあえずこのお土産は後で令子のお見舞いに持って行きましょと心の中で勝手に決めたが、異論をはさむものはこの場に居ないだろう。
菓子折りにむけられた彼らの視線から一目瞭然だ。

「では〜。早速商談の方に〜。」

またまたどこから取り出したか解らないアタッシュケースから書類とか電卓とかを取り出す死魔課長。

「はい…じゃあ魔鈴さんも…横島君たちは授業に戻ってもいいわよ……めぐみさん?」

見れば魔鈴は横島の胸にすがりついたままイヤイヤと首を横に振っている。

「めぐみさん?」

イヤイヤ…

「離れたくない…と?」

コクコク…

「ふう…そう…」

すでに一日分のエネルギーを使い果たした感じがする美智恵。声に精彩が無い。

彼女の周りでは少女たちの危機感がレッドゾーンまで高まっていた。
素早くアイコンタクトで会話する少女たち。

(えうぅぅぅぅ。アリエスちゃん!あのお薬の効果はいつまでっ!!)
(え、えと…半日くらいかと…)
(みんなそれまで彼女から目を離しちゃ駄目よ!!)
((らじゃっ!!))


横島(魔鈴つき)を教室に戻せば再び男子生徒が暴走するのは目に見えているので横島も戸惑いながらベッドに座っている。他の除霊部員たちも興味の目を死魔と美智恵に向けてどうなることかと見守っている。

そして真剣な空気と剣呑な空気とちょっと甘々な空気の微妙なハーモニーの中で話は進んでいった。

・・・・・・


「では〜。彼らの案内はこのシニヤンが務めます〜。時間は明日の午前0時でどうでしょうか〜。応援として私も参加しますし問題はないと思いますが〜。」

「そうね。でも一つだけ条件があるわ。」

「なんでしょうか〜?」

「私たちも立ち会うってことよ。」

「かまいませんよ〜。では私は明日また伺いますね〜。それまでシニヤンはここに置いて行きますので好きにしちゃってください〜。」

「課長おぉぉぉぉ!!」

見捨てられたと思ったのか泣きつくカトちゃんに死魔課長はにっこりと笑う。

「ボーナス〜」

「犬と呼んで下さい奥様!!」

「はあ…」

土下座して卑屈に額を床にこすりつけるカトちゃんの姿に、無性に旦那に会いたいと思ってしまう美智恵である。
そんな投げやりな空気を気にもせず死魔は再びフードを纏うと薬品棚へと消えていった。

「じ、じゃあ私も帰るわね。あなたたちも授業に戻りなさい…」

そう言い残して美智恵は保健室を出て行った。
それは一刻も早くここを立ち去るべきだとの本能の警告に従ったかのような素早さであった。

あまりの早業に呆然とする除霊部員たちである。
それでもとりあえず教室に戻ろうかとピートが横島に声をかけようとするが、未だに彼に引っ付いてゴロニャンしている魔女の姿に言葉が口から出てこない。
引っ付かれている横島はと言えば、激しく煩悩が刺激されていると見えて霊力が凄いことになっているが、同時に周りに立つ少女たちからの氷の視線に晒されて身動きが取れないでいた。
その姿は罠の中の美味しそうな餌を前に逡巡する獣といった按配である。

タイガーに目で合図して自分たちだけでもこの場を離脱すべきか?と考えたが、タイガーからの精神波は絶望的な事実を告げてきた。

(ピートさん…今、この均衡を崩すのはワッシには無理ですジャー…)

結局、彼らは魔鈴がはにゃり疲れて横島の腕の中で眠るまで誰一人動くことは無かった。


幸せそうに眠りについた魔鈴をそっと保健室のベッドに横たえて、教室に戻ってみれば時間はいつの間にか昼休みである。
皆、精神的に激しく消耗したせいか食欲は無い。
それでもこんな良い天気であればいつものように小鳩が中庭で皆で食事をしようと待っているだろうと、教室を出る横島たちを後ろからいつぞやの物理教師が呼び止めた。

訝しげに彼を見る横島に物理教師の後ろに立っていた青年が丁重にお辞儀をしてくる。
思わずお辞儀を返して横島はその青年もまた人でないことに気がついた。

「あ〜。横島、この人がお前に話があるそうだ。」

「へ?先生にも見えるんですか?」

「ああ。今朝、急に見えるようになった…ってことはやっぱりこの人は幽霊なのか?」

それほど動じた様子も無く物理教師はあっさりと現実を受け入れている。
不審そうな横島の視線に気がついたか物理教師は苦笑した。

「何でも俺の授業が気になったらしくてな。この人は野上さんと言って戦争中のロケット技師さんだったそうだ。それで色々と聞きたいことがあったらしくてな。さっきまで彼に授業してたんだわ。」

「お前達より真面目に聞いてくれたぞ」と笑う教師に苦笑いを返すしかない横島たちである。

「それで野上さん、私たちに何かお話が?」

愛子の言葉に野上は軽く頷いて「ああ。実は…」と口を開きかけるが横島に止められた。

「あ、飯食いながらでいいっすか?人を待たせているもので…」

「あ、すまない。こんな姿になってから腹が減らないものでね。すっかり忘れていた。」

再び頭を下げる野上に除霊部員たちも慌てて頭を下げる。
そんな様子を物理教師はごく当たり前の光景とでも言うように自然に見ていた。


その頃…何やら疲れた様子で見舞いに来てそそくさと帰っていった美智恵のお見舞いを見て肩を震わせる入院中の美神令子。

何やら不吉なドクロマークの包み紙を開けてみれば「デス饅頭」と書かれた箱の中に入っているドクロの形をした茶色い饅頭。

「ううっ…ママ…もしかして私ってばいらない娘なの…えぐえぐ…」

泣きながら食べた饅頭はしょっぱかった…。

ちなみにまだ術後禁食中であったことを思い出したのは、再度の腹痛に襲われた後である。

また入院期間が延びそうな美神令子であった。


後書き
ども。犬雀です。
あうう…言い訳モードであります。
話を進展させようにも今回は魔鈴さんが暴走してくれました。
何時になったら霊?たちの正体がハッキリするんでしょうか?
蛇さんは?令子さんずっと入院中?おキヌちゃんは出るの?
あはは…(汗
まあ何とか頑張ってみますです。
今回のエピソードはほとんど松本先生のコクピットシリーズから拝借してます。
んで台場さんは「衝撃降下90度」ですね。野上さんは「音速雷撃隊」であります。
こういうのってクロスって言わないのかな?本作が初SSでこの世界にあまり詳しくない犬にはよく解りませんです。
では…


1>AC04アタッカー様
さてさてシリアスになるかギャグになるか…犬にもわからんとです。

2>ザビンガ様
GW…犬、世間様と違って…ぐすっ…。
そりゃあ妻帯者とか優遇ってのはわかるよ〜!でも飛び飛びでシフト…げふん。失礼しました。SS書き楽しみますです。

3>ジェミナス様
そうですね。一種の残留思念とは考えてます。けど原作とは違ったものになるかと…。

4>通りすがり様
カトちゃんは新レギュラーではないです。その候補はこれから出てきますです。犬が壊してみたいキャラなんですよ〜。

5>法師陰陽師様
にゃはは。実は死神登場時からいつか使ってやろうと思ってました。
元ネタは後書きの通りであります。

6>十七夜様
正解であります。犬の兄の蔵書にありまして、好きなんですよ〜>コクピットシリーズ

7>なまけもの様
にゃはははは。ごめんなさい。解った人が居たらすげーなぁと思ってました。突っ込み大歓迎であります。

8>紫苑様
おお…言われて見ればエミさんスルーしっぱなしでしたな。ふむ…メモメモ。

9>之様
覗き検定…いいですねぇ。あ、なんか小ネタが浮かびそうです。

10>nacky様
はいです。テレビでやったのは「音速雷撃隊」ですね。
犬、知りませんでした。ビデオとか出てるのかなぁ…。

11>L、L様
ですね。古いから元ネタ知らない方が多いだろうと思ってました。
犬の兄は四式戦の尻尾を赤く塗ったりして色々と作ってました。

12>シシン様
「アメフラシ」…犬の場合、休暇をとると雨が降る…酷いときには雪が降るというジンクスがありまして…職場で皆、犬と休暇が合うの嫌がるんです…ぐすん。

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