~第13話(後編)~
ダダダダダダダダダッ!!
ガトリングガンの様な音が響き渡り、一機の人型ロボットが飛行しながら出現した!
「あれは……まさか!?」
五代が呟いた時、ロボットの後ろから走ってくる青年がいる。
「あ……乾さん!?」
その人物の名を呼ぶ翔一。
「しっかりしろ!教授!五代!津上!」
二人の前に素早く回り込むと、乾巧はファイズフォンを取り出してコードを入力した!
”555 ENTER”
フィィンフィィンフィィンフィィン………
”standing by”
巧はファイズフォンを頭上に差し上げると、叫んだ!
「変身ッ!!」
そのまま一気に変身ベルト、ファイズドライバーにセットする!
”complete!”
フィィィィィィン……
赤く光るラインが巧の体をなぞっていき……
バシュバシュバシュバシュゥゥゥン!!
そして輝きと共に彼は…
「仮面ライダーファイズ」へと変身を遂げた!
だるそうに右手を一振りすると、ファイズは近付いてきたゾンビを拳で粉砕する!
その横ではロボットーオートバジンが、バスターホィールから放たれるガトリングガンで応戦していた。
「ふう、良いタイミングですね…助かりました、間に合わないかと思いましたよ?」
ほっとした顔で小竜姫が言う。
ファイズ=巧はオートバジンの調整の為、ここまで出陣が遅れていたのだ。
「行くぞ!……俺はまだ戦える!!」
翔一が変身ポーズを取り、再びバーニングフォームにチェンジした!
五代も同じくアメイジングマイティに変身している。
「まだまだぁ!」
小竜姫と平成のトリプルライダー達の戦いはなおも続く。
「ウォォォォォォォォォォォオッ!!」
ギルスの最大級の雄叫びが校内を震わせる!
胸の部分に黄色く輝く「目」が出現!
更に肩から!肘から!膝から!灰色の爪状ブレードが突き出す!!
手の甲の爪が赤く染まり、二倍程の長さになる!
最後に背中から赤くしなやかな触手がシュルルンと姿を現わす!
そう、ギルス最終形態「エクシードギルス」の誕生である!!
「凄い……こいつが葦原の”奥の手”か」
横島が思わず呟く。
「横島さんもあれは使わないんですか!?」
敵の攻撃を捌きながらピートが聞く。
「”二天の剣”か?あれは霊力を恐ろしく消耗する、今だとせいぜい三分出せるかどうかだ…もしもそれでキメられなかったら…!」
霊気の篭手で敵を粉砕しながら答える横島。
「確かに……でも三分で敵を粉砕するヒーローもいるんですけど?」
「馬鹿、ありゃ殆どの場合タイマンだろーが」
「そういえばそうでしたね…」
ピートが納得した。
ちなみに某三分間ヒーローは、敵が複数の場合大抵死んだり負けたり(退却?)している。
最も、その後きっちりとお礼参りしているが。
「ガルルルルル…(敵が近いでござるよ…)」
ユリ子を守っていたシロが唸り声をあげる。
「シロちゃん……」
その体にすがりつきながらユリ子がシロを呼ぶ。
「わぉん!(大丈夫!拙者命に代えてもユリ子殿を守るでござるよ!)」
シロが安心させる様にユリ子の頬をペロリと嘗める。
その時。
パリィィィン!!
遂に除霊所の窓ガラスに張ってあった結界が破られ、ゾンビどもが侵入してきた!
「きゃぁぁぁッ!」
ユリ子が恐怖のあまり絶叫する!
「ガァァァァァァッ!(させないでござるよ!)」
口から霊波刀を発生させ、シロがゾンビの中に切り込んで行く!
ボボボボボボッ!
突然、数体のゾンビが炎に包まれて崩れ落ちる!
「ケェェン!(間に合ったみたいね!)」
割れた窓から飛び込んできたのは九尾の狐…タマモだった!
「わう?(なんでお前がここにいるでござる?)」
シロが駆け寄りながら聞いた。
「ケーン(こんなに邪気発生させてんだから嫌でも気付くわよ…言っとくけど、私はアンタの為に来たんじゃなくて…そう、横島の為に戦うんだから勘違いしないでね)」
タマモはふふんと笑う。
「ワゥン!(口の減らない女狐でござる!)」
そう言いつつも少し嬉しそうなシロ。
「ケェェン!(来るわ!抜かれないでよ!)」
「ワォオン!(そちらこそ!!)」
二匹の妖物も遂に戦いに身を投じた!
「ケェェェン!!(燃え尽きちゃいなさい!妖狐炎獄弾!!)」
ヒュンヒュンヒュン………ボボボボボウッ!!!
タマモの周囲に発生した九個の火の玉が次々と、それこそ戦艦の主砲から放たれる砲弾の様にゾンビを襲う!
「ウォォォォォン!(喰らうでござる!)」
ザシュ!ザシュ!!
シロの鋭い霊波刀が閃く毎に、敵が崩れ落ちていく。
「まだまだ!”幻影突貫”ファントムスマッシャァァァ!!!」
横島の両手に発生した霊気ドリルがどかどかとゾンビを貫いて行く!
「バンパイアハーフを嘗めるな!!」
拳に霊気を集め、ピートがゾンビの頭部を正拳突きで粉砕した!
大分実戦慣れしてきた感のあるピート、ゾンビの素早い動きにも十分対応している。
(思った通りだ、戦闘センスは悪くない)
それを横目で見ながら横島が心の中で呟く。
だが次々と漏れたゾンビが侵攻して来る。
「キリがない!横島!ピート!俺が奴らの足を止める!そこを叩け!!」
エクシードギルスはそう叫ぶと、ギルススティンガーを延ばしてゾンビを足止めした。
そこへ襲い掛かる二人。
「戦士ってのはな……守りたい者がいる限り!一歩も退けないんだよッ!!」
「負けられない!僕達は負けられないんだ!!」
ギルスの触手が捕らえたゾンビを、横島とピートが次々と文字通り「葬って」いった!
その頃のおキヌちゃん(タマモの飼い主)
「す~……す~…横島さん……」
就寝中だった。
早寝だな。
更にその頃の美神教授。
「それで横島クンがねえ…って西条さんっ!聞いてるの!?」
何処ぞのバーで、すでに出来上がり状態だった。
「……………(ぐったり)」
………その西条とやらははすでに撃沈されていたり。
鷹はまだ来ていない様である(意味不明)
まあそれは見なかった事にして。
一方高台では。
「フン……」
ヒュウガが刀を一振りすると、ゾンビが数体纏めて消え去る!
(流石黒き死の戦士、何体けしかけても相手にならないね…)
余裕に見えたメドーサだが、内心は焦りに支配されつつあった。
自分には決め手が無い。
彼の普通の一閃すら、超加速に入った自分をかすめたのだ。
あの必殺技を喰らったら、加速する前に二枚に下ろされるに違いない。
(くぅ…あいつらさえ上手くやってれば、作戦は成功したというのに!)
デミアン達を呪うメドーサ。
それこそムチャである。
あの世(魔族にあるのか?)からデミアンが泣きながら抗議してくるぞ?
「キサマがやれ!」と。
自分が支配下に置いているあるGS事務所が集めた資料の中にあった女。
美神令子というGSが、少し前に請け負ったある事件。
死神に魅入られながらも、幽体離脱という裏技を持つ彼女そっくりの女性の協力で生を得たという。
ユリ子と言う名の女、その絶対生存不可能な筈の死の試練を切り抜けた価値ある魂。
自分の計画を一気に完成へスピードアップさせてくれる筈の大事な切り札。
だが…彼女への距離は、今は果てしなく遠かった。
騎士王ヒュウガ。
魔族必携「決して関わってはいけない者リスト」堂々二位。
アシュタロスを滅ぼした”宿敵”の一人。
その実力が自分の想像を遥かに越えている事を、彼女は自分の目で確認する羽目になった。
(アシュ様が人間にやられる筈など無いと思ったが……コイツ、絶対人間じゃない!)
メドーサは、詐欺の様な強さを持つ黒衣の男を睨みながら思った。
相変わらず無表情で、ゾンビを刀一振り5匹以上も減らしているヒュウガを。
(くそ…だが、アイツさえ女の下に辿り着けば私の勝ちだ!)
アイツとは一体…?
「少々ウザったいな…」
どうメドーサとの距離を詰めようか思案していたヒュウガの耳に、遠くからバイクのエンジン音が聞こえて来る。
「…やっと来たか」
ヒュウガはニヤリと笑う。
「な……何が可笑しいんだい!」
さっきの余裕は何処へやら…カンに触ったらしく、メドーサがイラついた叫びを上げた。
ウォォォン!
そのオフロードバイクはヒュウガの背後に停車し、ゆっくりと誰かが降りてきた。
「遅いぞ」
振り向かずにヒュウガが言う。
「済まん、山道は慣れてないのだ」
女性の声が返事をする。
バイクはモスグリーンで塗られたホンダの「XR250」だが、いくつか特殊チューンが施してあった。
パッと見自衛隊仕様のバイクみたいだが、蜂神オートショップ製の彼女専用バイクである。
関係無いが、平成仮面ライダーのバイクのベースとして最も多く使われているバイクでもあった。
「何、遅れた分早めにカタを付ける」
黒い皮のツナギを纏った女は、ゆっくりとヘルメットを脱ぐ。
現れたのは、美女の顔だった。
目つきは鋭いが、それで美しさに陰りが生じる事は無い。
「こいつは一体……」
データに無い女の出現に、メドーサは焦りを感じた。
見た目人間の女にしか見えないのだが…
「驚いている様だな、魔族ブラックリストNO,5…全世界指名手配犯「女蜴叉(メドーサ)」よ?」
「な!?」
メドーサの顔が引き攣る。
「キサマ!何故それを知っている!!」
敵の正体が読めず、焦りに吠えるメドーサ。
「それはな…」
美女が右手を顔の前でかざす。
ばしゅっ!ばしゅっ!!
同時に、背中から二対の黒い翼が出現した。
バシュゥゥン!
同時に体も魔族のそれへと変化する。
最後に彼女は、目深に被っていた軍用ベレー帽をゆっくりと上げた。
「な…キ…キサマは…!?」
場面は唐突に横島家に移る。
「書けって言われても~……」
ユウリは仕方なしに、昔戯れに読んだ古い文学小説の内容を思い出しながら万年筆を取った。
「……………」
それを安奈みらが注視する。
「頑張って!」
美衣も後ろから応援の声をかけた。
「えっとぉ……確か…」
ユウリの手がさらさらと原稿用紙に字を生み出していく。
「やっぱりね」
その字を見てうんうんと頷く美衣。
「………?」
安奈みらは首を傾げた。
何故ならユウリが書いた文字は……
「馬鹿な!キサマは確か…魔界正規軍大尉…ワルキューレか!?こんなところに居る筈が…」
唖然とするメドーサ。
「フン、居るのだから仕方あるまい」
ニヤリと女豹の笑みを浮かべると、ワルキューレは何処からともなくマシンガンを取り出した。
しかも二丁。
「!?」
慌ててメドーサが飛び退く。
どうやらワルキューレが魔族きっての、銃器の扱いの天才である事を知っている様だ。
無論、ただの銃ではない。
対魔・神族用に開発され軍で採用されているモノを、更にワルキューレ用にカスタマイズしたデンジャラスな代物である。
「雑魚に用は無い!消えろ!!」
ガガガガガガガガガガガガガガ!!!
極悪二丁マシンガンが猛然と火を噴いた!!
放たれるのは、魔弾(デモン・ブリッド)と呼ばれる魔力を凝縮して作られた特殊弾丸である。
ワルキューレの魔力が続く限り連射可能な、反則兵器でもあった。
「うわ!?」
メドーサは必死に刺又を使い弾を叩き落とす!
だが、ゾンビにそんな芸当が出来る筈は無く…
グシャ!バシュッ!
鈍い音を立てて次々と粉砕されていく。
「…こんな…」
軽い自失状態になっているメドーサ。
防いだ刺又もあちこちが変形している。
まさか魔界正規軍の上級将校が地上に来ているとは、まるで予想していなかったからだ。
というか、出来る筈も無いだろう。
地上常駐の(メインの)理由を聞いたら、流石のメドーサも顎が落ちるであろうから。
当然ながら、ベスパの存在も知る由も無い。
「何処を見ている!」
「!?」
斬ンンン!!
「くぁ!?」
神速で繰り出されるヒュウガの一撃を、メドーサは辛うじてかわした。
だが。
「フ……喰らえ!天空覇王!裂光斬ッ!!」
さらに間発入れずヒュウガの必殺剣が放たれる!
無数の斬撃がそのまま無数の衝撃波と化してメドーサを襲う!
「くぅう!?」
メドーサの全身が少しずつ傷付いて行く。
怒れる騎士王ヒュウガの攻撃は苛烈を極めた!
(……く…このままではいずれ切り刻まれる…なんとか…)
攻撃を防ぎながらメドーサは反撃の機会を伺う…が、彼女は忘れていた。
防御にいっぱいいっぱいで、ゾンビ召還の魔力が供給停止してしまっている事を…
「もう遊びはお終いか?メドーサ!!」
その隙を逃さず、ヒュウガの背後から…
ワルキューレが肩に担いでいるモノの引き金を引いた!
ズドゥゥゥン!
それは、対巨大生物用アサルトバズーカ!
「ふ…」
そばを通る弾頭に身じろぎ一つせず、ヒュウガが嘲笑う。
「し、しまった!?」
メドーサが気付いたがもう遅い!
特殊弾頭は真っ直ぐ遮られる事無しに…メドーサの胸を直撃した!!
ズドォォォォン!
「がはぁぁぁぁぁっ!!!」
口から紫の血を巻き散らしながら、爆風に吹き飛ばされるメドーサ!
「止めだ!天空覇王!閃空断ッ!!!」
追い打ちとばかりに、ヒュウガの超神速の抜刀術が瀕死のメドーサに放たれる!
「く…こんな所で除霊される訳には……!」
メドーサは最後の力を振り絞って”転移”を試みた。
斬ッッッッ!!!
ビシュゥゥゥゥウ!
ボトッ…………
地面に転がったのは…メドーサの右腕だった。
「……消えた!?」
落ちた右腕、そして大量の血と肉片…それらを残してメドーサはこの場から姿を消した。
「気にするな、手応えはあった…奴の体はもう霊的構造を維持出来ん程のダメージを受けている筈だ」
ワルキューレがそう言いながら春桐魔奈美に戻る。
「それは…軍人の勘か?」
刀を異空間に還したヒュウガがボソリと言う。
「さあな」
その言葉が、恐らく今回で一番重要な戦闘を締めくくった。
一時間前、ここからかなり離れた市街地。
こそこそ闇に蠢くゾンビども。
誰かを狙っての行動に間違いは無い。
だが。
「待ちな」
ダン!
その前に立ち塞がるモノが居た!
「!?」
それが放つ異様な怒気に、意思無きゾンビどもがずるずると後ずさる。
そう!
立ち塞がる黒い影!
今回貧乏くじを引いた悲劇(?)の女性!
「お前たち…生きて帰れると思わない事だねぇ…」
怖い笑みを浮かべながらぽきぽきと指を鳴らしている女。
お馴染み(?)”魔女王”ベスパだった!
ちなみに、どっちがヒュウガと一緒に行くかを決めたのは…
じゃんけんだったらしい。
「ド畜生!!!容赦しないよ!!!!」
フルパワーでゾンビどもに襲い掛かる半泣きベスパ!
今ここに一方的な殺戮の宴が始まった。
南無。
一方、構内では。
「教授!敵の数が………」
アギト・バーニングフォームが叫ぶ。
「目に見えて減ってきましたね…」
頷く小竜姫。
「ああ、やっと種切れらしいな」
無愛想にファイズが言う。
「皆さん!今がトドメのチャンスです!!」
司令官、小竜姫の号令一閃!
「はい!一気に決めますか!」
クウガが腰を落として、キックの体勢に入った!
アメイジングマイティの右足元から、気化したエネルギーがゆらゆらと立ち昇る!
「了解です!」
ノーマルアギトに戻ったアギトが、角を広げてやはりキックの体勢に入った!
足元の地面に、巨大なアギトの紋章が浮かび上がる!
「ああ、やってやる!」
ファイズは腰のスコープ状のアイテム…
ファイズポインターにミッションメモリーを取り付ける。
”ready”
そのまま右足首に装着し、ファイズフォンのENTERキーを押した。
”exceed charge”
赤い光ーフォトンブラッドがファイズの体を疾走り抜け、ファイズポインターまで辿り着く。
「はぁぁっ!」
そして腰を落とし、一気にジャンプする!
他のライダーが跳んだのも同時だった!
ファイズポインターから、敵の数だけ赤い閃光が放たれ…
喰らったゾンビどもが赤い円錐状の光に刺されて動きを止める。
「「「ハァァァッ!!!」」」
恐怖……いや驚異のトリプルライダーキックが、一陣の死の旋風と化してゾンビどもに炸裂した!!!
ドガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
次々と砕かれていく哀れなゾンビ達!
そして……
三人のライダー達が砂煙をあげながら地面に着地する。
「一気に殲滅します!”超加速”!!」
生き残りのゾンビ達に向けて小竜姫の奥義が発動!
シュィィィン!
まるでファイズのアクセルモードの如く、音速をも超えた速度で敵を切り裂いて行く。
相当数がまだ残っていたのだが…
彼女が通った後には…もう動くモノは何も無かった。
「……どうやら勝ったらしいな」
ファイズがベルトからファイズフォンを外し、キーを押す。
ブシュゥゥゥ……
その姿が瞬時にして乾巧に戻る。
「やりましたね~……ふ~…」
アギトから戻った翔一も、答えながらもその場にへたりこむ。
「大丈夫!俺達の勝ちですよ!」
クウガがサムズアップしながら変身解除した。
「お疲れ様です、皆さん」
勝利に顔を綻ばせる小竜姫。
その耳に、遠くから響いてくるバイクのエンジン音が届く…
更に除霊所内。
「ケェェェン!(これでラスト!燃え尽きちゃえッ!!)」
「ガゥゥゥッ!(終わりでござる!斬ッ!!!)」
シロタマコンビも見事にフィニッシュ!
除霊所に侵入したゾンビはこれで全て片付いた。
少し離れて廊下。
「………行ける!数が切れてきた!」
横島はすかさず双拳をガトリングガン状に変える!
「下がれ!ピート!葦原!」
「「了解だ(です)!」」
その叫びに二人が戻ってきた。
「これで終わりにしてやるッ!」
凄まじい霊気が横島に収束してゆく!
「行けェ!”幻影弾丸”ファントムッリボルバァァァァ!!」
瞬間!
無数の霊気の弾丸が枷から解き放たれた!!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!
砕く!砕く!砕く!粉々に撃ち砕く!!
嵐の様に弾丸が走り抜けた後には…何も残りはしない。
いや…入り口近くに、運良く(?)難を逃れた者が数体いた。
「ちぃぃッ!」
エクシードギルスが素早く近付き、触手「ギルススティンガー」で絡め取る。
そして入り口から外に引きずり出し…
「ウォォォォォォォォォォォォォッ!!」
夜空に向けて絶叫すると同時に、カカトの突起がブレード状に長く伸びた!
そのままジャンプ!
情け容赦など微塵もなく、上空から敵を捕らえて急降下する!
ズシャァァァッ!!
超高空からのカカト落とし「エクシードヒールクロウ」を喰らい、ゾンビは跡形もなく消滅した!
「ウォォォォォォォ~~~ッ」
勝利の雄叫びをあげるエクシードギルス。
「砕け散れ!ツインダンピールフラッシュ!!!」
ドガドガッ!!
ピートの両手が輝き、残りのゾンビを消滅させる。
どうやら、かなりの霊気を扱える様になったらしい。
レベルアップ?
「これで終わりか…」
横島がふうっと大きく息を吐いた。
「ですね…疲れたぁ…」
思わずその場にへたり込むピート。
つか、ピートが活躍している!?
路線変更か?
その時!
シュオン!
へたり込んでいるピートと、立ち尽くしているギルスの横を紅いモノが駆け抜けて行った!
「な!?」
「今のは!?」
驚く二人。
「うぉ!」
そいつは横島すら抜いて…
部屋の中へと乱入した!
バタン!
しっかりドアを閉めて。
「わぅぅ!(なんでござるかこいつは!)」
「ケェン!?(まだ居たの!?)」
身構える妖物コンビ。
「あ…」
恐怖で言葉が出ないユリ子。
そいつは、紅の体を持つゾンビだった。
何故か頭頂部に一本角が生えている。
手には機械的な斧が握られており、歯の部分が赤熱していた。
こいつは、メドーサが一体だけ特別チューンしたカスタムゾンビである。
アイツとはこいつを指していたのだ。
取り敢えず、通常の三倍の性能があるらしい。
「わぅ!!(敵なら容赦はしないでござる!!)」
「ケェェン!!(紅けりゃ偉いってモンじゃないわよ!!)」
同時に妖物コンビが仕掛けた!
だが!
ドガッ!!
「ぎゃぃんっ!?」
まずシロが素早い蹴りで吹き飛ばされた!
そして…
「ぎゃん!?」
タマモが音速パンチで殴り倒される!
「きゃぁぁ!!」
ユリ子の悲鳴が上がった!
「……プシュー…」
奇妙な音を立てて、そいつが斧を振りかぶる。
どうやら、魂を刈り取るつもりらしい。
魂を無理矢理断ち切る効果があるのだろうか?
ブゥゥン。
刃の赤熱がさらに赤みを増す。
「わぅぅ…!(下郎…ユリ子殿に…手を出すなでござる…!)」
「ケェェン…!(させて…させてたまるものですか…もう少しだって言うのに…!)」
必死で立ち上がろうとする二匹。
だが、霊力をしこたま使っていた後のダメージだけに…回復が追いつかずどうしても四肢に力が入らない。
「いや…いやぁぁぁぁあ!!!」
走る絶叫!
まさにその時!
バン!
ドアを叩き開け、横島が飛びこんで来る!
「てめぇ!!」
そのまま即座に「栄光の手」で斬りかかるが…
ばきぃっ!
「うあ!?」
斧であっさりと弾かれる。
「ウォォォォ!!」
続いてエクシードギルスがギルススティンガーを伸ばした!
が。
ざしゅざしゅっ!
素早く斧で切り払われる。
「何だと!?」
流石のエクシードギルスも驚きの声を上げた。
「強い…」
「くそ…」
倒れた横島を助け起こしながらピートが呟く。
紅ゾンビは再びユリ子に向き直る。
「さ…せるかよ!」
横島がゆらりと立ち上がった。
眼に入るのは、必死で立ち上がろうとしている傷付いたシロとタマモ。
怯えきったユリ子。
彼を「覚醒」させるには、十分な光景である。
どくん…どくん…どくん…
横島は心臓の鼓動の早まるのを感じた。
脳裏に甦るあの日の悲劇。
(蛍…あの日みたいには…させない!俺は…俺は…絶対に!護るんだ!!!!)
ドン!!!
凄まじい霊気が横島の体から発せられた。
「うわ!?そんな…横島さんの霊力…すでに殆ど残って無い筈なのに!」
「なんて霊気だ!?これが…横島の底力だってのか!?」
驚くピートとギルス。
あの日、そして修行の日々が横島の霊力供給源を煩悩から変えた。
そう…護る為ならば、彼は瀕死の状態からでも霊気を漲らせて立ち上がるだろう。
倒れる度にに、傷付きながらも雄雄しく甦る守護戦士。
それが「横島忠夫」だ!
キィィィン!
横島の右手の甲に蒼い「天」の文字が!
左手の甲に紅い「地」の字が輝く!
「天空丸ゥゥ!!」
ばしゅぅぅぅん!
差し上げた横島の右手に、壮絶な蒼い霊気…最早神気に近いそれを纏った刀が出現する!
「天地丸ッ!!」
目の前に差し出した左手に、紅い霊気を纏った刀が召喚された!
「力を貸してくれ!俺の最強の”牙”よ!!」
横島は二刀を柄の所で合わせる!
ドドドン!
それに伴い二刀が放つ霊気が更に増す!
「………」
紅いゾンビは無言で横島に斬りかかった!
ギィン!
「!?」
だが、その一撃は双剣によって軽々と弾かれる。
「ハッ!!」
横島が回転させるように双剣を下から斬り上げた!
ザシュ!
斧を握ったままの右手があっさりと斬り飛ばされる!
「ハァッ!」
そのままぶんぶんと双剣を横に上にと回転させる横島。
「シロとタマモを傷つけ、ユリ子ちゃんの命を奪おうとしたてめぇは…絶ッ対許せねぇ!!!」
ぎん!と横島の視線が紅ゾンビを射た。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォオオ!!!
最高まで高まる横島の「超霊気」
「唸る二つの牙を受けて…散れ!真!二天一流!鉄風車ァァァァ!!!!」
瞬間!
横島が右手に携えた双剣が高速回転したかと思うと…
そのまま瞬時に敵の横を走り抜けた!
カッ!
すれ違い様に一瞬の閃光!
次に見れば、横島は敵に背を向けて立っている。
紅ゾンビはさっきの姿勢のまま、やはり立ち尽くしていた。
「ど…どうなったんですか…?」
「わ、解らん…」
二人もその様子を凝視している。
横島は双剣を目の前にかざすと…
「滅!」
キン!っと音を立てて双剣を元の二刀に戻す。
同時に。
バシュゥゥ!!
紅ゾンビが真っ二つに割れた!
そのままぐずぐずと消滅していく。
そして…二刀も掻き消えた。
「くっ…」
霊力を過剰消費し、膝を着く横島。
「や…やった!」
「ああ、流石横島だ」
喜ぶピートに頷くエクシードギルス。
「だ、大丈夫ですか!?」
最初に動いたのはユリ子だった。
彼に近付き、倒れそうになるのを抱きとめる。
「き…君こそ…大丈夫かい?」
力なく微笑む横島。
「はい、貴方のお陰で…傷一つありません」
涙を浮かべながらユリ子が言う。
「たはは、ついキレちまった…霊力すっからかんだ…」
横島は苦笑するしかなかった。
「しっかりして下さい横島さん、僕の霊気を少し分けますから」
あたふたとピートがやってくる。
だが。
「わう!(ひっこんでるでござるよ!)」
「ケェン!!(死んでなさい!このホモ半分吸血鬼!!)」
べしゃっ!
「へべっ!?」
二匹のジャンプ踏み付けを喰らい、地に没する薄幸バンパイアハーフ。
「わうわう!(拙者が全身全霊でヒーリングするでござるよ!)」
「ケェン!(いや私が優しくヒーリングしてあげるわ!)」
先を争って横島に殺到する二匹。
「ありがとう…シロ、タマモ…ってうわぁ!?」
しかし、勢い余って横島を押し倒してしまう。
そのまま容赦なくヒーリングが入る!
ペロペロペロペロ…×無数
「だははははは!くすぐったい!同時はやめてくれぇぇぇ!!」
横島の悲鳴が轟く。
「…生きてるか?」
「なんとか…」
エクシードギルスの言葉に、頭を振りながら立ち上がるピート。
大概不死身だな?
「ありがとう……みなさん……」
その光景に笑みが戻ったユリ子の言葉が、死闘を締め括った。
数分後。
「わぉん!(武士として当然の事でござるよ)」
ヒーリングを終えて、得意そうに胸を張るシロ。
「よくやったなシロ、タマモも来てくれてサンキューな」
何とか復活した横島が、二匹を撫でて労う。
「ケェン…(はふ~…横島の為だもん…役得~)」
タマモは目を細め、まったりとしている。
「わふ…(せんせ~…気持ちいいでござる…)」
同じくシロ。
「…何とか片付いたな」
変身を解いた葦原涼が呟く。
以前は変身解けた後ばったり倒れたり、手だけ老化してたりしたのだが…
今はそんな事も無く普通である。
そこへ小竜姫以下仮面ライダーズがやってきた。
「やりましたね!葦原さん!」
「ああ、そっちこそ…良くやったな」
翔一と涼が健闘を讃えあう。
五代が無言でニコっと笑い、サムズアップしている。
「まあ、当然の結果だがな」
無愛想に巧が言う。
「ご苦労様!横島さん♪」
小竜姫がぱたぱたと近付いてきた。
「小竜姫様こそ、怪我とか無いっスか?」
「大丈夫ですよ!これでも竜神ですから」
心配そうな横島に、彼女はガッツポーズで答える。
「流石っスね…」
「あ、そうそう…さっきワルキューレが来てですね…」
思い出した様に喋る小竜姫。
「そうそう、ワルキューレさんが来たんですよ!」
翔一も頷く。
「あの軍人女がか?」
涼が聞き返す。
「軍人女って…」
彼の口の悪さに唖然とするピート。
「……で、この事件の真相なのですけど…」
そう言って、何事も無かったよーに小竜姫は…戦乙女が伝えて来た内容を話す。
その内容は…
今回の事は女魔族メドーサが、ユリ子の特殊な魂を狙って仕掛けてきた事件である事。
メドーサは取り逃がしたが重傷を負わせた事などだった。
「……こいつは理事長やオカGに伝えた方がいいな」
横島の言葉にライダーチームも同意見であった。
最も、美神やおキヌが残っていれば…事情はもっと早く判明したかも知れない。
これで、ようやく長い戦闘が終結したのである。
少し前、高台にて。
「メドーサが他の事件に関与した件はどうするのだ?」
ワルキューレの問いに…
「…風水師の事件のみ伝えてくれ、邪神の件は俺がカタを付けるまで口外無用だ」
ヒュウガが淡々と答える。
「俺が、必要ならばそう…地の底までもヤツを追い…この次元から完全に抹殺するまでは……」
「……」
「こんな怒りや悲しみを引きずるのはもう俺だけでいい、横島には…復讐などに捕らわれる事無く…幸せな未来を掴んで欲しいからな…」
ヒュウガは自嘲気味に可笑うと…
闇の中へ溶け込む様に、その姿を消した。
「あいつの所に行くのか?まあいい…晩飯までには帰るんだぞ?」
何処と無く不機嫌そうなワルキューレの言葉に…
闇の向こうでずるっと滑る様な音が聞こえる。
今日の食事当番は彼女らしい。
…そこはシリアスに決めさせてやれ。
「かはぁっ……」
何処とも知れぬ郊外の道を、メドーサはヨロヨロと歩いている。
ぼとぼとと落ちる血が、その傷の深さを物語っていた。
「まだだ……まだ死ねない…価値ある魂を集めて…新たなる「魔王」を出現させるまでは……!」
彼女の奥歯がギリッと軋む。
(私が…それになるのも…ありだがね)
だが…もうその命は尽きかけていた。
その時。
「ふーん、まだ生きてたじゃん」
「お前は…」
満身創痍のメドーサの前に現れたのは、スーツを着込んだ女。
しかし…月光に照らされた影は…
手が鳥の翼の様になった異形の姿だった。
何処かの街角。
「は~…は~…」
荒い息を吐いているペスパ。
別に戦いに疲れている訳ではない。
怒りの衝動と興奮未だ覚めやらずという感じである。
「…この程度の相手じゃ話にならないね!もっと敵をぉぉぉ!!」
ベスパは三日月に向かって吠えた。
相当悔しかったらしい。
ちなみに撃破数は横島達六道勢が片付けたのとほぼ同数である。
恐るべし、乙女の怒り。
そこへ…
「この気は…!」
ヴォン!!
ヒュウガのダークブレイカーがやってきた。
「大丈夫…の様だな」
ヘルメットを取ったヒュウガが辺りを見回して呟く。
(やはり…俺の予想した以上の戦闘能力だな)
彼は状況分析に気を取られるあまり、ベスパの目がうるうるしている事に気付いていない。
「…どうした?」
ふるふると震えている彼女に声をかけるヒュウガ。
「私を心配してきてくれたんだね…ヒュゥゥゥガァァァアア!!!!」
がばぁっ!
喜び爆発でいきなり抱きついてくる蜂女。
「ち、ちょっとまっ…うあぁぁぁあ!?」
訳の解っていない、哀れなニブチンの叫びが夜の闇を震わせるのだった。
ちなみに、抱きつく速さはヒュウガでも見切れなかったらしい。
南無。
「ふう、ようやく帰って来れましたね…」
「ああ…疲れた…」
「わうん(霊力ががた減りでござるな…肉が喰いたいでござるよ)」
横島&シロとピートは家路を急いでいた。
あの後オカGの美神美智恵が駆けつけ(西条が連絡不通の為)事情を説明したりなんなりで、色々時間を喰ったのだ。
ユリ子はオカGに保護され、これからの対応を色々な方面と相談して決めるらしい。
「皆さん!本当に…ありがとうございました!」
何度も何度もお礼を言っていた彼女の姿が思い出される。
「でも良かったですね」
「ああ、疲れたけど…心地よい疲れだぜ」
「わうわう(いい事をしたので気分がいいでござるよ♪)」
家の玄関まで来た二人と一匹は、何やら奥から話声がするのに気付いた。
「こんな時間なのに来客中か?」
首を傾げる横島。
時間は少し戻って…横島家。
「何この字……部分部分しか読めない…もしかしてこれ旧仮名遣い?」
そう、ユウリがさらさらと書いた文字は…
戦前まで頻繁に使われていた旧仮名遣いだったのだ。
「だって当時そのままですからね」
構わずユウリは文字を書き続けていく。
”やめやめやめ~~~~っワケわからん文字でかくな~!”
ユウリ達の頭の中に、強烈な思念が伝わってきた!
「誰が訳解らん文字ですかぁ!」
憤慨するユウリ、だが現代人にとって結構読みにくい字である事は疑いない。
……まあ古文程ではないが。
”もっとわかりやすい字つかえ~~~ひらがなだいすきぃぃ~”
「やかましいです~~!勉強不足退散~~!!漢字をもっと使えですぅ!!!」
ユウリは無視してさらに書く!
”あああああああああ……むずかしいのはいやだぁぁぁ~……”
”声”はだんだん弱々しくなり…しばらくして完全に消えた。
「う~ん…どうなったのか解りませんけど…一応使ってみてくれます?」
ユウリが差し出した万年筆を、安奈みらが受け取る。
そして原稿用紙を前にして執筆してみた。
「書けるわ!もうこれ以上は無いくらいスラスラっと!」
どうやら宿っていた駄文書きの霊(?)は消え去った様だ。
誰だ一体?
「凄い!ああ…GSって素晴らしいわ!」
「あはははは……(乾いた笑い)」
喜ぶみらと、ただ笑うしかないユウリ。
そして何事も無かったかの様に顔を洗っている美衣。
何時の間に猫フォームに戻った?
「「………何があったんだろう……(大汗)」」
それをぼーぜんと見ている横島達であった。
ちなみに…ユウリは流石に懲りたらしく、これ以後横島家に依頼が持ち込まれる事はめっきり減ったという。
~次回に続く~
最初にお詫びを。
アナザーアギトファンの皆様、済みません;;
ワルキューレの逆襲が彼の出番を総取りしてしまいましたぁ(大泣)
土下座してお詫びいたします(ぺこぺこ)
次回は黒き~の横島くん修行編か本編か悩んでおります。
当日まで悩みますので宜しくw(おい)
それでは前回のレス返しです。
煌鬼様>
横島は護る事にひたすら命をかける傾向にありますから…
一応メドは傘下にGS事務所を持っている設定そのままです。
アガレス様>
二人が出会うのは、かなり後になりますがちゃんと顔を合わせます。似てるのは二人が”光”と”闇”の主人公だからなんです。
ブレイドは…出すと収拾が付けられそうにないのですが、出ない訳ではアリマセン(ニヤリ)
柳野雫様>
今回で懲りたので、もうこんなアホな事はやらないでしょうがw
死神の手を逃れる事で、魂の価値…というか格がぐんとレベルアップしたからなんですね、そういう魂は滅多にないものですから。
ATK51様>
劇場版アギトの戦いが参考になっております、多数のアンノウンを切り裂き叩き潰す戦いは燃えますよ。
魔族は基本的にパワー崇拝ですから、素直に怯えるか従うかになるんでしょけど…それが人間だとやられるまで自分の不利を信じない傾向にあるようですね。
小竜姫のリアクションは私も好きですw
幻のアレも続き書きたいなぁ、原作のコミックス購入したし(おい)
casa様>
メド様、小竜姫でなくワルキューレをライバル?に選んだ様です(汗)
ピートは…何故か不死身のイメージが…w
それでは次回でお逢いしましょ~でわでわ~~