雨の中、傘を差しながら3人の男女が歩いている。
その中の唯一の男は傘を持っているだけの手ぶらで、女の一人は二人入る傘を差し、もう一人を庇っている。
「大丈夫かい、百合ちゃん?重くないかい?」
「はっ・はっ・・・はっ!はい!大丈夫です」
最後の女…いや少女は、彼女の倍は有るであろう荷物を持ち、息を切らせながら歩いている。
「女の子なのにに肉体労働させて悪いね〜」
「いえ、これくらい当然です。これからも末永く使ってくださいね。お兄様」
そうは言っているが、女の子に…いや、そうでなくともこの荷物は明らかに多く、百合の顔も青くなっている。
「やはり私も手伝おう」
もう一人の女…操が百合の荷物を請け負おうとする。
「いや、俺達は除霊に行くんだから。霊力を使える俺達二人は最高のコンディションを保っていた方が良いんだ。それに…」
男はそこで言葉を区切ると、目の前を見る。
「もう着いたしな」
男の目の前にはおんぼろ屋敷が有った。
「都心にもこんな所が有ったんですね」
「ああ。取り壊そうとする関係者が次々と死んで、30年前からこのままって訳だ」
「それが悪霊の仕業、か?」
話しながら開いている門から入り、玄関に向かう。
「ん?変だな」
玄関に来ると、何かに気が付く男。
「何が変なんです?」
「ドアが開いているし、それに…」
百合の質問に答えながら男はしゃがみ込んで何かを調べる。
「俺達より先に入った奴がいるみたいだ」
「ヒィー!!!」
男の台詞と共に雷が鳴り、百合が悲鳴を上げて操に抱きつく。
「私たちより先にか?この建物は悪霊が住み着いているんだろう?」
「ああ、そのようだ。何処の馬鹿かは知らんが未だ新しい足跡があるからな」
男の指差した地面には、確かに埃を踏んで出来た足跡がある。
「何も知らずに入ってきた不審人物か、悪霊の住処と知っていながら入って来た不審人物か?どちらにせよ不審人物だ!注意を怠るんじゃないぞ!」
「み、操ちゃん」
「大丈夫だって。私が付いてる」
男の忠告に、百合の花の香りを撒き散らせながら抱き合う二人。
男はそのまま注意しながら館の奥に進んでいく。
「んっ?」
男が屋敷の奥の部屋に進むと、一人の男が眠っていた。
先ほど自分で言った通り相手は不審人物、警戒しながら様子を伺う。
(床には悪霊払いの結界…少なくとも、悪霊が居る事を知っていると言う事だ。ならば、考え難いが修行者か?)
「お兄さ…今朝の痴漢!?ここで会ったが100年目です!」
「すんませんすんませんすんませ〜ん」
「又、朝の奴か!?脅かせやがって!」
「なんか知らんがすんませ〜ん!!!」
其処に二人の少女が入って来たと思ったら、行き成り眠っていた男…横島をリンチにかけ始めたのだった。
「で、雨宿りしていた…と」
「その通りっす」
何とか二人のリンチが終わり、1分で復活した横島に「こいつ人間か?」と疑いながらも何故此処に居たのかを聞いた男。
「何故此処に?此処には悪霊が住んでいて、しかもソイツは今までに何人ものGSが除霊に失敗した奴だぞ?」
雨宿りと言う理由ではリスクが高すぎて信じられない。
「え?そーなんすか?雑魚っぽかったっすけど、別の奴っすかね?」
しかし、横島はそんな相手だったとは知らずに雑魚呼ばわりする。
(雑魚だと?悪霊の手下か?それとも…)
「それじゃ、俺は此処に居たら邪魔っすか?」
黙って考え込む男を前に、横島はその場を去ろうとする。
「いや、待て」
(あちらに手下が居るなら、こっちにも手数がいる。この悪霊を雑魚扱いするなら強力な霊能者だ)
横島を呼び止めたまま少し考え込んだ男だったが、すぐに顔を上げる。
「いくつか質問していいか?」
「ああ」
「名前は」
「横島忠夫」
「年は」
「19歳」
「仕事は?」
「無職って事になるかな?」
「GS免許は?」
「あ〜、持ってない?」
「住所は?」
「有ったらこんな所で雨宿りして無いっす」
(むちゃくちゃ怪しいが、如何するべきか?)
職務質問そのものの質問をして考え込む男。
「もう良いっすか?」
自分が怪しいと言う事は判っており、更には不法侵入(雨宿りの為)を行っている為少し怯え気味な横島。
「それじゃ俺はこれで」
「だから待て」
逃げるように(?)去ろうとする横島の首筋を掴む男。
それから何かを決めた様に口を開いた。
「俺の所で働いてみないか?」
すいません。 週刊宣言してすぐに遅れてしまいました。m(__)m
せっかくまさのりん様が感想下さったのに…まさのりん様、有難うございます。嬉しいです、
亀の歩みですが、次回は既にバレバレな”男”の名前を自己紹介させます。