「ホワァイ?」
「何言ってるんだ?」
「WHY?」
「なんに対して聞き返してるんだ?」
「あっ、すんません。もう一度名前を聞いても良いっすか?」
「ああ」
横島は混乱していた。
人の夢に入って雇い主の過去の姿を見たり、時を遡って雇い主と自分の前世まで見た事がある。
又は雇い主が子供になったり、人形サイズになったりした事もある。
それで異常事態にはある程度耐性が付いていると思っていた。
(朝起きたら過去に戻っていて、美神さんを頼ろうとしても見つからなくて、途方にくれていた所に雨が降ってきたんで雨宿りして、其処にGSの人が来て俺を勧誘して、まずは自己紹介からってなったんだよな)
とりあえず、頭の中で今までの事を整理する。
だが・・・
「美神 玲だ。後ろの二人、髪の長い方が横島 操で短い方が横島 百合だ。先程も言った通り二人ともアシスタントだ」
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「ホワァイ?」
「繰返すな!」
ゲシッ!
一瞬の沈黙の後、まだ混乱している横島の頭に操が張り手を入れた。
「お兄様。本当にこの人を雇うんですか?」
「あ~…入社試験をしてからな」
百合の最もな発言に、玲は冷や汗を流しながら答えたのだった。
「それじゃ、入社試験だ。お前が会ったと言う悪霊を倒してみろ」
「うい~っす」
数分後、何とか精神的再建を果たした横島に入社試験の内容を伝える。
「さ~て、何処にいるんかな?」
文珠を使えば一発だが、流石の横島でもそれはしない。
美神やその母親の美智恵、唐巣等に耳にたこが出来るほど言われた文珠の凡用性及び応用性。
それを晒してしまう事の反省は美神の所で済ませてきた。
(”呼ぶ”か”探す”かどっちかしかないが、”呼ぶ”には道具が必要だし、”探す”のは疲れるんだよな~。他に方法は無いかな~?)
そうは考えても、やはり取るべき道は一つしか見つからない。
「それじゃ、探しますか」
そう言って横島は体中から霊力を放射する。
とは言ってもその総量は微弱で、操の様に打撃力がある訳でもなし、鋭い一般人にも”少し雰囲気が違う”と感じられる態度だ。
だが、自らの霊力が周りの空間漂よわせているので、横島にもその空間に有る霊力を感知する事が可能になる。
「ほぅ」
傍らでは玲が感心した様に声を上げる。
横島がやった事は別に難しい事ではないが修練が必要であるからだ。
又、横島が居れば見鬼君が要らない=経費が浮く…と頭の中で算盤を叩いている。
玲が使っている精霊石内臓の見鬼君は使用回数に寄るが、大体1年に一回は整備の為に精霊石の取替えが必要なのだ。
では何故玲がその方法を使わない(覚えない)かと言うと、疲れるのだ。
そして、除霊のような命の遣り取りではその疲れが馬鹿に出来ず、結果経費を掛けて見鬼君を使用する事を選らんだので有る。
「此処には居ないようっすね。次の場所に行きますか」
横島はその状態のまま屋敷を探索する。
すぐその後に玲が続いて、操、百合の順番で後に続く。
そのまま1・2階を見て周り、地下への階段途中で足を止めた。
「此処っすね」
そう言って指し示した場所は壁であり、別に変わったところは見受けられない。
「此処って…壁しかないじゃない!」
「おんどれー!さっきの奴かー!!!」
百合が横島の前まで来て壁を指差した瞬間、其処から人の顔が出てくる。
「ひうっ!」
驚いた百合は悲鳴を上げ、目の前に居た横島に抱きつく。
「はい、確保完了っと…もう大丈夫っすよ。百合ちゃん」
横島が手に霊力…ハンズオブグローリーでその顔を掴み、百合に話しかける。
内心では
(よっしゃぁ!好感度アップ!)
等と考えてはいるが、百合の方は
「へうっ!玲さ~ん」
と言って、すぐに離れて玲の方に抱きつく。
それを見て固まってしまう横島。
抱きつかれた玲は慌てずに、悪霊に話しかける。
「お前が鬼塚畜子か?」
「そうじゃー!ワシは泣く子も殺す鬼塚じゃー!ココはワシのい・・・」
「うるさいよ」
なおも続けようとする鬼塚に張り手を入れる操。
横島はその理不尽さに美神を思い出して顔を青くする。
「ナイスアシスト!って事で、アンタの隠し財産の場所、教えなさい。業者から裏は取ってるからな」
玲の手には、
”隠し部屋作成しました ○○建設”
と書かれた書名が握られていた。
「何でワシが・・・」
「ぼこぼこにされて極楽に行くのと、ふつーに成仏するの………どっちが良い?」
何処から出したのか、神通坤を突き付けながら笑顔で尋ねる玲。
(やっぱ美神さんだな)
そんな様子を見て性別が反転した異世界に来た事を確信する横島。
その考えが美神にばれたら折檻モノだろう・・・他は納得するが・・・
「ワシは知らん、知らんぞー!!!」
何が何でも答えそうに無い鬼塚。
「そういえば、アンタここら辺から出て来たよな」
そう言ってなにやら壁を調べ始める玲。
「何も無いわい!開けるな!開けたら殺すぞー!」
その玲の行動に騒ぐ鬼塚。
「手伝います。お兄様」
「手伝おう」
鬼塚を捕まえている横島は別として、百合と操も探し始める。
「スイッチ見っけ!」
「わー!!!」
少し調べて玲がスイッチを見つけ、すぐに押すと壁が開いていく。
扉の中には棚にびっしり詰まったノートがある。
「見るなー!やめろー!」
「何?」
喚く鬼塚を無視し、各々にノートを手に取る。
そのノートの題名は”鬼塚畜子愛の詩集第xxx巻”
「何、コレ」
「知らん。ワシは知らんぞー!」
「知らない訳無いだろ。ココにアンタが居たって事は、アンタにとって重要な場所って事だ。もしかしてアンタ、コレを他人に知られるのが怖くて成仏できなかったって訳?え?」
「うあ”あ”あ”あ”」
呆れた玲にイビられた鬼塚は、ついには奇声を上げながら泣き出してしまう。
「夢で出会ったスイートハート。君はいったい誰?うぷぷ、何コレ」
「止めろー!読むなー!」
「鬼塚、アンタ・・・」
「阿呆だな」
「ぐわぁぁぁ・・・ぁぁ・・・・ぁ・・」
百合が読み、玲が話し掛け、操が止めを刺すと言う息の合った三段コンボで消えていく鬼塚。
「最後の拠り所を失って成仏した様だな」
「この程度か・・・」
「「む・・・むごい」」
玲、操は冷静に、百合、横島は同情的に声を放つ。
「しかし、隠し財産がこんなもんとはな…まぁいい、不動産屋に掛け合ってギャラを吊り上げればOKか」
「楽勝だったっすね。それで、俺の入社試験は合格っすか?」
大きく伸びをする玲に、横島が話しかける。
先程の鬼塚退治が横島の入社試験だった筈だ。
「ん~。とりあえずは合格。ただし今回は入社試験だから給料は払わないぞ」
玲らしく合格を告げる。
「判りましたっす」
横島も美神らしいと考えてすぐにOKを出す。
「それと、住居は俺が手配する」
「あ、有難うございます!」
嫌に気前の良い玲の言葉に、動揺しながらもお礼を返す横島。
「給料は家賃を天引きして、月給2万5千円!」
「安すぎっす!」
だが、そのすぐ後に続く美神らしい月給に突っ込む横島。
玲はその横島の肩に手を置くと
「よく考えてみろ!お前は住所不定、本人確認できる免許も無い不審者なんだぞ!そのままじゃアパートも借りれんし、雇ってくれる所が他にあると思うか!?否、無い!」
そう、強く断言する。
実際は金さえ積めば借りられるアパートは有る筈だし、横島の実力ならモグリのGSでもやっていける。
その他土木作業員等の肉体労働も可能で、玲の提示した金額はかなり低い。
「そ、そうですか?」
だが、高校より美神の丁稚一筋で生きてきた横島には金額の酷さ以外では判らずに聞き返してしまう。
「そうだ!」
間髪入れずに答えてくる玲の断言に考え込む横島。
(宿が無いってのは厳しいし、身分証っつ~か戸籍が無いのも痛いよな~。後、美神さんの近くに居た方が戻れる確立も高そうだしな~。でも、学生時代より生活費きつそうだよな~)
「なら2万4千9百円!」
「下がってる!?」
横島が考え始めるのを見た玲は値段を下げる。
玲曰く、相手に正確な知識が無い場合、正確な知識を与えずに正常な判断をさせない…コレが利益を生む交渉の秘訣だ。
「2万4千8百円!」
「ちょっと待ってくださいよ」
「2万4千7百円!」
「ああぁぁぁ」
「2万4千6百円!」
どんどん下がっていく給与。
「2万4千5百円!」
「判りました!その金額で良いです!」
横島はついに根を上げ、その給与を了承する。
「よし、それでは撤収するぞ。忠夫、お前は百合と二人で荷物を持って来い」
横島の返事を聞いた玲がすぐに横島に指示を出し、これで美神玲・横島忠夫・横島百合・横島操の除霊チームの初仕事は終わったのだった。
え~…申し訳有りません。文才無いっすね。
こうして自分で書いてみると、連載を持っている皆様の凄さが判ります。
一週間も時間が有るのに、少ない量で内容薄くて、しかも今回は原作からほとんど持って来ている部分があったり…
まぁ、今回はバレバレだった男の名前と、横島君雇われる&初仕事?です。
まさのりん様、感想有難うございます。
もう少しで横島の給料も一般社会人並みにする所でした。
危ない危ない(^_^:)
もう少しで玲が普通のキャラに成り下がる所でした。
来週はTSおキヌちゃん登場のつもりです。
やっぱコレも原作準拠になっちゃうか?どうかは、TSキャラの動きしだいっすね。
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