彼女と友人のツテで一時修行させてもらっている闘龍寺という寺の本堂で座禅を組み、深く深く己の中に埋没して思索する大男。
彼は本編の主人公。そう、主人公………………はなはだ似合わない気もするが、主人公のタイガー寅吉。
前回、GS試験に失格して、おまけに必殺技の封印までくらってしまった彼は、それに変わるものを得ようと違った方面からのアプローチを試み、ここ数日仏教系の修行を行っていたのだ。
しかし…
これがサッパリ身につかなかった。
今まで呪術師の元、超能力系の修行のみ行ってきたのを、いきなり仏教系に方向転換するのは、やはり無理があったようだ。
何らかのヒントにでもなれば…
わらにもすがる思いで必死に修行していたのだが、いまだ新たな力の糸口すら掴めなかった。
ただ、こうして座禅を組み、静かに己の内面と向き合うことが出来るようになったのは収穫ではあるかもしれない。
人間、時には立ち止まって、考えることも必要なのだから。
そして、タイガーが現在思索している事は――
――固有○界は封印された――
――ならば別の何かを――
――しかし、もう一度ハヌマンと戦うのはシャレでなく死ぬ――
――ならば今ある力の別の使い方を――
――自分の力?それは精神感応以外にはない――
――精神感応……霊波で相手の脳に直接幻覚を見せる技――
――脳の信号は微弱な電気信号――
――ならば……その気になれば電波を受信、発信もできる?――
「………………試してみますカノー」
そしてその結果は――
「○▲×%)(〜^^;!!!」
ありとあらゆるラジオや携帯の電波を一気に拾ってしまい、その圧倒的な情報量が一気に襲い掛かってきたため、脳が壊れそうになって気絶、であった――
南無。
「じゅ、受信はダメっぽいですノー。では発信を試しますカイ」
失敗と挫折の経験の豊富さが、彼にめげない心を与えたらしい。
大失敗にもへこたれずに、実験を続行するタイガー。その結果は――
「いや〜、タイガー。まさかオタクが急にパソコンを使えるようになるなんてね〜」
「はっはっは。まかせてくんシャイ、エミさん!」
電波を一方的に発信する事は可能だった。しかし、それだけではあまり意味は無い。
そこでタイガーは発信能力を少しだけトレーニングし、キーボード不要でパソコンと意識を直結する事を可能としたのだ!
他にも電波を遮る妨害電波も開発し、彼はエミにますます助手として重宝されるようになったのだ。
「いや〜、GS試験にまた落ちた時はクビにしてやろうかとも思ったけど…早まらなくて良かったワケ!」
「エミさん、そりゃ〜ないですジャ………………ってGS試験!?」
しまった。このワザ、戦闘に使えねぇ。
いつの間にか、新技を開発する事だけに必死になっていた彼は、ようやくその事に気付いて愕然とした。
タイガー寅吉。彼が次のGS試験までに、戦闘に使える技を生み出せたかどうか――
それは定かではない。
<完>
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