「くっ…どこです!?姿を見せなさい!」
「ワッシも幻術使いの端くれですケエノー。それは出来ない相談ですジャー」
自らが生み出した固有○界『張子の虎』の中、小竜姫を幻覚で惑わしつつタイガーは落ち着いた声でそう言った。
「く…」
「おっと、闇雲に攻撃しようとしても無駄ですジャ。それにいくら精神を集中しても、絶対に見切れませんケー!」
再び断言するタイガー。これまで彼の声には存在しなかった、自信という物が溢れている。
その声の方向に小竜姫が攻撃するが、その声も幻覚だったのか、彼女の神剣は空を切る。
「何故です!?人間の精神感応では私を惑わすことは不可能なハズ…!」
タイガーの声とは逆に、小竜姫の声には焦りが滲んでいた。
それもそうだろう。自分の見ているもの、感じているもの全てが欺かれているのだ。いつ攻撃をくらうか解らず、霊力の差からありえないとは思っていても、生殺与奪さえも握られているような気がして不安なのだ。
そしてそんな小竜姫の隙をうかがいつつ、隙を作り出すためかタネ明しをしてみせるタイガー。
「ふ……コイツは精神感応ジャーありませんケェ…これこそが老師の修行で目覚めた、ワッシの新しい能力、固有○界ジャー!!」
「そんな!?固有…キャッ!?」
そして計算どおり、一瞬驚いた小竜姫の背後からタイガーは攻撃を仕掛けた。
「霊力消費が激しいんで、長持ちはしませんがノー。ま、このくらいが精一杯ですケン」
小竜姫に一撃を入れ、自分の修行の成果を確かめるとともに小竜姫への報告とする。
タイガーは当初狙ったとおりの目的を達成して、この試合を終わらせようとした。
「………………さ、さいごに聞かせてください………………」
「ん?なんですかノー?というか、辛そうジャが、ヘンなところにでも当たってシモーたデスかー!?」
そして息も絶え絶えの小竜姫様の言うことにゃ。
「ええ、ちょっと逆鱗に。それより……」
「げげげ、逆鱗っ!?そ、それってもしかしてっ…!」
「ふふふ…もうしばらく安静にしていれば押さえられます。しかし、もし私の質問の結果、ふざけた答えが返ってきたりしたら…!!」
苦しみながらも、笑顔を浮かべて何かを握り潰すかのように、右手をタイガーに向けて握り締める小竜姫様。
「わわ、解りましたケン!何でも聞いてツカーさいっ!!」
「うふ…では聞きますよ…どうして…」
「どうして、私に見せた幻覚が落語の寄席の風景だったのですか?」
「だって、ワッシらはタイガー&ドラゴンですからノー」
プチッ
「お後が宜しいようで」
ANGYAAAAAAAAA!!!
その日――妙神山が再び壊滅しかけた事は言うまでも無い――
<完>
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