「じゃ、俺の答えは保留にしといてくれ。 とりあえず今は魔鈴さんの店にいくことにしよう」
横島たちは昼下がりの街を歩き続けた。
パピリオがあの姿から戻った後、俺達は他愛の無い会話をしながら魔鈴さんのお店「魔法料理 魔鈴」へ向かった。
やがて目的地が見えてきて、
「ちわ~っス! 魔鈴さん、いらっしゃいますか~?」
さっき重い会話をしたとは思えないノリでカランカランとドアを開ける。
魔鈴は直ぐに横島に気づき、ドアのところまで出てくる。
「あ、横島さん、いらっしゃいませ………あら? そちらの方は…」
「あ、パピリオ…の事は知ってましたよね。今じゃ…俺の…義妹みたいなヤツです」
「妹さん? 横島さんにご兄妹とかいらっしゃいましたっけ? …あ、そういえば…」
「はは、…そういうことです…」
パピリオはその言葉に何故だか知らないけれど、無性に腹が立った。
そして、気付いたら勝手に言葉が出ていた。
「ルシオラちゃんとよこちまのこと何にも知らないくちぇに! 知ったかぶりするのはやめてくだちゃい!」
「パピリオ…」
「パピリオ…さん」
横島はその言葉にこうまで思ってくれるパピリオを思いながらも、慌てて今の発言を取り消すように窘める。
「パピリオ、魔鈴さんは俺達の事は知ってるんだ。だから今の言葉はひどいんじゃないのか?」
「うっ………そうなんでちか?」
横島の言葉にぐっと詰まるパピリオ。そして、横島が頷くのを確認すると…
「ゴメンナサイ…」
素直に頭を下げた。
魔鈴も、ここまでされて怒る気にもなれず、「構いませんよ」といった風に首を横に振り、
「じゃあ、一応自己紹介してくれるかな?」
と、未だに自己紹介して無いパピリオを促す。
「パピリオっていいまちゅ。よろしくでちゅ、おばちゃん」
「お…おばっ…!」
…言ってはいけない禁断の台詞が出た。
「こらっ! パピリオっ!」
「へへ~んだ、さっきのお返しでちゅよ~」
「す、すいません…あとでいって聞かせますんで」
パピリオの失言を撤回しようと頭を下げる横島は、なんだか父親のような気分になっていた。
(コレが父親の気分なのかなぁ…じゃなくって!)
いまだ用件を言ってない事に気付く横島。
「あの…魔鈴さん」
恐る恐るといった感じに声を掛ける横島。
「はい? あ、そういえば今日はどういったご用件で?」
「えぇ、コイツの提案なんですが、今から1週間後に花見をしようっていう話で、それでメンバーを募ってるところなんです」
「お花見ですか~、いいですね。お料理いっぱい持ってきますね♪ で、場所は何処なんですか?」
「妙神山の修業場って知ってます?神様との接点って言われてる」
「えぇ、一応知ってます」
「そこでやりますんで」
「えっ!? あんなところで!?」
魔鈴が驚くのも無理は無い。横島は何とも思ってないだろうが、普通のGSではそうそうお目にかかれるような場所では無いからだ。
「それじゃ、俺達は行きます。まだこれから回んなきゃいけないんで。魔鈴さんの料理楽しみにしてますよ?」
そういいながら出口へ向かう横島。
「あ、はい。じゃあ…一週間後に」
その言葉を背中に受け、横島とパピリオは次の場所へと向かった。
「次は何処へ行くんでちか?」
パピリオが魔鈴を出たところで尋ねると、
「そーだなぁ…カオスのじーさんとこにでもいくか~」
横島はそういって、パピリオの手をとり、歩き出した。
パピリオは横島のこの行為に一瞬驚いたが、嬉しくなり、横島に思いっきりひっついた。
「こ、こら…ヤメロって…」
言っても止めないパピリオを少し強引に引き剥がし、一路カオスのところへ。
どんどん、どんどん
「お~い、じーさんいるか~?」
あれから程なくしてカオスの住むアパートに到着。
直ぐにドアを叩き、所在を確認すると、
「横島・さん」
ドアが開き、中からマリアが声を掛けてきた。
「よぉ、マリア。じーさんいるか?」
「ドクター・カオスは・今・トイレに・います」
「マッ、マリア!余計な事は言わんでいいから紙をくれ!紙を!」
マリアにカオスの所在を尋ね、その答えと同時にカオスの情けない声が聞こえてくる。
「…何をしてるんだか」
横島にすら呆れられてしまうカオスはある意味末期なのかもしれない。
そんな事を考えていると、トイレから出てきたカオスが手を拭きながら横島に声を掛ける。
「なんじゃ、小僧。ワシに用事か?」
その声に気を取り直し、用件を簡潔に伝える。
「あぁ、今から一週間後、妙神山で花見をやらないかって話でな。で、参加者をこうして募ってるわけだ。」
「なに!? 花見じゃと!? …勿論タダなんじゃろうな?」
「…じーさん、其処まで貧乏だったのか…」
カオスのタダ発言に横島はヨヨヨ…と涙を流しながら肩に手をかけ、同情する。
「えぇい! 其処まで落ちぶれとらんわ! 同情するのをやめい!!」
…もはや、パピリオには話に入ることすれできない。そのため、横にいるマリアと話をしていた。
「…いつもあんなんなんでちか?」
「イエス・ミス・パピリオ」
…どっちもどっちだと思うが
「で、じーさんも参加するんだよな? 勿論ご馳走も出るが」
「勿論参加させてもらおう。1ヶ月ほど食いだめをしたい」
「ドクター・カオス・暴飲暴食は・危険・です」
「はっはっは、マリア、心配するでない! ワシはヨーロッパの魔王、ドクター・カオスじゃぞ!?」
…もう何がなにやら
「イエス、ドクター・カオス」
「…じーさんも参加決定っと」
横島がそう呟いてパピリオの手を握り、
「ほら、次に行くぞ?」
と、パピリオを促す。
パピリオはその言葉に対し、少し引きつった笑みを浮かべて、
「はいでち」
と答えたそうな。
後書き
初めまして。此処では無い某所でしがないSSを書いています、巫女兎(みこと)と申します。
今回此方には初投稿なのですが、其れにもかかわらず、このような企画に入れてくださった皆さんに感謝感謝。
…ほのぼのを目指したはずなのに、何か微妙に雰囲気が重くなったような…そんな気がして仕方がないです。
…やっぱり私はまだまだですね。これからも精進せねば。
これからの順番をコピペします
4話目 裏のFさん 5話目 MAGIふぁさん 6話目 わがち~さん 7話目 infarmさん 8話目 皇月さん 9話目 仙台人さん 10話目 豪さん
という事で、裏のFさん、後はよろしく頼みます
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