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「リレーSS「お花見をしようっ」(第二話)(GS)」

zokuto (2005-04-04 23:36)
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「暖かいなあ、パピリオ」
「そうでちゅねー、こんな日は昼寝したいでちゅ」

 ぽかぽかとお日様が照る昼の街を歩く俺達。 昼過ぎののんびりとした空気が漂っている。
 今日は実に平和だ。 なにせ、悪霊が建物でうごめいていたり、魔族が人間を襲おうとしてないのだから。

「そうだなぁ。 昼寝か……俺もしたいなぁ」

 少し風が冷たいと言えばそうだが、それも気にならないくらいのいい天気。 昔大阪で住んでいた家の縁側で昼寝した記憶がよみがえった。 あの梅は今年も変わらずいい色をして咲いているだろうか? とノスタルジックに少し浸る。

「ねえ、よこちま」

 俺の右手をくいくいと引っ張るパピリオ。

「ん? なんだ、お菓子が欲しいのか? う〜む、今月はピンチだけど、かわいい義妹(未遂)の頼みだ、なんとか工面して奮発してやろう」
「そうじゃないでちゅ。 ちょっと聞きたいことがありまちて」

 俺の右手を更にくいくいと引っ張るパピリオ。 耳打ちをしたい、という合図なんだろう。

「よこちまは、誰か好きな人が居るんでちゅか?」

 ふむ、なるほど。

「いるよ、たくさん」

 俺はなんのためらいもなく言った。 頭によぎるのは数え切れないほどの人。 ほんの身近に居る人から、遠く、記憶に薄れてしまった人。 その中にルシオラが居なかった、と言えばそれは全くの嘘になるが、かつてのそれよりほんの少し小さいような気がした。 そのことに特に深い悲しみを覚えたわけじゃない。 人は死を乗り越えて生きていかなければならないのだから。 他人のそれであろうとも、自分のそれであろうとも。

「そうじゃないでちゅ。 もっと具体的というか、限定的な意味でパピリオは聞いたんでちゅ」
「無意味に色気づいたなぁ、パピリオ。 好きな異性……どーかなぁ」
「迷ったってことはいないんでちゅか?」
「いや、そういうことじゃないと思う。 多分、な」

 どこか遠くで鳥の声が聞こえた。
 あまり車の通らない車道の脇をゆっくりとしたペースで歩く俺達。 多分、何も知らない人が見たら、この奇妙奇天烈な服を着たパピリオをつれた俺は何かの曲芸師のように見えるだろう。 もしくは変態性欲的な趣味を持ち幼い子供をコスプレさせて街を練り歩かせている誘拐魔。 ……警察がやってこないことを祈ろう。 そういえばこんなことが前にあったっけ……たしかパイパーの仕事で。

「はっきりしないでちゅね」
「まあ、な。 はっきりしとかない方が物事が有利に働くんだぞ。 確定条件は増やさない方がいい。 そうすれば後の方に処理するのが楽なんだよ」
「よくわかんないでちゅ」
「よくわからなくていいよ、別に。 お前が大人になって、もし好きな人ができたら俺に知らせるんだぞ。 俺は応援してやるからな、その時まで俺が寿命で死んでなかったらの話だが」

 ようやく車の多い通りに出た。 信号が赤になり、二人で立ち止まる。
 目の前には色んな色をした車が行き交い、人が大勢あっちへこっちへと急いでいる。

「それならもういまちゅ。 っていうかよこちまでちゅ」

 なるほどね。 よくよく考えてみたら、パピリオに一番近しい異性といえば俺か。

「イヤでちゅか?」
「別にイヤじゃないぞ。 パピリオに首ったけにされてるか〜、ハハ。 美神さん達に自慢できるな」
「ふざけないでくだちゃい」

 どすっ

「……ぱ、パピリオ……腹にパンチは止めてくれ。 意識が未知の世界に飛び立ちそうになっちまったぞ」
「わたちは本気なんでちゅよ! それをふざけて……もうプンプン」

 パピリオの頭をぽんぽんと叩いてやる。 何をそんなにムキになっているんだろ?

「やめてくだちゃい!」

 パピリオが俺の手を思いっきりはじいた。 俺の手が引っこ抜けてしまったかのような激痛が走る。
 うむむ、やはり人間の俺には強すぎる力を持ってるな、この蝶娘は。

「わたちはよこちまのことを本気で好きなんでちゅ。 女の子の気持ちにふざけて応えるなら、いくらよこちまでも千切ってポイするでちゅよ!」
「そ、そんなに怒るなよ。 目が怖いぞ……」

 鋭い、本気で怒っている目つきだった。 俺の目をまっすぐに、突き刺さるような視線を飛ばす。 気が弱い俺は黙って財布を差し出してしまいそうになってしまった。 
 パピリオの瞳には俺の顔だけが写っている。 その瞳の中の俺に一瞬だけ、昔の女がだぶってみえたような気がした。

「で、どうなんでちゅか? わたちと結婚してくれまちゅか?」
「け、結婚とはまた飛躍した話に……」

 目がマジだったときにはどう答えればいいんだろうか。
 パピリオの性格上、NOと言えば言っただけで千切ってポイくらい平気でされそうだ。 いやはや。

「いいぞ。 身長が百六十センチ以上になって、自他共に認めるナイスバディーになったらな」

 俺のとったのは苦肉の策だった。 まあ、大抵の子供であればこのくらいの条件付けすれば……。

「ほんとでちゅか? じゃ、幻術を使えば……」
「へ?」

 どこからともなく一匹の蝶がひらひらと飛んできて、パピリオの指先に止まる。 少しの時間、羽を開いたり閉じたりしている。 どこからその蝶はやってきたのだろうか、過密化が進んでいるここいら一体に草むら等は一切ない。 珍しいと言えば珍しい。 と言っても、どうせパピリオが呼び寄せたんだろうけど。


 ガタンガタンガタンガタン


 電車がポール越しに走り抜け、かすかな風圧を体がうける。 いきなりだったもんだから一瞬体を身じろかせ、目を高速で動く物体にあわせた。 青とオレンジ色が何度も交差し、一瞬、一つの窓に客が乗っているのが見えた。 その窓にはたしか昔親しかった人の顔を見たような……。

「あ……」
「どうでちゅか? 体のパーツは同種で形だけを大きくしまちた。 顔はフレキシブルに変形できるでちゅよ」

 再び顔を横に向けると、今まで見下ろしてした女の子が、今度は俺を見下ろしていた。 身長は俺よりも高く、ほっそりとしているわりには胸が特筆すべきほど大きい。 そして顔は見知った顔を少し縦に引き延ばしたような感じ。 声も子供特有の高い音から脱し、落ち着いた大人の声に変わっていた。
 ……流石にこう来るとは思わなかった。 さて、どうしようか。

「妙神山ででちゅねー。 現実と非現実、えーと、あと、空間と亜空間と時間と時空間の魔術的制御の仕方とその応用学とかいうのを習ったんでちゅ。 それを更に応用とアレンジを加えてこんなんなりまちた」
「は、はぁ……? さっぱりわからん」
「で? わたちは本気でちゅよ。 よこちま、これでわたちと……」

 身長が百六十センチ以上どころか、百七十センチから百八十センチぐらいの体になったパピリオが自慢気に言った。
 俺はそんなパピリオを見ながら、うろたえ、呆然としていた。 何を言っているのかちんぷんかんぷんだというのもあったが、正直、胸がときめくような感覚がよぎったのだ。
 相手はちっちゃい子供だったというのに、それに……外見はともかく、今でも中身は……。

「これでいいんでちゅよね。 よこちま。 でもいきなり答えなんて出せないでちゅよね。 わたちだって今ヨコチマがとまどっていることくらいわかるでちゅ。 そしてイエスって簡単に答えられないことも。 何もわたちの体をいじったからそういうことがわかったんじゃないでちゅ。 小さかったわたちの胸にも、これはずっと存在していた気持ちなんでちゅよ」
「……」
「わたちがしたかったのは……これから、未来。 わたちがよこちまの横に立っている、っていう未来にアプローチするためでもありまちたし……横島には私が大人になることなんてもう造作もないことだってことを知って欲しかったの」

 とりあえずどう答えようか、と俺は考えた。
 さっきから冗談かと思っていたら、実は目が本気、勿論言っていることも大マジ。 どこまで意味を知っていて言っているのかも大体わかった。 彼女は決して無知じゃない。 そして何物にも染まっていない無垢でもない。 本気で女の子をしている女性だということも……わかった。
 ニブチンだの朴念仁だのとよく言われる俺だって、ここまではっきり言われたのならば誤解、曲解はしようがない。


 長い時間をかけ、ゆっくりと踏切のポールがあがる。

 俺は黙って、すっかり背が高くなってしまったパピリオの手を握り、真昼の太陽が照る街を歩くことにした。 花見の季節にはまだ早い、けど、春はもうすでに来ているようだ。 それも、俺にではなく、パピリオに……。

「ただ一言言いたいことは……」

 歩幅が変わり、歩くスピードが大きく変化したパピリオがふと立ち止まった。 俺は振り向かず、そのままその場に止まった。 白く、長くなったパピリオの手と俺の手は、互いに結びつけられていた。

「私はルシオラちゃんと同い年ですから。 精神年齢も、そして……今では肉体年齢も」

 パピリオの言葉が胸に突き刺さる。 いや、俺の胸が自虐したのだろう。 パピリオは何も悪いことは言っていないし、悪いことはしていない。 昔の呪縛から抜け出せていない俺が悪いのだ。
 そんなことはわかっている。 わかっているけれどもどうしようもない。 心のどこかで現実を直視せず、過去に溺れる日々。 そんな俺は……。

「ひとつ、聞いていいか?」
「何?」

 俺の目の前のパピリオは、俺の中に存在していたパピリオとは違ったパピリオだった。 それはもう百八十度違うと言っても過言ではない。 ……第一に美人だし、胸もおっきい。

「花見っていうのは口実か? 俺を呼ぶための」

 所詮は時間稼ぎの質問だった。 時間を稼いだからと言ってどうにでもなるわけじゃないというのに……。

「さあね。 こういうことはわからないままにしといたほうが……よくない?」

 もう「でちゅ」口調もなくなっていた。 俺のパピリオではないパピリオ。

「じゃ、俺の答えは保留にしといてくれ。 とりあえず今は魔鈴さんの店にいくことにしよう」

 

 俺たちは昼下がりの街を歩き続けた。

 

 

 

    後書き

 まずはじめに……色々とごめんなさい。
 zokutoがルーズなせいで、IRCチャットで『期間は一週間』というのをオーバーしてしまいました。 切腹!
 いや、もうなんというか、書いている最中にゲームにはまったり、自分の納得いかないものを書きすぎてしまった等々言い訳は多くあるのですが、いやはや。

 でまあ、謝るのはここまでにしまして。
 次の人は巫女兎さんです。 IRCでは最近あんまり見なくなってしまいましたが、大丈夫でしょうか(遅れたお前が言うな)

 一応、その後の順番もコピーペーストしておきますね。

 3話目 巫女兎さん  4話目 裏のFさん  5話目 MAGIふぁさん  6話目 わがち〜さん  7話目 infarmさん  8話目 皇月さん  9話目 仙台人さん 10話目 豪さん

 では、次回もみんなで期待しましょう(笑)

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