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「日々強く在れ・3(GS)」

ねずみ男 (2005-04-11 06:46/2005-04-13 06:54)
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野良猫のようなものだ。よく見かけると思えば、急に姿を見なくなる。

横島は伊達雪之丞を探していた。対戦相手が欲しかったのだ。

アシュタロスの記憶から掘り出したものを自身の体で体現する。これを数度繰り返し、自分は力を身につけたと信じているが、試す機会がない。

こんな事を頼んで、喜んで引き受けてくれるようなアホは雪乃丞くらいなものなのだが、どこを探しても見つからない。まぁ探して見つかる奴ではないのだが…

(しかたない妙神山しかないかな。はぁー、当分行くつもりはなかったんだが…)

それにまぁパピリオにも会えるしいいか、と思い直す。

日曜には合コンが待っている。行くなら早めに出た方がいいだろうと、リュックに荷物を詰めはじめた。

合コンの日取りに合わせて妙神山行きを決めるような修業者は横島忠夫をおいて他には絶対いないだろう。


 ◆

『やめて下さい奥様!』

ばりぃーん
『おーっほほほっ!いい様ね泥棒猫女!あんたはそうやってるのがお似合いよ!っ』

「うっわイタそ」

テレビ画面の中の偉そうな奥様が下働きのメイドに花瓶を投げ付け高らかに笑っている。それを熱心に観ている妖怪狐女。

そのシーンが終わるとそのドラマ【私と死んで】は次回予告に入り終わってしまった。するとタイミング良く…

「タマモちゃんお茶にしましょーう?」

階下からおキヌの声だ。「うーんすぐ行くわ」とタマモは返事を返すと、軽いおしりを「よいしょっ」と上げると軽快に階段を降りていった。

応接間では令子がマホガニーの机でおキヌの入れた紅茶を片手に書類と睨めっこしている。タマモはソファーでシュークリームをパクつきながら先程のドラマの内容を自分の論点も交えながらおキヌに解説している。

「それでね?旦那の方が家のメイドに無理矢理モニョモニョしちゃうのよ!それを知った奥様が――」

「えーっ!でも奥様の方も浮き輪してなかった?」

「いや浮気でしょ?それに奥様がモニョモニョしちゃったのは自分の義理の兄で――」

熱心に話すタマモ、「ふんふん」とやはり熱心に聞き入るおキヌ。

令子はなんとなく耳に入ってきた会話を聞きながら「ちゃんと解ってて観てんのかしら」と大きな汗をかいた。

「でもさ、あれ観てて思ったんだけど…なんかこの事務所と似てると思わない?」

ふとタマモが爆弾を投げる。

「へ?タマモちゃん?」

意味が解らないおキヌ、令子も話を聞いていたがよく解らない。

「だから〜ミカミが奥様でメイドがおキヌで」

ふと、間が空く…


…美神が気付いて机を叩きながら怒鳴る。

「ちょっとっ!!なんで私が横島くんの妻なのよっ!!って義理の兄? げっ」

…それを聞いておキヌが気付く。

「ってことは私は横島さんに無理矢理…きゃーっでもでも、正妻が美神さんて事は私とは…遊びってことですかぁー!?そんなぁ…」

怒鳴りちらす令子と恥ずかしがりだしたかと思えば泣きだすおキヌ。

その後、事態はなかなか収集つかなかった。

タマモは横島の名前など一言もだしていないのだが、ふしぎな話である。


事態が収まりしばらく時間が経ってから、タマモはふとバカ犬は何をしているのだろう?と相方を探す。

見つけた、部屋の隅の方…

よっぽど暇なのだろう。狼の姿で、以前横島がシャレで買ってきたホネを前足で掴みガジガジ噛みながら絨毯の上をゴロゴロ転がっている。

(…バカ犬)

そう思ったがシロから目が放せない。しかも体がうずうずしてくる。

(ダメよっ!我慢!)

そう思いスカートの裾をぎゅっとつかむ…だが

「あ〜っ!もうダメえっ!」

いきなりそう叫び、子狐に体を戻すと飛び付くようにシロと一緒にホネを奪い合いゴロゴロ転がりだしてしまった。

しょせんは肉食動物である。

それを横目で見ながら令子とおキヌは…

「可愛いですねぇ」

「そう?ケモノよケモノ」

ケモノですが何か?


 ◆

令子達がそんなことをやっている時、横島はかなり近くに居たりする。事務所の前である。

人工幽霊一号と簡単に挨拶をすませ、皆がいるかどうか確認すると、所内に入って行く。

「ちわーッス三河屋でーす」

そう言い応接間に入ると、令子が「何つまんない事言ってんの」と淋しいツッコミが帰ってきた。

「お久しぶりです美神さん、おキヌちゃん」

横島は久しぶりに見た二人の元気そうな顔に嬉しくなって微笑む。

「え?」「あっ」

令子とおキヌは横島に返事を返そうとするが、彼の裏の全くない爽やかな微笑みにしばし見惚れてしまう。

急いで令子は気を取り直して横島を睨み付けようとするが…

(アレ?いない…)

ふと何かに気付き上を見上げると。横島はいた。

横島忠夫ルパンダイブで高速接近中。爽やかな微笑みをそのままに…

はっきり言って見ててかなり気持ち悪い。

「キモイわーっ!!」

とっさに放つ右ストレートが横島の顔にめり込む。嫌悪感からか、いつもより50%増。

「へぶぅーっ!あぁんせっかく格好よくキメたのにィー!!」

そしていつものタコ殴り。最近は落ち着いて美人にいきなり飛び付きはしなくたった横島だが、これは令子との挨拶だ。やめるつもりなどさらさらない。


「んで…アンタ何しに来たの?もう復帰できんの?」

横島が再生し、一通り皆と会話すると令子は本題に切り替えた。

「すんません、もうちょっと時間貰っていいッスか?これから妙神山に行こうと思ってるんですよ、それから帰ってきてからってことで」

「ふーん妙神山ねぇ、いつ頃帰ってくるつもり?」

「日曜には帰る予定です。あ、で…でもその日は用事あるんでバイトは来週からでお願いします」

「うーん、まぁいいわ。その代わり帰ってきたらガンガン働いて貰うからそのつもりでねっ!」
(ん?今どもった)

横島は「うぃッス」と短く答える。すると令子は思い出したように横島に聞いた。

「アンタ高校辞めたんだって?バカねぇ、どうせ出席足りなかったんでしょう?」

私関係ないわよとばかりなあんまりな言い草に口をあんぐり開けて何も言えない横島。

おキヌ、シロ、タマモもそれはないだろうと呆れ顔。

シーン…

(…うっ)
なんとなく視線が痛い令子。

「シロ、タマモ。誰が一番の原因か解るか?」

横島に急に話を振られる人型に戻ったシロとタマモ。

とばっちりはごめんだとばかりに何度も首を横に振る。

「…ほ、ほら見なさい?全部自業自得よっ!!わかったらさっさと妙神山でも恐れ山でも行ってきてさっさと帰ってきなさい!」

そう言って令子は横島を事務所から蹴り出した。

「あんまりや〜」と嘆く丁稚の声が寂しげに残って消えた。


あとがき

どーもねずみ男です。実は俺、ゆうれいおキヌちゃんが大好きなんですよ。死んでるおキヌちゃんが大好きなんです。「うぇ〜ん」とか「やったねえくぼ♪」とか…アホさが可愛いくて好きなんです。幽霊なのに一生懸命なおキヌちゃんが好きなんです。

何とかこの作品に登場させれないかなぁ〜


こ、殺すか?だめ?

あと今回で登場させると言ったサポート役ですが思うところあって後に回します。すいません。


古人様へ
その一言だけでも確かに読み手が存在するという証で俺の栄養源です。

ジェミナス様へ
横島には合コンちゃんと行ってもらうつもりです。誰が来るのでしょうか

瀾帝様へ
やっぱり横島にはウジウジしてて欲しくありませんよね?どっかの三人目の少年じゃないんだから

ゆうゆう様へ
新鮮だと言ってくれて嬉しいです。原作を壊さない程度に都合の良い横島の人生創作。がんばりたいと思います。

Loops様へ
シロは飼い主一途な犬っぽく、タマモは気紛れな猫っぽく。愛らしく表現できたのなら嬉しいです。

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