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▽レス始

「妖物のお医者さん〜黒き戦士の章〜第1斬(後編)(GS&オリキャラ)」

闇色の騎士 (2005-04-06 07:56/2005-04-06 12:17)
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〜後編〜


「………貴様」
「何かね?無力な者よ…」


グシャァッ!!


「がはっ!?」
アシュタロスには何が起こったか解らなかった。

それは一瞬の出来事。

そう…

ヒュウガに殴り飛ばされたのだと気付くまで、更に数秒の時間を要した。

「ほう……まだそんな力を残していたか」
口元の血を拭いながら立ち上がる魔神。

「……黙れ…アシュタロス…!」
ヒュウガは魔神を睨みつけた、ただ、それだけである。

だが、アシュタロスは生まれて初めて味わう感覚に戸惑い始めていた。

すなわち、「死を目前とした恐怖」に…

「何だ?この感覚は……恐い?私が?恐れているのか?この人間を……!?」

(こんな筈は無い、私が滅びを恐れるなどと言うことなど…ありえん!)


その時!


ズドゥゥゥン!×無数


アシュタロスの背後の城のあちこちが大爆発を起こし始めた!

「何だと!?」
魔神は狼狽した表情で振り向く。

そこをすかさず一閃が襲う!

「天空覇王!閃空断!!」

「むぉ!?」
慌ててかわそうとする魔神だが…

ドシュッ!!

「ぐぁ!?」
アシュタロスの左腕が落ちる。

ぼとぼとと滴る紫の血。

「く…ハハハッ!待っていたぞ!この時を!!」
激痛に顔をしかめつつも、嬉しそうに叫ぶ魔神。

(そう、あの黄金の力だ!あれが私を…)

「魔神よ、”平衡の守護者”がいない訳を考えたか?」
「…何かを企んでいるとは思っていたが、まさか我が城に潜入して破壊工作をしていたとはな」
苦笑いを浮かべるアシュタロス。

「だが、あそこには番人がいる…「風の魔王」がな」
「何だと?」
ヒュウガが聞き返す。

「魔王パズス…我が盟友にして最大の実力者だ」
「貴様…そんな大物まで引きずり込んでいるとは…」
「フフフ…そう簡単にやられるタマでは…」
アシュタロスが言いかけた時。

ズドゥン!

凄まじい爆発音!

それと同時に城の壁が豪快に砕け散り、巨大な褐色の異形がぶち飛ばされて来る!

「!?」
その、殆ど原型を留めていない姿は…

「まさか…そんな筈は!?」
流石の魔神の顔にも驚きが浮かぶ。

そう、番人である魔王だった。

その壁の向こうから誰かが歩み出てくる。

「…麟」
「待たせたな」
相変わらずの感情の篭らぬ声。

”平衡の守護者”だった。

呆れたことに、ダメージを負っている様子は無い。


戦う前に、彼らは二手に別れた。

”平衡の守護者”は城でやる事があるらしい為、ヒュウガとミュウがアシュタロスに当ったのだ。


「…!」

ボボボボボンッ!!

「ぐぎぇぇぇ!?」

ズドゥゥゥン!

無数の火球を全身に受けて、爆発する名も無き上級魔族。

「邪魔だ」

淡々とと守護する魔族を砕き散らしながら、彼は奇妙な部屋に辿り着いた。

「む」

そこは薄暗く広い部屋で、三つの巨大なガラスの筒が並んでおり…

中に透明な液体が満たされ、胎児の様なモノが入っている。

「…新たなる魔族を生み出している最中か?しかし、変わった機械を使う…」

地上の妖物を生み出す技術とアシュタロスの能力を合わせて製作された、魔族製造プラントとも呼ぶべきもの。

それがこれだった。

”平衡の守護者”は、そっと筒の一つに手を付く。

どしゅぅぅん!

浮かぶヴィジョン。


動物を癒す心優しき少女。

荒々しく鉄馬を駆る正義感の強い女性。

我侭だが、憎めない性格をした式神使いの少女。

彼女らが紡ぎだしていく運命が彼に見えた。


「…これも運命か」

彼はゆっくりと右手を差し上げた。

「魔族として生まれし娘達、今一度無に還り…時を越え…次元を越え…因果律すら超え人として…転生せよ!」

バシュシュッ!

その手から三条の光が放たれたかと思うと…

筒の中の存在を貫いた。

ゆっくりと消えていく胎児の様な存在。


「後は…」
ゆっくりと彼が振り向く。

そこに立つのは砂塵を纏う風の魔王。

「こんな所までネズミが入り込むとはなぁ」
獅子にも似た顔がニヤリと笑う。

ばさりと広げられた翼。

「…失せろ、貴様の相手をしているほど私は暇では無い」
興味無さそうに言いながら歩き出す”平衡の守護者”

「言うわ、この溝鼠めが!!」
怒れる魔王が腕を一振りすると…

たちまち死を運ぶ突風が巻き起こり、彼を襲う。

「消えろ、とっとと!」

だが。

「愚かな」

バシィィン!

風は、”平衡の守護者”の右手一本でかき消された。

「馬鹿な!?一体コイツは…」
さっきの攻撃は魔王の得意技であったのだが、それを苦も無く破る者。

そんな奴がそうそう居るはずが無い。

「慌てるな、見物はこれからだ」

パチン!

彼は軽やかに指を鳴らす。


同時に。


ズドゥゥゥゥゥン!×無数


あちこちで爆発が起こった!

「ぐぁ!?貴様何をした!!」
狼狽する風の魔王。

「爆破工作だが何か?」
「何だとぉ!?」

そう、敵を粉砕しながら彼はあるモノをあちこちに置いて来た。

自分の念から作り出した、いわばサイコボムを。

同時爆砕の威力、推して知るべし。

ビュィン!

さっきまで茶色だった”平衡の守護者”の瞳が、澄んだブルーに変わる。

「無謀にして思慮無き者に、最後の慈悲を与える」

それは死刑執行の合図。

連鎖爆発で鳴動する城の中…


「!?」


風の魔王が最後に見たのは、彼の周囲から放たれる無数の光のミサイルだった。


すでに動かない魔王の骸を見た魔神の表情は堅い。

どうやら”平衡の守護者”の実力をあまりにも甘く見すぎていたらしい。

それとも、魔王が不甲斐無さ過ぎたのか?

何にせよ、魔神は一転して窮地に追い込まれた。

何故なら。


「…………………!!!」
ヒュウガの体からとてつもない量の霊気、いや理力が立ち昇っているからだ。

そう、全ての「魔」を払う天魔伏滅の力を持った黄金の”理力”が…

「魔神よ、封印は解除された」
”平衡の守護者”もゆっくりと額を覆う布を取り去る。

そこにはぽっかりと穴が開いていた。

白い光が渦巻く虚空の如き「穴」が。

彼がもたらすのは完全なる虚無。


その光景を他人事の様に見ながら、アシュタロスの口元に笑みが浮かぶ。


”これで……終わるのか?抜け出せるのか?”魂の牢獄”を…”


「アシュタロス!全ての怒り!悲しみ!それを全てその身に受け……消えて無くなれ!!この世界からッ!!!」

ヒュウガは全ての”気”を剣に集中させる!


「お前の罪は全て精算される、さらばだ」

”平衡の守護者”の額の穴からは、今や何もかもを”消しさる”絶対の「白い闇」が光の様に輝いていた!

「フッ…ハハハハハッ!やれ!やってみせろ!」
狂った様に笑い続ける魔神。


「私をォォォォォォッ!滅ぼしてみろォォォォォッ!!」


「天空覇王剣!最終秘奥義!!天地雷命!!!霊煌激弾!!!!!」


突き出されたヒュウガの剣から、確実な”死と滅び”を生み出す破滅的な黄金の「気の竜巻」が発生し…

それが壮絶な勢いで、弾丸の如く魔神に襲いかかった!!


ざすっ!


「が………は……」
アシュタロスは自らの体に大穴が開いている事に気付いた。

そう…魔神が察知できぬ程の超高速で必殺の一撃が貫通したのだ!

間髪入れず、”平衡の守護者”最後の審判がアシュタロスに下される。


それは、絶対の”滅び”


「サイオニック…バスター」

瞬間!

額の虚ろなる「穴」から白い闇が猛吹雪と化して発射され、それこそ雪崩の様に情け容赦無く魔神を飲み込んで行く。


”……消える…全てが…これで……滅べる…”

白い闇の中、魔神の体がボロボロと崩れ去り…消える。

消滅する瞬間のアシュタロスの顔は、安らかであった。


サイオニック・バスター

”平衡の守護者”最大最強の必殺技。

その白い虚無の吹雪に飲み込まれた者は二度と再生輪廻復活が出来ぬと言う。

一度発動すれば、敵は絶対に生き残ることが出来ない…文字通りの必殺技。

また、それの性質を弱いながらも持つのがヒュウガの最大秘奥義である。

だが、当然ながらこの様な強力な技にはリミッター(封印)が装備されており…

しかも1000年の刻の中で使用可能なのは、たった3回しかない。

最も、この技を発動する様な事態は滅多に起こらないのだが。


魔神はこうして完全に滅び去ったが……

その最後の呟きが、二人の耳からしばらくは離れなかった。


「結局……俺は何も護れはしなかった…」
ヒュウガは端正な顔に苦渋の色を浮かべて独白する。


後に明かされたアシュタロスの計画。

常に”悪”を演じ、死んでも同じような存在として甦り、秩序ある対立を永遠に続ける存在。

ある時彼はそれを苦痛に感じ始めた。

この忌々しい「魂の牢獄」から逃れる為に、二重の作戦を立てたのだ。

一つは、表向きの作戦である「神族との勢力比逆転」

早い話が「神族の勢力を削減する事による魔族の正当存在性」の確立である。

今まで悪とされてきた魔族が、日の当る場所に出るという大義名分で沢山の魔族を動かす事に成功。

裏で密かに真の作戦「魂の牢獄脱出計画」を進行させていたのだ。

だが、全てを消去する力を持つ”平衡の守護者”は未知数すぎて手出しするのは不適当。

だとすれば、遥か昔にたった一度だけそれに似た力を発揮した人類最強最後の魔討一族「騎士王」


人類の切り札は、アシュタロスにとっても最後の希望だったのだ。


「……」
この事実は、神魔の最高指導者と”平衡の守護者”

そして騎士王ヒュウガのみが知っている。

滅びたい。

その狂おしい程の願いが生み出した哀しい事件。

それによって全て失い、魔族に対しての復讐鬼と化した彼を救ってくれたのは…

「ミュウ」と呼ばれたデタント派魔族の術者だった。

彼女がワルキューレによって地上に派遣されてくる事を知った彼は、いい気分では無かった。

全てを奪った魔族、彼にとって所詮ワルキューレとてその一人に過ぎない。

それが”魔神討伐”の戦力としてヒュウガ達の所に来る。


だが。


待ち合わせの「隠れ家」に入ったヒュウガが見たのは…

「はふはふ…ずるずる…はふはふ…」
と何故かカップラーメンを美味しそうに食べている、蒼いチャイナ風ローブの美少女だった。

亜麻色のさらさらロングヘアに、蒼い目。

「……」
無表情で茫然と立つヒュウガ。

(何だコイツは??)

耳がピンと尖っている以外は、人間に見える。

間違いなく魔族であろうが、彼女はあまりにも人間臭すぎた。

なんとなく静かに混乱していくヒュウガであった。

「あれ?ああごめんなさいついついお腹が空いて…」
彼女は彼に気付き、わたわたと慌てながらもカップをテーブルに置く。

その横にコンビニの袋があり、まだ沢山のカップめんが入っているらしい。

コンロには、しゅんしゅんと湯気を立てるヤカン。

「あああ!見ないで下さい〜!地上の食べ物が美味しいと聞いてつい〜」
顔を真っ赤にしながら袋を後ろに隠す彼女。

「…コイツ本当に魔族か?」

彼の魔族に対するイメージが木っ端微塵に砕けた瞬間だった。

「えっと…魔界軍少尉、ミュウ・アルカディアであります!魔神討伐派遣部隊員として着任致しました〜!」
ウインクしながらびしっと敬礼を決めるミュウ。

威厳は全く無い。

特に左手に持ったままの割り箸が全てを台無しにしている。

「………」

ひゅぅぅぅぅ…

狭い「隠れ家」に何故か吹く木枯らし。

これが出会いだった。


初めて敵と相対した時も。


「はい、ここは私にお任せアレ♪」
彼女はどこからともかく短いバトン状の杖を取り出す。

「……」
なんとなく任せてしまうヒュウガ。

(仕方ない、お手並み拝見と行こうか)

「ぐるるるるぅぅ…」
立ち塞がるは、異形。

上級魔族並みの力を発している獣。

恐らくは人造魔族。

「量産型フェンリル」と反デタント派が呼んでいるモノだと思われる。

「ごぁぁぁ!!」
獣が口を開き放つは冷気。

いや、極寒のブレス。

まるで竜巻の様に渦巻きながらミュウを襲う。

だが。

「ライ・シール!」
響く可憐な声。

バシュン!

出現する、雷で構成された巨大な円形の盾。

ばしゅぅぅう…

その前にあっけなく霧散する凍気。

「ぐる!?」
明らかに動揺する獣。

「残念賞でした!では、反撃です♪」
くるるんと杖を回しながら、ぴたりとその先を獣に向ける。

「そぉれ!ライ・ヴォル・ブラス!!

瞬間。


ドババババババババババババババッ!!


杖の先から極太の稲妻がブチ放たれ、まともに獣に直撃する。

「グギエェェ!?」
凄まじい衝撃が獣の全身を駆け巡ったかと思うと…

大爆発を起こして消え去った。


「はい、おしまい♪」
ミュウはくるんと回って笑う。


「……やるな」
ヒュウガはそう呟くしか無かった。

「あのあの…」
「ぬ?」
「えっと…お腹が空いたのです…”たこ焼き”というモノが食べたいのですが、何処に売ってますかぁ?」

「……少なくとも、こんな山奥には無いな」
真面目に答えてしまうヒュウガ。

(食い気しかないのか?この女は?)

そこはかとない頭痛を覚えつつ。

兎にも角にも。

はっきり言ってヒュウガの考える「魔族」とは、百万光年もかけ離れた存在である彼女。

彼の復讐心の方向を正し、修正していくのにそう時間はかからなかった。

ワルキューレはここまで計算して彼女を送り込んだであろうか?

だとすれば、間違い無く英断である。


「うーん、人間にも悪い人といい人がいますよね?魔族もそうなんですよ?」
杖をやっぱりクルクル回しながら彼女が力説した。

「ちょっと元気が良すぎる方たちが多くはありますけどね」

神魔は秩序ある対立、すなわち”平衡”を保ちながら存在している。

小競り合いに参加するのは強くても上級魔族までで、数も厳しく制限されていた。

無論、神魔の小競り合いであって人間を巻き込まぬという条件付だ。

それを易々と破ったのがアシュタロスだったのである。

最も、地上には封印されてたり潜伏していたりする魔族も存在するのだが…

そういう存在はGSに狩られたり、ガーディアンズ(ヒュウガ達の事)に倒されたりしている。

「今は実感出来ないかも知れないけど、何時か必ず解る時が来ますよ♪」
ミュウはそう言ってにぱっと笑った。


優秀な雷系攻撃魔法の使い手であり、魔界軍将校ワルキューレが一番信頼していた部下でもあった彼女も…もういない。


その屈託の無い笑顔も、もう二度と見る事は出来ないのだ。


恋愛感情とかは無かったであろう、少なくとも彼には。

敢えて言うなら「戦友」。

これが一番正しいと思われる。

だが、大切な戦友を失った悲しみは…恋人を失った悲しみに劣る事は無い。


「所詮血塗られた人生か…ロクな死に方をせんだろうな、俺も」
夜の闇の中、彼は一人佇んでいた。

手に握られているのは、あの髪飾り。

彼女が彼に遺したたった一つの”形見”

最後の最後まで自分に託された信頼。

(いつか…俺が死んだらお前や家族に逢えるのだろうか?)

次々と、心に甦っては消えていく思い出。

それを心の中に大切にしまい込んで、彼は往く。

果てしない戦いの荒野を。


(お前が教えてくれたもの、優しさや温かみ…俺は絶対に忘れない)


現在彼は、放浪の身であり…横島を助けた時彼が居たのも「隠れ家」の一つである。

あれから4年…

ヒュウガは未だ止む事のない反デタント派の生き残りによる「報復」と戦う為に、あえて独りとなり日本を流離っていた。

「騎士王」最後の生き残りとして、六道家とオカG及び警察が総力を挙げての捜索活動…

その存在すら知らぬまま。


蜂神涼女は今日も「峠」に向かっていた。

”黒騎士”にぶっちぎられてからもう一週間か経過している。

彼女はあれからこまめに「峠」に通っているが、あれきり奴は姿を現さない。

「今日も空振りだろうねぇ……」
涼女は諦めモードでハヤブサを飛ばしている。

この行動が彼女の運命を180度変える事になろうとは、彼女自身まだ知る由もなかった。


〜本編第10話に続く〜


うう…異様にレスが少ない><

やはり分けるべきでは無かったかなと反省…;;


次は本編に戻ります。


前回のレス返しです。


ATK51様>
後編はかなり補足箇所があります、というか一人大化けした人物が(汗)
…あまりにも惜しい人を亡くしてしまった…←殺したのはお前だ


煌鬼様>
基本的に魔族との戦いは彼らが担当していく様になります、本編と連動している話やら横島クンの”修行”のエピソードとか盛りだくさんでもありますのでお楽しみに。


それでは日曜日の本編でお逢いしましょ〜でわでわ〜〜

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