最初に…この章は本編を楽しむ為の話であります。
当然ながら横島クンとかも登場しますので、どうかお見逃しの無い様にお願い致します〜
まあ、オリキャラが駄目だというひとは…仕方ないですが(泣)
それでは、生まれ変わった外伝改め「黒き戦士の章」
お楽しみ下さい。
〜第1斬(前編)〜
荒涼たる魔界の大地。
破壊の後が辺りを埋め尽くし、魔族のものと思われる死体があちらこちらにゴロゴロしている。
アシュタロス戦役…それは最強クラスの力を持つ魔神が起こした反乱に対する鎮圧戦の事を指す。
今(本編)から4年ほど前の事である。
魔神自体の行動は、表だった所ではすでに10年前から起こっていた。
大きな事象を一つ挙げるとすれば…日本最強最後と言われた魔討の血族「騎士王」の一族の抹殺がそれだ。
そして…反乱を起こし魔界と地上世界を混乱に陥れた魔神アシュタロスが城の前に立っていた。
禍々しいデザインの居城はあたかも魔神の力を現している様である。
その魔神と相対するのは一人の戦士。
黒い開襟シャツに黒いスラックス、黒のロングコートという全身黒ずくめで長身の青年だった。
その服も見る影もなくぼろぼろになっており、本人もかなりの手傷を負って居る様だ。
その手に握られている物は一振りの長刀……
持ち主の、闘志の衰えぬ瞳と同じ様に全く輝きを失ってはいない。
彼は地上から来た存在にして、神魔混合アシュタロス討伐隊最後の二人のウチの一人である。
沢山の犠牲を払い、その元凶をここまで追い詰めたのだが…
魔神は右手を高々と差し上げていた。
その先…魔神の頭上には、蒼いチャイナドレス風ローブの服の美少女が捕らえられている。
無論魔神の見えない”力”でだ。
「……その程度か…黒き死の戦士よ!平衡の守護者無しではこの程度か?」
アシュタロスが吠えた。
そう、彼は一人で魔神と対峙していた。
相棒とも言える”平衡の守護者”は別の役目を果たすためにある場所に居る。
「アシュタロス…………殺す!」
黒き死の戦士と呼ばれた青年は、杖代わりにしていた長刀を構え直す!
「殺すだと?それは貴様が私を倒せるだけの力があれば可能であろうがな…現実はそうではない!」
「あ……あぁ…あ…」
頭上の少女が呻き声を上げる。
彼女を捕らえた結界らしきものが、ぎりぎりと彼女自身を締め上げているのだ。
「やめろ!!」
青年の絶叫が走る。
(同じなのか、あの日と…)
10年前のあの日…
深夜、騎士王家。
その敷地内に次々と侵入する魔族ども。
「ふ、脆いな…私の手に掛かればこの様な結界など無いも同然」
陣頭に立つのはアシュタロスその人。
配下の精鋭どもは皆魔力ステルスマントをすっぽりと被っている。
この道具は、魔力を消費するが…魔族の気配を断ってくれる便利な代物だ。
「我が精鋭たちよ、思う存分殺戮の宴を味わうが良い!ただし…子供は生かしておけ」
「は!」
「では…私に続け!」
血気に逸ったアシュタロス一党は次々と屋敷内に突入した。
「ひゃはは!死ねぇ人間!!」
「!?」
ばしゅっ!
近くの廊下を歩いていた若いメイドの首が、先頭の魔族に斬り飛ばされた!
こうして…日本GS界を震撼させる事件が幕を開けたのである。
黒き剣士はまだ無力な子供であり、屋敷の一番奥に居た。
「ここを動くんじゃないぞ!」
「私達が必ず…貴方を護る!」
そう言って強力な戦士である父と、類稀なる魔法使いであった母は部屋を出て行く。
そして、奥の部屋で座り込んでいる彼にとって…恐怖の時間が始まった。
あちこちから聞こえる恐怖の、そして死に際の叫び。
屋敷のあちこちで容赦の無い殺戮が続いているのだ。
その合間に感じる両親の霊気。
激しく何かと戦っている様子であるが…
ズドォォォン!
凄まじい爆発が屋敷を揺らす、それも何度も…何度も…!
「う…ぅぅ…父さん…母さん…」
修行はしているものの、父母の愛に包まれてすくすくと育った少年には…
この恐怖は厳しかった。
どのくらい時間が経っただろう。
次第に音が沈静化して行き、やがて屋敷は嘘のように静まり返った。
「……」
少年は意を決して立ち上がる。
おぼつかない足取りでドアまで辿り着く。
だが。
ぎぃぃぃぃ…
ドアは向こうから開いた。
ドアの外は暗闇。
何一つ見えない真の闇。
いや、二対の目が光っている。
「!?」
聞こえてくるのは地獄からの呼び声。
「貴様が騎士王の子か」
朗々たる男の声。
「そ…そうだ!」
ありったけの勇気を振り絞って少年は叫ぶ。
「これは手土産だ、受け取れ」
ぶんっ!
”目”の持ち主は、少年の足元に重い何かを放り投げた。
どすん!どすん!!
その丸く大きいモノは、意外に大きな音を立てて落ちる。
そして流れてくる赤い液体。
生気の無い目で彼を見上げているのは…
まさしく、愛する両親の首だった。
「う…ぁ…」
あまりの光景に言葉を失う少年。
「なかなかの使い手であったが、まだまだだ…封印も解けぬわ魂の蓄積も足りぬわで話にならぬ」
溜息を吐く”目”
「予想の範囲内であったから良しとしておく、だから私は貴様に期待しているのだ」
愕然としている少年を気にする様子もなく、”目”は話し続ける。
「両親の仇が討ちたければ、私を殺せる程強くなるがいい…」
ざっと”目”が闇の中で背中を見せる気配がした。
「我が名はアシュタロス、魔神アシュタロスだ…恐怖と共に覚えておけ」
遠ざかる気配。
襲って来る現実、物言わぬ父母。
「う…ああ…あああああああああああああああああ!!!!!」
少年の絶叫が屋敷を震わせた。
何処をどう走ったかは解らない。
気が付けば彼は何処とも知れぬ山の中に居た。
「うぁぁぁあ!ああああああああ!!!!」
ずどぅん!!
怒りの咆哮と共に繰り出された手刀がそばの大木を打ち砕く。
まだ修行中とは言え、騎士王の子。
そのポテンシャルは計り知れない。
「…必ず!殺す!!アシュタロスゥゥゥ!!!」
地の底から響くような呪詛の叫びが静けさを切り裂き飛び散った。
屋敷では…
「う…何だこれは!?」
黒い翼を持つ魔族の女性が顔をしかめた。
「姉上、くまなく探しましたが…生存者は…」
「そうか…」
報告してきたのは、似たような顔つきの魔族の男性。
彼女らは「反逆の魔神」アシュタロスと戦うべく、魔族で結成された極秘特殊部隊のメンバーであった。
女性の名はワルキューレ、戦乙女の異名を持つ強力な魔族である。
特に銃器の扱いに長けている。
男性の名はジーク、北欧神話の英雄と同じ名を持つ魔族にしてワルキューレの弟。
そのワルキューレの足元には二つの死体。
頭の無い男女の。
「これは…」
「奥の部屋で頭を発見しました、恐らく騎士王の当主とその奥方でしょう」
「…クソ!間に合わなかった!!」
どがっ!!
拳を壁に打ち付けるワルキューレ。
最も、間に合ったとしても…流石の彼女ですら「魔神」クラスの魔族には歯が立たない。
しかも…地上界を守護する”平衡の守護者”は現在1000年に一度の「転換の儀」と呼ばれる謎の行動を行うため…
現在地上の何処にいるかも解らない状態である。
「姉上、妙な事があるのですが?」
「どうした?」
「確か騎士王には10歳になる男の子が居た筈なのですが、何処にも見当たりません」
「…まさか奴らに連れ去られたのではあるまいな?」
「そこまでは何とも…」
顔を見合わせる姉弟。
「そろそろGメンが来る頃だ、合流しよう」
「はい」
山奥。
復讐を誓ったモノの、彼には何も無い。
帰る場所も、家族も…
その時。
ジシュィィィン!
突然目の前に誰かが出現した!
「!?」
現れた者、それは…
真っ白いローブの様な、神父などが身につけている服の様な…不思議な感じの服を纏った美青年…
その美貌はこの世のものではありえない存在の証である。
額にはバンダナ風の布が巻かれていた。
良く見ればその表面に、謎の魔法文字がびっしりと書き込まれている事に気付くだろう。
「…嘘だろ?お前…麟か!?」
少年が驚く。
「…私は”平衡の守護者”この世の平衡を護る為に存在する」
彼は感情の篭らない声で言った。
麟。
それは彼の親友だった少年。
幼い時からの友達で、何処に行くにも一緒だった。
だが、その彼も…一年前…
交通事故で家族共々亡くなった。
葬儀は親交のあった騎士王家が執り行った。
両親は普通の人だが、麟には人に見えない者が見える力があったらしい。
同じく見える人である彼とは直ぐに仲良くなったのだ。
その悲劇覚めやらぬウチのこの惨劇。
良く精神が壊れなかったものである。
「ヒュウガよ、麟は死に…そして選ばれた、次なる平衡の守護者に」
「何!?」
”平衡の守護者”が彼の名前を呼んだ。
平衡の守護者なる者の正体ははっきりとは解らない。
だが…千年毎に肉体を交換するらしい。
選ばれるのは、身寄りの無い…ある資質を備えた子供。
取り敢えず、死んでいようが生きていようが問題は無い様だ。
「騎士王最後の子よ、強くなりたいか?」
「…ああ、両親の仇を討つ為に力が欲しい!どんな悲劇でも打ち砕ける力を!!」
「…了解だ、友よ」
ぼそっとこぼされたその一言。
「麟、もしかしてお前は…お前であって、そうでないのだな」
ヒュウガは悟った。
友は”平衡の守護者”となり復活した。
だがその心は…友であり、”平衡の守護者”
「俺は…戦う為!魔族を倒すためだけの修羅となる為に…人である事を捨てる!名前さえもな!!」
ここに、魔族への復讐に燃える一人の修羅が誕生したのである。
そして…長く孤独な戦いが幕を開けたのだ。
「戦士よ…貴様からは色々奪った…それこそ希望という希望、拠り所という拠り所を根こそぎな…それでも貴様は「秘めたる力」を見せない…ならば、最後の拠り所を奪うとしようか……!」
魔神は酷薄な笑みを口元に張り付かせたまま、掲げた右手に黒いオーラを宿らせる。
その黒いオーラは少女に宿り、彼女の体を少しずつ更に上へと上昇させていく。
「貴様!何をッ!!」
黒き死の戦士は長刀を振りかざしてアシュタロスに突撃する、が…
ガシッ!
刀は魔神の左手一本で止められてしまった。
「クッ……」
「今の貴様の力では何一つ護れはしない、呪うなら自らの無力さを呪うがいい!」
アシュタロスは左手を一振りして戦士をふっとばす。
「うぁっ!」
地面に落ちるヒュウガ。
かなりのダメージを喰らっているとはいえ、上級魔族すら問題にしない彼を吹き飛ばす魔神。
まさに恐るべしである。
「お…のれ…」
それでも歯を食い縛って立ち上がった。
「さて…それでは最後のショータイムと行こうか…」
少女を包む黒いオーラは、その口から彼女の体内へするりと進入し…
体の中心…すなわちお腹の辺りで停止、そして不気味に明滅を開始した。
「い……ゃ……何…これ……ヒュウ…ガ…様」
「ミュウッ!!」
二人が呼びあった瞬間………
その明滅がどんどん早くなっていき……そして
カッ……………!!
彼女の体から閃光が走ると同時に、
大爆発を起こした!!
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
「う……あぁ……あああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
慟哭する戦士に、元彼女であったものが無情にもバラバラと降り注ぐ…
「フン……脆い、命などこんな簡単に消え去ると言うのに……」
魔神は溜息を吐きながら呟く。
ー何故私は!?
カランカラン…
ヒュウガの足元に、彼女が付けていた稲妻を象った髪飾りが転がってくる、
「……」
奇跡的にほぼ無傷のそれを、彼はゆっくりと拾い上げた。
「!?」
”頑張って…アイツを倒して下さいね、信じてますから…”
込められた”想い”がヒュウガの心に響く。
ミュウが死ぬ間際に込めた想い。
それは恐怖でも、悔恨でも無かった。
込められたのは”信頼”と”希望”
ヒュウガは無言でそれを握り締める。
〜後編に続く〜
今回は、かなり踏み込んだ所まで描いてみました。
書き直し部分があまりにも多いのと、バイオレンス描写が多いので上下に分けましたが…どうでしょうか?
それでは前回のレス返しです。
紅様>
ああ、思わずそこは修正を入れてしまいましたw
やはり他に仲間が沢山居るのと家で単独で受けるのとは感覚が違うのでは無いでしょうか?
D,様>
理事長何でもありです(汗)汁粉爆弾の話もありますが、色々書き直したいと思っております。
柳野雫様>
あの辺りは本当に苦し紛れで出したネタでした、本当は魚雷対草加をやりたかったのですが…これ以上彼を追い詰めるのもどうかとw
ATK51様>
ピートは兎も角、氷川はヘタレというよりただの天然さんです(笑)
東鳩勢は姉妹のみの登場になりました(泣)
レンゲルはやはり苦し紛れでした(おい)
ベスパは…活躍させたくなくとも勝手に活躍してしまいますので…あははは(乾いた笑い)
それでは水曜日の後編=決着編でお逢いしましょ〜でわでわ〜〜