戦いの中で目覚める戦士
その変幻自在の力と
青龍の力を使い
戒めを断つ。
エピソード十六 救いをもたらす青き龍
「なに!?」
「こ、こいつは!?」
十兵衛は突然の出来事に驚いていた。それは 当の本人である横島も同様だった。
「・・・くっ!!」
危険を感じたのか十兵衛は強引に間合いを取った。
「横島さん、大丈夫ですか!?・・・その手は!?」
「青く輝いてるですノー!!」
ピートとタイガーも横島の手から発せられている青き輝きの剣を見て驚いていた。
「ああ、俺はなんともないけど。・・・なんだろう?すっげぇ力を感じる」
(どうやらこれはそなたの霊力が凝縮された事によって生まれたのだろう。この剣ならあの柳生十兵衛の刀にも対抗可能だ)
心眼の言葉を聞きながら横島は十兵衛に向けて剣を構える。それを見た十兵衛も刀を構える。その時、何を閃いたのか横島は剣を上に掲げる。
「そうだ!!この剣は助けを待ってる人々を救う手。『救世の手(ハンズ・オブ・メシア)』だ!!」
そう言うと同時に横島は駆け出す。
「はぁ!!」
それを見た十兵衛は近づいてきた横島に刀を振り下ろす。
≪ガキィィン・ギチギチギチギチギチ≫
刀と剣の腹がぶつかり合い火花を散らす。お互いが一歩も引かず鍔迫り合いが続く。
「・・・せい!!」
「させっか!!」
十兵衛が鍔迫り合いから刀を流し横に一閃する。しかし横島も負けじと剣を横に向けその一撃を防ぐ。
「こんのぉ!!」
(横島!!一旦離れて突きを放て!!)
横島は防いでいる刀を強引に弾くと、心眼の指示に従い十兵衛に向けて突きを放つ。しかし・・。
≪キン!!≫
「・・・な!!?」
(なんと!?)
なんと十兵衛は刀の先端でそれを防いでいた。
「んなのありかよ・・・ってうわっ!!」
驚いている横島を尻目に十兵衛は刀を上に弾くと同時に振り下ろした。
「やば!!」
(マズイ!!すぐに下がれ!!)
横島は心眼の指示を受け一気に後ろに下がった。
「なんちゅー反則並みの技だよ」
「お主こそ・・・そこいらの剣士とは格が違うぞ」」
両者は一歩も退かぬ戦いは同時に両者の体力も急速に消耗していた。
「す、凄い戦いです」
「あ、相手は天下無双の剣士のはずジャー!!それに対抗できる横島サンって一体?」
「少なくとも、今の僕たちじゃ・・・邪魔になるだけだね」
「・・・ですノー」
二人は黙って戦いを見守る。少年の勝利を信じて・・・。
「さ〜て、こっちもそろそろおっぱじめっか」
不敵な笑みを浮かべながら問いかけるきたろう。それを聞き太鼓太夫は怪訝な表情をした。
「・・・一つ尋ねるが、その姿でよろしいのかの?」
「おっと、この姿は気に食わないか?上等だ、こちらも本気でいかせてもらうぜ!!」
そう言うときたろうは瞬時に言霊を作り出し自身に当てる。その言葉は
『封印解除』『魔術回路全開』『霊力全開』
その瞬間、きたろうは光に包まれた。しばらくすると、三十前後の青年が姿を現した。
「ほぉ、若返りでもしたのかの」
「微妙に違うな。この姿は俺がまだ“現役”だった頃のものだ。だからマジでやれるぜ」
「ほっほっほ、じゃあ私から仕掛けまひょか」
そう言うと太古太夫は影から刀を取り出しきたろうに斬りかかった。
「なめてんじゃねえぞ!!じじい!!」
そう言ってきたろうは物干し竿の鞘から刀を引き抜きその攻撃を防ぐと、そのまま流れるように身体をずらし相手の後ろに立つ。そしてそのまま刀を横に一閃した。
「失せろ!!」
「そんな簡単には死にませんですぞ」
しかしその攻撃を太鼓太夫は影の中に沈み回避した。
「ちい!!てめえは引○天○か!!」
何故か知識の多いきたろうが叫ぶと、その場から10メートル先の影から姿を現した。
「ほっほっほ、私の属性は“影”ですからのう。そんな攻撃は通用しませんよ」
「だったらてめえが影に沈む前に切り刻んでやる!!」
「出来るものなら・・・」
太鼓太夫の言葉を聞き終える前にきたろうは上中下段に見えない速度で打ち込む。
「むむ?」
太鼓太夫は警戒しながらもそれをバックステップで避けた。しかし・・・
≪パラ≫
回避したはずでありながら着物の一部が斬られ、地面に落ちた。
「およ?確かに避けたはずですが?」
「単なる斬撃じゃない。本来“存在しない”斬撃を利用したのさ」
「それはどういう事で?」
「それは・・・こういう事だ!!」
そう言ってきたろうは刀を上段に構えると、当たらない間合いでありながら振り下ろした。すると、振り下ろされている刀の刀身が突如倍の長さに伸び出した。
「ぬおお!!」
慌てて刀で防ぐが、突然の事に余裕が無く膝をついてしまった。
「・・・今のは一体どんあ芸当で?」
「こことは別の平行世界にあるこの刀の刀身を貰い受けたのさ」
「な!?何故そんな事が!?」
「やれやれ。万華鏡の魔法ならこんな事ぐらい朝飯前だ」
驚愕している太鼓太夫を無視しきたろうは刀に力を込める。そして刀を
≪バキン!!≫
完全に砕いた。
「なあ!?」
「いくぞ!!秘剣・・・・・『燕返し』!!」
≪ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュン≫
上中下から三回ずつ放たれる斬撃。それを受けた太鼓太夫は・・・
「ぎゅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
世にも恐ろしい痛みを感じていた。
「ったく、どこにあるのかしら元始風水盤は?」
場所は変わって美神たちは洞窟の奥に進んでいた。
「100メートル先に・空洞が確認・できます」
「そろそろのようだね。皆、気を引き締めていくぞ」
西条の言葉に肯く皆。西条を先頭に進むと、マリアの言葉通りそこには広い空洞が存在した。そしてそこには、元始風水盤の前に立つメドーサの姿があった。
「ノコノコ死にに来たようね」
「フン。それはアンタの方よ、メドーサ」
「ただの人間ごときが・・・いい気になってんじゃないよ!!」
メドーサは手を上にかざしパチンと指を鳴らす。
≪ボコ・ボコボコボコボコボコ≫
すると地面の中から大量のゾンビが姿を現した。
「上等よ!!まとめて叩き潰してあげるわ!!」
そう言って神通棍を開放する美神。
「アンタだけ美味しいとこ取るんじゃないわよ令子!!」
「出てきて〜式神たち〜!!」
「戦える。本気で戦えるぜ!!」
「我がジャスティスの糧にしてやる!!」
それに続き各々の武器を取り出す皆。
「・・・頑張れ」
「頑張ってくださ〜い」
そして応援組みのタマモ?とおキヌ。
「なにやってんの!!アンタは明らかに戦う側でしょ!!」
「・・・バレた」
呟きながらしぶしぶ美神たちのもとに行くタマモ。
「お行き!!そこにいる人間どもを抹殺しな!!」
「グウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
メドーサの言葉を受けゾンビたちは動き出した。先陣の三匹が美神に襲い掛かる。
「「「オオオオオオオ!!」」」
「うっとおしい!!」
そう言って神通棍で一気に二匹を切り払うと、背中に背負っていた破魔札マシンガンで残りの一匹を簀巻き(かな?)にした。
「やるな令子ちゃん!!・・・なら僕も!!」
そう言って西条はジャスティスを引き抜き向かってくるゾンビたちを切り払う。しかし後ろにいたゾンビが不意に襲い掛かった。。
「・・・っ!?マズイ!!」
それに気付いた西条は懐からM-93Rを取り出しフルオートに切り替える。
≪ガガガガガガガガガガガガガ≫
それから放たれる弾丸は見事なまでにゾンビたちの頭部を打ち抜いていく。
「カオス!!霊体撃滅波を出すから三十秒時間を稼いで!!」
「任せておけ!!行けマリア!!」
「イエス・ドクターカオス」
カオスの指示を受けマリアは右腕に内臓されている小型マシンガンで突っ込んでくるゾンビたちを一掃する。
≪ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ≫
ちなみに今回はオカルトGメンから弾薬の提供もあり思いっきり撃ちまくってます(笑)
「行くわよ!!・・・霊体撃滅波ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そして余裕綽々で発動した霊体撃滅波によりこれまたゾンビたちは一掃された。
「こないで〜〜〜こないでってば〜〜〜〜!!(涙)」
冥子はグロさ満載のゾンビたちをプッツンによりボコボコにしていた(ご愁傷様)
「まったく、ヨコシマと離れてるから機嫌が悪いのよ♯アンタたちには私の八つ当たり受けてもらうからね」
そう言って向かってくるゾンビを狐火で燃やしていると、後ろからおキヌの声が聞こえた。
「ねえタマモちゃん、これってどうやって使うのかな?」
「ん?どれ・・・・・へ?」
タマモはおキヌの方を向くと固まった。そこには精霊石ロケットランチャーをこちらに構えているおキヌ(無自覚)の姿が・・・。
「お、おキヌちゃん(汗)。それをゆっくり置いて〜」
「え?なんですか〜?」
タマモの声が聞こえなかったのかおキヌはそのままランチャーのトリガーを引いた。
≪ドシューーーン≫
「なんなのよーーーーーーーーーー!!」
タマモは子狐と化しそれを避けると、後方にいたゾンビたちは一瞬にして綺麗さっぱり消滅した。
「クオ〜ン(怒)」
「タマモちゃん、ごめんなさ〜い(涙)」
「さて、貴方は私が裁いてあげます」
「小竜姫、アンタじゃ私に勝てないわよ」
乱戦状態の美神たちから離れ小竜姫とメドーサは対峙していた。小竜姫は神剣を、メドーサは三叉の矛を構える。
「・・・はっ!!」
地面を蹴って小竜姫が飛び出した。そしてそのまま突きを放つ。
「甘いよ!!」
しかしそれをメドーサの矛が弾く。そして弾くと同時に後ろに引くとメドーサも突きの構えを取る。
「本当の突きは・・・こうやるんだ!!」
そう言うとメドーサは矛を回転させながら放つ。
「・・・何!?」
小竜姫は紙一重でそれを回避した。
「ちぃ!!しぶとい奴だね」
「貴方には負けません!!」
「フン!!男と接吻していて仏罰がくだらないのが信じれないね」
≪ガラガッシャン≫
メドーサの言葉にずっこける小竜姫。そして起き上がると顔を赤くしながら口をパクパク開閉していた。
「な、何故それを!?」
「アンタたちを監視していたゾンビの一人がその瞬間を見ていたそうよ」
「くっ!!」
「それだけ動揺してるって事は・・・アンタあの坊やが好きって事だね」
「・・・っ!?」
メドーサの言葉は小竜姫の心を揺らしていた。
(わ、私が横島さんの事を好いている?そ、そんな訳ない!!彼は人間で私は竜神だから結ばれるなんて・・・は?わ、私は何を言っているの!?でも・・・車の中で私をしっかりと抱きとめてくれた時、凄く温かく感じた。・・・って違います!!私は横島さんの事は・・・・・・・・・・・・・好き・・・なの?)
頭の中が混乱し始める小竜姫。その時・・・。
「油断大敵だよ小竜姫!!」
そう言ってメドーサは左腕を前に突き出す。するとその左腕は深緑に変わり出しまるで植物の蔦のようなものに変わった。そしてそのまま小竜姫の身体に蔦を巻きつけた。
「ぐっ!!・・・こ、これは!?」
「驚いたかい?これはある御方から貰い受けた力よ。それもかなり上質だわ。本当は全力出してみたいけどアンタごときには使う必要がないからね」
そう言いながらメドーサは小竜姫に向けて矛を構える。そして・・・。
「死にな!!小竜姫!!」
突きが放たれる。しかし・・・。
≪ガキィィン≫
突如何かが矛を直撃し地面に突き刺さった。メドーサは怒りをむき出しにしながら辺りを見渡した。するとそこには・・・。
「よう・・・メドーサ」
「雪之丞・・・そういやアンタが居たんだったね」
黒いコートを脱ぎ去った雪之上の姿があった。
「ちょうどいい。あの時のケリ・・・つけさせてもらうぜ!!」
「ざけてんじゃないよ。このマザコンが!!」
そう言ってメドーサは矛を振るう。それを雪之丞は魔装術を肉体に纏い迎え撃つ。しかし・・・。
「ぐ!?」
矛を一発受けた途端いきなり腹部を手で押さえ膝をついた。
「あら?口だけのようね。こんなんじゃアンタのママはさぞかし弱小なんでしょうね」
≪ビシバシビシバシ≫
動けない雪之丞に向けて矛をぶつけるメドーサ。それにより装甲にはいくつかヒビが入っていた。
(こんな奴に・・・こんな奴に俺は・・・ママを侮辱されるのか。・・・絶対に、絶対に俺は・・・)
雪之丞の心に強き意志が宿る。それにより腹部に起きていた痛みが消えた。そして雪之丞は・・・立ち上がる。
「おや?多少は頑張るじゃない」
「俺は・・・・・俺は絶対に・・・てめえに負けねえ!!」
その言葉に答えるかのように雪之丞に変化が起きた。上半身を覆っていた赤い鎧が深緑に変わり、手首には金色の突起物が現われ、腹部には金色のベルトが出現し中央には緑色の石が埋め込まれていた。そして・・・。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
緑色の二本角、真紅の瞳、黒い牙を頭部に纏った雪之丞が、咆哮を上げた。
同時刻。
嵐の中で遭難しているフェリーの中では、イルカを擬人化したような怪物が
政樹に襲い掛かっていた。
「ぐ。は、離さんかい」
「お前はアギトになる者。この場で始末させてもらう」
「あんさんの好き勝手な事に付き合ってるわけには・・・いかへんのや!!」
そう言って政樹は首を絞めていた化け物を蹴りながら離れると、自身の影から夜叉丸を呼び出す。
「行け!!夜叉丸!!」
夜叉丸が怪物に攻撃を仕掛けた。怪物目掛けてパンチを繰り出すと怪物は持っていた奇妙な形の槍でそれを防いだ。
「甘い!!」
しかしそれはフェイク。パンチしたのではなく槍を掴み、そのまま地面を蹴って怪物の上空に回り込む。
「喰らえ!!」
その体勢から蹴りを放つ夜叉丸。
「フン!!」
しかしその蹴りを怪物の槍で払われてしまった。更に着地した瞬間、無防備な夜叉丸の肩に槍の標準がついた。
≪ブシュウウウ≫
「がはっ!!」
回避しきれず夜叉丸の肩を貫通する槍。それにより政樹の精神には多大な負担がかかってしまいガクンと膝をついた。そんな政樹に怪物が近づく。
「・・・終わりだ。アギトになりし者よ」
その言葉と共に放たれる槍。しかし・・・。
≪ガシッ≫
その槍を政樹は素手で掴んだのだ。そしてそのまま槍を掴み名ながら立ち上がる。
「な、何故まだこれほどの力が!?」
「ワイは負けられへん。こんなところでワイは・・・・・負けるわけにはいかんのや!!」
政樹の叫びに共鳴するように、足元に金色の輝きを放つ龍のような紋章が浮かび上がった。そしてそこから光が彼の身体に纏わりついていく。そして・・・その場から政樹という“人間”が消え、金色の二本角、真紅の瞳、金色の牙を持ち、金色のベルトを巻いた戦士・・・・・“アギト”に変わる。
≪キィン・キィンキィンキィン≫
場所は戻り横島と十兵衛の戦いは続いていた。横島が剣を振るえば十兵衛がそれを防ぎ、十兵衛が刀を振るえば横島がそれを防いた。
「はああ!!」
「はぁはぁ・・っ!!」
しかし体力的に差がある横島はスタミナが切れかけており、十兵衛の振り下ろす刀を避けるので精一杯だった。
(このままじゃジリ貧だ。なんとかして自由ちゃんと十兵衛を救いたい・・・どうすれば)
限界の近い横島を後押しするように心眼が一つの提案を出す。
(横島。そなたの中にはあの娘を救いたい気持ちはあるのだな?)
「当たり前じゃ!!」
(ならその思いを剣に宿せ!!その救いたいという思いを剣に宿してあの者を斬るのだ!!さすればあの者の中にある戒めを断てるかもしれんぞ!!)
「思いを・・・剣に宿す?」
横島は自身の右手の剣を見る。そしてそのままその剣に自身の思えるだけの思いを注ぎ込む。
(俺は自由ちゃんを救いたい。一緒に学校に言って楽しくやりたい。そして笑顔が見たい。そして・・・あの十兵衛も救いたい。彼女にも人としての楽しさを教えてやりたい。だから・・・俺に・・力を)
横島の思いに答えるかのように青く輝いていた剣に変化が起きた。淡い青色は
空のような深い青色に変わった。
「すごい。さっきよりも剣から発せられる霊波が上がっている!!」
「ウオオーーー!!凄いですジャーーーーーーーー!!」
ピートやタイガーが驚きのも無理は無かった。なにせ今の横島から発せられている霊波は美神や唐巣などのベテランGSよりも強かったのだから。
「・・・次で決着をつけるつもりだろう」
「分かるか?」
「うむ。少しずつ剣を振る速度が遅くなっていたのでな」
「だったら話は早い。次が・・・最後だ」
二人は互いに一足一刀の間合いを取る。そして・・・。
「はああああああああああああああああ!!」
「でえりゃーーーーーーーーーーーーー!!」
二人の影が交差した。そしてそのまま動かないように見えたが、次の瞬間。
≪カラーン・・・バタリ≫
十兵衛の持っていた刀が手から離れ、十兵衛はその場に倒れた。
「じ、自由ちゃん!!」
横島は慌てて剣を解除するとすぐに十兵衛の元に駆け寄る。
「大丈夫・・・自由ちゃん?」
横島が抱きかかえて軽く揺らすと、十兵衛の眼がゆっくりと開いた。そして自身を抱きかかえている横島の方を向いた。
「・・・見事であった、横島殿」
「大丈夫か?」
「ああ、どうやら・・・私たちに掛かっていた戒めは解けたようだ」
十兵衛の言葉と共に黒い眼帯がピンク色に変わった。そしてそれは自然と十兵衛の左目から外れ、地面に落ちた。それと同時に、十兵衛の身体を光が包みだした。
「な!?これは・・・」
「安心しろ。自由殿の魂はちゃんとある。だが、私の方はどうやらもう存在する事が無理なようだ」
「・・・!?そんな・・なんで」
「そんな顔をしないで欲しい。私は本来存在が許されない者。よって消えるのはごく当たり前の事だ」
「でも・・・でもよぉ」
横島の眼からは溢れんばかりの涙が零れ落ちていた。それを苦笑しながら見つめる十兵衛を包む光が次第に大きくなっていく。
「私が消える前に、お主と立ち会えて・・・よかっ・・・・た」
その言葉と共に十兵衛を光が完全に包んだ。
「十兵衛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
それを見て横島は十兵衛の名を叫ぶ。しかしその時、横島の腕にかかる負担が突如増えた。
「・・・?一体・・・あ」
光が止むとそこには、自由と・・・・・・・・・・消えたはずの十兵衛の姿があった。
「あれ〜、私は一体?・・・え、ええなんで!?私何で横島君の腕の中に!?」
「な!?何故私は消えなかったのだ!?本来なら私はこの世界にいてはならないのに何「関係ねえよ」・・・え?」
横島に抱きかかえられている自由と十兵衛が横島の方を向いた。そこには、本気で嬉しそうに泣く横島の姿があった。
「よかった・・・本当に良かった」
横島はそう言って二人をギュッと抱きしめる。その行為に二人は顔を赤くするが、次第に目を閉じて安心したようにされるがままになった。
「良かったです!!本当に(涙)」
「ウオオオオオオオオオ!!感激ですジャーーーーーーーーーーーーー!!」
その光景を見て感動しているピートとタイガーのもとに“元に”戻ったきたろうが近づいてきた。
「よう。そっちはどうだ?」
「はい!!全て上手くいきました」
「反則並みのGOODエンドってやつか。まったく心配かけやがって」
「ところできたろうさん。さっきの変な能面を被った男は・・・?」
「ああ、そこにほっぽってある」
そう言ってきたろうが指差した方向を見ると、見るも無残なぐらいに私刑を執行された太鼓太夫の姿が・・・(汗)」
「あ、あれはゴミかなんかですかノーーーーーーー?」
「ああ、それも生ゴミだ」
「生ゴミですか(汗)」
冷や汗をかくピート。その時・・・!!
「ま、まだ終わってま・・・せんで・・す・ぞ」
ボロボロで立ち上がった太鼓太夫。しかしその姿にはさきほどまで発していた余裕はなかった。
「まだ懲りねえのか?もう一回ブッ飛ばすぞ」
「あいにく私はしぶといのがとりえでしてね。かくなる上は・・・我が魂を全て使い貴方方を滅ぼしてやりましょう!!」
そう言うと太古太夫は皆には聞こえない声で短く呪文を唱える。すると、突如身体の筋肉が以上に盛り上がり出し、身体の色素が緑に変わった。そして両腕には鋭いカッターが出現し、下腹部には銅色のベルト・・・そして顔はまるで凶暴なピラニアのような顔をした魚人に変化した。
「遂には本当に堕ちやがったか。なら今度こそ「待ってください」・・ん?」
きたろうがそう言って言霊を作ろうとすると横島に止められた。
「どうした横島?」
「奴とは・・・俺が決着をつけます」
「どうしてもか?」
「はい。自由ちゃんの意思を無視し、しまいには十兵衛までもを支配したアイツが俺は・・・許せないんです」
「・・・分かった。行って来い」
そう後押しに下がるきたろう。それを見た横島は二人を離すと魚人と対峙する。
「横島君」
「横島殿」
「横島さん!!」
「横島サン!!」
「横島!!」
五人の声が横島の背中に届く。それを聞いた横島は振り返らずにガッツポーズをきめた。
「ヒド・・・ゴロズ」
もはやまともな言語能力すらもたない太鼓太夫を前に横島は拳を握り締める。
「太鼓太夫・・・お前は自由ちゃんと十兵衛の心を弄んだ!!その償い・・・必ず払ってもらうぜ!!」
そう言って横島は下腹部に意識を集中させる。すると昨日美神に言われた言葉を思い出した。
「・・・理由は言えないの。でもお願い・・・お願いだから変身だけはしないで。変身するんなら代わりに私がやるわ」
「美神さん・・・・スンマセン。俺は・・・女の子傷つけられるの嫌なんスよ。・・・だから、俺は戦います。皆を・・・守るために!!」
横島が言い終わると下腹部にベルトが出現する。そして・・・。
「変身!!」
彼はキーワードを叫ぶ。すると横島の身体を青い水が渦を巻くように彼に纏わり出す。そしてその身体は・・・青き龍へと化す!!
あとがき
一週間ぶりの投稿です〜〜〜!!やっと書き終えました。なかなかバトルの案が浮かばずに苦戦してしまったです。
え〜、次回はいよいよ元始風水盤編もファイナルです!!更に気合を入れていかねばならなくなりますです!!あ、追伸ですがきたろうの現役の姿は『剣』に出てくる銃使いのイメージです。
<なまけものさん
『救世の手』です。栄光の手ではありきたりなのであえて名前を変えました。
あとですね、きたろうは言霊も自在に操れますが魔術師でもあります。ただし現役の頃ですが・・・。
<法師陰陽師さん
ゼル爺の気まぐれで現役時代のきたろうが弟子になったわけです。
<柳野雫さん
そうです事故ちゅーです!!これはまえから小竜姫でやってみようと思っていたものです。
あときたろうですが・・・まぁ色んな意味でおもしろいキャラだと自分は思ってます。
<レンヤさん
<横島って言霊が有れば文珠必要無いですね。
これなんですがそうでもないんです。言霊にはいわゆるストックを作っておく事が出来ないため、即席で作らなければならないんです。更に言うと文殊みたいに現象までは作り出すことが出来ないんです。
<ATK51さん
まず最初にありがとうございます。バトルでいいと言われたことが無かったのでマジで嬉しいです(涙)
小竜姫との顛末・・・これこそ自分の中での小竜姫なんです。やっぱり小竜姫は初々しくないと♪
え〜と、きたろうはオリキャラです。説明不足でスイマセン。
え〜とですね。私は楽器は使わないんです。楽器の変わりに“声”を音撃に用いるのです。
じゃあまた次回お会いしましょうです。煌鬼でした。