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▽レス始

「横島の道、美神の道 その2(GS)」

小町の国から (2005-03-27 20:52)
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4月のとある火曜日、時刻は午前8時半

ここオカルトGメン本部の控え室には全国から多くのGSが集合しており、その中心付近の椅子に令子と横島が腰掛けている。

今日の令子はシックなスーツ姿、鈴木(外務省職員)の要望を忘れていなかったようだ。

「けっこう沢山の人がいますね美神さん。」

「そうね、ざっと見50人位いるんじゃない。使えそうなのは僅かだけど。」

令子と横島は辺りを見回す。令子ならば同業者の顔見知りは多いのかもしれないが、横島ではほんの数人しか判らなかった。

「どれどれー、エミさんに唐巣神父にピートくらいか知ってる人は。・・・・・・少ないな。」

「あのね横島君、あんたが他に誰を知っているって言うのよ。」

「えっ、それは冥子さんとか魔鈴さんとかカオスのじーさんとか・・・・・・。」

「はぁ、もういい。まああんたが知っているって言えばそれくらいよね。」

ため息混じりに令子が話す。そこへ横島が、

「でも俺が今言った人たちあの中に見あたらないんですけど。」

と質問する。

令子は、

「そりゃあそうでしょう。冥子なんか呼んだらプッツンで味方に何人被害が出るか分からないわ、いつも付き合っている私たちだって何度被害にあったことか・・・・・・・。
 それからカオスは正式なGSじゃあないでしょ。魔鈴は・・・・・分かんない。」

と答える。

「まあ冥子さんはそうでしょうけど、何で魔鈴さんを呼ばないのかな? かなりの実力者だと思うんですけど。」

「さあ、おおかた魔鈴に断られたとかその程度の理由じゃないのー。」

既に令子はこの話題から興味を失っている。

「まああと20分位だろうし、ゆっくりしてればいいわよ。」

そう令子は言うと腰掛けていた椅子の背もたれに寄りかかる。

「やあ、美神君に横島君。君たちも呼ばれたんだね。」

「あっ、どうも唐巣神父にピート。そちらもですか?」

令子と横島忠夫に気付いた唐巣がピートを連れて近付き挨拶をしてきたのに横島が立ち上がって返す。

「あー神父にピート、どうもー。」

と令子はろくに顔も見ずにだらけた挨拶を返す。

その姿に唐巣とピートは苦笑し、

「あんた、師匠を舐めきっとるな。ブッ!!」

と余計なことを言った横島は神通鞭の一撃を食らい吹っ飛ぶ。周りのGS達は驚いている。

「相変わらずだな。」「そうですね。」

苦笑しながら感想を交わす唐巣とピート。

「何すんですか! 美神さん!!」
「うるさい!! 余計なこと言うんじゃないわよ!!」

ノーダメージで立ち上がり令子と言い争いを始める横島を見て、周りのGS達は更に驚いている。

「流石は美神除霊事務・・・・」
「ああ。非常識の塊・・・・・」

等の賞賛(?)の囁きが聞こえる。

「まあまあ、美神さんも横島さんも落ち着いて下さい。」

見かねたピートが宥めに掛かり、なんとか落ち着く。

「ふん! ところで神父、キリスト教から派生した除霊方法を使う人は危ないんじゃないの?」

強引に話を変える為に唐巣に話題を振る令子。

「ああ、今回はオブザーバーとして現地本部にいるだけだよ。実動はピート君に任せるさ。彼も見習いを卒業したんでね。」

と答える唐巣。横島は、

「そうかー、おめでとうピート! やったな。」

とピートを祝福する。

「ありがとうございます横島さん、神父を始め皆さんのおかげですよ。」

どこまでも謙虚なピート。そこへ、

「あーん♪ ピート〜♪」

と甘い声を出しピートに抱きつく小笠原エミ。

「出たわね、万年日焼け色ボケ女。」

突然現れたエミを睨みながらそう言う令子。

「ふん! イケイケ(死語?)の金の亡者が。ピート〜♪ ここは空気が悪いからあっちに行きましょ〜ん。」

令子を一睨みした後そう言い、ピートを引きずっていくエミ。

「たっ助けてー。」「あーん♪ 暴れないでピート〜♪」

ピートの叫びとエミの甘えた声が遠ざかっていく。

「おーいピートー! ダメだありゃ。」

横島も声は掛けたもののあきらめる。唐巣は苦笑し、令子はそっぽを向いている。

「ふん! ほっときなさい。」

令子の機嫌はまだ直っていない。

「まあそうするしかないんでしょうけど、いや・・・・・・しかし・・・・・・くそーピートの野郎、自分だけ美味しい目にあいやがってー。」

そっぽを向いていた令子が視線を横島に移し、

「あんたねぇ、エミには何度も危ない目に遭わされたくせに、まだ懲りてないの?」

「それは忘れていませんが・・・・・・でもあの乳や尻やふとももはあいつにはもったいない。野郎ー! 相変わらずもてやがってー。」

「はぁ」と令子がため息を吐き再び椅子に腰掛ける間に、

「ちくしょー、なんかとっても・・・・・どちくしょうー!」

と叫び、ポケットをまさぐりながら部屋の隅にある柱を目指し走り出す。柱へたどり着いた横島はポケットから藁人形・五寸釘・金槌の3点セットを取り出し、がむしゃらに打ち付け始める。

「うっ」と言いながら胸を押さえ動きの止まるピート、呪いのプロのくせに動きが止まったピートを『チャーンス♪』とばかりに押し倒すエミ、それを横目で見て金槌を振り上げる腕に更に力が入る横島、事態は悪化の一歩をたどり他のGS達は呆然とするばかり。

そこへ、

「止めないか横島君!」

と後ろから声が掛かる。横島はちらっと一瞬だけ振り向いたが再び金槌を振り上げる。

「だから止めろと言っているだろう。」

金槌を振り上げた横島の腕をオカルトGメンの西条が押さえるが、

「うるせー! エセ紳士でロン毛の中年野郎は消えろー!」

この一言で西条までが・・・・・・キレた。

「ふっふっふ横島君、言ってはならん事を。今日こそこの聖剣ジャスティスの錆にしてくれる。」

横島の腕を放し、ジャスティスを構える西条。

「へん! そんな錆びるような駄剣はこの俺様の栄光の手でへし折ってくれるわ!」

横島もハンズ・オブ・グローリーを出し身構える。

緊張感が辺りを包む。例外はピートに抱きついているエミと、ため息をつきながら片手で頭を押さえる令子、唐巣は蹲って頭を抱えている。

「くらえ!」
「くたばれ!」

同時に二人が動く。その時、

“チャキ” 「何をしているのかしら二人とも!!」

こめかみに井げたを張り付かせた美神美智恵が銃を構えて話しかける。

「「せっ先生!(たっ隊長!) こっこれはそのー」」

“ガチャ” 「ん? こ・れ・は・何かしら」

銃の安全装置を外し、一歩前へ出る美智恵。

「「すいませんでしたー!!」」

慌てて謝る横島と西条。

「よろしい! まったく少しは他の人の迷惑も考えなさい。」

そこで話を止めた後、今度は控え室の全員に向かって話しかける。

「皆さん! 会場の準備ができました。入口でGSライセンスを提示した後会場内に進んで下さい。」

オカルトGメン隊長なのに下っ端の案内係の役までこなす美神美智恵、彼女も苦労しているようだ。その後横島に向かって、

「ほらっ横島君も! そこの人形も片づけてね。」

と指示を出す。

「了解しましたー。」

横島は急いで藁人形を片づけ令子の元へ戻る。

「ばかっ! 全国からGSが集まっている所で何をやってるのよ!」

令子は小さな声で横島を叱りながら小突いた。

「ううー、すんまへーん。」

横島は抵抗もせず令子の攻めを受け入れる。

「はぁ、もういいわ行くわよ!」
「へーい。」

横島は会場に向かって歩き出した令子を二人分の荷物を抱えて追いかけた。


「美神令子よ。」

そう言いながら会場入口の係員にGSライセンスを提示する。

「はい、ランクAの美神令子さん。・・・確認しましたどうぞ中へ。」

「ありがと、ほら横島君あんたも早く!」

「はい、横島忠夫です。」

先程小突かれたばかりなので、おちゃらけもせずにGSライセンスを提示する横島。

「はい、ランクEの横島忠夫“ザワッ!!”えっ?!」

横島も係員も周りのどよめきに驚く。

「なっなんだ?」
「さっさあ?」

「おい! そこのお前!」

順番待ちをしていたGSの一人が横島に声を掛ける。

「えっ? 俺?」

横島もいきなり声を掛けられて曖昧な返事しか返せない。

「そうお前だよ。なんなんだお前は? ランクEって言ったらGS見習いじゃねーか、何でそんな奴が全国から優秀なGSを集めたこの場所にいるんだ?」

その男は更に突っ掛かる。

「そう言われても・・・・・・美神さんに付いてきただけだし・・・・・」

答える横島も言い淀む。

「なによ! あんたうちの所員に文句があるっていうの?!」

怒った令子が男に詰め寄る。

「美神令子、あんたは日本でもトップクラスのGSだから文句は無い。だがその男は別だ! ランクEの見習いを連れてきて良い場所じゃないだろう。全国から優秀なGSが集まっているんだ、見習いなんてお呼びじゃないんだよ。」

「なんですってー!! 横島君はねー、あんたなんかよりずっと実力は上よ!!」

キレた令子が怒鳴る。たとえ日頃から自分で丁稚だの何だのと言っている横島の事でも他人から言われると許せない。

しかし男は、

「ほーそうなのか? なら何でこいつはランクEのままなんだ?
 おい受付のあんた、こいつの除霊結果報告を画面に表示させてくれ。」

急に指示された係員は「えっ? はっはい!」と慌てながら横島の除霊結果を画面に呼び出す。

「見ろよ! 見習いを1年近くやってるのに除霊した悪霊の数は50体にも満たない。先月なんかたった2体だ。なんでこんなやつが優秀なんだ?」

ざわざわ

周りで事態を眺めていた連中もどよめいている。

「クッ!」

除霊結果の件をつかれては流石の美神令子も何も言えない。なにせ『横島の給料を上げない&丁稚として置いておく』ために件数を減らして報告したのは令子自身なのだから。

「・・・・横島さん・・・・」

ピートが心配そうに呟く。彼にはつい先日ランクCのライセンスが届いていた。

「どうしたの?! 何の騒ぎ?!」

入り口が騒がしいので会場内から美神美智恵が現れ係員に問い質す。

「隊長。それが・・・こちらの横島忠夫さんのランクがEだと周りに知られた途端それに苦情を言う人が出てきまして・・・それに反論しようとした美神令子さんとの間でこのような騒ぎに・・・」

係員がつっかえながらも何とか美神美智恵に報告する。それを聞いた美智恵は、

「はぁ、そういうこと。」

ため息を吐きそう言った。

令子と言い争っていた男は、

「オカルトGメン隊長美神美智恵さんよ。いくら自分の娘の部下だといってもまさか特別扱いはしないよな。全国から優秀なGSを集めたってのにランクEの見習いをさー。」

にやけた顔でそう言った。令子は気まずそうな顔で美智恵を見ている。

「困ったわねー。」

美智恵が解決法を考えていると、

「何だ! 何の騒ぎだ! 会議の開始時間はもう過ぎておるのに。儂も暇ではないのだぞ!」

テレビで何度か見たような老人が西条を伴って現れ美智恵に問い質す。

「これは外務大臣、実は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

美智恵の説明を聞いた大臣は、

「ふん! たかがランクEの見習いの件で揉めておったのか。これは国連から依頼された重大な任務なのだ。総理を始め政府関係者全てが注目しておる。その重大な任務にGS見習いなど不要!!」

大声で周囲にそう告げる。

「大臣、横島忠夫君はアシュタロス事件の時も活躍しました。特に美神令子君との合体「儂は聞いておらんぞ!!」・・・・それは・・・」

西条も何とか取りなそうとするが大臣に遮られてしまう。

「儂も現在の政権に入閣する時アシュタロス事件のレポートは読んだ。しかし横島君だったかな?・・・・彼の名前など何処にも出てはいなかったぞ。」

そう言われると美智恵も西条も何も言えない。
GS見習いの横島を囮として使ったこと、魔族の少女と心を通わせたこと、大きな戦果を上げた文珠の恐ろしいまでの汎用性、まだ高校2年という事と汚い陰謀等から彼を守る為もあって全ての報告書から彼の名前を消したのはこの二人なのだ。
彼の為に善かれと思いしたことが、まさかこんなところで仇になるとは。

「あれ程大きな事件だ、多くのGSが関わったのは分かる。しかしレポートにも載らないような見習いが活躍? あまり大げさに言わないでもらいたいな。」

令子もこれを聞き悔しさで全身を震わせていた
ママ達の考えは分かる、横島君を守る為。でも私が除霊件数を正しく報告しランク昇進の手続きをしていたならこんな問題は起こらなかった。私が・・・・・・・・・私が・・・・・

「どうやら理解してもらえたようだね。
 君、即刻この場から立ち去りたまえ。」

大臣は横島に向かいそう言い放つ。

その言葉を聞いた瞬間、令子は怒りで顔を赤くし大臣に詰め寄ろうとするが、

「やめてください美神さん。」
「落ち着くんだ令子ちゃん。」

横島と西条に止められた。

「でも!!」

令子は尚も進もうとするが、

「分かりました、俺帰ります。お騒がせして申し訳ありませんでした。」

そう横島が言う。

「横島君!!」

令子がそう叫ぶが横島は、

「すいません美神さん、一緒に行けなくなりました。」

そう言って頭を下げた。

「・・・・横島君・・・・・・」

令子の怒りも収まり横島を見る。美智恵や西条達も黙ったままだ。

「どうか気を付けて下さい。それと・・・・・これを。」

横島は令子の手を取り、ありったけの文珠を渡す。その後、

「それでは帰ります。お騒がせしました。」

そう言いながら周りに向かって頭を下げ、自分の荷物を背負い横島はこの場を後にした。

「これで騒ぎは収まったな。それでは諸君! 急いで会議室へ入りたまえ。」

大臣がそう言って会議室に入っていく。それを横目で睨んだ令子だが、横島から文珠を渡された手に視線を移し気持ちを抑えた。

「私達のミスよ令子、今は耐えなさい。」

小さな声でそう告げて美智恵が脇を通り過ぎる。

令子は小さくなった横島の後ろ姿を見つめながら、

「ごめん横島君。」

そう小さく言った。


「・・・・・・そこで国連の依頼を受けた我が国政府は・・・・・・・・・・・・・」

壇上では大臣が熱弁をふるっている。

会議は続いていた。しかし令子は俯いたまま文珠を見つめている。
自分のせいでこの場を去った横島忠夫。
失敗だった。明らかな自分のミスだ。
自分のわがままを通すことしか考えず、このような状況が起こりえるなどとは思ってもいなかった。
ごめん横島君・・・・・・・・・


「我々が向かう国はイラ・・・・・・・・・・・・・
 アメリカ軍の空爆が結界を・・・・・・・・・・・
 他に中国・韓国もGSを派遣・・・・・・・・・・
 1チームの人数は6・・・・・・・・・・・・・・
 報酬については1人あたり・・・・・・・・・・・」

いつの間にか壇上には美智恵が上っており細部の説明をしている。


令子は何とか会議に集中しようとするのだが、どうしても集中できない。
自分の隣に横島忠夫がいない。それだけでこれ程心が乱れるとは・・・。
いつしか令子は横島のことを考えていた。

アシュタロス事件の痛手から立ち直ってきた横島は霊力も順調に伸び、男としても成長してきた。
美男嫌いと西条嫌いで暴走するのは相変わらずだが、おちゃらけて令子に飛び掛かったりする回数も減り、少しは状況をわきまえるようにもなった。
以前よりも更に女性や子供には優しくなり、何より笑顔が素敵になった。
個性豊かなメンバーが集まる美神除霊事務所のムードメーカーであり、大きな戦力でもある。
除霊の時には何も言わなくても令子をサポートするように動いてくれる大事なパートナー。
段々令子が背中を任せられる程の男になってきている。それが令子には嬉しかった。
これで知識も身につければ・・・・・・・いずれは私の・・・・・・・人生のパートナーに・・・・・・・・


「ちょっと、令子! 聞いてるの?!」

令子がハッと意識を壇上に向けると美智恵が睨んでいる。

「ご、ごめんなさい。聞いてませんでした。」

公の場での会議でもあり、令子は素直に謝った。

「分かりました。後ほどあなたにはマンツーマンでブリーフィングを行います。
 それでは皆さん、ビル正面に停車しているバスにお乗り下さい。特別チャーター便がスタンバイしている羽田空港へお送りします。
 以上、解散!!」

ドヤドヤと立ち上がって動き出す人達の中、令子はまだ座ったまま俯いている。

「大丈夫かい? 美神君。」

隣に座っていた唐巣が話し掛ける。

「ええ、大丈夫です神父!」

令子はそう答えて立ち上がるが、唐巣の目には無理をしているのが明らかだ。

「そうかい? でも無理をしてはいけないよ。」

そう言って唐巣が出口へ歩き出し、チラリと労るような視線を向けたピートが後に続く。

「ふー」

と息を吐いた後、令子は上を見て

「ほんとにごめん横島君。」

と呟く。しかし一瞬後には視線を出口へと向け、

『負けない! 誰にも負けない! 私はGS美神令子よ!』

そう心中で繰り返し、大きな荷物を片手で持ち上げ出口へ歩き出す。


「どうします先生、横島君のぬけた穴は大きいですよ。」

壇の袖のところでそう美智恵に話し掛ける西条。

「ホントにね・・。でも意外ね西条君、あなたがそれほど横島君を評価していたなんて。」

「確かに僕は彼が嫌いです。でもだからと言って彼の能力を否定してはいません。」

「そうね。霊波刀や文珠だけでなく、彼のムードメーカーとしての希有な才能は長期戦が予想される場合にはぜひにも必要なものだったわ。」
(特に令子のコンディション作りにはね。)

二人はそう会話しながら会議室を出て行く令子の後ろ姿を見ていた。


「よう人工幽霊一号、ただいま。」

相変わらず貧乏な横島は帰りの電車賃にも苦労し、かなりの距離を歩いて事務所まで戻ってきた。

『横島さん! いったいどうしたのですか!』

人工幽霊一号も驚く。

「まあその質問は中に入ってもされると思うんで一緒に聞いといてくれ。」

『分かりました。』

「じゃあ中に入るわ。」

そう言って事務所に入っていく横島。

『はい、どうぞ』

人工幽霊一号はそう答える。


「ちゃーす!」

と訳が分からないことを言いながら部屋へ入り背負った荷物を下ろす横島。

「横島さん!」
「先生!」
「横島!」

驚くおキヌ、シロ、タマモの3人。

「あー、にぃー。」

ひのめだけは喜び、横島へと手を伸ばす。

「いったいどうしたんですか?」

横島はそう尋ねるおキヌからひのめを受け取りソファーに座る。

「まあまあ、今から説明するよ。でもその前に・・・・・おキヌちゃん。」

「はい?」

「ちょっと喉が渇いたんで何か飲み物をもらえるかな?」

「わかりました。ちょっと待って下さいね。」

そう言っておキヌは台所へと向かい、それを見た横島は視線をひのめに向けあやし始める。

「にぃー、にぃー。」

ひのめは喜んではしゃいでいる。すると横島の両脇にシロとタマモが座り、

「先生、どうして?」
「横島どうしたの?」

と問い掛ける。横島は、

「まあ待て、おキヌちゃんが戻ってきたら話すから。」

そう答えてひのめをあやす。


「・・・・・・・・・・・・・とまあそういう訳で偉いさんが出てきてさー、美神さんの立場が悪くなりそうだったんで戻ってきた。」

ようやく事情を話し終えた横島。

「はぁー、そうだったんですか。」

おキヌは納得し、

「先生の強さが分からんとは許せん連中でござる。ここは拙者が成敗を「こらこら待て!」何故でござるか!!」

シロは激怒し、

「美神ってそんないい加減な報告してたんだ、呆れたわー。」

タマモは別の部分に呆れる。

「でも横島さんまで帰ってきて美神さん大丈夫でしょうか?」

おキヌが心配そうにそう言う。

「うーん、一応ありったけの文珠は渡したし、美神さん程ではないにしろ優秀なGSも多いだろうから何とかなるとは思うんだけど・・」

横島は自信なさげにそう言う。


「あっ、もうこんな時間夕ご飯の準備をしなくちゃ
 横島さんも夕ご飯食べてって下さいね。」

そう言っておキヌが立ち上がる。

「ありがとうおキヌちゃん、それじゃ遠慮無く。」

笑顔でそう答える横島。

「えっええ、じゃあ私準備しますね。」

正面から横島の笑顔を見たおキヌは頬を染めて小走りに台所へと向かう。

「うー・・・」
「むー・・・」

シロとタマモの視線が鋭くなる。

「どっどうしたシロタマ?」

「「だから一緒にしないで(ほしいでござる)」」

うろたえた横島の質問に二人はそう怒鳴る。


夕食とその後の楽しい一時を過ごした後、

「じゃあ俺そろそろ帰るわ。みんなおやすみ。」

そう言って横島は出口へと歩き出す。その背中に

「おやすみなさい横島さん。」
「先生、おやすみなさいでござる。」
「おやすみ横島。」

と三人が返事をする。

横島はドアの処で一度振り向き笑顔で手を振ってから出て行く。

直撃を食らった三人は赤くなって俯き何かを呟いている。


『おやすみなさい横島さん。』

「おう、人工幽霊一号もまた明日な。」

『はい。』

いつものようにそう会話をしてから横島はアパートへと歩き出す。


そう言えばもう電車賃も無かったんだっけ? しょうがない歩いて帰るか、でも荷物が結構重いからなー。
美神さん本当に大丈夫かな? 怪我しなきゃいいけど・・・・
あーっ、もっと美神さんの力になれればなー。文珠を渡すことしかできないなんて。
・・・・・美神さん、無事に帰ってきて下さいよ。


そんなことを考えながらアパートへの道のりを歩く横島であった。


『あとがき』
どうも「小町の国から」です。
考えていることを文章にするのは難しいですね。
書いた後で読み返すと妙に説明がくどくなっていて書き直しばかり。
何とかうまくなるよう頑張ります。

それでは。

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