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▽レス始

「妖物のお医者さんR 第8話(後編)(GS&動物のお医者さん)」

闇色の騎士 (2005-03-27 10:35/2005-03-28 07:22)
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〜第8話(後編)〜


夜の山道。

舗装こそされてはいるが、一車線しかない辺鄙な道である。

フクロウらしき動物の声が遠くから聞こえる中…

ぞろぞろと横島達は歩いていた。

「……何で俺買い出し班なんだ?」
疑問が拭い切れていない横島。

「山の中の夜ってホント真っ暗だなぁ…」
歩きながら魔理が言う。

あまりにも辺鄙すぎて、街灯も殆ど設置されていない。

「あそこの白いの何です!?」
突然、おキヌが近くの木の上を指差した!

そこには…白いナニかがゆらゆらと漂っている。

それは、ふわりと舞い上がり…横島達の方へと移動してきた!

「キャ〜!?」
おキヌが悲鳴をあげる。

「………!」
横島はすっと前に出ると、その物体目掛けて手刀を一閃した!

ふぁさっ

「…軽い?」
地面に落ちたそれを手に取って見てみると……

「なんだ、スーパーの袋か」
やれやれと肩をすくめる横島。

白い袋には「スーパー・ボーボボ」の字がプリントされている。

マークは何故か○の中に「毛魂」の文字。

「なんじゃこりゃ?変なマークのスーパーだなぁ…」
横島は思わず唸ってしまう。

「スーパーが近くにあるんですか?」
小鳩が素早くツッコミを入れて来た。

「あ、ごめん…それ来る時あたしが落としたモンだわ」
あはははは〜っとお気楽に笑う魔理。

「もう…マナー違反ですよ!」
横からおキヌの教育的指導が入る。

「がっかりさせないで下さいよぅ」
あからさまにしょんぼりする小鳩。

「なんだかあんまり買い物に行きたくない名前のお店ですけどね」
ピートがぼそっと言う。

後ろでうんうんと横島とシロが頷いている。

「ケェン…(どっちにせよ開いてないわよ、こんな時間だし…)」
横島の足元のタマモが突っ込んだのだが、横島以外の誰にも理解出来なかった。

(つか何で俺、何時の間にコイツらの言葉ナチュラルに理解出来てんだろ?)
本人は疑問の様だが。

「横島さん…さっきの大蒜屋敷の話ですけど…」
「ん?」
「本当は場所を知ってるんでしょう?教えて下さいよ…」
真剣な顔でピートが聞いて来る。

「ほんと〜〜に、知りたいか?」
横島は意地悪な笑みを浮かべた。

「は…はい…(恐いケド)」
「本当に……?」
「…………(涙)」
半泣きになるピート。

「…安心しろ、何処かの離れ小島だった」
「……え〜……」
ピートはへなへなと脱力する。

「所で…タビニンニクって知ってるか?」
「え?…いえ、足袋の形をした大蒜ですか?」
「……な訳無いだろ」
ピートの額にチョップでツッコむ横島。

「あうっ…で…それはなんなんですか?」
「それはな…海を渡ってやってくる大蒜だ(大嘘)」
「えええええええ!?」
はうっと顔を青ざめさせるピート。

「何してるんでしょう…横島さん達」
「空腹を紛らわしてるんだろ…」
おキヌと魔理が話しながら歩いて行く。

そして……

「うあ〜…腹減った〜もう歩きたくない〜あたしゃここで待ってる」
最初に魔理が脱落。

運動不足か?元レディースよ(推測)

暫く歩いて……

「すみませぇん…私も…」
恥ずかしそうに小鳩が挙手した。

魔理よ、小鳩より保たないのはどうかと思うが?

「仕方無いな」
「ですね」
「タマモちゃん、小鳩さんについていてあげて」
「ケェン(解ったわ)」

……と次々脱落する者が出て………

最終的には3人と一匹になった。

「大丈夫か?おキヌちゃん」
「はい、これでも歩くのは結構得意なんです」
気遣う横島に、笑顔で答えるおキヌ。

「大体初めて逢った時も山の中だったじゃないですか?」
「そういやそうか」
とりとめも無い話をしながら歩いていく二人。

この二人はある事件で初めて出会うのだが、それは後ほど語られる話。

「そうだ!」
突然ピートが大きな声を上げる。


脱落地点その1にて。

「遅いな〜…もう二時間になるぞ…」
くたばり状態のままの魔理がひとりごちた。

脱落地点その2。

「どうしたのかしら…横島さん…」
「ケェン…(横島…)」

大人しく待っている一人と一匹。


再び山道……


茂みの向こうから…幽鬼の様にゆらゆらと近付いて来る複数の影がある。

「来たぞ…津上」
「ええ…」
何時の間にやら、買い出し組から姿を消していたこの二人だが…


その影の姿が…月明かりに照らされ露になった!


直立したジャガー。

そう描写するしかない姿をした異形の存在である。

生意気にも剣を携えている奴もいた。

「アンノウン…ですね…GSの卵達が狙いでしょうか?」
「恐らくそうだろう、まだ生き残りがいるとはな…」
二人は頷き合うと、互いに変身ポーズをとった。


「「変身!!」」


バシュゥゥゥン!


津上翔一は目映い光に、葦原涼は緑の光に包まれたかと思うと…

次の瞬間!

二人は超人変化していた!!

翔一は光の神の力受け継ぎし戦士…「仮面ライダーアギト」に!

涼は同じ力を不完全ながら受け継いだ「仮面ライダーギルス」に!

共に「闇の神」との激戦を駆け抜けた戦友同士である。

「行くぞ!」

「ウォォォォォォォオツ!」


夜の闇の中で…壮絶なバトルが開始された!


だが…今回の本編には全然関係無いので割愛。


山道をきっぱり間違えた事をお詫び致します。


今度は本当に横島達のいる山道。

横島達はバスで通った道を外れ、森の中を歩いていた。

「確か自販機はこの大きいカーブを曲がり切った辺りにあったと思います、だから真っ直ぐ山道を通って降りた方が早いのでは?」
ピートが提案する。

しかし…

ちっとも早くなかったのである。

「……すっかり迷ったぞ…」
横島がジロリとピートを睨む。

「く…空腹は判断力を鈍らせるんですねぇ…あはははは…」
ウツロな笑い声を上げるピート。

「……(ぷちっ)」

横島の中でナニかがキレた。

しゃきん!と神通棍のよーなモノを取り出して…

「うげげ!?それはライド…


どごめしゃっ!ごきごきげりゅげりゅぼりごきんぐりゅん♪


「カイゾォォグゥゥ!?」


横島のライド○スティッ○乱打初謎突っ込みにより、意味不明の絶叫と共にピートが大地に沈む。

ゴミクズ同然になったピート(以下略)

解説しよう!謎突っ込みとは………

突っ込まれた人間も見ていた人間も、何が起こったか解らない程素早くかつ原理の不明な攻撃の事である!

………何だそれは?

「反省が足りんぞ反省が」
溜息を吐きつつ横島はぐりぐりとピートを踏み躙る。

そしておキヌの方を見て言った。

「引き返した方がいいんじゃないかな?」
「もう少しで着くかも知れませんよ…」
珍しくおキヌが前進指向である。

「見えないかな…自販機が…」

森の木が開けた所…

先に広がる闇におキヌが足を踏み出した時…!

ザッ…!

「あ!?」

そこに大地は…無かった!

「危ない!おキヌちゃん!!」

瞬間!

横島が信じられない行動に出た!!

落ちかけたおキヌの手を必死で引っ張り、彼女の僅かな体重と遠心力を利用してこちらに引き戻し…

「うりゃぁぁぁ!」

代わりに横島がおキヌの場所へ!

と…言う事は…?


「くっ…!?」

横島の姿はあっという間に闇の底へ消えて行った!


そう…全てが一瞬の間の出来事であった。

「ワォォォォォ〜〜〜ン!(せ…せんせぇぇぇぇぇ!)」
シロが谷底に向かって叫ぶ!

「横島さん…嘘…嘘ですよね…?」
呆然自失状態のおキヌ。

「そんな…」
何時の間にやら復活していたピートが愕然として呟く。

横島を飲み込んだ闇は…何も答えはしない。


ちゅどぉどどーん!!


何だか天使の輪のよーなものを、頭上に出しながら爆発する敵!


「……あれ?犬のよーな狼のよーな声が聞こえませんでした?」
「聞こえたような気がするな…」
アンノウン、ジャガーロードをキックで沈めた二人が呑気に言う。

ちなみにアンノウンとは、以前世間を騒がせた「不可能犯罪」を引き起こす謎の怪物どもである。

一説には、人間を生み出した闇の神の使徒とも言われているが…はっきりした正体は不明だ。

激しい戦いの末、仮面ライダーによって撃退されたのだが…僅かながら生き残りがいるらしい。

とは言え、強力な高位アンノウンは滅びてしまっている為…最早彼らの敵では無いが。


一方…宿泊所に残った学生達だが、彼らも空腹で熟睡出来なかった。

「食い物を買いに行った奴らはどうしたんだ?」
「もうすぐ夜が明けるぞ」
「……………」

彼らは少し考えた末、頷き合うと…


いきなり行動に出た!


ドンドンドン!

「教授!起きて下さい!もしかしたら遭難したかも!!」
学生達は美神教授の部屋のドアを叩く。

「…何よ…?」
意外にシンプルなパジャマ姿で出てきた美神教授は…すこぶる機嫌が悪そうだった。

「あ!」
「お菓子だ!!」
部屋を見た学生達が叫ぶ。

布団の周囲に散乱するお菓子の山!山!山!

カロリー計算とかしているのか?この女?

「こんなに沢山…荷物が妙に多いと思ったら…」
呆れ顔で見る学生達に、美神教授はしれっと…

「だって、食事が悪いの知ってたんだもん」とのたもうた。

なら最初にみんなに教えてやれ。

最も、この美神のイジワルな行動が後に己に跳ね返って来る事になるのだが。


再び山道。


「とにかく助けを呼ばないと!おキヌさんとシロはここで待っていて下さい!!」
ピートがそう言うと、来た道を引き返し始める。

(くそ…もっと真面目に飛ぶ訓練をしとくんだった!)

彼はバンパイアハーフであり、空を飛ぶ能力もあるのだが…

当然ながら、訓練せねばロクに上昇出来ないし進めない。

ここがハーフたる所以であろうと推測されるのだが。

何にせよ、さぼっていた彼でははっきり言って二重遭難な上に底で横島にボコられるのは必然である。


しばらくひた走ると…なんとか元の道に出た。

さらに道を戻ると……

「あ…買えたんですか?」
最後の脱落者…焼肉大好き氷川が聞いて来る。

何処かにタレとかを隠し持ってそうで怖い今日この頃。

「いや…ロープか何か持ってませんか?」
ピートが慌てた口調で言った。

「どうかしたんですか?」


ピートが手短に事情を話す。

「えええ!?…横島さんが谷底へ?!?」
驚きの声を上げる氷川誠。

「確か少し戻った所に民家っぽいモノがあった様な…?」
「急ぎましょう!」
二人は山道を走り出した。

それは…こじんまりした木造一階建ての家だった。

あまり生活感が無いのが気にかかったが、躊躇せずピートが戸を叩く。

ドンドンドンドン!!

「すみません!」

意外な程直ぐに電気が付き、中から一人の青年が姿を現した。

長身で…黒尽くめの姿の端正な顔立ちの青年だが、少し長めの前髪がやんわりと彼の右目を隠している。

そう、冒頭であっさり上級魔族を滅ぼしていた「彼」だ。

「…どうした?」
青年は特に眠そうな様子もなく問いかけて来た。

「それが……」
ピートが事情を説明する。

「…あそこか、あまり良くない状況だな…急ごう」
青年は直ぐ様土間に置いてあったロープを担ぐと、ピート達を連れて走り出した。

「あ…」
目を真っ赤にしたおキヌが、戻ってきたピート達を迎える。

「……ここに落ちたのか」
青年が闇の中を見つめた。

「私の…私のせいで…ううぅ…」
再び泣き出すおキヌ。

「わぉん?(せんせーを助けてくれるでござるか?)」
シロが青年を見上げた。

「…任せろ」
青年がぼそっと言う。

「わう…(不思議に安心出来る雰囲気の方でござるな…)」
「とにかく降りてみる」

彼はそう言うと、近くの丈夫そうな木にロープを縛りつける。

そして左手にロープの先端を持つと…

ダッ!!

黒いコートを翻し、谷底へと身を踊らせたのだ!!

「ああっ!?」
誰かが叫び声を上げた。

あっという間にその姿は闇に飲まれる。


崖の深さを示すかの様に、ロープはどんどん下に消えて行く。


その頃…美神教授達は転々と座っている脱落者を道標に、横島達に迫っていた。

「面倒が起こる前に見つけなきゃ…!」
本音がついつい出てしまう美神教授。


こちらは谷底の横島。


「あっちゃ〜…参ったな…」
何となく途方に暮れていた。

落ちる際本能的に飛び出した岩を蹴りつけ、下にサイキックシールドを展開しながら着地した為…

呆れた事にカスリ傷程度で済んでいる。

「しかし…視界が効かないな、こりゃ朝まで登れそうにないか?」
真っ暗な崖を見上げると…

天空には三日月がぽっかりと浮かんでいる。

「あの時もこんな三日月の夜だったな」


彼がまだ高校三年生の時、三ヶ月の「修行」に出ていた事は周知の通りだが。

それが佳境に入った時…


「実戦訓練もせねばならんな、行って来い」

と師匠にある山奥に放り出された事があった。


鬱蒼と生い茂る木々。

これ以上は無い!というくらい山である。


「うげげ、何の装備も無しに山奥かよ…」
横島は途方に暮れた顔で呟く。

まだ奥の手その2が完全に修得出来ていない為、使用は許可されておらず…

「ヘタすりゃ山を抉りかねんな、気を付けよう…」
奥の手その一で全て対応せねばならない彼であった。

「でもこんな所に何がいるってんだ?」

がさがさと獣道を歩き出す横島。

きっぱり遭難コースである。

吹き抜ける風が横島の影を切り流れてゆく。


行けども行けども草木ばかり。

「こりゃマジでやばいか?」

遂には日も暮れてしまい…

空にはぽっかり三日月。

「くぁ…すっかり日が暮れちまった、腹も減ったし…どないせーっちゅーんじゃ…」
殆ど半泣きで立ち尽くす横島、完全に遭難である。

「チクショ〜〜師匠のアホ〜〜!野垂れ死んだら化けて出てやる〜〜〜!!」
思わず月に向かって吠えてしまう。

(こんな所で死んでる場合じゃねーってのに…)


「大体おかしいぞ?何か起きねーのかよ?」


「きゃぁぁぁぁ!?」


「そうそう、こんな風に女の子の悲鳴が…って!ええええ!?」
森の先から聞こえて来た、文字通り絹を裂くような女性の悲鳴!

「何だ何だ!?」
ダッシュでそちらに向かう横島。

草を掻き分け木々の間を走り抜け…

「!?」

そこには、巫女姿の女の子と…

その前に立ち塞がる化け物の姿があった!

「あ…あああ…」
女の子は恐怖で動けないのか、その場に立ち尽くしている。

「何じゃありゃ!?」
横島も初めて見る相手に驚く。


そいつは…直立した海亀の様な姿をしていた。

当然ながら背中に甲羅。

「つか何で陸に海亀なんだよ!?」
頭を抱える横島。

彼は知らなかったが、こいつはアンノウン「トータスロード」であった。

丁度この頃、あちらこちらで不可能犯罪が急増。

オカGや警察が奔走する中、アギト達が動き出していたのだが…

「ちぃっ!!」
横島は疾風の如く女の子とトータスロードの間に割って入った!

「貴方は!?」
女の子が横島の背中に声を掛ける。

「俺が誰なんてどうでもいい!兎に角逃げろ!!早く!」
「で…でも…」
彼女はふるふると顔を振った。

「こんな化け物に勝てる訳無いです!貴方も一緒に…」
「コイツは殺る気満々だ!二人一緒では逃げ切れるもんじゃねぇ!先に行ってくれ!!」
敵を牽制しながら横島が吠える。

「でも!」
「心配するな!俺逃げ足だけは自信あるんだ!先に逃げてくれりゃ俺も逃げる!!」
横島はちらりと女の子を振り向いて笑みを見せた。

(可愛い子だな…なら尚更ここで死なせる訳にゃ行かねぇ)

「本当ですね?絶対に…逃げて下さいね!?」
彼女は振り返り振り返り、その場から姿を消す。


「待たせたな、てめぇか?師匠の言ってた奴は?」
横島はさっきの女の子に見せた優しい笑みでは無く、不敵な笑みを敵に向ける。


ドン!

凄まじい霊気が横島から立ち昇った。

「……」
トータスロードの手が、腰の横でZを書く様に動く。

これは、奴らの「処刑」の合図である。

人ならざる力を持てし者を裁く為の…

「行くぜ!「幻影裂拳」ファントムブレイカァァ!!」
横島の手が霊気の篭手に包まれた。

ぶん!

敵の、ヒレ状に変化した手が恐ろしいパワーで空間を凪ぐ!

「遅い!!」
その下を掻い潜り、その腹に攻撃を叩き込もうとする横島。

だが。

ガキィィィィン!!

「くぁ!?」
その攻撃がやすやすと弾き返された。

見ると、トータスロードは何時の間にか背中を向けている。

「何だよこれ!硬ってぇ!?」
両腕を痛そうに振る横島。

どうやらコイツは攻撃より防御に特化したアンノウンらしい。

「んなアホな!?接近戦用では一番の破壊力を誇るブレイカーが…」
彼は初めて技が破られた事に呆然となり呟く。

そこにすかさずトータスロードの攻撃が来る!

「うわわ!?」
それでも必死に攻撃を避ける。

動きは左程速くない、だがパワーは恐ろしく高い!

バキャッ!!

木が粉々に砕け散る!

「うわ!?こんなの喰らったら一撃で終わりだ!!」
即死攻撃を死に物狂いで避けながら考える横島。


(考えろ!このカメ野郎をぶっ倒す方法…)

「ノロマなカメに硬い甲羅…硬い物を砕くには…」

ぶん!

「おっと!」
迫るヒレ一閃を横っ飛びでかわしながら、敵の背後に回り込む。

「一か八か!「幻影突貫」ファントムスマッシャー!!

ばしゅぅぅぅん!

横島の両腕がドリル状に変化した!

「一撃で駄目なら連続攻撃だ!!」

瞬間!

霊気のドリルがトータスロードの甲羅目掛けて発射される!

ズドゥン!

やはり甲羅はビクともしない。

「まだまだ!これで終わりと思うなよ!!!」
更に連続でドリルが叩き込まれる!

ズドゥン!ズドゥン!ズドゥンンン!!

その衝撃でジリジリと押されてゆくトータスロード。

そして…


「…!?」
敵が明らかに動揺した様子を見せた。

何故なら…

ビシ!ビシビシッ!!

あの恐ろしく硬い甲羅にひびが入り始めたからだ!

「おらおらおらぁっ!!」
そこに容赦なくドリルがぶち込まれる!

「グァ!?」

鈍い音を立てて甲羅が砕け散った。

その下には柔らかそうな体組織が見えている。


「貰った!今度こそ「幻影裂拳」ファントムブレイカァァァ!!」


すかさず必殺の一撃が襲い掛かった!


グシャァァァ!!!


「グギャァァァア!?」

ブシュッ!

その余波がトータスロードの腹を突き破って突き抜ける。

「ガガガガガァァァ…」
頭の上に天使の輪の様なモノを出しながら…


ズドゥゥム!


爆発するトータスロード!!

「うぉ!?」

転がりながら必死で爆発を避ける横島。

「うぉぉ!爆発するなんざ聞いてねーぞ!?」
素早く立ち上がりながら悪態を吐く辺り、余裕があるのか無いのか解らん奴である。


「あ…」

女の子ー氷室キヌは、山林を抜けた所であの爆発を聞いた。

彼女の家は、この近くの人骨温泉の更に近くにある神社である。

奇妙な気配を敏感に察し、確かめるために山を上がって来たのだ。


「一体…どうなったの?」
慌てておキヌは今来た道を駆け戻る。


「!?」

彼女がその場所で見たモノは…

何かが爆発した様な跡、へし折れまくった木々。

ただそれだけであった。


「…あの人は?」

辺りを見回すが、その姿は何処にも無い。


時は過ぎて、大学入学式。


「うわぁ…人が沢山ですね〜…」
無事合格を果たしたおキヌが、キャンパスを物珍しそうに見て回っている。

あまりにもキョロキョロし過ぎて、前方不注意状態の彼女。

当然ながら…

どん!

誰かにぶつかってしまう。

「きゃ!?」
「うわ!?」
「おっと!」

ゲシッ!

「はうっ!?」

はっし!

「あ」

おキヌには何が起こったか解らなかった。

見えた光景は、蹴倒された金髪美青年。

そして、自分の手を握って倒れないように引っ張ってくれているバンダナ青年。

「「あ!」」


この時、おキヌにぶつかったのは…やはりおのぼりさん状態のピートだった。

従って、横島は情け容赦なく邪魔なピートを蹴倒しておキヌを転倒から救ったのである。


「貴方は…あの時の!」
「ありゃ…君は…」
まじまじと見詰め合う二人。

「痛たたた…いきなり何をするんですか!?」
噛み付いてくるピートに…

「どやかましい」

ゲン!

「はぎゃうっ!?」

横島は見事な踵落としを喰らわせて沈黙させる。

「良かった…無事だったんですね!」
「ん…ああ、言ったろ?俺の逃げ足は天下一品だってさ」
はっはっはっと笑ってみせる横島。

「…でも、あの爆発は一体何だったんでしょうか?」
「うーん、俺も全速力で忍者もびっくり!のアクションかまして逃げたからさっぱり」
彼はナチュラルに嘘八百をのたまう。

「えっと…取り敢えずあの時はお世話になりました、私…氷室キヌと申します」
「こりゃご丁寧にどうも…俺は横島忠夫、んでそこに寝てるへっぽこバンパイアハーフがピート」
手短に自己紹介を済ませる二人。

これが、出会いだった。


「…あの時も、今回も…私助けられてばっかりで…何も恩返し出来て無い…馬鹿!私の馬鹿!!」
闇を見つめながら自分をなじるおキヌ。


崖下の横島も…


「んな感じだったなぁ、まったく師匠め…とんでもない試練かましやがるな…」
三日月の下で苦笑する彼だった。


その時。


ふわぁっ………!


ナニモノかが横島の目の前に舞い降りて来た!

ザッ!

そして…軽やかに着地する。

「おお?」
横島は気配でそれが人間だと悟った。

「…君が横島クンか」
降りて来た青年が声を掛けてくる。

もう少し明るければ…横島は気が付いていただろう。

彼が…懐かしそうな表情で横島を見た事に…

「もしかして…助けに来てくれたっスか?」
「ああ、君の友達の頼みでな」
青年は上をちらりと見た。

「そうか…みんなが…色々すんません」
「気にするな、怪我が無くて何よりだ」
すまなそうにしている横島。

青年は特に気にしていない様子だ。

(でも…この声、聞き覚えがある様な?)

「それより…ついてこれるか?」
彼は上を親指で指して言った。

「ロープがあるなら…なんとか」
しれっと答える横島。

「じゃ、行くぞ」
「了解…」

グイグイ!

青年はロープの強度を確認すると、するすると登りだす。

更に横島が続き…

瞬く間に谷底から姿を消した!

上では……

「あの人…大丈夫ですかね?」
心配そうに氷川が呟く。

「うーん…」
ピートが唸り声で返す。

「……」
無言で闇を見つめ続けているおキヌ。


その時!


しゅばっ!しゅばっ!!

二つの人影が闇の谷から飛び出して来た!

「あ……」
「横島さん(くん)!?」
「わぉん!(せんせ〜!)」

しゅたっ!

二人は無事に着地する。

「横島さん!!」
泣きながらおキヌが横島に抱きついた!

ふわりと何とも言えないいい香りが横島の鼻をくすぐる。

「ごめん、心配かけて…」
「ううん…私が悪いんです…ごめんなさい!ごめんなさい横島さん!」

「良かった…」
ピートもほっと胸を撫で下ろす。

「ご苦労様です!」
「…いいって事だ」
氷川の労いの言葉に、青年はにこりともせずに答えた。


おキヌの肩越しに、横島は青年と目が合う。

「……!」

ほんの一瞬の事であったが、彼は青年の瞳の奥底に隠された物に気付いた。

それは…果てしない絶望と悲しみ。

かって自分が味わったモノより遥かに深いそれを。

横島が何か言おうとした時…

「じゃ、戻りましょうか」
ピートが言った。


(あの人は一体…どんな地獄を見てきたんだろう…)

それを聞く勇気は、横島には無かった。


道に戻ると…

「ああああ!見つけた!!」
丁度降りてきた美神教授が叫び声をあげる。

まあ結果的に言えば…間に合わなかったと言う事になる。

面倒は一応すでに起こってしまっていたからだ。


あの後、青年から食べ物まで分けて貰う羽目になり…


「うううう、感動です!」
「久しぶりのおいしいご飯ですよ!」
おにぎりをかっ喰らっているピートと氷川。

「……」
青年が去っていった方向をちらちら見ながらも、横島はおにぎりを齧っている。

「おいしい…」
その横でぴっとりくっいているおキヌ。

しかしこのおにぎり、もしかして彼の手作りか?

一人暮らしが長いのであろう、多分。


美神教授が、思いきり管理者としてのプライドを傷つけられた為…

「くっそ〜…あのくらいの空腹も我慢出来ないなんて…もう!覚えてなさいよ!」

やはりというか反省の色は無い様だ。

まあ取り敢えず翌年の実習からは、食事が改善される事に決まった。


横島達は後に…

下級生達からとても感謝される事になる。


帰りのバスの中にて。

「しまった!あの人の名前を聞くの忘れた…」
横島は迂闊にも今その事に気付いた。

「あ…そう言えば…」
隣のピートもハッとした表情になる。


「でも…あの声…確かに前何処かで聞いた事のある声だった…」


あの青年は……

家を出て、隣の小屋へ歩いて来る。

そしてシャッターを上げると、中に一台のバイクが停めてあった。

黒い…オフロードバイクである。

「横島…彼の不幸は俺達ガーディアンの失態だ…」
ぎりっと青年の奥歯が鳴った。

(アイツが完全に封印した筈のアレを一体誰が…!?)
どうやら”平衡の守護者”を良く知っている様だが…?

「再びあの様な事件は…絶対に起こさせはせん!我が命に代えてもな…!」
そう呟き、青年は漆黒のヘルメット〜SHOEIのホーネットを被る。

ちなみにSHOEIとは…

アライと並ぶ有名ヘルメットメーカーであり…作者もそこのヘルメットを愛用している。

イグニッションキーが差し込まれ、カチリと回された。

瞬時に点灯する計器類のバックライト。

セルスイッチにグローブで覆われた指が近付き…

ヴォン!ブルルルルルンッ!!

勢い良くエンジンが吠える!

良く手入れされているのかバッテリーが特殊なのか、全く隙の無い点火だ。

どうも彼がここに立ち寄ったのは、マシンを取りに来ていた為らしい。

「……潮時だな」
青年は呟くと、バイクを発進させ何処へともなく走り去って行った。


〜第9話に(多分)続く〜


今回は追加エピソードパターンです。

一話に一つはなるべく加えたいと思います。


それでは前回のレス返しです。


紅様>
そう、かなり説明不足だったと思っていたので…追加しました。アギト組は好きなのでこれまでどおり活躍させたいですね。


アガレス様>
氷川氏というかそれを演じていた要潤氏ですねw横島クンは実のところ粗食でも耐えられる特訓とかさせられて居た事ありなので、それほどくろうしてはいません。


D,様>
108は除夜の鐘のアレです(おい)
師匠は…もう少し先になりますが、基本的に以前と変わらない人物ではあります。


ATK51様>
やはり肉ネタは外せんでしょうw
あの最終回は賛否両論でしたからねぇ…私としても微妙でしたが。

ヒュウガは最後まで暗い予定だったんですが…今回はどうしましょう?
そもそもヒーローとして造形したキャラでもありませんし(苦笑)


柳野雫様>
はっきり言って肉しか食ってないイメージしかないものでw
悪戯好きという厄介なスキルを、ウチの魔理さんは持ってます。


それでは次回でお逢いしましょ〜でわでわ〜〜


追伸、ピートが飛行しない(出来ない)訳をすっかり書き忘れておりましたので修正致しました。

手落ちで申し訳ありません〜><

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