〜第8話〜
「お主を待っていた、ワシと同じ二つの魂を持つ者を」
「俺をか?」
「ワシは伝えねばならん…真の二天を……」
「やってやるさ…今の俺には力が必要なんだ」
「護れなかったからか?」
「ああ、それもある…だけどもう!こんな悲劇は俺を最後にしたいんだ!俺なんかに何が出来るのかは解んねぇけどな」
「この最強の二対の牙、生かすも殺すもお前次第だ」
「同じ二つの魂ってどういう事だよ?」
「お前の中にもう一人の「気」を感じる、かってワシがそうであったように」
「あんたも……同じだってのか?」
「……夢か」
横島は白々と明ける朝日とともに目覚めた。
「懐かしい夢を見たな」
その瞳が悲しみとも痛みともつかぬ色に染まっている。
「師匠……」
何処とも知れぬ夜の森の中。
「今度こそ殺す!!!」
ボロボロの茶色いローブを着た、魔道士ふうの姿をした存在が杖を振り上げて叫ぶ。
だがそいつは人間ではない。
「魔族」と呼ばれる異世界の住人。
魔力と呼ばれる力を駆使する、地上界では「悪魔」と呼ばれるモノ達だ。
「ふ…」
迎え討つは…黒衣の青年。
長身で黒い髪に黒い瞳、そして黒いロングコート。
その手にあるのは一振りの長刀。
「アシュ様の仇!死ねぇ!”黒き死の戦士”!!!」
その呪詛の言葉がそのまま呪文となり、杖から黒い球体が放たれる!
ぼしゅぅぅん!
それは禍々しい波動と共に青年に襲い掛かった。
推測する限り、その威力は人間の魔道士が使うモノを遥かに越えている。
そんなモノを喰らったら…
人間などひとたまりも無いどころか、地面に大穴さえ穿つだろう。
だが。
「…!」
斬ンンンンンンン!!!
魔道士姿のモノは愕然とする。
何故なら、青年は手にした長刀で渾身の魔法を斬り散らしたからだ!
「馬鹿な…人間にこんな真似が出来る筈が!?」
「今度はこちらの番だな、貴様ら反デタント派に生きる道は無い」
青年の体に凄まじい”気”が集まって行く。
「皆殺しだ」
「うあああ…こんな!こんな事が…これがアシュ様を…倒した力だと言うのか!?」
魔道士姿の魔族…恐らくは上級魔族であろうが、最早成す術も無く立ち尽くすだけであった。
「天空覇王!!裂空斬!!!」
瞬間!
無数の斬撃が魔道士を襲う!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
瞬時にズタズタにされた魔道士は、遺言を残す暇も無く消滅した。
「…一度隠れ家に戻るか」
謎の青年は踵を返して夜の闇に消えて行く。
その秀麗な顔に浮かぶ感情は…無かった。
翌日。
世の中にはネコが嫌いな人がいる。
「だって…恐いじゃないか妖岩?目を三日月みたいにしてさ…」
気弱そうな眼鏡の少年が、何か忍者風の姿をした長髪の少年にとくとくと語っている。
「なるほど、そうかも知れねーな…しかしその三日月が横になっている生き物(?)もいるんだぜ」
横島は少年達に向かってニヤリと笑った。
「わうん(せんせ、あんまりいじめちゃ駄目でござるよ)」
子供達が持っていた浮き輪に頭を突っ込みつつ、シロがご主人を見上げる。
何故浮き輪に顔を突っ込む?
まあそれはさておき。
横たわる三日月。
それは羊である。
東京から80km離れた山の中……
貸し切りバスがうねうねと続く山道を抜けて、やがて一つの建物の前で停車した。
看板には
「T市式神生産飼育試験場」と書かれている。
以前鬼道が冥子を誘って断られた、因縁の場所であった。
従って、彼が引率を辞退した為ブチブチ言いながらも美神が引率を引き受けていた。
ぞろぞろと降りてくる学生達。
「なあピート、夏休みって普通学校が休めるもんだよな…」
「…一応僕もそう思っていたんですけどね」
バンダナ姿の青年と金髪美青年が、大きなバッグを片手にバスから降りつつ愚痴っている。
「ブツクサ言わない!ピクニックか何かだと思いなさい!あ〜郊外は空気がおいしーわね〜」
なんだか白々しく話をそらすボディコン美女。
これで教授だって言うんだから、全く世の中ナメているとしか思えない展開だ。
夏休み中だが実習である。
「除霊学部…というか六道大学だって郊外みたいなもんだろーに……」
横島がぼやくと…
「そうですね、あんなやたらだだっ広いキャンパス…どうやって獲得したのやらさっぱりですね」
ピートも返す。
「うぉん(拙者は楽しいでござるよ)」
「そりゃお前はそーだろーなぁ…」
脳天気なシロの言葉に僅かな頭痛を感じる横島。
何故かこいつにだけシロの言葉が(なんとなく)解る様になってきたらしい。
この試験場には…
羊タイプの十二神将「ハイラ」の量産型式神「ハル」(安直なネーミングだ)が数百頭いて、学生は二泊三日で実習をする。
「いい?油断しちゃ駄目よ!あのアンニュイな目に騙されたら…大怪我だけじゃ済まないわよ…!!」
美神教授が珍しく真剣な顔で力説した。
ヒツジ(ハル)は一見大人しそうに見えるがそこは式神、ちゃんと技を持っている。
しゅぱぱぱぱぱぱっ!
「いてててて!」
「おっとっと…危ねぇ…」
横島はハルの毛針を間一髪かわしたが、ピートは容赦なく直撃を受けた!
「いくらバンパイアハーフだからってこれはあんまりでは…?」
泣きながらピートは文句をこぼす。
「兎に角針を抜きますからじっとしてて下さいね?」
おキヌが針を丁寧に抜いてくれている。
「す…すみません」
恐縮気味でピートが言う。
「何言ってんだピート、こいつらに背中見せたら最後…サクっとやられるに決まってるだろーが」
平然とのたまう横島。
どうも「イル」の時何かを悟った様だ。
「いや、プルプルの場合前を向いてるからって安全とは言えないんだよ」
試験場の職員が諦めた様な口調で言う。
その言葉が終わるのを待っていたかの様に…
「プルプル」と呼ばれたハルは体をくるんと丸めて弾丸の様に体当たりを敢行した!
がきぃぃぃぃん!!
「おっと」
プルプルの「グー」(職員談)をシールドでいなした横島。
「やったな…?じゃ、こっちの攻撃だ!」
そのまま無表情で霊気を爆発させようとする。
「ま、まあまあ横島さん…」
それを必死で止めるおキヌ。
その隙にプルプルはとっとと逃げて行く。
「……ふう…やれやれ」
この一際大きくて凶暴なハルはプルプルと名付けられているらしい。
この実習をつつがなく終えるために、このハルは避けようと横島は思った。
(式神ぶっ潰して弁償させられるのはやだしなぁ…)
横島家の家計を預かるのは当然ながらユウリである。
彼女はしっかりものだが、裏を返せば「ケチ」だと言えるかも知れない。
そのユウリが余計な出費を認めるとも思えなかったのだ。
(以前派手にガルちゃんとやりあって、家ぶっ壊しちまった時も自力バイトで弁償させられたしな)
取り敢えず、出来るだけ気をつけようと横島は心に誓ったのである。
「シロ!ボーダーコリーがいるぞ、遊んできな」
試験場にはシロやタマモのいい遊び相手がいた。
ハルの移動作業の手伝いをする犬達である。
「うぉう…(拙者犬ではござらんのだが…)」
「ケーン(あんたは馬鹿犬で十分よ)」
「がるる!(だから犬ではござらんと言っているでござる!)」
「ケーン!(そういう所が犬なのよ!)」
シロはブチ切れ寸前状態で口から霊波刀を発生させると、タマモも周囲に狐火を展開した!
「あ〜喧嘩しないの!」
おキヌの仲裁が速攻で入る。
「く〜ん(おキヌ殿に免じて今回は勘弁してやるでござる)」
「ケーン…(それはこちらのセリフよ)」
「うぉん!(口の減らない女狐でござるな!)」
「ケーン!!(お互い様ね!馬鹿犬!)」
全然終わらない戦いに…
「いい加減にしろお前ら!!」
ついに横島までキレた。
「くぅ〜ん〜(だって〜この女狐が〜)」
「ケーン(こいつが悪いのよ横島)」
相変わらず睨みあってはいるが、なんとかその場は収まった。
「なんでこいつらこんなに仲が悪いんだろうな?」
「さあ……犬猿の仲でも無いでしょうし…」
首を傾げる横島とおキヌ。
そうこうしている内に一日目の実習が終わった。
夜はお菓子を食べながら会談…じゃなく怪談。
「…という事だ、その押入れから覗く”手”が誰なのかは…俺も知らないし知りたくも無いな」
横島が語る、前のアパートで起きた怪奇事件の話に震え上がる一同。
「恐いです〜〜〜〜!」
小鳩が泣きそうな顔でおキヌにしがみついている。
本当なら横島にしがみつきたい所だったが横島の右横はピート、左横は魔理だった。
誰が決めたんだ?この円陣の並び順?
「た、たたた大した話じゃねーな」
平然を装う魔理だったが言葉が震えている。
「意外でしたね、一文字さんこういう話駄目なんだ?」
ピートのツッコミが入った。
「いやぁ…普通は平気なんだけど、横島さんの語りが絶妙で…あははは」
乾いた笑いを上げながら頭を掻く魔理。
「…横島さんよく平気でしたね」
「慣れだろ多分、その頃からだな…俺が霊能力に目覚め始めたのは…」
おキヌの質問に遠い目をする横島であった。
「さて…続けよう、第49話…「永遠の切り札」」
「嫌ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」×人数分
…ある意味怪談かも知れない。
2日目…魔理が遊び(?)を発明する。
「まずは子ハルを抱えて突っ走るんだ、すると子ハルが鳴く」
「で?」
やる気なさげな横島がテキトーな相槌を打つ。
「そうすると我が子の声を聞きつけて親が憤怒の形相で追いかけてくるだろうから、そこでフェンスの向こうへ逃げきれば人間の勝ち!どうだ?」
魔理は胸を張って言った。
「良くないんじゃないですか?遊びでそういう事をするのは?」
ピートが常識論を述べる。
(遊びで無かったらただの泥棒じゃねーか…)
そう思ったが、やっぱりやる気ナッシングの横島はあえて言わなかった。
「しかし人間だって危険に身を晒しているんだぜ?」
「遭わなくてもいい危険でしょうが」
なんだか紛糾している様だ。
さて、魔理が考案したおマヌケなこのゲームでは、子ハルをだんだん大きくしていく。
荷物(子ハル)が重い程人間のスピードは落ちる、親ハルのスピードがそれを上回った場合は………
「うわぁぁぁぁぁっ!」
親ハルの頭突きをまともに背中に浴びてピートが絶叫した。
……結局やらされるんかい。
まあ、人間(バンパイアハーフ含む)もかなり痛いメに遭うのである。
「次…横島さんの番ですよ…」
半泣き状態のピートに迫られて、渋々横島はフェンスの中に入った。
(どうして全員参加なんだ?)
そんな釈然としない疑問を抱えつつ、辺りを見回す横島。
元々式神「ハイラ」の大きさはさほど大きいものではない、せいぜいバスケットボール大くらいである。
だが、ここでは「どのくらいの大きさが一番使いやすいか?」という実験も兼ねているので、一番大きい物では羊くらいの大きさの奴もいた。
「……これか?大人(?)じゃないのか?」
魔理に言われて近付いたハルの大きさは、バスケットボールより一回り大きいくらいなのだが……
「子供だって!顔を見てみろよ…あどけない…よーな気がするだろ?」
「気がするって…いい加減だなぁ…仕方ない、これも付き合いだ…釈然としねぇが」
いやいやながらも子ハルを抱きあげる横島。
「うーん…それにしても大きいな、これで他の子ハルと同じ頃に創られたんだろうか?」
その時、遠くからけたたましい鳴き声が聞こえてくる!
こちらに向かって突進してくる比較的大きなハルは………
「げ!?横島さん逃げろ!!そいつはプルプルだッ!」
魔理が慌てて叫ぶ。
「…妙にコイツでかいと思ったが…奴の子ハルだったか」
横島は子ハルを降ろすと、両手に「栄光の手」を展開した!
ただし篭手状で。
プルプルは迷わず横島目掛けて「スクリューアタック」(魔理命名)を放った!
がしぃぃぃっ!
「おっと、相変わらず喧嘩っ早いな!だが今回はこちらが悪い…済まん」
横島はハルの技をあっさり受け止めると軽く押し返し、子ハルを返す。
プルプルはやる気を削がれたのか、子供(?)を伴ってとっとと去っていく。
「……ここまで来ると突っ込むのも馬鹿馬鹿しくなる、底の知れない男だよ全く」
このろくでもない遊びを考えた本人は反省の色無しの様だ。
「なんか横島さん、プルプルに縁があるみたいですね…」
「勘弁してくれ…」
ピートの言葉にうんざりといった表情で答える横島。
「ま、取り敢えずハルの欠点が見えて来たな」
「はい?」
横島の言葉におキヌが反応する。
「つまりだ、攻撃パターンがいまいち少ないって事さ…せいぜいさっきの回転体当たり…」
「スクリューアタックだって」
横槍を入れる魔理を無視して横島は続ける。
「と毛バリしかない訳だ、それでも十二神将は複数がコンビネーションを組んで戦う事でそれを補う性質の筈だからそれでいいんだろうけど……」
「ハイラは確か夢の中に入れる能力もあるって聞きましたけど」
今度はピートがツッコミを入れた。
「ピート、スペックをちゃんと見たか?量産型だからそれはオミットしてあるって書いてあっただろ?」
「あ…そうでした…」
横島の指摘にピートが赤面する。
「こすとだうんって言うんですよね?」
「そう、でないと利益なんて出ないしそれに六道家も簡単に秘蔵の式神をそっくりそのままコピーはしないだろうな」
おキヌの言葉に横島は満足そうに頷いた。
今回の実習には横島がやった様な「欠点の指摘」も含まれている。
そうやって試行錯誤の繰り返しでようやく製品版が出来上がるのは、一般の商品開発と大差無い。
「何にしてもこれ以上の能力付加が望めないなら、最初から他の量産型式神との連携を前提とした形で出すしかない」
横島はそう結論付けた。
「すると、「これひとつでも遊べますが他のオプションをお買い上げ頂くともっと楽しく遊べます」とか言って結局全部買わなきゃまともに遊べねぇ玩具みたいなモンか?」
魔理が妙な例えを持ち出してきた。
「……何だか嫌な例えだが間違っちゃいない、だが一文字さん…そういう経験あるのか?」
「ぎくっ」
横島の指摘に魔理の動きが止まる。
「………あ〜そ〜だよ!あるよ!!ど〜せ残りは買って貰えずに金持ちのダチん家で遊ばせて貰ったんだよ!悪いか〜〜ッ!」
……逆ギレした様だ。
「…ま、良くある話だ…」
辺りからも「俺も」「私もそーいえば…」などという声が上がった。
どうやら一文字魔理は子供の頃の玩具も、男の子向きのモノを好んだ様だ。
「えっと、おとなのじじょうとかしょうひんせんりゃくって言うんですよね?」
おキヌが首を傾げながら言う。
「…まあ、気をつけたほうがいいね…お金が幾らあっても足りなくなるらしいし」
しみじみと返す横島。
「うんうん」
ピートが何故か同意している。
もしかして何かそういう経験したのかピートよ?
引き続き…牧場実習である。
夜も更けて……
「腹減ったなぁ…」
魔理がお腹の辺りを撫でて言った。
「朝ご飯までまだ十時間もありますよ…」
浮かない表情でピートが答える。
「寝ちまえばいいのさ、意識が戻ったらすぐ朝メシだ」
横島がやはりやる気ゼロの口調で口を挟む。
「でもお腹が減って眠れないんだよ」
情けない声でのたまいつつ、床にぐで〜っとくたばっている魔理。
念の為に言っておくが、部屋は男女別である。
ただ単に横島達の部屋に、おキヌ以下女性軍が押しかけているのだ。
実習二日目の夜である。
この試験場の食事は、そもそも第一食目から概ね不評だった。
「あまり美味しくありませんね…」
おキヌが溜息を吐く。
「…自分で作った方がマシかも…」
貧乏で贅沢を言ってられない境遇の小鳩でさえこれである。
その味、推して知るべし。
「しょうがないでしょ?40人分以上の食事を一人で作るんだから…贅沢言わないでよね!試験場にはアンタらが散々迷惑をかけるのよ!」
厳しく言い放つ美神教授。
だがどーでもよさそうな表情と、心の篭ってない口調からして立場上の発言の様だ。
食事の時間になると、どこからともなく…
正体不明にして認識不能のおばはんが出現して食事を作ってくれるのだが。
なんつーかこう…ぶっちゃけまずいのだ。
「ここの職員ですかね、津上さん」
「外から来ているみたいですよ、二階堂…いえいえ氷川さん」
学生ふたりがヒソヒソ話してたり。
「ああ、牛丼ツユだくおかわりしたい…焼肉が食べたい…」
「氷川さん牛肉好きですからねぇ」
氷川という男、恐らくはアメリカ産牛肉輸入禁止のあおりをかなり喰らっているに違いない。
しかも…量が少な目である。
「もっとくれよ〜!」
「もーカラッポですよぅ…」
魔理の要求に半泣きで答える小鳩。
それでもまだ一日目は、持ってきたお菓子があったのでまだ良かった。
何しろ怪談をする余裕さえあったのだ。
「……第108話、大蒜屋敷…」
「ひぃぃぃぃぃ!?」
絶叫するピート。
つーか横島よ、何故にそんなに怪談のストックがあるのだ?
「昔々ある所に…ギョウザマニアのおじいさんとニンニク大好きなおばあさんが…」
「ひぇぇぇ!?」
「これ…怪談ですか?」
「うーん…確かに嫌な夫婦ですけど」
「メチャクチャ健康そうでいい家族だと思うけど?」
ナニが恐いのか、魔理達にはサッパリ解らない。
「……で、ドアを開けるとそこには…無数の大蒜の目が…」
「あうあうあうあう…」
横島が無表情で淡々と語り、ピートが叫び声をあげまくる…
イジメ?
「後日…その辺りの民家で、「最近大きな大蒜が収穫される」と話題になったとか」
「ばばば場所は何処なんですぅぅ?東京じゃ無いでしょうね!?」
顔面蒼白で聞いてくるピート。
「さあ、何処だったかな」
横島は明後日の方向を見ている。
………と言うふうに(ピートにとってだけ)恐い話を楽しむ余裕もあったのだ。
「で、結局それの何処が怪談なんだよ?」
「ちっとも恐くないです…それにニンニクに目って、ニンニクの芽とかけたギャグでは?」
不満気に言う魔理と小鳩。
キミ達…ピートがバンパイアハーフだっての忘れてるね。
しかし…実習二日目の夜。
すでにお菓子は底を尽き…
昼間の(アホゥな悪戯含む)実習の数々の疲れはかえって学生達の目を冴えさせた。
「こんな事なら…小ハル盗みゲームなんてやるんじゃなかったよ」
魔理がベクトルのズレた反省をしている。
「そうですね…食べ物は自分で作らなきゃ手に入らないんですね」
ピートはこの時本気でバラの種を蒔こうと思ったらしい。
何時に収穫出来るのだ?
「……羊が食べたい…」
ぼそっと魔理が呟く。
「式神だって」
横島のツッコミがすかさず入った。
「プルプルでも良いから…食べたい…」
……聞いてない様だ。
「下でコーヒーでも飲みましょうか」
ピートがよっと立ち上がる。
「砂糖をたっぷり入れてですね…」
おキヌが後に付いて立ち上がった。
「目が冴えるだけだと思うがなぁ…」
こっくりこっくり居眠り寸前の横島が言う。
どうやらこのまま夢の世界へと避難する気らしい。
やたら飢えに強い横島だが、そういう訓練でもやったのか?
ピート達が去ったのを見計らって、小鳩がそっと横島に近付き…
「じゃ、小鳩が添い寝を……(ぽっ)」
「(びくぅっ!)さ〜コーヒーを飲みにいこーか!サクサクっとね!!」
横島が慌ててピート達の後を追って部屋を飛び出す。
一瞬で目が覚めたらしい。
「ああん〜横島さん〜!」
涙ぐみながら横島の後を追う小鳩。
…結構ウブなんだね…横島クン。
というか小鳩よ、君はそういうキャラだったか?
それはさておき。
学生のほぼ全部が深夜、食堂にいる。
これがどんなに異様な事か。
ちなみに…お茶とコーヒーだけは自由に飲める様になっているのだ。
横島達の横のテーブルで、別の学生達が話している。
「何処かに食べ物は無いですかねぇ…牛丼とか焼肉とか」
氷川と呼ばれた青年は溜息を吐く。
肉しか無いのか君は?
「材料さえあれば俺が作ってあげるんですけど」
津上と言う名の青年が憂かない顔で答えた。
「確かに…津上の料理は一流だからな」
遠い目をする、さっきはいなかった金髪ツンツン頭の青年。
「待てよ…来る途中に自動販売機があったぞ」
「本当ですか!?葦原さん」
「バスで通った所ですか?」
にわかに食堂がざわめき始めた。
「そうだ、思い出したぞ!全てを!確かにありましたよ!!」
津上と呼ばれた青年が頷く。
全てをって…記憶喪失でも回復したか?
「津上さん、距離は?」
「ここから5kmくらいだ、下り坂だから一時間かからないかも知れんぞ」
代わりに葦原涼が答える。
「行こう!」
学生たちは待機班、買い出し班に別れて行動を開始した。
〜第8話後編に続く〜
今回はあまりイジる場所が無いので、それほど変わった印象は受けないかと思います。
まあきっぱり出番が無くなった悲劇の人々もいますが…
では、前回のレス返しです。
煌鬼様>
ヘビーアームズのあれを両手に装備したような感じと思ってください、広範囲虐殺攻撃というレベルではほぼ最強の攻撃力を誇っています。
HAL様>
確かにまずいですね、修正しときました(汗)タマモの出番はこれから多くなります。
ガパソン様>
前も申しましたが、マケタカの元ネタは島本和彦先生の名作「炎の転校生」からです。しかも一シリーズ使い捨てキャラだった様に記憶しておりますが、やたらウケたのでここでのゲスト出演と相成った訳であります。
D,様>
ファントムシリーズの売りは「変幻自在」です、もう1つの破壊力オンリーだが融通が利きにくい「奥の手その2」と対になるような感じです。
ATK51様>
当然ながらここのアークはレプリカです、というか実物を流石にコピー室なんぞに置いておけませんし(笑)
今回「奥の手その2」は微妙に位置付けが変わっています、より明確にファントムシリーズとの線引きをした感じですが。
コメント主…どこぞのねるとんもどきの番組で女子アナに振られておりました(涙)
イメージが粉々だ〜!と嘆いたのは私だけでないはず…多分。
柳野雫様>
最近きちんと見始めたんですよね…某金色。
マケタカは敗者の存在するところなら何処にでも降臨するのです(笑)
紅様>
ご期待通りに降臨です。
剣が折れるというか恐らく修繕が完璧じゃなかったんでしょうね…
GシリーズとオカGシリーズ(?)は一応因果関係はありません(笑)
どっちも稼働時間に課題を残しているのは同じですが。
それでは次回日曜日の後編でお逢いしましょ〜でわでわ〜〜