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!警告!バイオレンス、壊れキャラ有り

「除霊部員と秘密の部屋  第11話  (GS+オリキャラ+色々)」

犬雀 (2005-03-26 23:38)
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第11話   「バイバイ、マイフレンド」


「愛子おぉぉぉ!!」

一瞬のミス。
それが取り返しのつかない結果を招くことは多々ある。
物陰から殺気も無く放たれた銃弾は、間違いなくセーラー服の少女を狙ったものだった。

横島の目の前で同級生の少女の体が後ろに倒れこむのが見えた。
宙に舞う木切れと古びた机の足。
致命的ではないかも知れない、だが楽観できる傷でもないはず。

恐怖の叫びを上げる少年の目は、彼女を押し倒すかのように飛び上がった古い机を映し出した。
その机の足の一本が半ばから折れている。
それが宙を舞う机の足と同じ色彩を持っていることを認めた彼は、足の筋肉が悲鳴を上げるのを無視して無理矢理に方向を変えると闇の中から現れ出た人影に向かって飛び掛る。

机やイスが散乱する足場を巧みに避け、霊波刀を発動させて間合いを詰める彼の前に暗闇から現れたのは異形の存在。

昔、父親と見た戦争映画に出てくる日本兵。
その手に握られた着剣された銃に見覚えがある。確か武器に詳しい父が「三八式歩兵銃」と教えてくれたものだ。

映画の日本兵と決定的に違うのは、その兵隊の体には肉が一つもついていないこと。
それは鉄兜をかぶり陸軍兵の姿をした白骨。

白骨はノロノロとした動作で次弾を発射すべくボルトを引き上げようとする。
それは横島にとって充分すぎる隙。

「斬れろぉぉぉ!!!」

白骨に肉薄し下段から逆袈裟に払われた霊波刀は歩兵銃ごと白骨を両断した。

ガチャリと乾いた音を立てて転がる白骨。
完全に分断された銃にはもはや殺傷力は無いだろう。
そう確信した横島は倒れている愛子の方を振り向く。
すでに驚愕から立ち直ったのか魔鈴が彼女を抱き起こしていた。
唯やアリエスが心配げに見守り、タイガーが周囲を警戒するなかでノロノロした動作で立ち上がる愛子。
やはり銃弾は彼女ではなく、その前に転がっている机に命中したらしい。

駆け寄る横島に「大丈夫」と青ざめた笑顔を向ける愛子の前で彼女の代わりに銃弾を受けた机がモゾモゾと動き出す。

「これも妖怪ですかノー!」と拳に霊波を込めるタイガーの前で起き上がった机はブルリと震えると、その天板にキリリと引き締まった男の尻を出現させた。


「お、お、お、おしり机えぇぇぇぇぇ?!!!!」

「いかにも!」

横島の絶叫に相変わらずどこから声を出しているのか考えたくないけど、野太い声で答えるは机妖怪、その名も「おしり机」。

「なんでここにいぃぃぃぃ!!」

さっきとは違う意味で青ざめた愛子の叫びにおしり机は尻ぺたをピクピクと震わせて豪快に笑った。

「以前、君たちと戦った時に吹き飛ばされたであろう。その後、意識を失った私が再び気づいた時、解体業者と名乗る者たちがガレキを崩し出したのでな…」

言葉途中でやはり足三本ではバランスが悪いのかグラリと揺らめく。

「…それで巻き込まれてはかなわんとこっそり逃げ出そうとしたら足元が崩れてここに落ちた。」

そう言ってグイと無理矢理尻ぺたの片方を引くつかせて上を指したような気がする。
つられて天井を見れば確かに一箇所、人一人がやっと通れるか?といった細い裂け目があった。
どうやらそこから落ちたと言いたいらしい。

「しかし何でまたこんなところでじっとしてたんだ?」

「動くと君の倒した骸骨が襲ってくるのだよ。だからただの机のフリをしていた。」

「がっはっはっ」と豪快に笑うおしり机に愛子ちゃん卒倒寸前。

「へう…でも愛子ちゃんを助けてくれてありがとですぅ。」

「ああ、俺からも礼をいうぞ。」

唯と横島の言葉に頷く他のメンバー。

「なんの。同じ机妖怪同士庇うのは当然だ!」とまたまた豪快に笑うおしり机を「足が一本飛んでますけど大丈夫なんですか?」と魔鈴が気遣う。
その言葉に愛子の顔にも後悔の表情が浮かんだ。
いかに同族扱いは生理的にイヤだとは言え恩は恩。それをないがしろにする彼女ではない。
きょときょととあたりを見回すと吹き飛んだおしり机の足を拾ってきてアリエスに差し出した。

「アリエスちゃん、お、おしり机さんの足直せる?」

まだ「おしり机」とは言いにくそうな愛子に差し出された木切れを見て申し訳なさそうに首を振るアリエス。
どうやらカッパ液では「治す」ことは出来ても、「直す」ことは出来ないらしい。
「そう…」軽く溜め息をついて横島に向き直る。

「あ、あの、横島君。頼める?」

「ああ、けど文珠はあと一個だけなんだよな。」

「じゃあダメかな?」と下からおずおずと見上げる愛子に少年は頬を掻きながらニパッと笑う。

「もう少し煩悩が溜まればもう一個ぐらい作れると思うからいいぞ。その代わり…「協力しろというのはセクハラですよ」…あう…」

「しょうがないですねえ」と笑顔で横島に釘を刺す魔鈴にはそれが彼の照れ隠しだと言うことはわかっている。
けど一言言ってしまうあたり自称乙女も中々複雑らしい。

「あ、あはは。んなことないっすよ!ほれおしり机、足を出せ!」

下手糞に誤魔化しながら横島は『直』の文珠を使った。

「集中せんと『直す』じゃなくて別な意味になっちまうから動くなよ。」

戸惑うおしり机の足元で文珠はその役目を果たし「これは…」と尻ぺたをプルプルさせて驚くおしり机に横島は額に汗をかきつつも笑いかける。

「愛子を助けてくれたからな。お礼だ。ところでお前もここから出るか?」

「なに?私も一緒に行っていいのか?」

「えう。おしり机さんも仲間ですぅ!」

動揺の為か語尾を震わすおしり机に唯が笑いかける。
物と会話できる彼女にとって見ればたいして抵抗は無いのかも知れない。
唯の台詞に他のメンバーも、愛子ちゃんは多少複雑な表情で頷く。

「仲間…こんな醜い私を仲間と呼んでくれるか…」

感極まってプルプルと震えるおしり机に(屁じゃあるまいな…)と胡乱げな目を向ける除霊部員の中で
「醜いと言うか…せめてもうちょっと可愛ければねぇ…」となんとか冷や汗混じりの苦笑いを見せる愛子だったがタイガーの余計な一言に顔色を変えた。

「せめてオナゴの尻だっ…ぐふぅ!」

マッスルバスターを使いこなす超人レスラーもどきは愛子の正拳一発で沈没した。
乙女のトラウマを考えなしに穿り返して血反吐の海に沈む虎男に、同情の目を向けつつアリエスが胸元から取り出したマジックで彼の尻ぺたに何やら描き始める。

「う?アリエスちゃん何を描いて…プッ!」

後ろから覗き込んだ唯が噴き出す。

「これで可愛くなりますわ♪」とアリエスが皆に示したのは両の尻ぺたに星を飛ばしたやたらと乙女チックな瞳を描かれたおしり机。

「余計に不気味やぁぁぁ!!」と突っ込んだ横島の顔色が不意に変わる。

「霊気!」と魔鈴も叫ぶと箒を構えて横島が倒した白骨の方を睨みつけた。

崩れ落ちた白骨の胸元辺りから立ち上った白い靄は少年達のの見ている前で人の形をとる。
そこに立つのは旧軍の制服を着た、横島たちと対して年齢が変わらぬ少年兵の姿。

再び警戒し戦闘態勢をとる横島たちだったが、少年兵の霊はキョロキョロとあたりを見回すだけで攻撃してくる気配は無い。
一通り周囲を見回すと横島たちに向けて不思議そうな顔で声をかけてきた。

「君たちは何者でありますか?」

「俺たちはここの高校の生徒だ。」

「高校?ここは帝国陸軍の施設でありますが?」

「それは昔の話よ。今はあの戦争から60年も立っているの。」

愛子の言葉に霊は驚愕の表情を見せる。

「真でありますか?!では日本は勝ったのですか?!」

「いや…「待って横島君」…ん?」

負けたと言おうとした横島の前に進み出て彼の言葉を遮る愛子。
その声音は少しばかり暗い響きを含んでいた。

「あなたたちの尊い犠牲のおかげで日本は滅びなかったわ。今は世界でもトップクラスの経済大国よ。」

「本当ですか!では自分たちの死は無駄では無かったのですね!」

少年兵の顔に歓喜と安堵の色があふれ出る。

「ええ。ところであなたは?」

「自分は帝都防衛の任につく近衛歩兵第3連隊 黄泉大隊所属 近藤英正上等兵であります!」

「ちょっと待って下さい。あなたは自分が死んだと自覚しているのですか?」

驚く魔鈴に少年兵の霊は背筋を伸ばしたままで返答した。

「はっ!自分は帝都を守る礎としてこの命をキ号作戦に捧げたのですから当然であります。」

「キ号作戦?」と聞いたことの無い言葉に首を傾げる横島に対して近藤は少し考えるようなそぶりで言った。

「民間人においそれと話すわけにはいきません。」

「でも、戦争はもうずっと前に終わったんですよ。それなのに貴方はここで霊として存在している。私たちは霊能者です。あなたさえ良ければ成仏のお手伝いが出来ます。そのためにも情報が必要なんです。」

魔鈴の台詞の「成仏」と言う言葉に近藤の顔に喜びの色が浮かぶ。

「真でありますか!!自分は父母の所に行けるのですか?!」

「ご家族は?」と聞くアリエスに彼は顔を伏せた。

「家族は皆、空襲で亡くなりました…キ号作戦に魂を捧げた自分は靖国に行くことも、父母の元に逝くことも諦めておりました。ですが…もしあの世で家族に会えるなら…」

「ええ。約束しますよ。」と優しく笑う魔鈴に近藤も年相応の笑顔を見せて頷き返す。

「わかりました…。そちらの女性を見れば現世はもはや鬼畜米英などではないということでしょう。自分は一兵卒に過ぎませんが知っていることをお話しましょう。」

………


近藤から告げられたのはキ号作戦の情報。
それは聞くだけで吐き気をもよおすような、腐臭に塗れたものだった。

「つまり…『不死の軍隊』を作り出す…それがこの施設の目的というわけですか…。」

「はい。自分たちは「帝都を侵す者を滅殺する最後の護り」としてここに集められました。そして炎上寺中佐の命で皆、自決したのであります。」

「なんでそんなことを!」

愛子の絶叫に近藤は寂しげに笑う。

「航空兵でも無い自分では神風隊のように身命を捧げることは出来ません。せめて敵に一矢報いるためにはこの方法しかなかったのです。」

「だから骸骨兵になったと言うんですかいノー」

「自決した後のことははっきり覚えておりません。ですが何かに体が閉じ込められたような感覚だけは残っております。時折、侵入者…と言ってもネズミばかりでありましたが、があった時は目覚めました。」

「んじゃさっきのコインは何ですかぁ?」

「コイン?金魂のことですか?あれは中佐が霊を封入する実験で作ったものと聞いております。」

「その中佐ってのはどんな人ですの?」

金髪のアリエスに日本語で聞かれるのが不思議なのか、近藤は戸惑った様子ながらも言葉を続けた。

「自分もよくは知りません。噂では陰陽師の家系に連なる方とか、南方戦線に従軍された時に不死の呪法を手に入れてこの作戦を発案したとのことですが…」

「横島さん。ちょっと見てください。」と横島に斬られた骸骨を調べていた魔鈴が少年を呼んだ。

「なんすか?」と寄って来る少年に魔鈴は骸骨の胸のところにあったと思しき赤黒い石を示した。

「これなんですけど…おそらく死んだ兵隊さんの霊魂はこの石に封入されていたのではないでしょうか?」

「えーと…つまり…?」

「器物に人の魂を込めて動かす…ネクロムの禁呪です。これに囚われている限り魂は成仏できません。」

「んじゃこれをあと骸骨が何人いるかは知らないけど、その全部のコレを叩き割らなきゃならんってことっすか?」

「あるいは…彼らに命令を下しているものを破壊するかですね。」

「ワッシらの手に負えますかいノー?」

「碌な装備もないし無理だと思うな。ここは何とか脱出することを考えようや。」

「そうですね。外に出てGメンに任せた方がいいでしょう。近藤さん、この施設の出口は?」

「ここは秘密施設でしたので昇降機しかありません。ですが…」

「う?なんですかぁ?」

「昇降機のある場所は英霊兵器「炎式」の格納庫前を通らねば行けません。あれが起動していたら…」

「そんなにヤバイ兵器なんか?」

「自分のような下っ端にはわかりませんが、炎上寺中佐は「これがあればどんな戦局も覆せる」と言ってました。」

その後も近藤と除霊部員達の会話が続く。
自分と年も近いせいか最後には打ち解けて俺、貴様と話し出す近藤から小一時間程度で施設の概要を一通り聞き終えることができた。
すべてを語り終えた近藤は魔鈴に向けて「では頼みます!」と一礼し、横島たちに向き直った。

「俺が言うのもなんだが貴様たちの武運を祈る!」と敬礼する彼に一同揃って答礼を返す。
魔鈴が箒で彼のまわりに魔法の円を描いた。
光の粒子に包まれ、天を仰ぎ、穏やかな顔で昇天しようとした近藤の顔が恐怖に引きつる。
「うおおぉぉぉぉ!!」と苦痛の叫びを上げると近藤の魂は壁に吸い込まれるように消えた。

「魔鈴様…何が…」

「わかりません…でも彼は成仏できなかったのは間違いないでしょう…」

アリエスの声に魔鈴も呆然と答える。
何か、良からぬ力が彼の成仏を邪魔したのは明白だったが、近藤の霊がどうなったか魔では聡明な彼女でも知ることは出来ない。

「とにかく早くここを出た方がいいわね。幸いエレベーターの場所はここを出て真っ直ぐよ。」

近藤に教えられてノートに書いた見取り図を見ながら愛子が提案する。

「そうだな。余計な部屋とかは無視して脱出だけを心がけよう。」

横島の言葉に頷く一同。

横島を先頭に教導室の外に出る。
幸い通路には妖しい影は見えなかった。
薄暗がりを透かしてみれば確かに近藤の言ったとおり、真っ直ぐ行った所に閂のかかった鉄のドアが見える。

「近藤さんの話だとあの外が広間になっていて、そのドアの反対側にエレベーターがあるそうよ。」

「格納庫ってのはどこですかいノー?」

「広間の左側にあるシャッターの向こうらしいわ。単純なつくりで助かったわね。」

「よし。俺が先頭で行くぞ。」

「では私がしんがりをつとめよう!」と申し出るおしり机に頼むと目配せして一行は慎重に薄暗い通路を進み出した。


かび臭い通路の端にある鉄製の扉には大きな鉄の閂がついている。
唯が再び罠が無いことを確認して、タイガーがその重い閂をはずそうとした時、横島たちが通り過ぎた通路に面したドアの一つがいきなり開いた。

「タイガー早く開けろ!」

「待って下さい!これが錆付いていて大変なんじゃ!!」
顔を赤くして渾身の力を込めるタイガーによって錆付いた閂はギシギシと軋み始める。

「来るぞ!」とおしり机の叫びとともに霊波の盾を展開する少年の前に、先ほどの骸骨兵士と同じ妖魔が五体、小銃を構えて開いたドアからゆっくりと進み出てくる。
横一列に並びゆっくりと進み出てくる骸骨兵の後ろから隊長なのか軍刀を持った骸骨が現れる。

「侵入者は排除せよとの炎中佐の命令だ…」

「喋った!知性が残っているの?!」

驚愕の叫びを上げる魔鈴にはかまわず隊長骸骨は軍刀を振り下ろした。

「撃て…」

命令に従って骸骨兵は小銃を一斉に発砲した。
だがその全弾は霊気の盾で防がれる。

「構え…撃て!」と再び一斉射が横島たちを襲うがそのどれもが防がれた。

隊長骸骨の肉を持たない口がギシリと歯軋りをつむぎ出すと、骸骨兵に向けて「総員着剣、突撃!!」と指示を出す。
隊長骸骨の命令を受けノロノロした動作で小銃に銃剣を取り付ける骸骨兵。
狭い通路での接近戦は不利と悟った横島が声を張り上げる。

「タイガーまだかっ!!」

「ぬおぉぉぉぉぉ!!」

タイガーの渾身の力を受けて錆びついた閂はバキリと音を立てて跳ね上がる。

「今です。早く!」とタイガーが引き開けたドアへ向かって走り出す除霊部員達。

彼らドアの向こうに逃げたことを確認し、おしり机に「行くぞ」と声をかけようとした横島は突然の体当たりを受けてドアの向こうに転げ出た。
呆然とする少年の前でドアが軋んだ音を立ててバタンと閉じる。

立ち上がった横島の耳にガチャンと閂の落ちる音が聞こえた。

「おしり机!何をやっているっ!」

「心配するな少年。私は机の姿に戻れば奴らの攻撃は受けん。万が一のためにここを塞いでおくだけだ!」

鋼鉄のドア越しに聞こえるおしり机の迷いの無い声。
それが少年には覚悟を決めた声に聞こえ、彼はドアに拳を撃ちつけた。

「けど!」

「私のことより同族を…?!…そして女性達を守ってやってくれ!!」

「おしり机!」

「…私は後でゆっくり助けに…来てくれれば良い…だが約束してくれんか…」

「何だ?」

「…学校で…?!!…大便をしてくれ…あれは…良いものだ…」

「約束するから!お前も死ぬなよ!!」

「承知…」

「タダオくん!!」

唯がドア越しにおしり机と会話する横島をかばって背後に立ちふさがる。
唯の胸ではじけた小銃弾は火花を散らして跳ねた。

「唯様!」

「えうぅぅ!ちょっち痛かったですぅ…」

変身したら拳銃弾をも弾くと言う摩耶の言葉は本島だったようだ。
着弾のショックでよろめいた唯の体を背中で感じた横島の中で何かがキレる。

「まずいわ。エレベーターの前にも骸骨が!!」

愛子の言うとおりエレベーター前の暗がりに立つ五体の骸骨兵。
そのうち一体がまだ銃口から紫煙の昇る小銃を構えている。

「てめえらぁぁぁ!!」

横島は霊波の盾を正面にかざし骸骨兵に向けて吶喊した。


「てめえらぁぁぁ!!」

自分の背にした鋼鉄のドア越しに聞こえる少年の怒りの叫び。
やはりドアの向こうにも敵はいたらしい。
自分の予想があたったことにホッとするおしり机。
構造上走ることが出来ない自分では足手まといになっただろう。と笑みをこぼす。
もっとも顔なぞないから尻の筋肉を振るわせただけだが…。

だがそれだけで彼の体の数箇所に刻まれた深い傷口からは血が吹き零れた。
彼の前に立つ隊長骸骨の闇しかないはずの双眸がギラリと赤い輝きを放つ。

「どけ…」

再びおしり机の肉に刃が深く食い込む。

「ぐっ!」

おしり机の苦痛の声にも何の感情も見せず、殺戮のみを求める不死の兵は肉を貫く軍刀を無造作にねじった。

「なぜ退かぬ…化け物め…」

「ふふ…化け物か…確かにお前も私も化け物だ…」

「貴様…醜い化け物の癖に帝国軍人を愚弄するか…」

「醜い…そう私は醜いのだ…だが…」

突き刺さった軍刀をものともせずおしり机は隊長骸骨に体を預ける。
軍刀は完全に彼の肉の部分を貫通した。

「何を…」

おしり机を抱きとめる形になった隊長骸骨が戸惑いの声をあげるが、その胸の中で文字通り血を吐きながらおしり机は叫んだ。

「あの少年達は…私を仲間と言ってくれたのだ!こんな醜い私を!!」

「?!」

「こんな私をだぞ!…彼らは仲間と呼んでくれたのだ!この私を仲間だと!!」

「おのれ化け物…おい、一斉に撃て…」

隊長骸骨の命令に機械的に従う骸骨兵。
ガチャリと一斉にボルトが引かれ、銃口が四方からおしり机を蜂の巣にすべく構えられる。
死の銃口にされされながら、おしり机はいかにも可笑しいと言いたげに体を震わせた。

「知っていたか?…屁は…燃えるのだよ…」

「な?!!」

発砲を止める間もなく骸骨兵の銃口から生じた火花はたちまち辺りを飲み込む紅蓮の炎となり、その炎の舌はおしり机の体内にも吸い込まれ、彼は骸骨もろとも内側から弾け赤い火球となった。


ドア越しに聞こえるくぐもった爆発音と隙間から漏れる赤い光に除霊部員達がドアの向こうの惨劇を予感したときには横島はすべての骸骨兵を隊長もろとも切り倒していた。

「早くっ!ここがエレベーターだ!!」

「「「はいっ!」」」と部員達が走り始めたとき、彼らの左手にある大きなシャッターが機械音とともに開きはじめる。

「急げっ!」と急きたてる横島の元に必死に走り寄ってきた彼らがたどり着いた時、シャッターは完全に開き、中からゆっくりと異形の機械が進み出てきた。

薄明かりの中に立つその姿は子供がガラクタを集めて粘土で固めたカタツムリを思わせる。
そのカタツムリの頭部のところには赤い巨大な円形のガラスがはめ込まれ、その中で揺らめく巨大な影。影はやがて人の顔をとりその口が大きく開かれる。

ギャオオオオオオオオオン!!

それこそが殺戮兵器「炎式」が初の獲物を目にして上げた歓喜の咆哮だった。


後書き

ども。犬雀です。

えー。シリアスなんでしょうか?どうなんでしょうか?
さて次回でこの話も最終回。
殺戮兵器「炎式」との戦いがメインになりますです。
文珠も無く、例の力を使えない横島君といまいち除霊に向かない気もする能力者たち。
どう戦いますか…もしかしたらただ逃げるだけかも。

ではでは…


1>wata様
足はおしり机でした。すまんですと平謝り。

2>法師陰陽師様
ありがとうございますです。早速、金魂いただきましたです。
ピートを入れますとあっという間に脱出されちゃいますので居残りでした。
霧化して脱出、後からGメン…って展開だと横島君たち絡めませんので。
そのために唐巣神父はどう転んでもムゴイ目に…。

3>紅様
おおっ。0〜1点のダメージでしたか。犬の見たHPでは0と書かれていたので…失敗であります。

4>柳野雫様
愛子は大丈夫でした…今のところはですけど…ニヤリ。

5>通りすがり様
ふふふ…魔鈴さんはこっち方面で壊れてもらおうかと…。
さて次は誰を壊そうかなぁ〜。

6>なまけもの様
心霊兵器の研究施設でありました。
学校の地下にこんなものがあるなんて…無茶だと思うのですがお許し下さいませ。

7>TPO様
最初は加藤君も落とそうとか考えてましたが、たまにはGSメンバーだけの戦闘を書いてみたくてこんなになりました。バランスは悪いと思いますです。

8>シシン様
ゲーム自体は知らなくても良いと思いますです。
モンスターを借りただけですので。字の通り「這い回る小銭」であります。

9>紫苑様
えーと…愛子嬢を虐めても唯の扱いは変わらんですよ。
あの子は永遠のいじられキャラであります。確かに最近影薄いけど…。

10>AC04アタッカー様
お宝ですねぇ…活用させたいなぁ。次話で使い道あるのかしらん?

11>ジェミナス様
軍人さんの霊というかスケルトンでした。
詳細は次回で説明…したいなぁ。

12>炎様
くすくす…では次回で部下の責任をとっていただきますです。

13>ncro様
名作とは聞いてますが犬はやったこと無いです。
もうファミコンも売ってないしなぁ…きっと今やっても面白いんでしょうね。

14>キリュウ様
なるほどぉ〜。HPにあった漫画ネタってのは吉田戦車大先生だったんですかぁ。
犬、あの先生のフアンなのに…前のかわうそもなのに…不覚 OTZ
よろしければ掲載本を教えてくださりませんか?(平伏)

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