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「心眼は眠らない その62(GS)」

hanlucky (2005-03-22 01:40/2005-03-22 03:06)
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べスパとパピリオが美神捕獲に向かっている一方、逆天号は座標修正のため太平洋の上を飛んでいた。

「はぁ〜……まだ帰ってこないって事は、やっぱり抵抗があったって事だよな……」

海を見ながら、様々な事を考え中のヨコシマ。
仲間である三姉妹の事、今や敵になった悠闇や美神、おキヌの事、そして今後の事を……

「大体、過保護過ぎなんだよな……そりゃ――」
『ヨコシマ、どうやら敵に私達の居場所がバレているみたい。とりあえず、ブリッジに来て』

突然の放送に、ビックリにするヨコシマだが、ルシオラの言うとおりに操縦室に向かう。
ルシオラの口調からは、別に慌てるほどでもないようだ。

「――敵って……よく、この場所がわかったな。」
「考えられるとしたら、あの剣よ。研究材料になりそうだから、捨てなかったんだけど……失敗したわ。」

ヨコシマが操縦室に入ってすぐに、ルシオラは壁にかけてあるグラムを見ながら言う。
肝心の敵は、一隻の空母のようで此方に向かってくるのが見えている。
土偶羅は、たかが空母一隻で張り合おうとしている人間を笑っているが、ルシオラは空母に描かれている魔法陣や、飛行機がいない事を怪しんでいた。

「ふん!! 多少の小細工がどうだと言うのだ!! 断末魔砲、発射用意!!」

土偶羅が、一気に勝負を決めようとするが、その前に空母の方から、声が聞こえている。

「アシュタロス一味に告げる!! 無駄な抵抗はやめて速やかに降伏しなさい!!」

その声は、魔方陣の中心に立っている美智恵のものだった。


――心眼は眠らない その62――


「美神美智恵は何を考えている? 敵が本当に降伏すると思っているのか?」
「知るかよ、そんな事より、あのデカブツの中に横島がいるんだろうな?」

美智恵から離れたところで、ジーク、ヒャクメ、そして昨日、行き倒れで警察に保護された雪之丞が見守る。
ヒャクメは兎も角、疲労仕切ったジークが動けるのは、仲間の魔族に魔力を分けてもらったからで、神族の方も小竜姫が神通力を分けてもらっていた。

「まぁ、美神さんの方たちに、襲撃があった事から、叩くのなら今なのね。」

これは美智恵の賭けだった。
敵が美神を襲撃する時期を狙って、敵の戦力を分散させ、その間に逆天号を潰す。
敵の目的が美神の魂というのなら、逆天号に生かして連れて行く可能性が高いだろうと予想し、ならば、その逆天号さえ潰せば、チャンネルも回復し神魔達の援軍によって、勝負がつくという考え。
下手すれば、逆天号に異界に居られたり、逃げられてしまうのだったが、どうやら賭けに勝ったようである。

「横島くんー!! 無駄な抵抗はやめてーーー!!」
「何時の間に、人類の敵になってるんだ!! こらーーーー!!」

横島のクラスメイトが、軍人に銃で脅されている。よく見ると横島の両親である大樹や百合子まで人質になっている。

「……これが、作戦なのか?」
「俺に聞くんじゃねえ。むしろ、俺が聞きてえよ。」

呆れるジークと雪之丞、そして何か変だと思っているヒャクメであった。


/*/


所かわって逆天号の中、クラスメイトや両親を見て、ヨコシマは見事にずっこけていた。

「全部俺に関係者やないか!? 久しぶりに見た顔だと思ったら、何やっとるんじゃーーー!?」

美智恵の存在も、クラスメイト達も完全に予想外だったヨコシマ。

「……もしかして人質?」

多少呆れながらもルシオラが、今の状況を理解する。

「なんという卑怯な事を……でも、気にせず主砲発――」
「ちょっ!? ま、待ってくれ!! いくらなんでも、関係ない連中は……ああああ!!! ちくしょうーーー!!!」

全く気にせず、断末魔砲を発射しようとする土偶羅に、完全にパニック状態なヨコシマ。
小竜姫の時は、覚悟を決めていたし倒す理由もあったが、無関係なクラスメイトや百合子(大樹はスルー)は簡便してもらいたいのかもしれない。

「ちょっと、土偶羅様。少しはヨコシマの事も考えてよ!」
「む! ヨコシマの身内がどうなろうが、我々には関係ないだろう!?」

ルシオラがヨコシマの味方をしてくれて、口論になる。
そんなルシオラに、ほろりとヨコシマが涙している内に土偶羅はルシオラの勢いに押されていく。

「……わかった。向こうの出方がわかるまでの間だぞ。ふん!」
「土偶羅、ルシオラ……ありがとうな。」

土偶羅は照れくさいのか、言い終わった後、すぐに母艦の方を向く。
だが、口論している内に多数の飛行機が接近して来る。
土偶羅はすぐに、逆天号前方にバリアを張って待ち受けるが、

「――!? 気をつけて!! 下でも何かをやる気よ!!」

美智恵が下で何かしている内に、突っ込んできた全ての飛行機が煙幕を張る。
しかもこの煙、横島が使った《煙》同様に霊波を帯びているため、レーダーが機能しない。

「何かの罠に違いないが……視界を奪ってどうするつもりだ?」

それでもこの戦力では圧倒的にこちらが有利なため、お茶?を飲みながら美智恵達の出方をうかがう。

「正面に我々と同じ大きさの飛行物体!! 高エネルギー反応、撃ってくるわ!!」

逆天号前方に、何かの物体が現れ、光を発生させる。


ギャアアアアアアア!!!


前方の物体は、逆天号の主砲「断末魔砲」と同じ声、同じ威力のものを放ってくる。
慌てた土偶羅は、すぐに断末魔砲を撃ち返すが、何故かかわされる。

「どういう事だ!? 人間どもが、我々と同等の強さを持つ魔法兵器を!?」
「空母も、人質も、このための囮だったわけね!! 早く異界空間に――」
「やばい!! 土偶羅、来るぞ!!」


ギャアアアアアアア!!!

ギャアアアアアアア!!!


敵が撃ったと同時に逆天号も反撃するが、こちらが傷つく一方であった。
異空間潜航装置も大破してしまい、異空間に逃げる事が出来なくなる。
それどころか、このままでは撃沈の可能性もあった。

(計算外だ!! 俺がいる以上、こんな事はないと思っていたけど……)

予想の上をいく美智恵に、慌てたヨコシマだったが、このままではルシオラや、自分が危ないと思い生存本能によって、集中し始める。
そうなると霊力の出力等が強化され、霊視の強さも強化される。

「……!? そうか、そういうわけか!!」

前方の方を見つめ、ある事に気づく。

「ヨコシマ!! 急いで、応急処置をするから手伝って!! 土偶羅様は、べスパとパピリオに連絡!!」
「……すまんが修理は一人でしてくれ。この攻撃の謎がわかったぞ。」

伊達に悠闇に霊視を扱かれてきたわけではない。
今のヨコシマの霊波の流れや、霊波の質、霊波の状態を読み取る力等はヒャクメに匹敵する。
そしてヨコシマの霊視は、煙の先にある物体の正体を突き止める。

「土偶羅、向こうのアレは時間軸のずれた俺達だ。」

つまり、美智恵は妨害電波で時間移動を封じているのを逆に利用して、未来の逆天号を一時的に呼び寄せたのだった。
その事を説明して、ルシオラも美智恵が時間移動能力者のファイルに載っていた事を思い出す。

「俺が時間を稼いでいる間に修理を頼む!!」
「ちょっと待って!! だったら私達が撃たなければ、向こうも撃つ事はないんじゃない!?」

逆天号が撃たないと決めたなら、未来の逆天号も撃つ事はないと言うルシオラ。
だが時間軸を表現するには現在と、未来と、もうひとつ必要だ。

「違うって!! 未来のじゃない!! 過去の俺達だ!!」

時間軸とは未来、現在、過去で成り立っている。
先ほどの過去の自分達は、過去の時の未来の逆天号に騙され断末魔砲を放ってしまった。
こうして、過去の逆天号はすでに断末魔砲を放っているので、後はその逆天号を引っ張ってくればいいだけ。

「大丈夫だ。多分、知り合いの俺を直接殺そうと考えるヤツはいないと思うし……今度は俺を信じてくれよ。」

ヨコシマがルシオラを説得している内に、次の断末魔砲が来る。
何とか緊急回避するが、完全にはかわせない。
このままではいつか撃沈するだろう。

「時間ないし、話は後!! それじゃ、修理よろしく!!」
「あ、ヨコシマ!!――もう、勝手な事ばかり……」

ヨコシマは今の揺れのうちに、ある代物を拾って操縦室から出る。


/*/


美智恵が召還した逆天号が二発目の断末魔砲を放った時、

「敵に大打撃を与えていますね……このままいけば、撃破できるかも。」
「おい! あそこには横島がいるんだろ!?」
「ちょっと待て!! いくらなんでも、あれに巻き込まれたらグラムだって!!」

ヒャクメの実況に慌てる雪之丞とジークだが、そんな事は美智恵に聞いてくれとヒャクメは言い逃れる。
そんな美知恵だが、魔方陣の中心でいつの間にか4メートル近くの大型のトライデントを持っていた。
実は、このトライデント、竜の牙を変形させたものだった。しかし、小竜姫の竜の牙は美神が持っている。
では、別の生き残りの竜神から借りた物かといえば、そうではない。
竜の牙にもその竜神によって、強さが変わってくる。仮にイームや、ヤームの牙を借りたところで、大した強さはないだろう。
だが、小竜姫に匹敵する竜神がまだ一柱居た。もちろん、それは悠闇である。
竜神化しているのが幸いし、未だ目覚めない悠闇から、借りたのだった。

「やぁあああああああ!!!」

美知恵は空母の電力を魔方陣を通して、自分の体に浴びせその類まれなセンスでコントロールし、上空に逆天号を一時召還したのだった。
正に、妨害電波のよって一時的にしか現れないのを利用した反則技である。

「勝つためには手段を選びません!! これが私の戦い方よ!!」

三発目を逆天号に発射される。直撃していないが、それも時間の問題だろう。

「次!! 今度こそ、沈めさせてもらうわ!!」

徐々に電力が美智恵に集まっていくが、途中で――


《投》


バァァァァァン!!


「何ッ!?」
「アレは――グラム!?」

魔方陣にグラムが突き刺さり、爆発が起こる。
当然、魔方陣が消えるどころか、美智恵はその爆風で後ろに飛ばされる。

「……感謝して下さいよ、美神さんのお母さん。その気になったら、今ので倒す事も出来たんだし……」
「横島!?」

上空にヨコシマが現れる。
今のヨコシマのセリフは冗談ではない。本当にわざと外して、魔方陣の破壊だけを狙ったようだ。
美知恵は、そのセリフでゾッとしながらも、何とか受身を取ってヨコシマと対する。
ジークと雪之丞も、すぐに美智恵の横に並ぶ。

「なるほど……クラスメイトも全員偽者っすか。」
「――!? 流石ね……まさか一目でわかるなんて。」

逆天号の時は、遠すぎて分からなかったが、この距離ならばピートやタイガー、愛子の霊波が違う事がよく分かる。
そして、三人だけ違う事なんてないと思ったため、かまをかけただけだった。

「俺の頼みは一つだけ。こっから退散してください。お母さんも、魔方陣がない以上、美神さんより弱いはずだし、ジークも戦闘できるほどじゃないし、雪之丞は……相手にならんしな。」
「なっ!? じょうと――」
「久しぶりね、横島クン。それとも、初めましてのほうが適当? ヨコシマクン?」

雪之丞を制して、何とか自分のペースに引き込もうとする美知恵。
ヨコシマは、好きな方で呼んでくれと、今のジャブを華麗に返す。

「そう……残念だけど、その頼みは聞けないわ。」
「美神さんのために……? それとも世界平和のため……?」
「両方よ。」

即答する美知恵に、ずるいなと笑ってしまうヨコシマ。

「守りたいものがあるんすよね、お互い。」
「それはあのコ達の事を言ってるの? それだったら、歓迎するわよ。連れてくればいいじゃない。」

ヨコシマと三姉妹の信頼関係ならば、三姉妹ごと味方になるのも可能ではないかと美智恵が呼びかける。
だが、ヨコシマは何も答えず、唯、首を振る。

「まぁ、俺は別に皆が嫌いになったってわけじゃないですし……と、いっても邪魔するんなら――覚悟して下さい」
「交渉決裂ね、あなたも覚悟した方がいいわよ」

クラスメイト達や横島の両親が変装を解いて銃を構える。
その銃口の先にいるのはヨコシマ。

「やっぱダメ――か!」
「下がってろ!!」

だが、ヨコシマは一気に美智恵達に接近する事で、銃の発射を防ぐ。
ジークは、とりあえずグラムを取りに行き、雪之丞は美知恵の守るように立つ。

「よう、雪之丞!!」
「お前は何、トチ狂ってんだよ!?」

ヨコシマはすぐにサイキックソーサーを、変装していた海兵の方に投げ爆発させておく。死人は出ない程度の威力だが、殆どの者が爆発の音や、衝撃で気絶するはずだ。
そして同時に栄光の手で、魔装術を使用した雪之丞の右腕を防ぐ。

「マジか!?」
「けっ! 今までの俺と一緒にするなよ!!」

まさか、雪之丞の装甲が栄光の手を防げるほど上がっていると思わなかったヨコシマ。

「――!? 戦うんならグラムは持たんほうがいいぞ。僅かな傷でも致命傷になるんだろ?」

グラムを構えたジークに忠告するヨコシマ。今の言葉から、僅かな傷ならいつでも作れるという事は表している。
だが、今のジークではグラム無しではまともに戦えない。

「下がってろ!! 俺がしっかり倒してやるよ!!」
「私も忘れない方がいいわよ!!」
「うおっ!? 二体一は卑怯というものじゃ……?」

といいつつも全員が見渡せるように移動するヨコシマ。
相手の強さを霊視したところ、雪之丞、美智恵、ジークといったところだろう。
ジークは、とりあえずグラムを鞘にしまい、いつでも戦闘に参加できるような態勢だ。

「(さて……どうしたものか……とりあえず――)雪之丞、お前は、俺に一度タイマンで負けてるんだぞ。いいのか?」

とりあえず、雪之丞と一対一の状況に持っていこうとするが、美智恵がそれを制す。
だが、もう遅い。明らかに顔色が変わってきてる。

「あ、ちょっとタンマ。」

ヨコシマは、海兵の何人かが復活しそうになったので、もう一回サイキックソーサーを投げつけておく。これで、もう大丈夫だろう。

「なぁ、雪之丞。俺が怖いんか? なら、しょうがない……ハンデという事で俺は文珠を使わん。それなら、どうだ?」
「ダメよ、挑発だってわかって――」

挑発というのは、分かりきっている。
だからといって、事実な以上、止まれないし、止まるわけにはいかない。

「いいだろう!! それじゃ、俺も新技無しでお前をぶっ倒してやろうじゃねえか!!」
「おいおい、折角、俺が文珠を使わんといってるのに、それじゃ意味がないだろうが。」

距離を取ろうとするヨコシマだが、雪之丞はそのまま攻めてくる。
美知恵は何とかフォローに走ろうとするが、ヨコシマはうまくジーク、美智恵が攻撃できないように移動する。


「あぁ、それとな、雪之丞――」


ニヤリと一言。


《倒》


「な!?……文珠!?」
「文珠使いが、文珠使って何が悪い!!」

前方に突っ込むように態勢を崩した雪之丞。
ヨコシマは、待ってましたとサッカーボールキック。
霊波を足に纏って、全力で雪之丞の顔面を蹴る。元々男だし、容赦無し。

「ぐっ!? て、てめえ…………」
「マジか!? まだ意識がある――ぬおっ!?」

雪之丞と交代するように美智恵が迫り、トライデントを振り下ろしてくる。
何とか、それを回避して再び距離を取るが、今度は横からグラムの閃光がやってくる。

(くそっ!! 折角のハッタリを無視しやがって!!)

サイキックソーサー、最大展開でそれを防ぎ、そのまま投げつける。
その間に、今度は美智恵がトライデントで一文字を描く。

「そこの奥さん!! 今なら、俺の部下になれば若返りの秘薬《若》の文珠がついてきますぜ!!」
「え!?…………だ、黙りなさい!!」

と言いながらも、手が一瞬止まってしまう。
だがその一瞬で十分。ヨコシマは美智恵がジークの斜線上になるように移動する。

「ほら、やっぱりあと15、いや10若ければ俺的には文句無しっすよ!! あ、もちろん今のま――」
「なんですって!? 私はまだまだ現役よ!!」

自分のペースに乗せるつもりが、完全にヨコシマのペースに乗せられた美智恵。
トライデントを掻い潜り、サイキックスマッシュを美智恵の腹に叩き込む。
残す相手は、ジークのみ。

「ジーク!! 俺がその剣に何か仕掛けていないと思ってんのか!!」
「何だと!?」
「いや、嘘だけどな。」
「なっ!?」
「やっぱりホント。」

実際は仕掛けているわけではないが、真面目なジーク、いや、この場合は殆どの者でも少しでも意識してしまう。
ヨコシマは文珠使い。ならば、何か仕掛けているのかも? と思ってしまう訳だ。
引っかからないとすれば、美神か悠闇ぐらいだろう。

「例えば、その剣を三回振るったら――」
「(三回!? 後二回か!!)振るったら!?」

その隙にジークに接近する事に成功するヨコシマ。

「――ワルキューレが俺に惚れる!!」
「そんな訳あるかーーー!!!」


ザァァァァァァン


魔力も少ないというのに全力でグラムを振るってしまう。
流石に受けきるのは無理と判断したのか、すぐに回避する。
今のジークの攻撃はテレフォン・パンチ…ではなく、テレフォン斬りとでもいうのか、モーションが大きすぎてかわしてくださいと言っているようなものだった。

「はぁ、はぁ、ヤツの罠に乗せられたか……」
「それで、打ち止めだな。お疲れ――さ!?」

動けないジークにそのままサイキックスマッシュを放とうとするが、


「――魔槍術」


右腕に悪魔の槍を従えた雪之丞がそれを邪魔する。
ちょうど、ジークとヨコシマの間に魔槍は存在していた。

「ちっ!」
「ぐぅぅぅぅ!? それが新技って殺す気かーーーー!!!」
「つーか死ね!!」

どうやらかわしきれず、右腕を負傷してしまう。
その後の第二撃は回避するがヨコシマは雪之丞の顔を見て、これも作戦か!? と爆笑する。

ぶっ!? 卑怯だぞ、顔しっかり拭けよ!! 笑わすな!!」

鼻血の後が、しっかり残っている。
顔の下半分が真っ赤で笑えるのを堪えながら、むしろ微妙に笑いながら雪之丞の攻撃をかわそうとするが、今度は腹を刺さりかける。

「――!? くぅぅぅぅぅ、このアホ!!」
「安心しろ、しっかり成仏するように殺してやるから。」

魔槍はヨコシマに狙いを定め、迫ってくる。どうやら、冗談抜きで殺すつもりらしい。

「っ!――知ってるか!! おキヌちゃんって何気にゴシップ好きな事を!!」
「それが――どうしたーーー!!!」

ヨコシマは、サイキックソーサー、サイキックブレットを放つが、その度に魔槍は少し小さくなって、全身に装甲を纏う。中途半端な攻撃は意味をなさないようだ。
かといって、文珠を使う暇も与えてくれない。
このまま押し続ければ、雪之丞の勝ちだったが、ヨコシマは、対雪之丞、最大の切り札を放つ。

「弓」
「――――!?」
「弓かおり」
「――!?――!?」

雪之丞の攻めが端から見ても、鈍くなっているのが分かる。そうなると今度はヨコシマの番で、雪之丞を攻め続ける。一度傾いた流れはそう簡単には変えられない。
そして、雪之丞にヨコシマのような反則技もない。雪之丞はヨコシマが文珠を使うのを防ぐのが精一杯だった。

「俺も見たかったぞ。伝説の追いかけっこ……俺が講師している中、そんな事やってたんか!」
「う、うるせえ!!」

海兵は全滅。美知恵は先の一発で気絶。ジークは今にも倒れそう。ヒャクメは戦力外。
雪之丞を助ける味方は居なかった。

『――ヨコシマ、修理が終わったわ。もう、大丈夫よ!』

押し続けるヨコシマだったが、ルシオラからの連絡で雪之丞と距離を取る。

「ち、これから第二章に入るというのに……」
「まだあるのか!?」

おキヌが横島に話した内容は、学校の出来事だけなのでそれはハッタリだった。
そのため雪之丞を押していたヨコシマだが、ネタがつきれば、今の状態で勝つのは不可能と判断して、逆天号に戻る。
雪之丞は追いかけようとするが、ヒャクメに止められ、今は怪我人を何とかするが先だと言われる。

「ちきしょう……あの野郎。ホントに何、考えてやがる。」

異界に逃げ込んだ逆天号を見ながら、雪之丞はそう呟くしかなかった。


/*/


シロを助けた小竜姫だったが、いくら仲間に力を分けてもらったからといっても全快にはほど遠かった。

「ほらほら!! さっきは驚いたけど、やっぱり痩せ我慢だったようだね!!」

べスパ相手に防戦一方の小竜姫。超加速も使えるかどうか怪しい。
シロ、美神、西条も防戦一方で、このままでは先に力が尽きてしまう。

「間に合ったか!!――勝負はまだ分からないようだよ!!」

西条が叫んだ拍子に、外から誰かが乱入してくる。

「遅くなりました!! 今、加勢します!!」
「主よ、父と子と精霊の御名において命ずる――」

ピート、唐巣がようやく到着する。
それを皮切りにエミ、タイガーが現れ、冥子、魔鈴、カオス、マリアと続々と集結してくる。

「……面倒でちゅね。束になった所で、勝てると――?」

パピリオが最後まで言う前に、逆天号から通信が入る。
土偶羅が、兎に角ピンチなので帰還せよという事らしい。

「べスパちゃん!! どうするんでちゅか!?」
「ちっ、この人数じゃ、時間がかかる。引くよ、パピリオ!」

今にも倒れそうなようで、倒れない小竜姫を見て、べスパも嫌気がさしてきたらしい。
小竜姫が動けた理由も、大体読めた今、次はないだろうと判断して引く事に決定する。

「頼みの小竜姫が戦えなくなった以上、次、どうするか楽しみだよ。」
「次で決着でちゅよ!!」

小竜姫は、最後の力で相手が見えなくなるまでは虚勢を張り続ける。
だが、べスパにはすでに見破られている。

「こっちからも一言言ってあげるわ!! 横島クンは、必ず取り返す!!」
「――!? 悪いけど、それは無理だね。」
「そうでちゅよ。ヨコシマは、パピリオ達と約束してくれたんでちゅから。」

――約束――

それが引っかかり、何か言う前にべスパとパピリオは美神の声が聞こえない場所まで飛んでいってしまう。

「……あの馬鹿。何、やってるのよ。そろそろ戻ってきなさいよ……」

美神の呟きは、誰かに聞こえることはなかった。


/***/


逆天号を撃墜寸前まで追い詰めてから、二日目の出来事。
美智恵も、ヨコシマが放った一撃から何とか回復して復帰している。
だがジークは昏睡状態に陥り、他の神魔の多くも眠りについていた。

「う、う……ん。」

だが、そのような中、逆に目覚める者も存在していた。

「……ここは何処だ?」

横島の師であり、相棒である悠闇が目覚める。


――心眼は眠らない その62・完――


あとがき

未来の逆天号を呼べるなら、過去もいけるかな? と思ったのですがどうでしょう?

>「文珠使いが、文珠使って何が悪い?」
某格闘漫画のセリフを改変です。

さて、後一話ぐらいで南極っぽいです。

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