都庁の地下にあるアジトでは、今、GSチームが妙神山での出来事をモニター越しに眺めていた。
その全員が、その男の強さに、というよりもその男がある者と戦っている事自体に驚愕している。
モニターには、ヨコシマと小竜姫が戦っている。
ヨコシマは、小竜姫が負傷しているとはいえ押し続けていた。
小竜姫はヨコシマの執拗な攻めに、反撃する事すら許されない。
「ヒャクメ……横島クンはいったいどうなってるの!?」
「わからないのね……けど、あの動きはメチャクチャよ! よくあんな動きを続けて戦えるわ!!」
ヒャクメとてヨコシマの変貌振りには驚くしかなかった。
そして、今、正に小竜姫が追い詰められてしまう。
「小竜姫!!」
モニターの中では鮮血が舞っていた。
――心眼は眠らない その60――
「ホント、はぁ、はぁ……何で倒れないんだよ!!」
「それがわかったら苦労しないでちゅよ!!」
べスパもパピリオも、目の前の剣を持つ存在を信じられない目で見る。
あれだけの攻撃を受けて、なおもノーダメージなのだから、当然だろう。
(残りの魔力も僅か、そして撤退出来る可能性も僅か……)
圧倒しているように見えるが、ジークもすでに限界ギリギリであった。
ここから脱出しようにも、その糸口さえ見えない。
「だが、最後まで諦めるつもりはない!!」
再び、斬りかかろうとしたその時であった。
「べスパ、パピリオ!? こんな所で何やってるのよ!!」
かなり慌てた様子のルシオラが現れる。
ジークはこれで絶体絶命かと、己の死を受け入れようとしたが、その前にルシオラがとんでもない事を言う。
「――ヨコシマがあの小竜姫に攫われちゃったのよ!!」
「な、なんだってーーー!?」
「なんでちゅってーーー!?」
ルシオラは小竜姫を見失ってしまい、仕方なく一度、初めて横島を見つけたときに使用した探知機を使うために逆天号に戻ったのだった。
(今だ!!)
三姉妹が慌てているその隙を逃すジークではない。
「唸れ、グラム!!」
「「「――!?」」」
グラムを床に突き刺し大爆発を起こす。すぐに三姉妹は反撃しようとするが、それより早くジークは逆天号から離脱する。
(……すまない、グラム。必ず取り戻すから、それまで辛抱してくれ。)
ジークはグラム自体が魔力を放つ事を利用して、囮に使ったのだった。
そのため三姉妹は煙で見えないため、相手の発する霊波などを頼りにするしかないので、ジークが居ると思っているグラムにぶつけている。
(問題は……俺の力が美神達が…居る場所まで持つかだが……)
自由落下していくジーク。今のグラムに籠めた魔力で、力を使い果たしたのだろう。
(まだ…諦めるわけ…グラムを…取り戻すまでは……)
目も虚ろで、意識は飛ぶ寸前。このままでは地上に激突してしまう。
だが、そんな事をさせない者がいる。
「よくやったぞ、ジーク! お前のおかげで数多くの仲間が撤退する事が出来た。」
「あね…う…え?」
ワルキューレは、撤退する連中のしんがりを勤めていたのだが、それもようやく終わりまだ生き残りは居ないかと、辺りを探索していたのだった。
落ちてくるジークを見たワルキューレはすぐにその場に向かい、こうして救出に成功する。
「我々はまだ、死ぬわけにはいかない! わかっているな!!」
そう、戦いはまだ終わっていない。
/*/
対峙するヨコシマと小竜姫。
両者の表情が、どちらが有利であるのかを物語っている。
小竜姫には困惑の表情が浮かび、ヨコシマは何を考えているのか、唯、笑っていた。
「……あなたは横島さんじゃありません! 彼を返して下さい!」
「返して下さい…か。無理だと思いますよ。小竜姫さまが横島、傷つけたからさっきので心も体も完全に壊れちゃいましたよ。まぁ、おかげ俺の番が早くなったんだけど……」
ヨコシマは感謝していると言わんばかりで、小竜姫に礼を言っている。
そして小竜姫には今の一言が、あまりにも大きかった。思わず、構えがとけてしまう。
(わ、私のせい……?)
「あ、別に小竜姫さまのせいじゃないと思いますよ。どうせ壊れるのは時間の問題だったんだし。あの野郎の狙いでは、人間相手にぶつけさせて覚醒させるつもりだったようなんだけど……」
ヨコシマは小竜姫の表情から何を考えているのか読み取り、それなりのフォローを入れる。
それでも小竜姫は、今の一言で自分が横島に止めをさしてしまった事を確信し、眩暈がした。
「まぁ、そんな事どうだっていいじゃないっすか! それよりも一つお話が……」
本当にどうでもいいと言った感じで、ヨコシマは次の話題に移ろうとする。
早くしなければ、ルシオラ達が来てしまうのでさっさとすませたかったようだ。
「俺的には、やっぱ小竜姫さまを倒したくないんすよね。だからといってこのまま放って置くわけにもいかないし……そこで、提案なんですけど! 俺の部下になってください!」
ヨコシマは、上機嫌で小竜姫に自分の仲間にならないか? と誘う。小竜姫ははじめ、ヨコシマが何を言っているのか、理解できていなかったのだが少し冷静さを取り戻し、今の言葉を理解する。
「なっ!? あなたは何を考えているんですか!? 私はアシュタロスの手先になどなるつもりはありません!!」
「いやだな〜〜。アシュタロスの手先じゃなくても、俺の部下っつーよりも俺が家に帰った時に「あなた、ご飯とお風呂、どっちにする? それとも〜〜」って感じの事をやって欲しいだけなんすけど……」
途中、声色を変えて説明するヨコシマ。小竜姫は、そんな説明に呆れるやら、恥ずかしいやらでテンパってしまう。
「あああなたが何を言おうと、この小竜姫、アシュタロスに組すつもりなど到底ありません!! わかっているのですか!? それは私に堕天しろと言ってるようなものだと言う事が!?」
「――だからそうしろって言ってるんすよ。」
凍る。
小竜姫も、先ほどまでの慌てぶりは何処かに行き、突然変わった空気に警戒を強める。
「だから、死にたくなければ堕天して俺の部下になれっていってるんすよ。まぁ、部下っていうよりは妻って感じになるような気もしないんですけど、そこらへんはスルーの方向で……」
口調は軽いが、今のが最後通告だと言うことを感じ取る小竜姫。
小竜姫の答えは決まっている。自分には自分の正義がある。
そして、自分にとってアシュタロスは悪であった。
「お断りします。私は、アシュタロスを倒し、横島さんを必ず救う義務があります。さぁ、化けの皮を脱いでかかってきなさい。」
素手だろうが負けはしないと、構える小竜姫。
ヨコシマは、わかっていたのか特に残念そうにもせず、落ちている鞘を拾い、神剣を抜く。
「流石は小竜姫さま……まぁ、駄目もとで言ってみただけなんすけど、本当に残念っすよ。」
「黙りなさい! あなたに私の名を呼ばれたくありません。」
「……そうっすか。あぁ、これお返ししますね。」
ヨコシマは、神剣を構えるのではなく、小竜姫に返す。
小竜姫はわざわざ、武器を返すヨコシマを怪しむが怪我をして疲れている小竜姫にはそれくらいは必要だろうと言う。
「嫌われたもんすね。俺<ヨコシマ>は俺<横島>なのに……ま――始めますか!!」
「黙れっ!!」
ヨコシマは、右手でサイキックソーサーを、左手でサイキックブレットを放ち、小竜姫がその二つを迎撃している内に距離を詰める。
小竜姫に神剣を返してのは、実はハンデではない。むしろ逆であった。
超接近戦になれば、今の負傷した小竜姫の場合、素手で戦った方が強い。ヨコシマはそれがわかっていたため、鞘を返さずに剣のみを渡したのであった。
几帳面、真面目な小竜姫は、鞘がない限り剣を手放す事が出来ない。
小竜姫はヨコシマの策の事を多分、わかっていないだろう。
「今からでも――遅くないっすよ!!」
「誰が――!? あなたという人は!?」
小竜姫の右手には神剣があるがこの間合いでは使えない、そして左腕は動かない。完全にヨコシマにペースを握られているのだが、ある事に気づく。
それは、ヨコシマが己の限界を考えず、筋細胞がボロボロになっていっている事。
「そんな自らを傷つける戦い方!! その体は横島さんのモノなんですよ!?」
よく考えれば多少、いや、かなり負傷しているが、それでも小竜姫が肉弾戦で人間に負けるはずがないのだ。
だがヨコシマは、本来かかるはずの、かけなければいけないはずのストッパーが機能していなかった。ヨコシマはその機能を意図的に解除していたのだ。
「いや〜〜。おかげで痛いっすよ、でも――この痛みも俺は力に変える!!」
憤怒はもとい喜びも、悲しみも、そして苦痛という感情さえも力に変える。
「ところで小竜姫さまは――俺と戦って違和感を感じてませんか?」
ヨコシマが的確に小竜姫の左側から攻めていく。
まだ勝負が決まっていないのが不思議なくらい攻めであったが、小竜姫は神剣を巧みに使って防御していた。
(……!? 何で力が出し切れないの!?)
小竜姫自身、相手が横島の体だから本気になれないと思っていたが、それが違う事にやっと気づき始める。
「当然っすね!! あの野郎の本当の狙いは知らないんすけど――俺は神様達を殺していくうちに、神魔の天敵になったみたいっすよ!!」
例を挙げれば、横島が以前、フェンリルを倒した時の事。
グレイプニルを使用、そしてグレイプニルの破壊、最後に鉄靴での顎への一撃。
その過程を踏んだフェンリルは、崩壊した。これは本質的に決まっている事であった。
つまり、竜殺しと呼ばれる存在が、竜に対して強くなるのと同じで、数多くの神魔を倒してきた横島の肉体は、神魔に対して有利になるという属性を、本質的に持ち始める。
これによって小竜姫は、ヨコシマに、そして横島には苦手意識を無意識に持ってしまう。
「多分、歴史上、人間で俺以上に神様を倒しているヤツなんていないんじゃないかと思っているですけど――ね!!」
「(強いっ!!)――はぁ、はぁ……」
ヨコシマのサイキックスマッシュを神剣で防いだはいいが、そのまま後ろに叩きつけられ追い詰められてしまう。
もう、体力の限界は近い。もしかしたら限界など、とうに通り越し、意地でヨコシマと向き合っているのかもしれない。
「小竜姫さまは、こんな状態になっても俺についてきてはくれないんだよな……わかりました……」
ここにきて最大の霊力がヨコシマの拳に集まってくる。
決着をつけるつもりなのだろう。
「思えば、面白い巡り合わせだと思うんですよ……」
何かを懐かしむようにしながら、小竜姫に近づいてくる。
「横島の力を初めて認めてくれて、横島に心眼を与えてくれて……」
近づくたびに横島の右手にさらなら霊力が籠められる。まるで、これ以上苦しませるつもりはない。一撃で終わらせよう、と。
「そして――そんな横島にあなたが殺されるなんて!!」
今の小竜姫ならば、この一撃で滅ぶだろう。
ご丁寧に霊視で、最も防御が薄い所を狙っている。
「さよならです!!」
ヨコシマの拳が小竜姫に迫る。
小竜姫は、目を瞑り、横島がこの先どうなるのかを思い浮かべた。
(横島さん……あなたは悪くありません。どうか……自分を憎まないで下さい。あなたは優しい人だから……それが心配です。)
横島が元に戻ったとき、それだけが心配であった。横島の重荷には、横島を縛り付ける存在にはなりたくない。
バンッ
(さようなら……皆さん……横島さん。………………………………?)
死神の鎌はまだ降って来ない。
恐る恐る目を開けるとそこには、
「――!? 横島さん!?」
右腕が血だらけになった横島が居た。どうやら霊力を暴走させたらしい。
唸り声を上げ、必死に苦痛と戦いながら、残された力で、ヤツと、ヨコシマと奪い合う。
「小竜姫さま。すんません……俺、ドジっちゃいました。」
「横島さん!! すぐに傷の手当てを!!」
小竜姫が起き上がり、横島にヒーリングをかけようとするが、横島はそれを手で制す。
「早く逃げて下さい……もう、頭ん中メチャクチャで思ったように動かないんすよ。……次にアイツに奪われたら……俺、もうどうしようもないし……」
小竜姫にこれ以上の力を使わせるわけにはいかない。
残された時間は少ない。早く小竜姫を逃がさなければ、今度こそ……
「ホント最悪っすよ、アイツ。俺の小竜姫さまに傷つけようなんて……くそ! もう限界みたいっすね。」
「横島さん!!」
横島は笑顔で泣き顔の小竜姫を諭す。
「こんな事になるなら、やっぱりあのまま小竜姫さまとベッドインをすれ!?……マジ限界みたい…かな?」
明るい雰囲気でさようならをしようと思っても、無理をしているのは誰の目のも明らかであった。
「正直、さっきのもホント無理矢理だったんすよ……でも、よかった〜〜。俺、これでも女の子だけはまだ倒してなかったんすよ。」
狂っている時も、確かに横島は女性の神を消滅させた事はなかった。ヒャクメのあの時だけが、最も危ないときであっただろう。
「もう、ダメなんすよ。アイツが俺を壊していくんすよね。……俺、きえ……いや、やっぱいいや。」
小竜姫は嗚咽してしまい、言いたい事が言えない。
わかってしまったのだ。横島は自分に残された最後の力で自分を助けたのだと。
小竜姫は逃げなければならない。その思いを無駄にするわけにはいかない。
でも、このまま横島をここに残したくない。
「もう、時間もないし……小竜姫さまが意固地になるからこれしかないっすね。」
二つの文珠を取り出し、念を籠める。
もう意識も殆ど残っていない。
その文字が見えて小竜姫は恐怖する。この人はあくまでも自分を此処から逃がすつもりなのだと。
「横島さん、待って! 待ってください!!」
待たない。二つの文珠を投げつけ、小竜姫が光りに包まれる。
「あ、そうだ。ビデオの延滞料金、何とかしといてくれません? マジやばいんすよ。だいたい、二ヶ月も延滞って買ったほうがお得じゃないっすか。」
本当にのん気な事を言い、小竜姫を最後まで笑顔で見送る。
「横島さん!! 私、諦めません!! 必ず、必ずあなたを――」
《転》《送》
その光りは小竜姫の涙も連れて、あの事務所へと消えた。
残された横島、もう1分もしない内にヨコシマへと変わるだろう。
「…………消えたくねえな〜〜………………きえ、だく、な”い。くっ、ちくしょう……ぢくしょう……」
膝が崩れ、地面に手をつく。
先ほどのまでの顔とは違い、横島の顔は泣きじゃくって見れたものではなかった。
「………………………………消えないさ。」
男は立ち上がり、顔を拭いてから右腕にヒーリングをかけはじめた。
「お前は消えないさ。お前は俺なんだから……今は眠っとけ、な〜に、起こしてやるから――全てが終わった後にな。」
その顔は横島であって、横島でなかった。
「しかし、よくもまぁ、無茶をするよな。腕がぶっ飛ぶ寸前だぞ? これ……」
ヨコシマは、周囲の様子から戦いが終了した事を知り、のんびりと三姉妹が来るのを待つ。
しばらくすると、予定通りにルシオラを先頭にべスパもパピリオも此方に向かってきた。
「ヨコシマ!! 大丈夫!?」
「ん、まぁ、大丈夫だ。逃げられたけど、もう残す力もないだろうし……とりあえず腹減ったよな。」
「ふ〜〜本当に気楽な兄さんだね。」
「ホントでちゅ! 人が折角心配しているっていうのに……」
「いたっ! 痛いって、ごめん、ごめんなさい!!」
ヨコシマの無事にとりあえず、殴る三姉妹。
そして、満更でもないヨコシマ。
(横島……お前に守りたい者があるように、俺にもあるんだよ。もちろん、向こうが抵抗しなけりゃ、仲良しこよしで、終われるんだろうけど……そう簡単にいかねえだろ?)
横島も、三姉妹を大切にしたいとは思っている。
ヨコシマも、人間側を大切にしたいとは思っている。
だが、両方という選択はあまりにも険しかった。
/*/
「……全ての霊的拠点が潰れたようだね。」
「へっ? 何があったっていうの?」
山中にて、自分の教え子を見守っていたメドーサがポツリと呟く。
「私に送られる魔力や、竜気がカットされたのさ。アシュタロス一派が拠点を潰しているって情報から、考えられる原因は一つ。神族共は負けたのさ。それに妙神山を監視させていた使い魔も消えたしね。」
負けたことを不思議がらないメドーサにその事を聞くが、単純だから勝てないの一言で切り捨てる。
「もう、いいだろうよ。雪之丞!!」
「――あ? 何だ?」
雪之丞はメドーサの方を向きながらでも、魔装術を使用した勘九朗、陰念の攻撃をかわす。
その動きに無駄はない。
「修行は終わりさ! さっさと行って来な!!」
「マジか!? おっしゃ!! それなら、最後に――」
「ま、待ちなさいよ!! 雪之丞!!」
「雪之丞、俺達を殺す気か!?」
雪之丞の右腕のみが魔装術によって覆われ、その形は槍となる。
その威力を知っている勘九朗、陰念は、必死に逃げ惑う。
「勘九朗……お前のおかげで、俺の気配を察知する力は桁外れに成長する事が出来た……感謝するぜ。」
「だったら、それ! それ解除しなさいよ!!」
「それだったら、俺関係ねえだろうが!!」
「陰念はついでだ。」
槍は、魔槍へと変貌を遂げ、悪魔のような突破力を生む。
「だが、毎日毎晩毎夜、襲われそうになったあの恐怖――存分に思い知れ!!」
ターゲットロックオン、突撃開始。
「――魔槍術!!」
雪之丞の魔槍は、勘九朗が居る地面に突き刺さり、その衝撃は勘九朗と近くに居た陰念を巻き込む。
地面は破壊され、巻き上がった石や砂は、二人に直撃する。
「相変わらずの破壊力ね。」
「直撃すれば、私も倒せるさ……防御無視して、全ての力をあの槍の先端に籠めてあるんだからね。」
例えば、画鋲は同じ質量を持っていても、尖った方と、押す方では尖った方が攻撃力があるに決まっているという事である。
「……ふん! 殺されなかっただけでもありがたく思いやがれ!!」
そんな倒れこんだ二人を尻目に、メドーサのもとに向かう。
「なぁ、行けと言われてもな……」
「なんだい?」
「此処が何処かわからねえし、金もねえ……」
「……………………さて、雪之丞の修行も終わった事だし、タマモ、ついて来な。」
都合の悪い事は無視をする。
タマモは、とりあえずメドーサについて行く事にしたようだ。
「おい!? ここって関東地方か!? 海を越えていないって事は日本だよな!!」
雪之丞が無事、合流できるかは怪しい……
/*/
妙神山での戦いからすでに一週間の日が過ぎていた。
この一週間は、何とか異空間潜航装置が無事だったため、異界で逆天号の修理に時間をかけていたのだった。
「それじゃ、メフィストの転生っていうのはその美神令子なのね?」
「ああ……でも、事務所から消えてると思うし、何処にいるかさっぱりわからん。」
横島の記憶を持つヨコシマは、当然、平安京での事件も覚えている。
なお、記憶を取り戻しても此処に居る事を選んだヨコシマと三姉妹の絆はさらに深まったようだ。
「それじゃ、やっぱりメフィストのデータを使った機械を作ったほうがいいわね……ちょっと待ってて!」
意気揚々と何かを作り始めるルシオラ。
他の皆は、ヨコシマを置いて何処かに行ってしまう。
「ほら! 手伝ってよ、ヨコシマ!!」
「あ、悪い。」
テキパキと作業を進めていく二人。
数時間で、完成させてしまう。
「すげ〜な。普通、設計図とか書くもんだろ?」
「さぁ? 何が普通なのか基準が分からないわ。」
とりあえず、他の皆をヨコシマを使って呼びに行かせるルシオラ。
「それじゃ、皆が集まった事だし――転生追跡計算鬼「みつけた君」といっても美神令子の居場所を探るためのようなものだけどね。」
ルシオラは予めメフィストのデータを打ち込んでおいたので、そろそろ結果が出るはずだと言う。
「あ、出たわ。」
『メフィストの転生先、計算結果表示!! 最有力1件! 美神令子、確率99.8%』
画面には美神の顔を映っていた。
「それじゃ、準備が出来次第行くわね。」
――心眼は眠らない その60・完――
あとがき
久しぶりの連日更新です。
ヨコシマですが、横島が作ったわけではありません。
これ以上はネタバレっぽいので……それでは。