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「心眼は眠らない その59(GS)」

hanlucky (2005-03-18 16:42/2005-03-18 16:43)
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鬼道の悲劇から一日が経過したその日、美神が匿われているアジトでは、ヒャクメが妙神山を監視し続けていた。
これはヒャクメを通して妙神山でどのような戦闘が行われるかを皆に見てもらいたかったからである。
なお、このアジトは霊的エネルギーに満ち溢れているので、ヒャクメ達には最高の環境ようだ。

「……どう、ヒャクメ。まだ、敵は攻めてこないの?」

美神は鬼道がやられたすぐに妙神山を攻めるかと思っていたのだが、やはり鬼道が三姉妹に与えたダメージが大きかったのかも知れない。
そのため、ヒャクメは攻めるなら今日だろうと、美神に返事を返す。

「美神さんは、休んでいてもいいのね。敵が現れたら、連ら――!?」

ヒャクメは、すぐにスイッチを押して、館内に敵が妙神山に現れた事を伝える。
美神も、妙神山が写っているモニターを凝視していた。

(小竜姫……横島クンを頼むわよ。)

今、神魔達の最後の抵抗が始める。


――心眼は眠らない その59――


異相空間を移動し妙神山に向かっている逆天号。
土偶羅は、今から妙神山を攻める事を、アシュタロスに報告していた。
今まで、戦闘中にアシュタロスが出なかったのは、逆天号を動かすためのエネルギー源になっていたからであった。

「――残すは、妙神山ただ一ヶ所のみになりました!
「よろしい、土偶羅魔具羅。お前にしては上出来だ。」

その口調からは、機嫌はかなり良いようであった。

「……ヨコシマの調子はどうだ?」

自分の最高の駒になりつつある横島が、予定通りに進行中なのかを尋ねる。

「はは! ヨコシマも、すでに一度、貴方様の御力を自ら望み、そして、狂化させた状態でありながら、僅かな自我も現れ始めました。」
「……ならば近いうちに、何かの弾みで次の段階に進むな。……それにしても、文珠使い。伝説通り、伝説以上の強さだ。いや、文珠使いではなく、ヨコシマだから…なのかもしれないな。」

今までの、横島の戦いぶりを思い出し、さらに機嫌が良くなる。
横島を捕まえてから今まで、全て予定通りにいっている事がおかしくて仕方がない。
アシュタロスは、自分の手のひらの上で踊っている神魔を嘲笑っているようだった。

「……次で最後だ。やつらも必死の抵抗をするだろう。だが――」

だが、我らの勝利は揺ぎ無い。最早、神魔に自分の計略を止めることは不可能だとでも言いたいのか、そう言い残し、後の事は土偶羅に一任すると言って眠りにつく。

「アシュタロス様……この土偶羅魔具羅、必ずや御期待に応えましょう!」

土偶羅が操縦室に戻ると、ルシオラ達から、間もなく妙神山に到着する事が伝えられる。

「いや〜〜、やっとこれで終わりっすか!」

今回は、断末魔砲一発で沈めるつもりなので、気楽な横島。
三姉妹達も、この逆天号の主砲の強さを知っているので、今回は余裕だろうと顔に出ている。

「土偶羅様、準備よろしいですか?」

ルシオラが異相空間から出る事を報告する。

ヴィィィン

前方の空間が波紋を作るように広がり、その中央から景色が変わっていく。

「妙神山確認、敵も……!? アレッ!? 土偶羅様、敵が見当たりません!?」

ルシオラが妙神山の方をレーダーで探索するが、一柱の神魔も見つけられない。

「何だと?……逃げた所で、妙神山が破壊されれば、我ら以外は、動ける事は出来なくなるというのに……」

人間界に居る神魔は基本的に、人間界における108の霊的拠点から霊力、魔力を得て存在している。
それが無くなってしまえば、アシュタロスが霊力源になっている三姉妹と土偶羅以外の神魔は、回復する事が出来るなくなるので、霊力がゼロになれば、消滅してしまう。
なお、アシュタロスの場合は、その膨大な魔力から供給がなかろうが、長い間人間界にとどまる事が出来るのであった。

「……かまわん。断末魔砲、発射準備。」

土偶羅は、敵が何を考えていようが、妙神山を潰す事には変わりないと、主砲発射の準備を急がせる。

「自動照準よし、いつでもいけます!」

安全装置もすでに解除済み。後は、発射ボタンを押すだけ。

「断末魔砲、発射!!」

カチ

発射口にエネルギーが集まっていく。
後2、3秒で発射される瞬間――


「敵発見!! 逆天号の下!? 左右、後方からも!?」


――神魔の反撃が始まる。


/*/


小竜姫達は、予めヒャクメから兵器での勝負では勝つ事は不可能と告げられていた。
ならば、どうすればいいか?

”――妙神山を囮に使います。”

管理人として、苦肉の策である。そして、霊力源がなくなり、背水の陣でもあった。
しかし、だからこそ、108回目にして、


「突撃ーーー!!!」


戦いを支配する事が出来た。
ヒャクメが妙神山から離れた時から、いつ攻めて来られてもいいように、妙神山の周囲で待機し続けていた。
そして、断末魔砲の発射に紛れて突撃する事で、自分達の発見を遅れさせる。
ここまで近づけば、敵も気づいているはずだが、それまでの僅か数秒が大きい。


ギャーーーーーーー


断末魔砲の名に相応しい音と同時に、妙神山が消滅する。
ギリッと歯をかみ締める。だが、口惜しいが今は逆天号を破壊する事が先だと、気持ちを引き締める。
逆天号さえ破壊できれば、冥界との妨害霊波も消えて、援軍が来るのだ。
そうすればアシュタロスを倒す事も、難しくはない。

(問題は横島さんですか。)

逆天号の何処からなら、侵入する事が容易いか等と一緒に伝えられた情報。それが横島の事であった。
記憶を失い、アシュタロスに操られ、多くの自分達の仲間である神魔を倒してしまった事。

(……私なら、出来るはずです。)

暴走した横島を生きたまま捕らえる事が出来るのは、もう生き残った神魔の中では小竜姫ぐらいであった。
小竜姫は、横島と出会える事を祈りながら逆天号に向かう。

「――!? やはり出してきましたか。」

べスパの眷属が、現れてくるが、その連中の事もヒャクメから聞いている。
アレは弾丸のような性質を持っているため、一度かわせば、次に狙われるまでかなりの時間を要する。
しかも、あの妖蜂が出てくる場所を避ける陣形を取っているため、向こうがこちらに照準が定まる前に、多くの仲間が逆天号に張り付く事も可能。
そして、逆天号に到着すれば、誤射を避けるために妖蜂はもう自分達に迂闊に突っ込む事が出来なくなる。

偶然ではあるが、横島がヒャクメを見逃した事は、思いのほか大きかったのだ。

「来ましたか!!」

予想通り三姉妹達が現れる。
だが、小竜姫からは横島の姿は見えない。

(……くっ!! 横島さんを取り戻すチャンスなのに!!)

思わず地団駄を踏みたくなるような気持ちになるが、出なければ出させるまでと気持ちを切り替える。

「――この程度でアシュタロス様に敵うと!?」

蛍の化身、ルシオラが神魔を圧倒する。
その様子を見て小竜姫は、まずはルシオラを倒す事に決めたようだ。

「私が相手です!!」
「小竜姫……あなたと一対一でやり合っているほど、暇じゃないの。」

バァァン

凶弾が小竜姫を襲う。苦痛に思わず、声がこぼれる。
小竜姫は寸前で反応し、体を捻るがそれでもかわしきれず左肩を負傷してしまう。
弾が来た方向を見れば、べスパがライフルの銃口をこちらに向けていた。

「二対一ですか……望むところです!!」

小竜姫としては、好都合だろう。三姉妹を二体も相手にすれば、その分、他の皆が動き易くなるのだから。
しかし、

「もう、大丈夫よべスパ。後は任せて……」
「了解……見たところ、やっかいなのは小竜姫とワルキューレぐらいだね。私はワルキューレの相手をするよ。」

小竜姫の負傷を見るや、べスパはここから離れて行く。

「さぁ、いつまで戦闘できるのかしら? その状態で超加速の使用は?」

超加速、この場を打開できる小竜姫の切り札。
しかし、霊力の供給がない以上、超加速の使用は限られてくる。使いどころを誤るわけにはいかない。
ここで超加速を使用すれば、ルシオラを倒す事は可能だが、次が続かない。
ルシオラはその事を考え、危険を覚悟で小竜姫に超加速を使わせようとしているのであった。

(……ジークさん達はうまくやってくれるまで辛抱ですか。やはり……)

まだ勝負は始まってばかり。序盤で自分が消えるわけにはいかない。

「あなたに使う必要はありません! かかって来なさい!!」
「時間稼ぎね。……出来るものなら――やってみなさい!!」


/*/


小竜姫とルシオラ、ワルキューレとべスパ、パピリオと横島がその大勢の神魔が戦っている中、ジークはイームとヤーム、そして鬼門の二人組みを連れて、内部に侵入する事に成功していた。
こうも簡単に侵入出来たのは、やはりヒャクメから与えれた情報が大きい。

「次はこの部屋だ!!」

ベレー帽を被った軍人モードのジークが、先行して新たなに部屋に入る。
その中には、

ガルルルル  

 カサカサ ぐけーー

がっちゃがっちゃ

「……なんだこれは?」

ペットのように飼われている化け物達を見て、全員が混乱する。
中にはケルベロスまでいるのだから、驚きだ。

「これは使えるな――はっ!!」
「な、何するんだ!?」

ジークは鞘から剣を抜く。もちろん、あの魔剣グラムだ。
そのまま牢をぶち壊し、ケルベロスをはじめ全ての化け物を解放する。
ヤームがいきなりのジークの行動に驚くが、ジークはこの連中を使って逆天号を破壊する事を告げる。

「この連中が暴れている間に、俺達は他の重要な所を破壊して一気に沈めるぞ!!」

すぐに部屋を出て、違う部屋を目指す。
後ろからはジークの思惑通りに、怪物達が暴れ始めていた。

「――!? あそこの部屋に誰かいるんだな!!」

優れた嗅覚を持つイームが、兄貴分のヤームにドアの向こうに誰かが居る事を報告する。
そして、鬼門はその霊波に覚えがあるようであった。

「覚えがある?……まさか、横島か!!」

鬼門が知っているとしたら横島しかいないと、ジークが中に入るとそこには……


「「悠闇どの!?」」


今にも死にそうな悠闇が鎖に繋がれていた。

鬼門達が急いで駆け寄り、悠闇に声をかけるが返事がない。
ただ、神魔は死ぬと消滅するので生きている事だけは確かである。
鬼門を除いた連中は悠闇が誰か分かっていなかったので、急いで鬼門が説明をする。

「なるほど……横島の師か。そこをどけ。今、この牢を破壊する。」

掛け声と同時にグラムを振るい、牢を破壊し、鎖を切る。
鬼門が悠闇が倒れるのを支えて、声をかけるが未だに返事はない。

「生きていられるギリギリの霊力だけ供給されていたんだろうな。……お前達は、そいつを連れて脱出しろ! 後は俺が引き受けた。」

グラムを鞘に収めながら、鬼門達に悠闇を美神達が居るところへ連れて行くように命じる。
どのみち三姉妹と出会えば、少しでもまともに戦えるのはジークぐらいなので、鬼門達もそれを了承する。

「了解したぜ! アンタも気をつけてな。」

そう言いヤームがジークと別れようとしたその時、

「全く……いつの間に侵入してるんでちゅか。」

侵入に気づいたパピリオが現れる。
その存在に、絶対コイツには勝てないと思ってしまったヤーム、イームに鬼門コンビ。

「しかも勝手にソイツも連れ出ちているし……」

悠闇を背負った左の門を睨む。

「……お前ら、俺が抑えるから、先に行け。」

グラムを抜くジーク。パピリオはジークの台詞に笑おうとしたが、ジークがグラムを構えた瞬間にそれも止む。どうやら、今のジークは危険だと判断したようだ。

「生意気でちゅね。やれるものなら――」
「唸れ。」

ズワァァァァン

グラムが吼える。剣から出た閃光はパピリオを襲う。
パピリオは、受け止めるのは危険と判断し、回避するが、その閃光は頬を掠める。
そのまま刃は逆天号を破壊して、外への穴が開く。

「行け!! 俺がコイツを抑える!!……いや、倒してやる。」

その言葉が合図となり、パピリオはジークに魔力の波動を放つ。
だが、ジークはかわそうとも、防ごうともせず、パピリオに向かってくる。

そう、かわす必要などないのだ。

  ドォォォン

 バァァァン

  ドォォォン

全てが直撃し、ジークが居たところで煙があがる。

「大ちたことないでち――!?」

煙から現れるジーク。その様子を見た所、全く無傷であった。

「何ででちゅか!?」
「敵に教える馬鹿が居ると思うか?」

ザァァァンッ

パピリオは、その一撃を必死にかわすが、かわされた閃光はそのまま逆天号を傷つける事になる。
パピリオにとって、この場で戦うのは不利であった。そしてジークにとってはパピリオのみに集中出来るため最高の環境であった。鬼門達もいつの間にか、この場から離脱している。これで、後は目の前の敵を倒すのみ。

「このまま押し切らせてもらうぞ!!」

パピリオは必死に反撃するが、その全てが無効。
パピリオが避けるほどグラムの一撃は脅威、そしてジークの不死性。圧倒的にジークが押していた。
パピリオにとって運が悪く、ジークにとって運が良かった事は、三姉妹が小竜姫とワルキューレに注意を払っていて、ジークがノーマークだった事。
おかげで、仮にジークの先祖の伝説を知っていたとしても、ジーク自体を知らないのでどうしようもなかった。

「この兵器は沈めさせてもらうぞ!!」
「ムカつくでちゅね!!」

ジークはパピリオを仕留めようと、パピリオはジークをどうやったら倒せるか考える。

「もらった!!」
「まだでちゅ!!」

攻め続けて、すでに何分も経過しているが、未だに勝負は決まらない。
ジークとしては、敵の増援が来る前に勝負を決めたいところであったが、

「パピリオ!! しっかりしな!!」

そう簡単にはいかない。

「べスパちゃん!? それじゃ、ワルキューレは!?」
「逃げられた……まぁ、とりあえずコイツを始末してからさ。」

ワルキューレはべスパと互角の勝負を繰り広げていたが、長時間、全力で戦えるわけもなく、途中で撤退を余儀なくされたのであった。
べスパはワルキューレを退けた後、一番被害が酷い所、ケルベロス達が暴れている所を鎮圧してから、ようやく此処にたどり着く。

「それよりもパピリオ!! アンタが変な道楽やってるから、霊波シリンダーがぶっ壊れちゃったじゃないか!!」

ワルキューレが楽に撤退できたのは、実はケルベロスが居た場所の近くに、妖蜂を操る機械があったのだが、それが壊れてしまったからだった。
そんなわけで自分では知らぬうちに、ワルキューレを助けていた事になるジーク。
べスパが怒っているのは、ケルベロス達はパピリオが趣味で飼っていたからである。

(姉上も負け、コイツがここにきたという事は、外には残りの味方ももう殆ど居ないというわけか……)

つまり、孤立無援。

「パピリオ、こんな見た事もないヤツに何で苦戦してるんだ?」
「それが全く攻撃が効かないんでちゅよ。多分、あの剣に秘密があるんだと思うんでちゅけど……」

べスパとパピリオがグラムを見つめる。
ジークは、そんな二人の様子を見て、自分の弱点に気づいていない事にホッとする。
ならば、まだ活路はある。

「どうした? 掛かってこないなら――」

魔力も残り少ない、しかし諦めるのは、絶望するのはまだ早い。

「――こちらからいくぞ!!」

彼はまだ、負けていない。


/*/


ジークがパピリオと戦っている最中、ルシオラと小竜姫の戦いは、ルシオラが押していた。
やはり左肩の傷のハンデは、あまりにも大きい。

「そんな状態でよくここまで……感心するわ。でも――」

向こうにもあるように、こちらにだって負けられない理由はある。
これで止めとルシオラは、小竜姫に魔力の波動を放つ。

「まだです!!」

小竜姫は何とかその一撃をかわす。
逆天号を見れば、数箇所から煙が上がっているが、それでも崩壊には至らない。

(くっ! ここまで攻めておきながら!!)

始めは順調であった。
妙神山を犠牲にし、逆天号に多くの神魔を取り付かせ三姉妹を引き付ける事にも成功する。
途中からは、妖蜂の動きもおかしくなり、侵入した誰かがコントロール装置を破壊したのだろうとも思えた。
だが、時間が経つにつれ、力の弱い神魔から徐々に撤退していく事になっていき、つい先ほどには戦闘の要であったワルキューレもべスパに押し切られ撤退を余儀なくされた。

(だけど!! まだ、私は諦めません!!)


――超加速・発動――


伊達に斉天大聖の弟子になっているわけではない。
残り少ない神通力で、時の流れを遅らせる。
ルシオラは、反応出来ていない。


「はあああああ!!!」


ザシュッ


小竜姫の一撃はルシオラを……?


「よ…よこしま……さん……?」


小竜姫の一撃は、ルシオラではなく、突然現れた横島を襲う。
横島が苦痛で顔を歪めているが、小竜姫には何を言っているのかわからない。
ただ、いつの間にか現れた横島に、何より横島を斬ってしまった自分に動転してしまう。


――超加速・解除――

「横島さん!?」

小竜姫は集中が乱れ、超加速が切れてしまう。
横島が急に現れたのは、小竜姫とルシオラの戦いを見ていたのだが、小竜姫が超加速を発動させたと同時に、《転》《移》でルシオラの前に現れたのだった。
もちろん横島としては、そのままカッコよく小竜姫の一撃を防ぐつもりで、サイキックソーサーを展開したが、それごと斬られてしまったようだ。

「よくも、ヨコシマを!!」

早く治療しなければ命に関わる傷である。左肩から、右腰まで、一気に斬り付けられていた。サイキックソーサーで防御していなかったら、間違いなく両断されていた事だろう。
すでに横島は出血から、気を失っている。

(どうすれば……)

小竜姫は選択に迫られる。
一つはこのまま横島を放っておいて、逆天号を沈めに行く。ルシオラの様子から、横島を助けるために小竜姫を追うことはないだろう。

(!? だったら!!)

そして、もう一つは――


「なっ!? 待ちなさい!!」


――横島を連れて逃亡する。

小竜姫は横島にヒーリングをかけながら、ルシオラから逃げる。
戦っているうちにスピードなら、こちらの方が上だとわかっていた。
敵に見つかりにくいように、地上に降りていってさらに逃げる。

ドクンッ

「横島さんが、何か洗脳されているっていうなら……とりあえず眠らせているうちに……」

ここで横島を取り戻せば、戦局は大きく変わる。
皮肉にも横島も桁外れの実力は、拠点潰しで十分すぎるほど分かった事なのだから。

ドクンッ

(ヒャクメの話では、美神さんの居る場所なら……)

鬼道が襲われた後、ヒャクメは通信鬼を使って小竜姫とアジトの場所などの連絡を取り合っていた。
そのため、そこにいれば自分の力が回復することも知っている。

ドクンッ!!

「横島さん、あと少しで、元に――!?」

嫌な予感がした小竜姫は、横島を放り投げる。
気絶しているはずの横島は、空中で体を捻って見事な着地する。

「誰ですか!? あなたは!!」

目の前の男は、確かに横島忠夫。ルシオラを体を張って助けた事からもそれがわかる。
だけど、今は何かが違う。いや、何かが違い始めている。

「……………………」

男は、横島の姿をした男は何も答えない。
顔を下向けているため、表情も読み取れない。

「もう一度聞きます。答えなさい! あなた――速いっ!?」

小竜姫が男に問いかける前に、男の小竜姫に迫ってくる。その速さは尋常極まりない。
いや、それもあるが人間の動きに反応できないほど、小竜姫は疲弊しきっていた。
神剣を構えようとするが、その前に右手を押さえられてしまう。

「何を――っ!?」

男はそのままサイキックソーサーを展開させて、鞘自体を小竜姫から切り離す。
小竜姫は自分に攻撃が来ると思ったのか、後ろに跳んでしまい神剣を失ってしまう。

「――酷いな〜〜。忘れたんすんか?」

その顔は、その声は、その口調は確かに横島忠夫のモノであった。
しかし違う。
何故なら、少年は少年でないのだから。


「俺っすよ! 小竜姫さま!」


横島は心の崩壊を防ぐために、自我を保つために、生きたいがために、その方法を取らざるをえなかった。
ツギハギだらけの心。崩壊を防ぐため、


「あなたのヨコシマです!」


横島は眠り、ヨコシマが目覚める。


――心眼は眠らない その59・完――


あとがき

大ピンチのジーク、彼は生き残れるのだろうか……
んでさらに大ピンチの横島、どうなる事やら。

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