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「繋がりの年代記 十話(GS+終わりのクロニクル)」

伏兵 (2005-03-18 04:26)
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 横島は跳ね起きていた。

「っ!」
「きゃっ!」

 視界が夢の中とは違う風景を見せる。
 ベッド。布団。少し古びた感のある部屋。天井には見ようによっては人の顔に見えるシミがある。
 そして正面には、朝日が差し込む窓を背後にして女が一人。巫女のような服を着ており、驚きの表情でこちらを見ている。
 同居人の月神族、朧だ。

「えー、っと……?」
「おはようございます。横島さんが自分から起きるなんて、珍しい」
「いや、何か変な夢を……?」

 答え、夢の内容を口に出そうとして気付く。
 首をひねり、

「……どんな夢だったっけ?」

 思い出せない。
 うっすらと、とても快いものだったという事だけが記憶にある。

「むう。思いだせん……!」
「悪夢だったんですか?」
「いや、どっちかってーとイイ感じの夢で……ああああ! なぜ思いだせん!? ひょっとしたら21禁なステッキードリームかもしれんのにー!」
「横島さん横島さん」

 朧が手招きをして、服の胸元をはだけた。

「私でどーです?」
「おおおおっ!?」

 思わず身を乗り出した。
 その時だ。

「やめいっ!」
「はうっ!」

 朧の側頭部に金属製の何かが着弾した。
 鈍い音を立てて朧を打撃したそれが、床に転がる。おたま。
 打たれた場所をさすりながら、朧はおたまの飛んできた方向を向き、

「か、神無。――おたまは痛いの。金属だから」
「朝から破廉恥な真似をするなと言っている!」

 朧の向いた先には、神無が立っていた。
 手に包丁を持ち、割烹着姿だ。

 ……似合ってるなあ。

 言い争いを始める二人を眺め、思う。
 いい朝だ、と。

「……ほら、神無の欲しがってたチョコエッグ“世界の刀剣”の妖刀八房あげるから。それで手を打たない?」
「む、……そういうことならば」

 二人の口論が平和的に解決したところで、横島は一言呟いた。

「平和だなあ」


               ○


 走る風景の中、マリアは居た。
 電車内だ。いつもと変わらぬ服装で、マリアは座席に腰掛けている。
 普段なら行動を共にするカオスは、今はいない。
 単独で行く先は、美神除霊事務所だ。
 用件は説明と交渉。

 ……横島さん、仲間に入れる。

 文珠という霊能は、どこの概念空間でも通用する立派な概念兵器だ。
 UCATがオカルト関係にうとい事もあり、横島・忠夫という戦力は是が否でも欲しい。
 だが、雇用主である美神・令子は手放さないだろう。
 だから、

 ……ミス・美神と交渉する。

 横島・忠夫のみならば向こうも渋る。
 美神除霊事務所としてUCATと契約させれば、オカルト関係の戦力も手に入り一石二鳥だ。
 問題は、

 ……ミス・美神は、素直じゃない。

 美神・令子は筋金入りの天邪鬼だ。自分の意に反した選択は選ぼうとしない。
 仮に横島がUCATに協力する旨を説明したとする。その場合、彼女は自分の丁稚が意見して来たことに反発し、交渉は決裂するだろう。
 ゆえに、

 ……横島さんより早く、ミス・美神と交渉する。

 そうしろと、カオスに言われた。
 カオスの考えは的確だ、とマリアは判断する。
 美神・令子と横島・忠夫の交渉をシミュレートすると、高確率で人間関係の破局を迎えるとの結果が出る。
 あの二人、いや、あの二人を中心とした繋がりは、非常に……そう、非常に、

 ……快い。

 人造の自分でさえもそう判断できるのだから、それを壊してはならない。
 マリアは自分の出した答えに応える。

「Tes.」

 言葉と同時、車内アナウンスが入った。駅が近い。
 ブレーキ音が響き、電車が揺れる。
 しかし、マリアは揺れない。


            ○


 漂ってくる匂いで、タマモは目を覚ました。
 油揚げ。

「……食べる」

 布団を跳ね飛ばし、起き上がる。
 ん、と軽く体を伸ばして、壁にかかった姿見を覗いた。

「うわあ……」

 酷い寝癖だ。
 昨夜の捜査の後、西条のおごりで飲み明かしたのを思い出した。
 西条は適当なところで切り上げたようだが、シロと共に酔いつぶれるまで飲んだ記憶がある。
 泥酔状態で帰って来る途中、絡んできた酔っ払いを、

「……二、三人ほどミディアムレアにしたんだっけ?」

 シロはシロで、同じく二、三人ほど霊波刀で全裸に切り剥いていた。

「西条にバレたらまたお小言ね……」

 はは、と乾いた笑いが口から漏れる。
 はあ、と息を吐き、隣のベッドを見た。
 シロはまだ寝ている。ぐしゃぐしゃになった掛け布団の横から伸びる脚が、妙に艶かしい。

「この色気が普段出せればね……。横島なんて一発で篭絡できるのに」

 苦笑を浮かべ、タマモは着替え始めた。


              ○


毎度毎度打ち切ってませんよ、と言うのもマンネリなので
続いてますよ。

と、ゆーわけで目下LOVE寄せ中の伏兵です。
とりあえずキャラ付けの為に、神無さんは刀剣マニアにしてみました。チョコエッグとかのオマケ集めるのが趣味ですが、運が悪いので狙ったものが出ません(←萌えポイント)

あと電波受信しました電波。

「横島に技能使わせろ」
「美神に五行使わせろ」
「1st-G概念空間内で神通棍に“陣痛”とか書いて“陣痛棍”」

夜中でテンション上がりつつ次回
『人工幽霊一号、愛に目覚める』
『人工幽霊一号vs横島』
『ジークの恋人はべスパ』
の三本でお送りいたすかもしれません。まる。

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