第12話 「狐と狼が壊す夜」
「ちょっと!あんたたち止めてきなさいよ!」
「そうでござるっ!」
土の中から突き出した首をブンブカ振りながらカムイたちに猛抗議するタマモとシロ。
毒を受けているはずなのに根性か気力か、それをものともせずに暴れる二人にカムイたちも驚きを隠せない。
「子狐。ここは譲ってくれ。」と苦笑いを浮かべながら言うシュマリに「なんでよっ!」っと噛み付くタマモ。その目はかなり真剣なご様子。
「だってなぁ。やっぱ物語の王道としては囚われの姫と勇者が結ばれるってもんだろ?」
タマモの抗議をやはり苦笑いで返すキムンカムイ。順番が違うということは無視らしい。
「結ばれるってのは…」
「ん?どうした子狐?」
土から首だけ出したタマモの口から静かな声が、しかしある種の迫力を伴って漏れ出す。気配に敏感な森の獣たちは先を争いつつ逃げ出した。
「…それはヨコシマのことかぁぁぁ!!」
ギン!と目を光らせて絶叫する狐の少女。その耳にヒャクメのバッグからの甘い囁きが届く。
(私を横島さんの初めての女にしてくださいね…。)
「させるかぁぁぁぁ!!」
タマモの周囲に巻き起こる巨大な霊波動。
それは収束すると天空に伸びる光の柱となってそそり立つ。
やがて光が納まり、驚き逃げ惑っていた獣たちが木の影、草の影から恐る恐る覗き見れば、どこぞの超戦士のように金色の髪をなびかせ金色の光を身に纏った少女の姿。
となりにはやはり土砂を吹き飛ばし銀髪を逆立てた少女の姿もある。
「行くわよっ!シロ!」
「承知!」
二人の少女はその迫力に震える神々を残して飛ぶように駆け出した。
「あーあ、行っちまったなぁ…。」
「ああ、狼はともかく狐をあそこまで懐かせるとは…。やはりタダッチとやらは凄い奴ということか…。」
「そうだな」と笑いあう二人の神。その足元から爆発で吹っ飛んだ土砂に埋もれた覗き神が彼女のカバンとともに発掘されるのは30分ほど後のことになる。
霧香の作り出した霧の迷宮をひた走る少女達。
霧が霊感が狂わされるのか、ほんの5分ほどの距離なのに目的地はまだ見えない。
先を走るタマモにシロが声をかけた。
「タマモ…「何よっ!!」…何でそんなに一生懸命なんでござるか?」
その言葉にタマモの足がピタリと止まる。不意を付かれてタマモの背中に激突するシロ。痛む鼻を押さえ文句を言おうとした少女を遮るかのようなタマモの声。
「気に食わないからよ…」
「何がでござるか?」
「さっきの熊も言っていたでしょ。知らぬ間に助けられていたって…。もしそれが本当なら私は二度もアイツに助けられたことになるわ…。」
「先生は嘘なんぞつかん!」気色ばむシロを片手で制するとタマモは先を続けた。
「ええ、わかっている。肝心なところで嘘をつく男じゃないってことぐらいはね…。だからアレは本当のこと…。だから余計に腹が立つのよ!」
「どうしてでござるか?」
「借りっぱなしは趣味じゃないのっ!!」と言うなり再び走り出す金色の少女。
なぜ邪魔をするのか…タマモの口から語られてはいなかったが、それでもシロは大きく頷いてタマモの後を追う。
彼女も自分と同じ感情を抱えていると理解できた今、二人の気持ちは一つだ。
だから今はタマモのように自分の感情に身を委ねよう。
((先を越されてなるものかっ!!))
目的地はまだ遠い。
湯壷に腰掛ける横島とその前で半身を湯につけている霧香は深刻な問題に直面していた。
魅惑のゴム製品を手に曖昧な表情で笑う霧香…でも半分涙目。
おずおずと顔を上げて少年に聞く。
「あの…横島さん…コレって…どうやって付けるんでしたっけ?」
「チェリーボーイにそれを聞きますか…」
知識としてはあるものの実際に使用したことはない。
簡単に見えて難しいというのは悪友たちのY談の中で聞いたことがある。
空気を抜くとか何とか…だが、何のことかは見当がつかない。
どうやら横島君、かなり偏った性知識を持っているご様子だ。
「あう…」と項垂れる霧香にしても似たようなもん。
経験があると言っても遥か昔のことである。当然、ゴム製品など存在しなかった。
今、手に持っているブツにしたって、どこか不思議回路を持つユクカムイが人間界に勇者を探しに行くという霧香に「これ…良かったら使って…ふふふ」とくれたものだったりする。まさか本当に使うことになるとは思わなかったが…。
(なんで使い方も教えておいてくれなかったのよぉぉぉ)と泣き言を言う心を無理矢理叱咤して問題のブツを天に掲げた。
「えーとですね…まず袋を開けます!」
当然です。で、次はどうするの霧香さん…ワフ。と通りすがりの犬が何か言いたげに見守る。
「袋から出したら…それをゴニョゴニョにつけますっ!!」
それも当然。そういう道具ですから…ワフ。
「あうぅ…」と涙ぐむ霧香に横島が助け舟を出してみた。
「きっとそれを先に乗せてクルクルってやるんじゃないっすか?」
「そ、そうです!嫌だわ私ったら。度忘れしてました!」
この期に及んでまだ上級者ぶりますか、霧香さん?
取り出したブツを主砲の先に乗せようとて再び硬直、ウルウルと瞳を潤ませて横島を見上げる。
「…ちゃんとおっきくしてから付けた方がいいんでしょうかぁ…」
「多分…そうだと…」
「そ、そうですよね!靴下もそうやって履きますものね!」
概ね正解ですが足は大きくなったり小さくなったりはせんです…ワン。
おずおずと「煩悩」の主砲に手を伸ばす。
その白い指に包まれてエネルギーが満ちる主砲に「えいっ」とかぶせて装着を始めるが…。
「入りませんよぉぉぉぉ」と泣き言を言い始めた。
サイズってのがあるんです。霧香さん…。それ多分「Sサイズ」ですワン。
必死に記憶を検索するお姉さん。確か千歳空港のラーメン屋で読んだおじさん向け週刊誌に何かそれっぽい記述があったような…。
ピカリとお姉さんの脳裏に天啓がひらめく、考える間もあらばこそ霧香は「はむっ」とゴム製品を乗せた主砲先端を口に含んだ。
「にょほぅ!」
主砲に感じる柔らかな温かさにマヌケな声を上げる煩悩少年。
どうでもいいけど霧香さん…それってかなり高度な技術ですワン。
はむはむと咥え続けるも、肝心のゴム製品はちっともあるべき姿になってくれない。
霧に包まれた湯壷の中、当初の目的とはかけ離れた方向へはむはむと邁進するお姉さんとその絶妙の刺激にのた打ち回る少年。
脳内で発射のタイミングを伺う「煩悩」艦長が今まさに「主砲三連正射!」と号令をかけようとした瞬間、乱入する金と銀の影二つ。
「「待ていっ!!」」
「も゛む゛っ!」
ガリッ
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
何か食べている人をいきなり驚かすのは良くないよ…シロタマちゃん…。
旗艦「煩悩」が不意のアクシデントで戦闘不能になり、肉体的にも男として考えたくない類のダメージを追った横島がぷか~と浮かぶ湯壷にて、一食即発の空気を身にまとって立つ二人の少女と向かい合う全裸のお姉さん。けど口を押さえ羞恥のあまり顔どころか全身を真っ赤に染めプルプルと身を震わせる様子は同年代と言っても差し支えないだろう。
ギュォンギュォンと闘気を吹き上げながらタマモが吠える。
「何をしているのよっ!」
「何って…ナニですけど…」
真っ赤になったまま目の前で指先をツンツンと会わせる霧香さん。
目撃した情報からもっとも適切と思われる解答を導き出したシロがズズイと迫る。
「先生を食べる気でござったか?!」
「食べると言えば食べるような…」とツンツンツン。
「そんなことはさせないわっ!」
「な、なぜですかぁ?」
あっさりと言い切ったタマモに手をブンスカ振り回して抗議する。
その手の動きに合わせてプルンプルンと揺れる張りのある乳房がシロタマの劣等感にダメージを与える。
「「何となくよっ(でござる)!」」
声を合わせて答えになってない答えを返すシロタマに霧香さんもさすがにムッとしたのか毅然と言い返した。
「これは私と横島さんの問題ですっ!」
「違うわよっ!」
「どうしてですっ!」
「今、あんたとモニョモニョしたら横島がここに居ついちゃうじゃない!!そんなのは嫌なのっ!!」
「ふぇ?」
突拍子も無く飛躍したかに思えるタマモの心配にお姉さんも驚いた。
ビックリ目で自分を見つめる霧香を睨みつけたままタマモが先を続ける。
いつの間にかその瞳に涙の雫を浮かべて…。
「うまく言えないけどっ!ルシオラって子とのことを聞いたでしょ。こいつは煩悩まみれだけど妙なところで一途なのよ!そんなヨコシマがあんたと関係もってハイサヨナラってなるわけないでしょう!!」
「それは…混ざりたいということですか?いきなり4人なんてそんな大技…はっ!もしかしてタマモちゃんって経験豊富?」
わざとか、天然か、それともコーチ役を見出した!と言う切ない勘違いか、道に迷った登山者が山小屋のあかりを見つけた時の様に喜色漲るお姉さん。
「違うわいっ!前世はともかく今は未経験よっ!!」
「ちっ…」
「「ちっ」って何よぉぉぉ!!」
どうやらコーチ役にはなれなかったらしい。
「ではどうしろとっ!!」と逆ギレ気味に叫ぶ霧香に「わかんないわよっ!!」とこちらもキレかけて叫び返すタマモ。
事態は混迷しつつある。
「ふーふー」と肩で息をする両雄。
睨みあうタマモと霧香の間でオロオロとするシロちゃん。
彼女にこの状況を解決する策を出せと言うのは酷であろう。
こういうことは知性よりも経験がものを言うのだ。
「とにかく…」と体を振るわせてタマモが泣くような声を上げる。
「…私はアイツと離れたくないの…折角出来た「仲間」なのっ!一緒に居たいのよっ!!」
「拙者もでござるっ!先生から離れるなど思いもよらぬ!!」
シロタマ必死の訴えに「ほえ?」と首を傾げるお姉さん。
ポクポクと頭を押さえて「ふーむ。」と考え込んだ。
やがてチーンと澄んだ音が聞こえた気がすると、霧香さんはポンと一つ手を打った。
「あの…もしかして私と横島さんが結婚しちゃうとか思ってません?」
「え?違うの?スルってそういうことでしょ?」とのタマモにシロも「うむ」と頷く。
「ふう…なんでそう思ったかなぁ~?」
「え?だって…その…交尾ってそういうことじゃ…」、「そうでござるっ!!」
何となく的外れなシロタマの様子に霧香さんの似非経験者モード発動。
いや似非というのは失礼か、0ではないのだし。
「あはは。お姉さんは一回の関係で結婚を求めたりしませんよ~。それに私たちって一夫多妻OKですし。」
「そ、そうなの?で、でも…シたら子供が出来るでしょ?!ヨコシマだってそれを望んでいるし…」
どうやら美神除霊事務所の性教育は少々時代遅れなのかも知れない。
講師がいないのだから無理もないのだろうが。
うろたえ始めたタマモにお姉さん、ニヤリと色々な意味を込めた笑みを向ける。
「タマモちゃん…世の中には避妊具というものがあるですよ…。」
「「そ、そうなの(でござるか)?」」と聞いてくるシロタマに、さっきまで使い方も知らずにべそかいていたことは心の棚に思いっきり放り上げて余裕の見せるお姉さん。
「はい。ですから安心してくださいね。私は横島さんをこの地に縛り付けたりしません…会いたいときは私から会いに行きます。お約束しますよ。」
ニッコリと笑う霧香にシロタマもつられてコクリと頷いた。
「だったら…いいわ。」とタマモが言えば「そうでござるな。」とシロも続く。
そんな少女たちに再び体を真っ赤に染め、モジモジしながら霧香が提案した。
「あの…解っていただけたんでしたら…恥ずかしいのでみんなのところに戻ってくれませんか?」
「え?…あ、ああ、そうね。ごめんなさい…。邪魔して悪かったわ…じゃあ明日ね。」
「すまんでござった。」
謝りつつ、もと来た道を戻っていく二人をにこやかな笑顔で見送る霧香の周りから先ほどよりも濃い霧が噴き出していた。
何か引っかかりを感じながらの帰り道、シロが口を開く。
「ところでタマモ」
「何?」
「さっきも聞いたが、なんであんなに必死だったんでござるか?」
「う、そ、それは…」
「やはり霧香殿に嫉妬したでござるか?」
「う…あんたって時々考え無しに核心を突くわね…」
ゴニョゴニョと口篭るタマモにシロはニッコリと笑って見せた。
「そりゃわかるでござるよ。拙者も同じでござるからな。」
「そっか…そうかもね。私、あの人とヨコシマがその…そういうことするのに嫉妬してたのかも…」
素直なシロの台詞にタマモも珍しく素直に返す。
顔を見合わせて笑いあう二人だったが、不意にシロが真顔に戻った。
「だったら…二人をそのままにしてきて良かったんでござろうか?」
「え゛…」
「タマモ…」
「シロ…」
額にでっかい汗を貼り付けて顔を見合わせる二人の少女。
「「しまったぁぁぁぁぁ!!!」」
いつの間にか鼻をつままれても解らないぐらいに立ち込めた濃霧の中。
少女たちの痛恨の叫びが山々に木霊した。
シロタマを追い返し「はふぅ…」と溜め息をつく霧香さん。
とりあえず冷え始めた体を湯にもう一度つけて深呼吸する。
霧の術はさっきより念入りに仕掛けた。もうシロタマがここに戻ってくることは無いだろう…と考えて肝心なことに気がついた。
「あれ?横島さんは?」
恐る恐る記憶をたどって見れば…不可抗力とはいえ自分が主砲に痛撃を加えた後から彼の声を聞いてない。
「えと…えと…」と必死で記憶を辿って思い出したのはぷかーと湯に浮かぶ彼の姿。
まさか…と思いつつ湯壷を見渡しても、念入りに仕掛けた自分の術が仇になったか、見える範囲に少年の姿は無い。
「れ、冷静になるのよ私…」と誰に聞かれるわけでもないのに口にすると、もう一度深呼吸して目を閉じ、もにょもにょと考え出す。
「むー」と考え中の霧香さん。
「むーむー」とまだまだ考え中の霧香さん。
「あうぅぅぅぅ」…怖い考えになったらしい。
その考えを確かめるべく、滝になっている湯壷の下を見に行けば、5メートルほどの下の湯壷に沈んでいる彼の姿が見えたりして…どうやらシロタマと言い合いしているうちに流れて落ちたらしい。
「きゃぁぁぁぁぁ!!横島さぁ~ん!!」
こっちはこっちで悲痛な叫びを山々に木霊させた。
…何やっているんだか…。
※犬と雀がワード文書10ページ分を削除中ですのでしばらくお待ちください…
翌朝…
一晩中、濃霧の中を走り回り、疲れきった様子で佇むシロタマの前に横島と霧香が現れた。
両方とも疲労しきった顔、目の下にはでっかい隈が浮いていたりする。
そんな二人にタマモがどよーんとした声をかける。
「昨日はお楽しみでしたね…」
「「へ…?」」
「昨日はお楽しみでしたね…」
「ち、違うっ誤解だっ!!お前はどこぞの宿屋の親父かっ?!」
「そ、そうですよ!タマモちゃん!!」
必死に打ち消す少年とお姉さん。
その両方の匂いをスンスンと嗅いでいたシロが一言ポツリと呟いた。
「霧香殿から先生の匂いがするでござる…」
「う゛…」と大汗かいて沈黙するお姉さんの前に、木の上からシタッと降り立つ妙に器用な牛と鹿の神が目を光らせて詰め寄った。
「霧香ちん…ずるい…」
「ふふふ…まさか一晩中…朝まで組んず解れつ…48の殺人技を…」
ジト目で自分を見るモモと何やら怪しげなことを呟いて一人「ふふふ」と笑うユクに火でも吹きそうな顔でパタパタと手を振る霧香さん。
「ち、違うってばぁ…そんな48回どころか…ぐすっ」
普通の男なら腎虚で文字通り昇天しているだろうが横島なら可能かも知れない。
「これは皆に報告するのねー…ひっ?!」
「スクープ!スクープ!」と喜んで神界に戻ろうとするヒャクメの背後に湧き上がる殺気…というより瘴気。
ギギギと頚椎を軋ませ振り返ってみれば、目以外は爽やかな笑顔で文珠をもてあそぶ横島と、目を爛々と光らせて薄く笑うシロタマがいた。
「ヒャクメ…『滅』と『忘』、どっちがいい?」
「狐火もオプションでつけるわよ…」、「霊波刀もでござるな…」
「な、なんでシロタマちゃんまで~?!」と震えながらのヒャクメの声にやはり震えながらシロタマが答えた。
「あのね…ヨコシマがサカったってのが美神たちに知られてごらんなさい…」
「それを阻止できなかった拙者らにもとばっちりが来るのは必定…」
「「そうなったら…」」とますます震えるシロタマ。
肉抜きお揚げ抜きはともかく、オニオンフルコースは犬科にとって致命的。
「わ、わかったのね…このことは秘密にしておくのね…」
流石に知り合いがムゴイ目に会うのはイヤなのかヒャクメも納得してくれた。
安心は出来ないが…。
それでも「ほーっ」と安堵の息を吐く美神事務所のメンバーと霧香。
そんな彼らにコタンコロカムイが眠そうな顔で近寄ってくる。
「タダっち殿、早速で申し訳ないが湖の妖怪を退治に行きたいのじゃが…腰の具合は大丈夫か?」
「腰って…大丈夫、戦えますよ。」
微妙な心配をしてくるコタンコロカムイに冷や汗交じりで返す少年の肩に巨大な手が置かれる。その手の先で「よう。タダッチ一緒に戦おうぜ。」と獰猛な笑みを見せる大男。
「子狐と子狼はここで待っていろ。試しを終えたとはいえ、お前たちはまだまだ未熟。」
「戦いって何よ?」
「実は…」
シュマリの言葉と今までの横島たちの会話に何か良からぬものを感じるタマモとシロに霧香は昨夜の話、湖に潜む妖怪と化した悪しき神の話をした。
異形の存在と化した神は身の丈20メートルにも及び、鉄をも切り裂く双振りの刃と銃弾をも跳ね返す鎧に身を包んだ大怪獣と言ってもいい化け物らしい。
真剣に頷きながら聞く少女たち。彼女らが自らの決意を現す前にキムンカムイがモモとユク、それに植物や小動物の神々に向けて言い放つ。
「危険な戦いになる。モモやユク、それに戦えない奴はここにいろ。お前達もだ!」
自分たちに向けられたその言葉にシロタマは先ほどまでの疲れを吹っ飛ばして憤然と抗議した。
再び横島だけを危険な目にあわせるなんて妖狐の、人狼の、そして何より仲間としてのプライドが許さない。
戦う時はみんな一緒との意志をはっきりとその目に宿して二人の少女は叫びをあげる。
「私たちも行くわよ!」
「当然でござる!」
「私も協力するのねー」
少女たちの決意と、どことなく頼りないガッツポーズを見せたヒャクメの言葉に神々たちは我も我もと名乗りを上げ、知床の山々は歓呼に震えた。
「で、行き先はどこっすか?」と隣に立つ霧香に聞く横島。
真剣な戦いに望む時に時折見せる漢の顔に赤面しボーッとなる霧香と獣の女性神たち。
上気した顔でフラフラと乳を揺らしながら近寄ってきたモモがウットリとした声で少年に告げた行き先は…。
「タダっち…「摩周湖」だよ…。」
神々の伝説の源、「霧の湖」にて最後の戦いが始まろうとしていた。
「ところで霧香さん…本当のところはどうなの?」
「タマモちゃん…タマモちゃん…タマモちゃぁぁぁん…」
「はあ?何で泣くのよ…。」
何やら自分たちを恨みがましい目で見ながらぐずり出す霧香に、どう反応して良いやらわからないタマモとシロであった。
後書き
ども。犬雀です。
さていよいよ次回で最後の戦い。
本当なら10話で終わらせるはずか予定をかなりオーバーであります。
でも次回でケリがつくかどうかは犬にもわかりませんです。
皆様の温かな助言に従いまして15禁にさせていただきましたが、一応、犬と雀が削除した部分も投稿させていただきます。
そちらを読まなくても本筋は進むように書きましたつもりですので、その手の話が苦手な方はスルーしてくださいませ。
なお、横島が自分でつけりゃいいやん!と言う突っ込みはなしの方向で…お互いテンパッてる二人でしたので(苦笑
ではでは
1>義王様
兄弟が居るってのも面白いかもですねぇ…でもあの母なら隠すことも出来なければほっとくこともしない気が。
2>L、L様
軽巡とは言え乗組員はなかなかに優秀であります。
3>nis様
お言葉の通りにさせていただきました。
ご助言感謝であります。
4>ttt様
横島は知らなくても母に隠し通すことは難しいでしょう。
そんな気がいたしますです。
5>なまけもの様
ピンクの世界はもう一話の方に書きましたが…犬の筆力では濃厚になったかどうか…。
6>斧様
ですねぇ…多分居ないと思うんですけど…優秀な父ですから。
もしかしたら居るかも…。
7>AC04アタッカー様
ご指摘の通りに両方投稿することにいたしました。
ありがとうございます。
8>DAZ様
一応、もう一話ピンクを投稿しましたのでそれでご勘弁ください。
9>かれな様
ありがとうございます。
微笑ましいかどうかはともかく、こういう形で発表させていただきました。
今後もご指導くださいませ。
10>KEN健様
神魔によくあること…というところに横島君が気づくって話の構想がございまして、今は鈍感のまま突き進んでいってもらっております。
11>紫苑様
関係を持ったと言えば持ったような…。違うといえば違うような…。
この展開だとアリエスとも関係を持ったと言える気が…(w
12>通りすがり様
ありがとうございます。
どりあえずこういう展開にしてみました。
干からびるってのは実はネタを頂きましたです。隈にしましたけど(w