〜第6話〜
除霊学部の勉強は霊を除う事だけではない。
式神使い講座ではそのものずばり、式神に関する事を扱っている。
六道冥子は今、式神製作の研究をしていた…
六道家に代々伝わる「十二神将」を彼女は(一応)扱えるが、彼女オリジナルの式神は持っていない。
それを創り出すのが彼女の今の「課題」なのだ。
とかくオリジナル式神を創り出すには創意工夫が必要なのだが、これがなかなか大変なのである。
「あ〜〜〜式神の形が崩れちゃったの〜〜」
だう〜〜っと涙を流す冥子。
GS課程(コース)2年目だというのに、未だまともな式神を製作出来ていないのだ。
「あう〜〜〜私には無理なのよ〜〜〜」
じたばたとだだっ子の様に暴れる冥子だが…
「冥子はん、諦めたらアカン!」
「マーくん……」
「あうっ…ここでは一応「教授」なんやからそう呼んでくれんと困るんやけど……」
鬼道政樹教授、努力家の式神使い。
元々は六道家とライバル関係の、式神使い一族出身だった。
しかし何の因果かお家は落ちぶれ果て、親父は六道家への復讐しか考えない人格破綻者に成り下がり…
トドメとばかりに六道家との式神バトルにも破れ、人生すら終わりそうになった彼だが…
その式神使いの腕は確かなものである事から理事長直々のご指名を受け、ここで後輩式神使い(見習い)に技術を教えている。
「大体冥子はんのやりかたが大雑把だから型崩れを起こすんや、もっと霊力を込め丁寧に愛情を注いで創り上げれば式神だって必ず答えてくれる筈やで…見てや、ボクの式神のイキの良さを!」
ぼんっと鬼道の式神「真・夜叉丸」が出現した。
以前は陰陽師風の姿をした少年といった姿だったが…
「真」となった今は、何処となく某黄金の闘士風の鎧を纏た凛々しい青年の姿となっている。
…何故か武器が巨大な斧になっていて、飛行時にはコウモリの様な翼が出るのはどうかと思うが。
ちなみに、必殺技は腹の霊石から放つ霊波砲「真・式神ビーム」である…
何の影響を受けたのだ?
一説にはマッドな教授の率いる研究室の助力を受けて改造がなされたらしいが。
(この力があの式神バトルの時にあったらどうなっとったやろなぁ…)
彼はしみじみと思いに更ける。
スカタンな父親の指示さえ無ければ、彼は勝利していただろう。
それほどまでの腕を持つからこそ教授になれたのだが。
まあこの一連の事件で一番得をしたのは誰かは…言うまでも無い。
「ごめんねマーくん〜…冥子やりなおすわ〜〜」
「……だから教授なんやけど…うぅ…」
漢泣きする鬼道だった。
余談だが、講座恒例の式神戦闘実習の時…
横島の創り出した式神と、ピート製作の式神が六道大学始まって以来の壮絶かつ高度な式神対戦を繰り広げた。
「最終戦!横島選手対ピエトロ選手!!」
マイクを手に叫ぶ鬼道。
ピートは、思い詰めた表情で臨時闘技場の前に立つ。
「ふ…式神なら横島さんに勝てるかも!マジィィンゴォォォ!!」
ドン!
彼の前に現れたのは、装飾過多な感じのロボットっぽい式神だった。
つかもろロボットなのだが。
「この神か悪魔か!最後の切り札!みんな待ってた無敵の「魔神皇帝」の前には横島さんもイチコロですよ!!」
どーだ!と言わんばかりのピート。
みんなって誰だ?
「へぇ…やるじゃねーか…なら遠慮はいらねぇな!出ろぉぉぉぉぉ!大善我!!」
ドドン!
横島の前に出現したのは、日本刀の様なモノを携えた鎧武者っぽい姿の式神。
「武神装攻!見参!!さーてピート…覚悟しろよ?」
ぽきぽきと指を鳴らす横島。
こっちもロボットっぽい印象が否めない。
「く…強そうだ…しかし!負ける訳にはいかない!」
珍しくピートに気合が入っている。
何故なら…今日の昼飯の奢りが賭かっているからであった。
留学生ピートの懐は苦しいのだ。
「(どういう式神なんやあれは??)始め!!」
号令が轟く!
「先手必勝!タァボスマッシャァァパンチッ!!!」
どしゅうぅぅん!
「魔神皇帝」の腕が竜巻の如く回転しながら打ち出された!!!
後に某女性型アンドロイドにも実装される予定の武器を、試験的に装備したものだが…
「ふ…斬艦刀!!」
バシュゥゥゥン!
「うわ!?」
ピートの驚きの声が走る。
何故なら、普通の日本刀サイズだったモノがいきなり身長の三倍以上に巨大化したからだ!
「斬艦刀!大!車!りぃぃぃぃぃん!!」
しかもブーメランの様に婉曲したそれを豪快に投げつけた!
ぐわきぃぃぃん!
ターボスマッシャーパンチが弾き飛ばされて本体の腕に戻る。
斬艦刀も鮮やかな弧を描いて「大善我」の手に戻った。
「きゃ〜〜横島くん〜凄〜い!」
「頑張って〜〜!!」
冥子とおキヌの応援が飛ぶ。
「なんちゅう連中や…あんなん初心者が使う式神やあらへんで!?」
唖然としている鬼道。
(人間以上の力を持つ筈のピートくんを圧倒する横島くん…一体何者なんや!?)
強い式神を操るには当然ながら強力な霊力が要求される。
人間ではないピートは当然としても、それを圧倒する横島の霊力も並みでは無い。
「くそ!ルストトルネェェド!!!」
「甘い!斬艦刀!電光石火!!」
豊富な武器で攻めるピートに対して、剣一本で変幻自在の攻撃を繰り出す横島。
周囲もその凄まじいバトルに釘付けになっていた。
「凄いなぁ…もしかしたらボクの夜叉丸(改造前)より強いんちゃうか?」
「やるわね…ちょっと参加してみたいかも」
唖然から復活して感心している鬼道と、うずうずしている美神。
「きゃ〜〜どっちも頑張れ〜〜」
「そこです!横島さん!!あああ惜しいです!」
更に無邪気に応援している冥子と、明らかに横島を応援しているおキヌ。
ピートよ、おキヌに嫌われる事をなんかやったのか?
「まだまだ!ファイヤァァブラスタァァァァ!!!」
ピートの絶叫と共に、「魔神皇帝」の胸の赤い放熱板から灼熱の光線が放たれる!
しかし…
「大善我」は素早く大ジャンプでそれをかわして…
「届け!雲耀の速さまで!!!」
一気に大上段から斬艦刀を振りかぶった!!
「うわ!?やられる!?僕の魔神皇帝が!?」
大技をかわされ、隙だらけの式神を動かそうとするピート。
だが!
「チェストォォォォォォォォォオオ!!!」
示現流の使い手でも無いのに…気合一閃!
斬ッッッ!!!
その一撃は見事「魔神皇帝」を真っ二つに断ち切っていた。
「ああああああああ!?僕の魔神皇帝ぃぃぃぃぃ!!!」
ピートの泣きが入った絶叫も空しく…
ズドゥムッ!!
何故か爆発四散する式神「魔神皇帝」
「我が剣に!断てぬもの無し!!」
すっかりノリノリの横島の叫びが響く。
誇らしげに剣を肩に担ぎそそり立つ「大善我」
横島の背後に、「一意専心」の文字を背負った銀髪の渋い男が見えたのは…
多分気のせいである。
「勝者!横島!!」
高らかに横島の勝利が宣言されたのであった。
「ああああ…今月の食費が…」
真っ白に燃え尽きているピート。
ご愁傷様。
「相変わらずメチャクチャな奴よね〜…」
大きく息を吐きながら美神が呟く。
(とはいえ、ピートも結構使えそうね)
こっそり品定め&打算を脳内で繰り広げている辺り美神らしい。
「うーん…ただものやないとは思とったけど、式神使いとしても有望みたいやな」
鬼道は小声で言った。
その後鬼道は、かなり本気で二人を式神使い講座に勧誘したという。
それはさておき。
取り敢えず今度は失敗しないよーに、冥子は式神使い講座のボードにメモをとめる事にした。
”×月×日 式神に餌をやること”
「そうだった〜〜明日はご飯をあげないと〜〜」
ご飯とは、霊的エネルギーダブレットである。(第3話参照)
「ふ〜ん…メモを貼ったんか…美神はん辺りの入れ知恵やな」
鬼道はかなり正確な予想をしていた。
翌日。
”式神を寝かせておくこと”
「寝かせるって〜〜休ませるのよね〜〜」
そして更に翌日…
”式神を散歩に連れていくこと”
「散歩〜?ええ〜〜〜!?まだ体が完全に出来てないのに〜〜」
涙目で冥子は振り向いた。
「誰〜〜?こんなイタズラする子は〜〜〜?」
瞬間、講座内の時が止まった………
「お…オレじゃないっス!弁護士を呼んでほしいっス!」
「私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない………」
「すみません!生まれてきてすみません!」
「ああ故郷の母さん…先日のおはぎ美味しゅう御座いました…」
「く…まずい!ならば必殺!「コビ売り」!!」(何故か賞味期間切れのところてんギフトを差し出しながら)
「オレは天才だぁぁぁぁぁぁっ!うわらばっ!?」
……もう何がなんやらもう滅茶苦茶である。
何故彼女がこんなに恐れられているかは…聞くだけ野暮というものであろう。
何しろ無敵の「暴走プリンセス」であるからして。
「こんなのが〜マーくんや〜令子ちゃんの〜目に触れたら〜冥子また叱られちゃう〜〜〜」
「アンタ幼稚園児かい!」
そうツッコミたかった一同であった。
しかし、犯人はコトの重大さを認識していないのか…
冥子の(暴走寸前の)訴えの後も、メモは貼られたのだった。
”×月×日 式神は映画を観に行く”
「あうあう〜〜〜」
メモを速攻で口に突っ込む冥子。
「冥子はん、今隠したのはなんや?」
「何でもないの〜〜ホントよ〜〜〜」
冥子は精一杯の(引き攣った)笑みで誤魔化す。
「うう〜〜〜このままじゃ駄目なの〜〜」
涙で目をうるうるさせつつも…
(こうなったら〜〜犯人を〜探すしかないわ〜〜)
六道冥子はまだ見ぬ「敵」を捜し出す決意を固めた。
何だかいや〜な予感を感じさせる「決意」だったが……
翌日、六道大学学生食堂にて。
「俺達じゃないっスよ?」
横島とピートは即座に首を横に振る。
「誰も横島くん達のことを〜疑ってなんかいないわ〜〜あれだけ頻繁に〜〜起こるんだから〜式神使い講座の誰かだと思うの〜〜」
「うーん…思い当たる事はないですか?恨みを持つ人とか?」
ピートの質問に今度は冥子がふるふると首を横に振った。
「ううん〜〜冥子いい子だもん〜〜」
「…………悪人では無いな、確かに」
「ですね…でもそれだけに……」
二人はアガルタに繋がる秘密の洞窟よりも深い溜息を、心の中で同時に吐いた。
そう、「敵」はどこにでもいる…少なくとも彼女の場合は。
冥子の最も恐ろしい所は、「悪気がま〜ったく無い事」なのであるからして……
この世で最もタチの悪い人種コンテスト上位入賞間違い無しの最終兵器彼女!←おい
その最凶の混合スキル「悪気無し」「自覚無し」「自制無し」「容赦無し」の4無し主義(?)に加えて…
「天然」という(ある意味)黄金の資質を兼ね備えた冥子は、正に無敵!
この十二神将の暴走を恐れぬのならかかってこい!てな感じである。
という訳でどうにも「敵」を絞りきれる状態では無い。
「じゃ、そゆコトで」
二人はそそくさと逃げ出そうとした、自己防衛本能に従って…
だが…
がっし。
「あ〜ん〜〜待って〜〜」
半泣き冥子の手がピートの服を掴んだ。
「しまった!?」
「ピート!?すまない、お前の事は忘れないぞ…俺はお前の屍の上に一人だけ幸せになるからな…」
とんでもない事をのたまいつつ、一人逃亡しようとした横島の服を更にピートが掴む!
「酷いですよ横島さん!意地でも逃がしませんからね〜〜!!」
「てめえピート!何故俺の(ささやかな)幸せを邪魔するんや〜!?」
「そーいう問題じゃないでしょう!」
滝の様な涙を流しながらの二人の漢の攻防(?)は続く!
……どうも恐怖のあまり二人とも壊れている様子である。
「わう?(何やってんでござる?)」
窓から顔を出したシロには、目前の光景が何だか全く理解出来なかった。
数分後。
「(取り敢えず協力するしかないか)」
「(そうですね)」
ヒソヒソと話す二人。
数分の間に何があったかは謎だが、どうやら休戦協定がこっそりひっそりと結ばれたらしい。
ちなみに冥子はノンキにシロと戯れている。
「(でもどうする?)」
「(手がかりはそのメモだけなんですよね?シロの嗅覚が使えませんか?)」
「駄目元でやってみるか」
「何をやるの〜〜?」
冥子の問いに横島が答えた。
「例のメモ、持ってないっスか?シロに嗅がせて犯人を探れたら…なんて思ったんスけど」
その途端、冥子の顔がぱあ〜っと輝く。
「あるわ〜〜横島くん〜頭いい〜〜」
彼女はごそごそとスカートのポケットを探り、一番新しいメモを取り出した。
「さあ、シロ…このメモに付いた匂いの人を探してくれ」
横島がシロの鼻先にメモを持っていく。
「うぉん…クンクン……(この匂いは……)」
びしっ!とシロが右前足で指したのは…
冥子だった。
「……そうだな、冥子さんがずっとポケットに入れてたんだから当然か」
「ですね………」
二人も(期待してなかったとはいえ)少々ガッカリであった。
「あうう〜〜そんな〜〜」
冥子は泣き出す寸前である。
ここで暴走されたらこの場はまさに地獄絵図と化すであろう。
イヤマジ冗談抜きで。
某初号機の暴走と、どっちが恐ろしいか検証したい所だ。(命があれば)
「まあまあ…次に貼られたメモを、今度は自分の匂いがつかない様にして持って来てくれれば大丈夫っス、だから泣くのは…」
「本当〜〜?冥子頑張る〜〜」
横島が言い終わらないうちに冥子は立ち直っていた。
「……こうやって人間は泥沼にはまっていくんだなあピート」
冥子が去ったあと、ヤケクソなほどサワヤカな笑顔で横島が言った。
「そーですね……」
もー祈る元気もナイピートがやはり悟った様な顔で返す。
「なあピート、そういやこの字何処かで見た事無ぇか?」
数十分後、我に返った横島が指摘する。
「この「式神」とかいう字とか…紙に書いてあるから印象が違うかも知らねーけど」
「そういえば……そうだ!黒板の字ですよ!」
ピートが手をポンッと打つ。
「しかし……そんな事があるかな?もしもあの人だったら…そんな度胸あるとも思えないし」
「ですよね……」
犯人は誰だ?
さらに翌日。
「新しい〜メモがあったわ〜〜」
冥子が大急ぎでぺとぺと走ってくる。
「なあピート、走ってるのに俺達の歩く速さと変わらない気がするのは俺の気のせいだろーか?」
「気にしちゃ負けです横島さん……(何でぺとぺとなんて音が出るんだろう?)」
”式神を連れて牧場に行く事”
「ううん…信じ難いがやはり犯人はあの人の様ですね」
ピートがまだ納得出来ないという表情で言う。
「それなんスか?冥子さん」
横島は冥子の持っているお箸を指した。
「ピンセットが〜無かったから〜お昼のお弁当を食べたあとの〜〜お箸を使ったの〜洗ってあるから平気よ〜これなら匂いがつかないでしょ〜〜?」
冥子がえへんっと微妙な大きさの胸(!)を張る。
「(なんだかツッコミ所満載なんだが…)」
「(でもこの人からかってると本気で命が幾つあっても足りないんですけど…どうなっているんでしょうね?)」
再びヒソヒソと話す二人。
「内緒話は駄目なの〜〜それより、シロ〜〜犯人を捜して〜」
「くうん…(拙者犬じゃないんでござるが…)」
シロは思わずイスの下に潜り込んでいやいやをする。
「冥子さん、その必要は無いっス…犯人が判明しました」
仕方無く横島が告げた。
「え〜〜本当〜〜?」
「はい」
今度はピートが答える。
「津上くん〜?それとも葦原くん〜〜?」
「違います…つーか誰ですそれ(汗)」
「じゃあじゃあ〜〜乾くん〜?それとも〜草加くん〜?」
次々現れるナゾの名前。
というかやっぱりそこで名前が挙がるのか草加よ?
「全部違うっス!あ、草加にはなんとな〜く一票」
「横島さん…(溜息)それはともかく、冥子さん…この字に見覚えがありませんか?」
思えばこの横島の一言が、草加という名の青年の行く末を決めたと言っても過言では無いかも知れない。
「………………無いわ〜〜」
ピートの問いに冥子がみょーに長い沈黙の後言った。
「そんな筈無いでしょう?」
「いや、絶対にありえないと思っているから盲点になってるんスよ」
横島は今までのメモ全部をバシバシと机の上に並べる。
「最近、映画を見に行った人はいませんか?」
「あ〜〜確か〜マーくんが〜映画に誘ってくれたんだけど〜〜用事があったから〜〜断ったの〜〜」
「じゃ、牧場は?」
「あ〜それもマーくんが〜〜量産型式神の〜牧場予定地に〜一緒に視察しに行かないか〜?って誘ってくれたんだけど〜」
思い出し思い出し答える冥子。
「冥子〜レポートがあったので〜〜断ったの〜〜」
「………可哀そうな鬼道教授……」
こっそり涙する二人であった。
「まさか〜〜マーくんを〜〜疑ってるんじゃ〜?」
「筆跡も一応一致してるっス」
「本人に確かめたほうがいいですね」
3人と一匹は講座に向かって歩き出す。
「(という事は、このヒトは教授の書いたメモを必死で教授自身から隠していた訳だな……)」
「(そうなりますね)」
やっぱり日本海溝より深い溜息を吐く二人と一匹だった……
「堪忍や〜〜仕方無かったんや〜〜!!」
追求した途端、いきなり鬼道は土下座して泣きながら詫びを入れまくる。
「なんだか親近感を覚えなくもない詫び方なんだが…」
思わずあははと乾いた笑いを漏らす横島。
「酷いわ〜〜〜〜〜どうしてそんな意地悪するの〜〜!?」
涙目で冥子が叫ぶ。
「……何があったんです?」
ポンっと鬼道の肩に手を置いたピートは静かに聞く。
「そ…それは……その……」
死ぬほど焦りまくる鬼道。
その時……
「私が〜〜頼んだの〜〜」
「!!!」
どこぞから聞こえてきた冥子ソックリの間延びした声。
「お…お母様〜〜?」
冥子がガク然としながら声を絞り出す。
そう、何時の間にやら鬼道の背後に立っていた和服姿の中年女性。
冥子が歳を取ったらこうなるだろうという、恐ろしく正確な生きる未来予想図!
しかしてその実体は………?
六道大学理事長……つまりは六道冥子の母であった!!
「………マジかい(唖然)」
「意外というかもーどーでもいいというか…」
「わうん?(誰でござる?)」
二人と一匹も、イマイチ現状を理解しきれていないみたいである。
「ほほほほほほほ〜〜〜冥子〜〜アナタはまだ修行が足りないみたいね〜〜」
「そんな〜〜冥子一生懸命やってるもん〜〜」
「結果が出なければ〜意味は無いのよ〜〜」
鬼道を挟んで言葉の応酬を始める困ったちゃん親子。
「だから〜〜彼に頼んで〜アナタに試練を〜プレゼントしてあげたのよ〜〜〜」
おほほほほ〜っと笑う理事長、小悪魔どころか大悪魔にしか見えない所が遺憾ながらナイスだった。
「ウチの理事長ってこんなんやったんかい、しかもそれって試練つーかイジメじゃ…?」
汗ジトで呟く横島。
「主よ……僕はこの学校に入学して良かったのでしょうか?」
祈りだすピート。
「わふ……(似たもの親子でござるな…)」
意外に冷静なシロ。
「鬼道ちゃんも「最近冥子はんに相手されないで悲しい〜」なんて言ってたし〜〜」
「マーくん………」
「い、いや…違うんや冥子はん!理事長〜〜〜〜!」
鬼道は半狂乱で泣き叫ぶ!
だが事態は最悪の結末を迎えようとしていた……
「ピート…俺、蛍に再会出来そうな気がする……」
「何というか…遺書を書く暇も無さそーですね…」
だう〜っと涙を流しながら言う巻き込まれコンビ、最早諦めの境地に達したらしい。
「酷い〜…酷いわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ぶわぁ〜〜〜〜〜〜っ!
冥子の泣き声とともに影から十二神将が一斉に姿を現した!
しかも封印されているハズの九体までが………!!
ちゅどどどどどどどどどどどどどどーーーーん!!
「超破壊」の旋風が今!吹き荒れる!!
「どひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」×3
壮絶な悲鳴とともに「宴」は始まった……
…これが後の歴史に語られる「セカンド・○ンパクト」である。
あれ?「大破壊(オーバードライブ)」だったっけ?
え、それも違う?
まあそれはさておき。
そして五日後(!)
六道大学付属病院にて……
「災難だったな…お互いに」
ケガ一つない横島が言った。
どうやらサイキックシールドを器用に(というか必死に)展開してなんとか助かったらしい。
「生きてるって……スバラしい…主よ…感謝します…」
何故か涙をだくだく流しながら祈っているピート。
こちらはバンパイアミストを使って体を霧に変え(死に物狂いで)脱出したらしい。
悪運の強い(と言うか最早神業だろう)二人であった。
「何でや〜〜〜納得いかん〜〜何でボクだけこんな目に遭うんや〜〜〜!」
鬼道の(血涙を流しながらの)絶叫が病室にムナシク響く。
五日間生死の境を彷徨い続け、今日やっと意識を取り戻した鬼道の第一声がこれだった。
「ごめんなさい〜マーくん〜〜死んじゃダメ〜〜〜!」
式神を全部封印された冥子が、泣きながら包帯だらけの鬼道にすがりつく。
「あらあら、この子ったら〜ちゃんと反省しないと駄目よ〜〜」
やはり怪我一つない理事長。
アンタもな。
ちなみに、この騒ぎに振り回された冥子の式神製作は…
また振り出しに戻ったらしい。
〜第7話に続く〜
まだまだ普通の加筆訂正が続いて申し訳ありません(涙)
ちなみに前回にしろ今回にしろ一発ネタはネタ表記致しませんので、メインかどうかはそこで判断して下さいませ。
つまらないキャラを増やそうとは思っておりませんのではい〜
ちなみにダイゼンガーの当て字はてきとーです(おい)
それでは前回のレス返しです。
紅様>
音撃棒使いは…かなり微妙ですね、あまりライダーを増やしてもGSしか解らない読者さんは困るでしょうし…悩みどころです。
D,様>
確かにそれは恐ろしいですね…頭頂部の毛が無かった日には、別の妖怪と認識されかねませんし(笑)
法師陰陽師様>
はい、きっぱりバッタモノです。
ただ…ピンク携帯の彼はどうも本物らしいですけど、そこだけ別次元と少しの間繋がっていた様であります。
猫又の記述は様々でして、私の見たのは100年でした。
しかしもう一度調べなおした所10年がポピュラーな様ですので、オリジナル解釈も含めて修正しておきましたので、ご覧下さいませ。
ぷろくと様>
そもそも元はこう普通に書いておりましたが、いつからああいった感じになってしまったのか覚えておりません(大汗)
とかくご指摘ありがとうです。
柳野雫様>
あそこだけ一応ホンモノですからね…(哀)
以前のバージョンではなかなかその実力を発揮できなかった彼女ですが、今回は出番増大キャンペーン(笑)の為頑張っております。
ATK51様>
おキヌに関しては、理由も事情もきちんとありまして…ある方法で再登場する予定だったのですが…そこまで行く前に書き直し再出発と相成りました(汗)
そっくりさんというか、漫画で見た技とかを取り入れようとしている霊能者の卵たちと言ったところですが…「運命」の彼だけは次元接続実験の余波で、一時的に繋がってしまったあの世界のホンモノの彼であります。
実の所は、家族と妹を一気に失った悲しみが横島とかぶって…という演出のために出演して頂きましたのですけどね。
555メンバー…もしかして削られるかも知れませぬ(涙)
tanuki様>
今の横島くんは、あとで判明しますが女性への耐性が極端に下がっている状態であります。従って…甘える場合猫形態が有利との判断をくだしているのです。
なかなか策略家です美衣さん(笑)
お褒めを頂きありがとうございます、でもあまり読者様の意見を無視してしまってはロクにレスも付かない痛い作品になりかねませんので、そこは調整していこうと思っています。
ライダーはどう足掻いても外せないんですけどね(苦笑)
それでは次回水曜日予定の七話でお逢いしましょ〜でわでわ〜〜