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「心眼は眠らない その56(GS)」

hanlucky (2005-03-08 20:32/2005-03-08 22:10)
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横島が捕まって数時間後、美神除霊事務所では、横島が何者かと戦っていた事が西条によって伝えられていた。

「……それで横島クンは?」
「目撃者によると連れ去られたらしい……」

あれだけの騒ぎでは当然、近所の人間の何人かは横島の連れ去られた場面を見ていた。

「横島クンが戦った相手の数は3体。今の横島クンの実力を考えれば、相手の強さにゾッとするよ……」

西条は報告書を美神に見せる。
そんな二人のやり取りにおキヌが割り込む。

「横島さん、大丈夫ですよね?……必ず帰ってきますよね? ねぇ、美神さん?」
「おキヌちゃん……」

美神はおキヌを頭を撫でながら、おキヌに、そして自分に言い聞かせるように言う。

「大丈夫よ……あの馬鹿が私達の前が居なくなるわけないじゃない……大丈夫…大丈夫なんだから……」

西条はおキヌが落ち着いたのを見計らってから、美神にここから避難してほしい事を伝える。

「令子ちゃんは、許可が取れ次第ここから都庁の地下に避難してもらうからね。……それじゃあ、また後で。」

西条は事務所をあとにしてGメンに戻る。西条がしなければいけない事は、まだまだあるのだ。

(……本当に何をやっているんだ、横島クンは……)

西条はアシュタロスを倒すには、横島の存在は必要不可欠だと考えていた。
だから横島は必ず救い出す。横島を助ける事は、美神を助ける事に繋がるのだから。

(ふっ、横島クン。これを機に返しきれないほどを貸しを作ってあげるよ。)

やる気十分の西条に、南米の霊的拠点が消滅した事が伝わるのは二時間後だった。


――心眼は眠らない その56――


横島が逆天号に乗ってから4日目。

「っ! あ、あっ……そ、そこ……もっと……」

寝転んだ状態で、何故か悩ましげな声を出しているべスパ。

「ここか? ここがええんか?」

そして、べスパの跨って親父モードに入っている横島。
べスパの声を聞いて、ちょっとあそこがイケナイ状態になっているのはご愛嬌だ。

「ん!……あ、ぁぁ〜……そ、そこ……いぃ〜〜。」

横島は徐々に腰から胸の方に上がっていっている。

ゴクッ

発育がええの〜と内心で思いながら、唾を飲んで、胸にレッツゴーの横島ハンド。

「くぅっ!……はぁ〜〜、兄さん、うまいじゃないか―――って何処触ろうとしているんだよ!?」
「ぐほっ!? いつの間にか体が勝手に……」

べスパの裏拳を喰らっても、喋る余裕があるのは流石、横島といったところか。
べスパにマッサージを頼まれた横島は、始めは普通に腰を揉んでいただけなのだったが、声を聞いていく内に、本能が一瞬目覚めてしまったようだ。

「全く……いくら私が魅力的な体しているからって……このスケベ。」
「自分で言うか? まぁ、確かにパピリオは論外として、ルシオラは…………兄ちゃんは悲しいぞ。」

ルシオラとべスパの違いを頭に浮かべ、兄として悲しくなってきた横島。

「……何が悲しいのかしら?」
「いやな、ルシオラのむ…ね…が…………いつの間にですか?」
「べスパが自慢していたところからかな……とりあえず、ヨコシマは後で、折檻ね。」

笑顔のまま横島に死刑宣告をするルシオラ。
横島がべスパに助けを求める、が、べスパも巻き添えは嫌と、操縦室の方へ逃げる。

「どうやら次の拠点についたようだし、ヨコシマもパピリオを起こしてから操縦室の方に来て。」

横島はすぐに頷いて、パピリオを起こしに行く。

「ほれ、パピリオ。起きろ。拠点についたぞ。」
「なんでちゅか? もう、ご飯は食べられないでちゅ……」
「……寝ぼけているといい度胸だ。」

ペチペチ

 ビヨ〜〜ン

ほっぺたを叩いたり、引っ張ったりして起こす横島。
それに気付いたパピリオが、横島にカウンターの一発に入れて起きるのが恒例であった。

「大体、いつも断末魔砲で終わってるんでちゅから寝かしてほしいでちゅね。」

横島が逆天号に乗ってから、すでに10の霊的拠点を滅ぼしたのだったが、その全てが逆天号の主砲『断末魔砲』の一発で終わっていたので、パピリオのいう事は一理あった。

「それで、今回は何処の拠点なんすか?」
「今回はマヤに隠された拠点だ。……中々の大物だぞ。今までのように軽く見ていては痛い目に合うかもな……」
「痛い目も何も、どうせ断末魔砲で終わりじゃないっすか。」

土偶羅がやけに神経質になっているが、断末魔砲の威力をすでに10回も見ているため、土偶羅は心配しすぎだろうと思う横島。

「土偶羅様……もうすぐ亜空間から抜けます。」

ルシオラの言うとおり、亜空間から人間界に逆天号が姿を現す。
前方には神魔の拠点があり、すでに10も拠点を潰していたため、神魔が待ち構えていたようだが、所詮はいつもの如く断末魔砲で終了だろう。

「自動照準よし、いつでも撃てますわ!」
「安全装置解除!! 断末魔砲、発射!!」

カチッ

土偶羅がスイッチを押す。

「……………………」

が何も起こらない。

「…………………………断末魔砲、発射!!」

カチッ

「…………故障?」
「何でやねん!?」

すかさず突っ込む横島。
すでに多くの神魔が逆天号に向かってきている。
すかさずべスパは眷属の妖蜂を放って迎撃しようとする。

妖蜂はミサイルのように発射され、多くの神魔を貫いていく。

「一時は焦ったけど……これだったら楽勝だね。」

三姉妹や横島が、ホッと一息ついた時であった。

ゴォォォォォン

逆天号が揺れる。

「ルシオラ!! 何が起きたか、早く調べるのだ!!」
「今やって―――逆天号の羽に敵がいるわ!! コイツが破壊活動を行ってるのよ!!」

その事を聞き、三姉妹が迎撃しに向かう。
横島もついていこうとするが、土偶羅がそれを止める。

「何で!? 俺も行ったほうが!!」
「お前が行くのはもう少し後だ……」
「はぁ?」

横島と土偶羅はその後、モニター越しに三姉妹と一柱の神族との戦いを眺める。
どうやら他の神魔は、べスパの眷属に全滅させられる前に退散したようだ。

「あ、あぶねえ!?……おい、もう行ったほうがいいだろうが!!」

三姉妹が押され気味なので、慌てた横島が勝手に部屋から出ようとしても、ロックがかかっていて出られない。

「待て、もう少しのはずなのだからな……」
「はず? 何だよそれ……」

神族の強さは三姉妹を僅かに上回っているようで、三姉妹は押され続ける。
横島は三姉妹を無事を祈るしかなかった。
だが、

「あ!? パピリオ!? べスパ!?」

画面内ではパピリオとべスパが、神族の持つ黒い剣で斬りつけられていた。
重傷とは言わないが、旗色は悪くなる一方である。

「おい、いいかげ―――!?」

土偶羅を脅してでも、三姉妹を助けに行こうとした瞬間、ルシオラがまともに蹴りをもらい吹き飛ばされた。

「あのクソヤロウ……なん…て事…を!?」

それを見た瞬間、横島に異変が起きる。
だが、土偶羅はそんな横島の異変に驚かず、むしろ予定通りとでもいうのかホッとしていた。

「な、なん……ぐっ―――!?」

頭が痛い。
何かが聞こえる。


   怒れ
        壊せ
狂え
      堕ちろ


負の感情が押し寄せる。


――委ねたまえ……君は弱者なのだから……――


「何なんだよ……頭が……くそ……」


――強烈な感情は力を生む……その感情を高ぶらせるのだよ――

それは悪魔の囁きだろう。
横島の憤怒という負の感情を増幅させ、力に変える。


――このままでは君の妹は死ぬのだよ……何を迷う必要がある?――

その力は三姉妹を救える力になるだろう。
確かに自分には、神魔を超越する力が必要だ……


――迷う必要は無い……それとも今の君があの神を倒せるとでも?――

その声は己の親友のように囁く。
身を委ねよ……君の思いは間違いではないのだからと。


――狂え……狂え……君は……――

迷う暇はない。急がねばならない。
横島は文珠を飲み込み、自分に強烈な自己暗示を施す。
自分に言い聞かせるのだ……これは仕方ない事だと。


――……堕ちるべきだ――


《狂》《戦》《士》


/*/


三姉妹は、急いで外に出て、神族を撃退しに行く。
この神族は黒い剣を持っており、異常なプレッシャーを放っていた。

「こりゃ〜〜大した化け物じゃない。」

その神族は三姉妹に気付き手を止める。
逆天号の装甲はハンパじゃない。だがこの神族は後一分もあれば、内部に侵入する事も可能になるほど装甲を破壊していた。

「……貴様等を倒せば、残りはアシュタロスだけなのか?」
「答える必要はないわ。行くわよ、べスパ、パピリオ!!」

もう生き残りは目の前の神族だけだろう。
どうやら神魔の連中は、この神族を逆天号に近づけさせるために囮になっていたようだ。

「エク・チュアー……貴様等を滅するものだ。」

エク・チュアー、マヤ神話で軍神、黒い戦王と呼ばれている神である。

「来るわよ!!」

気付けば黒き剣が迫っていた。
三姉妹は左右に分かれて、エクに魔の波動を放つ。

シャンッ

  シャンッ

シャンッ

エクはその全てを両断して、べスパに斬りかかる。

「舐めんじゃないよ!!」

べスパは望む所と、エクに真正面から突っ込んでいく。
すぐにパピリオとルシオラがエクの背後と横を取り、取り囲んで勝負を決めようとするが、そうはいかない。
エクは上空に一度逃げて、自分の目線に相手全員が入っているようにする。

「これで終わりでちゅよ!!」

パピリオがエクに魔力の塊をぶつけようとするが、その前に霊波砲を放たれる。
だが、その隙にべスパとルシオラが挟み撃ちでエクを仕留めようとするが、あと少しで逃げられる。

「……確実に仕留めさせてもらおう。」

エクの戦法は地味だが、深追いする事なく確実に三姉妹を押していった。
相手が隙を作るまで、決して攻めず、囲まれたらすぐに移動する。
戦闘経験の浅い三姉妹にとってはエクの戦いは酷くイラつくモノだった。

「ちょこまかと、うっとうしいでちゅね!!」

痺れを切らしたパピリオは一人、エクに突っ込んでしまう。
ルシオラが止めようとしたが、もう遅い。


ザシュッ


パピリオの反応速度が後少しでも遅れていたら、腕は胴体から離れていただろう。
そして、ルシオラとべスパはパピリオに見るために、エクから目を離してしまう。


ズシャッ


その一瞬を逃がすエクではなかった。
距離が近かったべスパに一太刀を浴びせる事に成功する。
ルシオラはべスパを守るために、間に入るが、一対一で勝てる相手ではなかった。
エクの剣に集中してしまい、全く無防備な所に蹴りを受けてしまう。

「くっ!?」
「……後はこの兵器を破壊すれば冥界とのチャンネルも回復するだろう。」

ルシオラに近づこうとするが、それをパピリオとべスパが阻止する。
だが勝負は最早、誰の目にも明らかであった。

「同胞の無念……果たさ―――何だ!?」
「何!? 逆天号の中から!?」

エクと三姉妹が逆天号の中から感じる異変に気付く。


ズガァァァァァァン


「ぐぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「「ヨコシマ!?」」
「兄さん!?」

逆天号は外部から攻撃には強いが、内部からの攻撃ならば逆天号を簡単に破壊出来る。
横島は操縦席の壁を破壊して外に出て、そのまま首輪の力を借りる事によって、空を飛んでここに到着した。

「人間!? どういうことだ!?」

エクの敗因は、己が優れた洞察力を持っていたことだろう。
迫り来る横島が正気じゃない事を悟り、エクは横島が操られているのではないかと考えてしまったのだ。
そうなると、神としてこの人間を倒していいのだろうか? と考えてしまう。
操られているだけの人間を斬る剣を自分は持っていない。

「っ!? まずいか!!」

考えに更けていたら横島に懐に入られてしまった。
何とか横島の勢いと止めようと、強烈なみね打ちを横島の左肩にお見舞いする。

「―――!? 痛覚がな―――!?」

だが止まらない。そして今度は横島の番だ。


ゴスッ


横島の左肩は骨もバラバラになっているだろう。だが痛みは感じない。
残っている右腕に己の全てを乗せて、エクの顔面に叩き込む。

「ぐぉぉぉぉぉ!?」

偶然だったのか、それとも横島の霊視がそこを見極めたのかもしれない。
横島の拳は見事に、エクの弱点である黒くふちどられた目を直撃した。

「ま、まず―――」

エクが距離を取ろうとしたが、横島がそれ以上の速度で詰め寄る。


ゴンッ


止まらない。

いや、止まれない。

敵を滅ぼさなければ、敵を喰らい尽くさねば止まれない。


「ああああああああああ!!!」


横島の動きは明らかに、己の限界を超えていた。よく見れば、体中で内出血を起こしてる。筋細胞が自分の動きに耐えられないのだろう。
だがそれでも止まらないのは、リミッターが壊れていて、どうしようもなかったのだ。

「べスパ、パピリオ!! ヨコシマを止めるわよ!!」
「了解!!―――って兄さんに加勢するんじゃないの?」
「そうよ、早くしないと自滅するわ!! 行くわよ!!」

横島はエクを殴り続けている。
その一撃一撃が負の感情に満たされ、強烈な一撃へと変貌する。
そして殴るたびの横島の体が壊れていく。ルシオラの言うとおり、早くしなければ命にかかわるだろう。

「ぐぼ!? まさか……人間に…倒されるとはな……」

エクは、横島を恨まなかった。
むしろ、横島を哀れんでいた。アシュタロスの操り人形にされている横島を哀れんでいた。


「哀れだな……にんげ―――」


結局、エクは横島によって消滅した。


/*/


ようやく戦いも終了して、土偶羅も操縦室で一息ついていた。

「アシュタロス様はここまで読んでいたのか……素晴らしい御方だ。」

この拠点に、エクという強敵が居る事は分かっていた。
なのにアシュタロスは、この拠点では断末魔砲の使用を禁止する指示を土偶羅だけしていたのであった。
アシュタロスは、三姉妹が倒れそうになれば、横島の感情が爆発して、いや、爆発させるように仕掛けた。
そして横島の負の感情を利用して、見事に横島を狂わせる事に成功する。

「敵の行動をここまで予測するとは……」

エクの実力は三姉妹を僅かに上回る事から、追い詰める事も可能だとアシュタロスは予測していた。そして、横島を倒す事に躊躇する事も。
見事、エクは横島にみね打ちなどを放ってしまい、その隙に致命傷を追ってしまう。
正にアシュタロスの予定通りの行動を取った、取らされた一同。

「しかし……こんなまどろっこしい事をして何を?……いや、わしは言われた事をやればいいだけだ。」

今回の出来事で言える事は一つ。それは、

「それでは、断末魔砲の発射の準備に取り掛かるか……」

横島が神族を直接滅ぼしたという事だ。


/*/


すでに横島が消えて一週間経つ。

「―――以上で報告を終わります。」

西条はICPO本部で、この一週間に起きた霊的拠点の崩壊や、アシュタロス一派が動いている可能性、そして横島忠夫という文珠使いが敵に捕らわれている事の報告書を議会に提出していた。

「……横島というとザンス国王来日の際のアレかね?」

横島は自分ではわかっていないが、切り裂きジャック、フェンリル、ザンス国王来日などの事件によってICPO全体に名も知れていた。
そして西条はそれを利用して、横島を助けるきっかけになればいいと考えていた。

「―――それでは失礼します。」

西条は敬礼をした後、会議室を後にする。

(すでに21の拠点が潰されている……その内、生き残った神族達の話を聞くと、敵はカブトムシのような兵器に乗っているという事……)

ここで生き残った神魔とは、もちろん断末魔砲が最初に発射されなかった時の連中だ。

(しかし、何故その時だけは……敵は主砲を撃たなかったんだ?…くそ!! 情報が足りない!!)

西条は歯を噛み締めながら、本部を出ようとしたその時―――


「―――西条クン、久しぶりね。突然だけど、ちょっといいかしら?」


西条の動きが止まる。
何故なら、ありえない……この人は数年前に死んだはずだから。
それでも西条は、後ろを振り向き、その姿は確かに己の恩師だと確認する。


「何で?……美神先生……どうやって?」


美神美智恵、登場。


――心眼は眠らない その56・完――


あとがき

横島、壊れ計画進行中。
そして美智恵登場です。

エク・チュアー、凶暴で荒々しいという説もありますが、まぁ、そこらへんは目を瞑っていただけると嬉しいです。

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