第6話 「どっちが不幸でショー?」
「勝者!タイガー寅吉!!」
鬼道のコールに沸く横島側応援団。
タイガーに対して賞賛の声があちこちから飛ぶ。
対する六女側は静まり返っていた。
やがてあちこちでボソボソと囁くような会話が始まる。
だが虎覆面は開始前の観客アピールの時とは打って変わったかのように、歓呼の声を無視すると、禁断の必殺技を受け意識を失った魔理を抱き上げ、貴賓席近くに設営されていた救護テントへと走り出した。
「えぅ〜。あの人大丈夫でしょうかぁ?」
心配そうな唯の声に魔鈴はあっさりと「大丈夫ですよ」と答えた。
「タイガーさんのさっきの技は完璧には決まってませんから。むしろ彼女を庇ってますよ。」
「ですね。」
頷くピートに横島や加藤も同意する。
だが、かすみは良くわからなかったのか、加藤の袖をちょいちょいと引っ張って上目遣いに解説をおねだりしてみた。
そんな彼女に笑顔を見せる加藤。
「見たところあの技は落下と同時に抱えた足を激しく引き付けることで体の各部にダメージを与える技であろうが、タイガー殿はそれをしておらぬ。むしろ逆に足を支えたと言う感じだ。」
「ああ、結局あれじゃあ落下の際の首の衝撃だけだろうが…それも手加減しているしな。」
「ええ。タイガーならもっと高く飛べたはずです。」
「なるほど…」
かすみもようやく納得する。見た目の派手さに惑わされたが深刻なダメージにはならないようだった。
しかし、それを一瞬で見抜いていた彼らの眼力には舌を巻く。
(この人たちと居れば、きっと学校で学ぶ以上に凄いことを経験できるかも知れない…)
自分の選択の正しさを確信して喜びを覚えるかすみである。
一方、六女側応援席でザワザワと囁かれていた音はいまやハッキリとしたブーイングとなって横島たちに叩きつけられていた。
「酷いー!!」
「反則よー!!」
「女の子にあんな技使うなんて!!」
ある意味当然とも言える抗議の声にヤレヤレと肩をすくめる一同。その態度にますます感情的になったのかブーイングの嵐はどんどん高まっていく。
六女側の教師たちも鬼道が落胆の色を浮かべ、川澄は自分の教え子たちを無表情に見るだけで止める気配は無い。むしろ止める気力も湧かないといった風情だ。
それでも幾人かの教師はブーイングを止めさせようとしているようだが効果は無かった。反対に群集心理に油を注いだ感がある。
「あの…横島さん…」
少しだけ怯えの混じった小鳩の声に優しくその手を握って大丈夫と無言で伝える。
それを見てちゃっかり反対の手を摩耶が握ってきたが、その手も同じように握り返す。
「横島君のおてて争奪戦」に出遅れた唯とアリエスが「不覚!」と声を合わせてオロオロしていると虎覆面から元の姿に戻ったタイガーが救護テントから戻ってきた。
タイガーは戻ってくるなりペコリと一同に頭を下げる。
「すまんかったですジャ…」
「タイガーさん。別にこれは殺し合いじゃないんですからあれでいいんですよ。」
タイガーの謝罪の意味を正確に理解した魔鈴の言葉に横島たちも頷く。
「元々、お前に女の子に手加減するなってのが無理だったんだしな。」
「そうそう。横島さんにセクハラするな…「何が言いたいのかね?ピートくん」…すみません…。」
そんな彼らに再びペコリと頭を下げるタイガー。
だが、どこの学校にもお調子者ってのはいるわけで、それは六道女学院でも例外ではなかった。
自分達の仲間が酷い目に合わされたのに暢気そうに会話しているように見えたのが気に食わなかったのか、一部のはねっ返りが彼らにめがけてジュースの空き缶を投げつける。
それが引き金となったか鬼道たちが止める間もなく、応援席のあちこちから十数個の空き缶が飛んできた。
だが、彼らに命中した空き缶は一つも無い。
あるものはピートの放つ霊波砲によって空中で撃墜され、あるものは地から湧き出た水流に弾き飛ばされ、あるものは横島の眼前に忽然と現れた光の鳥に焼かれ、そして最後の数個は木刀によって全て叩き落された。
シーンと静まり返った六女側応援団と横島たちの中間にカラカラと乾いた音を立てて転がる空き缶は、唯が何事か唱えた声に反応するかのように再び宙に舞うと元の場所へと正確に戻って行った。
それを見届けた加藤が一歩進み出ると教職員に向かって一喝する。
「情けない…このような禍々しい行いを生徒に許すとは!!」
その言葉に赤面しつつ下を向く六女側教職員たち。
たかが高校生とは思えない迫力の前に反論する気も起きないようだ。
傲岸不遜とも言える加藤の態度に再び六女側応援団の一部から不満の声が上がり始めるが、今度のそれは周りのものに止められて大きなうねりになることは無かった。
霊能科の生徒達には理解できたのだ。
たかが普通高校の部活と侮っていた連中がとんでもない化け物集団だったと言うことが…。
静まり返る会場の中で横島は沈痛な顔をしている。
その真剣な表情に手を握られたままの小鳩と摩耶が頬を染めるが、当の本人の考えていることを知れば激しく脱力しただろう。
(くっ…空気が重い…俺には耐えられん!ここは一発新鮮なギャグで場を和ませなければ!)
何事かを決意して闘場に進み出る横島。
入れ替わりに加藤が下がったのを確認すると鬼道からマイクを受け取ってスーッと息を吸う。
何事か?と固唾を飲んで見守る観客達に向かって一言。
「正直、スマンかった…」
「「「「何じゃそりゃぁぁぁ!!!!」」」
この瞬間、会場の心は一つになり、突っ込みとともに両陣営から空き缶とか石とかが降り注いだが、今度は一個も撃墜されること無くほぼ全弾彼に命中しまくった。
ぜーぜーと肩で息をする両校観客達の前にうずたかく積もったゴミの山。
その中からマイクを持った手が一本ニョッキリと突き出しているのが前衛芸術ぽくて中々シュールである。
鬼道はその奇怪なオブジェに恐る恐る近づくと、突き出た腕に握られたマイクを取り戻し小さく嘆息してから宣言した。
「えー。闘場がこんなんやから次の試合まで30分休憩とする。係は闘場の整備を。」
その声に我に返った除霊部員たちは慌てて副部長の発掘に向かったのである。
「う…」
「あ、大丈夫ですか?魔理さん。」
救護テントから保健室へと運ばれた魔理が気がついた時、真っ先に目に入ったのは心配そうなおキヌの顔である。
痛む頭を振ってもう一度見回せば、心配げに自分を覗き込む弓とおキヌとは反対側に座って自分を見守る神野の姿が目に入った。
その顔色を見るまでもなく自分が負けたという自覚はある。
不思議と悔しさは無かったが、今ひとつ釈然としない思いがあるのも事実である。
「なあ…弓…」
「何ですの?」
「あたし…どこが間違っていたのかな…」
「それは…」
魔理の問いかけに弓とて答えるすべは無い。
それはおキヌも神野も同じである。
だが「もう少しで何か大事なことが…」と言うもどかしさは感じていた。
無言の少女たちが顔を見合わせる保健室に校庭の喧騒が届いてくる。
「何かしら?」とおキヌが窓を開けると横島たちに対する罵声の渦が室内に飛び込んできた。
「何?」
状況が掴めず驚く神野だったが、言葉の意味がわかるに従ってその顔色が曇っていく。
「なんて恥知らずな…」
怒りのためか顔を青ざめさせる弓。その手が震えている。
やがて空き缶が宙を舞う事態に激発しかけた弓の前で起きる突拍子も無い技の数々。
「すげえ…」
ベッドから起きた魔理も驚愕を隠せない。
だがおキヌの目は違うところを見つめていた。
横島の手を握る小鳩とまたまた見知らぬショートカットの少女である。
観客の理不尽な抗議に、明らかに怯えの色を見せていた少女達の顔が横島に手を握られた途端に安心したものに変わる。
それは彼女も知っている横島の優しさに彼女達が触れたのだろう…おキヌにはそれがわかる。
でも…。
「どうしましたの?氷室さん?」
「え?」
「え?って気づいてませんの?」
「おキヌちゃん…泣いているぞ…」
「え?…あ、あは…私ったら…」
「何かあるんだろ?話してみなよ…」
「でも…。」
「そんな顔で居られたら神野さんも気になって戦えませんわよね!」
「へ?…あ、ああ、そうね。うん。そうよ!」
そんなやり取りにおキヌの顔が泣き笑いに歪む。
「実は…横島さんとのことなんですが…何だか最近、距離が出来たような気がして…」
「距離?どういうことですの?」
「今までずっと一緒に居たのに…最近、どんどん一緒に居る時間が無くなっちゃって…」
「でも、氷室さんあの人と付き合っているって訳じゃ…」
「そ、そんなんじゃないんです!でも…」
「でも?」
「私だけ置いていかれている気がするんです。いつの間にか横島さんの周りに私の知らない人たちが一杯居て…そしてみんな仲良さそうにしてて…」
「氷室さんはあの人に好意を伝えたのかしら?」
「え…ええ…一度だけ除霊の仕事の時に美神さんとはぐれて、横島さんと二人っきりになったことがあって…」
「あいつと二人っきりって…すっげーヤバそうな…」
「そんなケダモノみたいな人なの?なんかビデオ撮っていたってのは覚えているんだけど…」
いつの間にか野次馬モードになっている神野と魔理。
「それでどうなさったの?」
「その時、横島さんってとっても優しくて…だから私つい「大好き」って言っちゃったんです…」
「おおっ!やるわね。氷室さん…」
「なあ神野?なんで携帯が録音モードなんだ?」
「それであの男は何と答えたのかしら?」
「それが…その…「こーなったら、もうおキヌちゃんで行こう!」って…」
「「うわ最悪…」」
「氷室さん…」
氷点下の弓の声が保健室の室温を一気に下げた。
「は、はい!」
「あの男のことは忘れなさい!これは命令です。拒否は許されませんわ!!」
「「直球すぎっ!」」
「え…でも…」
「まったく…どうして男ってのは女にランクをつけたがるのかしら!そんな男はダメです。絶対に他所に女をこさえますっ!泣くのが嫌ならキレイさっぱり忘れるのが吉ですわ!!」
「で、でも…横島さんだって悪気があったわけじゃ…。その…なんて言うかつい本音が出たと言うか…」
「フォローじゃないわね。」
「だな」
「まあ「惚れてしまえばアバタもエクボ」とは言いますけど…。でも氷室さん?現に今だって泣いてらっしゃるじゃありませんか…」
「いえ…そのこれは…」
「何ですの?」
「あの人たちはああやって横島さんと一緒に戦ったり出来るのに…私はただ見ているだけって言うのが悲しくて…。私…横島さんに何もしてあげれないのかな?って…もう私は必要じゃないのかな?…って…えっ…うっ…ぐすっ…」
「マジ泣きね…(パリパリ)」
「そだな。お、あたしにもそのボテチくれない?」
おやつのつもりで持ってきたポテチを食べながらすっかり観戦モードの野次馬二人。
「けれど今は仕方ないじゃないですか。一応、敵味方なんですから…」
「うっ…ぐすっ…そ、それは解っているんですけど…私って皆さんみたいに戦うことも出来なくて…でもお仕事の時の横島さん見てても、私の知らないところでドンドン強くなっていってて…」
「ふー。それにしても何であんないい加減な人をみんな強いって言うのかしら?雪之丞もそう言うし…」
「雪之丞って?」
「弓の彼氏さ(パリパリ)」
「ふーん。(ポリポリ)…あれ?ちょっと待って?」
「何だ?」
「あー。んと…もしかしてこの中で彼氏持ちじゃないのって私だけ?」
「いや。おキヌちゃんも違うだろ。」
「でもさ。今までの会話ってさ。まるっきりお昼の奥様相談番組だよ?」
「あ、だったら弓ってミ○さん?」
「「プッ」」
「五月蝿いわよっ!!外野!!」
「「しーん」」
「ぐす…うえっ…ふえ…。」
「あああ。泣かないの氷室さん。」
「でも…でもぉ…」
「ちょっと神野さんと一文字さん!何とかなさい!!」
苛立つ弓に促されやれやれとばかりに魔理は立ち上がると、頭をかきながらおキヌに話しかけた。
「あー。つまりだ。おキヌちゃんはあいつと同じ土俵に立ちたいってことじゃないのか?」
「うんうん。私もそう思う。」
「ぐすっ…そうなんでしょうか…?」
「あたしもよく解らないけどさ。このまま忘れられちゃうような気がしてるんじゃないのか?」
「…忘れられる…ふ、ぶぇ、ふぇ〜ん…」
「ちょっと一文字さん!傷口に塩どころか辛子明太子ですわよっ!!」
「ま、待てって!…そ、そうだ!!次の戦いおキヌちゃんが出ろ!!」
「え?私は?」
ポカンと口を開ける神野の肩をがっちりと掴む魔理。その目は異様な光を放っているような気がしないでもない。
「いいか。神野よく聞け…今からお前は生理だ!急に始まったんだ。そしてお前がおキヌちゃんを推薦するんだ!!」
「そ…そんなの無理よ!「タイガーに頼んで誰か男を紹介してもらおうかな〜。」………あ、痛っ!お腹が痛いっ!!」
「おお。大変だな神野…」
「うん。私って重くて…ちなみにあの人がいいな…」
神野が指差したのは横島側の応援席にいる保安部のリーダーだったりして。
「あの癖っ毛の人か?「うん♪」…タイガーに聞いてみるよ…。って訳で次の試合はおキヌちゃんが選手だ。いいな!」
「そ…そんなの無理です!私なんか!!弓さんも何か言ってください!」
慌てて弓に助けを求めるが返ってきたのは予想外の返答だった。
「案外いい方法かもしれないですわね。「え゛っ」…わかりましたわ。先生には私が伝えてきます。」
「ちょっと待ってぇぇぇ」
勇んで廊下に出て行く弓を引きとめようとするおキヌを魔理が羽交い絞めにする。
「心配するなって。この機会にバッチリとアピールして来いよ。今は亡き神野もそれを願っているさ…」
「生きているわよっ!…それより彼氏の件…」
「ああ。わかってるって!」
「そ、そんなぁ〜。」
「おキヌちゃん。よく聞けよ。もうここまで来たら勝ち負けなんかどうでもいいんだ。「団体戦ならもう負けているものねぇ…」そうそう…神野うるさいってば!!…でもな。次の戦いでおキヌちゃんがいいところを見せれば「私も頑張ってます!」ってあいつに言えるだろ?」
「そうでしょうか?…」
「それに、もう弓は行っちまったし、やるしかないだろ。ほら、昔の偉い人も言っているだろ「サイに跳ねられた」って…」
「それを言うなら「サイは投げられた」だと思うけど…でも、あなたは私に勝つ寸前まで行ったんだから大丈夫よ!その方が私も幸せになれる気がするし…」
「なんか…凄く間違っている気が…」
「「考えすぎ!!」」
結局、押しの弱いおキヌに彼女達の提案を跳ね返すことは出来なかった。
「へ?次の試合はおキヌちゃんが出るの?」
「そうみたいですね。何でも大将の人が急に体調不良とかみたいですよ。」
鬼道に渡されたメモを見ながら魔鈴が頷く。
「ふーむ」と考え込む横島に恐る恐るといった様子で愛子が話しかけた。
「あの…横島君。おキヌちゃんって戦えるの?」
「そうか愛子は知らないよな。おキヌちゃんってネクロマンサーとしては超一流なんだわ。言って見れば操作系って感じかな?」
「この若さでネクロマンサーですの?」
「ああ、ネクロマンサーの笛とか使えるんだよな〜。」
「凄いですわね…。でしたら愛子様は不利ですわ。」
カッパのアリエスはネクロマンサーが希少な能力であることはわかっている。
そんな能力者が愛子と戦うと知って彼女の表情は曇った。
それを見て不安になる愛子。
「そ、そうなのかな?」
「直接、霊体に作用しますからね。」
ピートの発言に加藤が続く。
「そういえばアリエス殿は何やら策があるとおっしゃっていたようだが?」
「ええ。あるにはありますが…愛子様覚悟はおありですか?」
「覚悟って何?なんか凄く嫌な予感がするんだけど…」
「へう?危ないことですか?」
「いいえ。危険は無いですけど…覚悟の無い方には勧められませんわねぇ…。」
それも一種の心理攻撃なのか、どっか投げやりな口調でアリエスが呟く。
「う…」
「愛子…俺たちと違ってお前は戦闘の修行とかしてないんだから無理するなよ?」
「けど私って妖怪よ?」
「んなもん関係ないだろ?」
妖怪も人も変わりなく心配してくる…そんな横島の言葉が愛子の心の琴線を揺らした。
俯いてしばらく考えたが、決意の表情も露に宣言する。
「そっか…わかったわ。アリエスちゃん覚悟出来た!策を教えてっ!!」
「わかりましたわ。では…お耳を拝借…」
アリエスは愛子を横島たちから離れたところに連れて行くとその耳に口を寄せ、何事かをもしゃもしゃと囁いた。
先ほどの決意も何処へやら、たちまち蒼白になる愛子。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!嫌よ!ダメっ!!そんなの出来ないわっ!!」
「覚悟がおありだったのでは?」
「そうは言ったけどっ!!」
「大丈夫ですっ。愛子様だけを逝かせませんわ!わたくしもお供しますっ!」
「どうやってよっ!」
「それは内緒ですわ。それとも先ほどの決意は嘘でしたの?」
「うっ…わ、わかった…ぐすっ…やるわよっ!やればいいんでしょっ!!」
明らかに捨て鉢になっている愛子の様子に何やら不穏な気配を感じる横島たち。
「何の相談ですかノー?」
「わからん…。だがこれだけは言える。きっと…マヌケな作戦だ…。」
「「「「なるほど…」」」」
双方の陣営にそれぞれ不安はあるが、そろそろ闘場の整備も終わりそうだ。
それを察したか屋台で買い食いしていた両校の生徒たちがそれぞれ席に戻る。
横島側の観客席の前に水着姿のままアリエスが進み出る。
気の早い連中が鼻を押さえるのを見つめていたアリエスは大声で観客に指示を出し、その座席を入れ替えさせ始めた。
「アリエスさんてば何をしているんでしょうか?」
「あの子の考えることはわからんからなぁ…」
首を傾げる小鳩に横島もなんとなく同意する。
やがて整備も完全に終わり、六女側から巫女服に着替え手に笛を持ったおキヌがガチガチに緊張しながら出てきた。
オロオロと横島を探すと小鳩と摩耶に挟まれてこちらを見ている彼と眼が合う。
届かぬ思いを視線に込めて横島を見つめるおキヌ。
横島はと言えば…
(うお…何か知らんが怒ってるぅぅぅ。ここは誤魔化しあるのみっ!)
と阿呆なことを考えて多少引きつった笑顔とともにおキヌに手を振る。
横島さんが私を応援してくれている!…その思いだけでおキヌの体から緊張が解けた。
だがそれも一瞬…愛子が闘場に出てくるまでだった。
「がんばれよ〜。無理すんな〜」との横島の声援にまたまた悲しくなっちゃうおキヌである。
そんな彼女の葛藤とは関係なく鬼道が進み出てくるとマイクに向かって叫んだ。
「始め!」
その合図とともにアリエスが動く!しかもかなり不可解な方向に…。
(横島さんに頑張っているところを見せたい!)との思いを胸に秘め、ネクロマンサーの笛に口をつけたおキヌがいま最初の一息を吹き込もうとしたまさにその瞬間、アリエスの声が会場中に響き渡った。
「さあ、皆さん。愛子様を応援いたしますわよ!」
言うが早いか水着のブラを脱ぎ捨てるアリエスの胸で豊な乳房がブルンと揺れる。
それを見た横島側の観客席から舞い上がる血飛沫が天空に真っ赤な「ファイト」の文字を描き出す。
「何をしてるんやぁ!!!」
横島たちの視線が突拍子も無い応援方法を実現したアリエスを向いた瞬間、笛を吹こうとしていたおキヌの前で愛子が本体の机に引っ込んだ。
「え?」と思わず演奏を中断するおキヌの前に再び机の天板から出現する愛子…いや…愛子の一部。
机の天板の上に乗っているのは染み一つ無い白い桃…はっきり言えば愛子ちゃんの素ケツである。
あまりの光景に呆然とするおキヌの耳に半分泣き声の愛子の声が届いた。
「ぐすっ…お…おしり机っ!!」
ポテ…。
思わずおキヌが取り落としたネクロマンサーの笛は愛子の本体から伸びた腕によって奪われ、彼女の体内に引き込まれる。
横島たちがアリエスの奇行から闘場に視線を戻した時には、攻撃手段を失い呆然とするおキヌと顔を真っ赤に染めながら何も無かったかのように取り澄ます愛子、自ら流した血の海の中に倒れ伏す鬼道の姿があるだけ…。
だが笛を失ったおキヌにはもう戦うすべが無かった…。
こうして大将戦も横島たちの勝ちとなり、対抗戦は訳のわからぬ展開をもって終わりを告げたのである。
後書き
ども。犬雀です。
うーむ…おキヌちゃん救済のはずがなんでこんなことに?
しかも予告と全然ちゃうやん!!…と悲しい一人突っ込み。
まあ伏線の「おしり机」を消化しただけでよしとしましょう。(マテ
神野さん…原作と違ってかなり面妖なキャラになったような気がします。
なんだかキャラが暴走気味。果たして秘密の部屋にたどり着くのは何時の日か?
では…
1>義王様
まあ手抜きのMバスターですので、それほどの破壊力はないです。
犬も学生時代にくらったことありますが…。まだ生きてますです。
ただ見た目はかなり凶悪な技ですよねぇ。
2>wata様
タイガー魔理戦よりさらにあっさりのおキヌ愛子戦になってしまいました。
内容的には…マヌケすぎであります。と反省中。
3>AMP様
はい。なんだかんだ言って犬はタイガーが好きなんです。
後半も活躍して欲しいなぁと…。
4>ak様
シンさんですかぁ。犬は幼い頃、彼に追っかけられて泣いた経験が…。
彼を知っている人いるかなぁw
5>通りすがり様
すんません。今回またまたおキヌちゃんを虐めちゃいました。
でも必ず救済しますですよ。いや本当に…
6>AC04アタッカー様
にゃんこにゃんこ〜(転げまわりつつ…)
どもども。感謝であります。おキヌちゃん虐めすぎたでしょうか?
7>紫苑様
ごめんなさいと平謝りです。でも必ず救済しますです。
8>斧様
ですねぇ。タイガー君はそれでも手加減しちゃうんですけどね。
ただ手加減の意味合いが前とは変わってます。
9>shin様
ビジュアルはかなりヤバイですねぇ。でも最初はつり天井でギブを考えていたんです。それよりはちょこっといいかなって…。(変わりなし?
10>あつき様
ウルトラかフジヤマかは実は最初の段階で悩んだんですよね。
ただ手加減が出来そうにないのでつり天井かこれか…と考えまして結局こうなりました。
11>なまけもの様
はいです。机に飲み込むってのは考えていました。
現役戦の予想…惜しいです。
12>炎様
はい。自立型はお願いで動きます。それ以外の遠距離型や陸戦強化型は搭乗して動かすことになりますです。
あまり楽しみになさらないで下さいませ(汗
13>法師陰陽師様
はいです。横島君は鈍感であります。
というより彼はおキヌちゃんを尊敬してますから、彼女の悩みに気がつかないので…。その辺をどう処理するか…悩みどころであります。
14>MAGIふぁ様
えーと。初代アニメの虎覆面を意識してますとイノ〇さんとか今は亡きあの十六文のお方とかが脳裏に出てくるもので…。でも技的には新日の彼ですけど。
15>ザビンガ様
ふむふむ。いいですな。>蒙古雷撃弾
早速メモメモと…。