鷹条自宅より・・・100メートル付近
「あそこの屋敷よりに忠夫さんの反応!!」
「あそこにヨコシマがいるのね!?」
「兄さん・・・」
バイクで横島の元へ向かう3人。
だが・・・此処で彼女達に異変がおきはじめた。
キキーーー!!
「ちょ・・・・これ・・・・」
体が震え始めて、バイクの運転が出来ないルシオラ。
「た・・忠夫さん!?」
「!?」
後ろに乗ってるアリスと美姫も体が震えてしまっている。
「こ・・・これ・・・先生でござるか?」
「う・・・うそ・・・」
走っていたシロも急に体が震え始めたせいで走れなくなり、タマモもルシオラ達の元へ降りた。
「な、なんで・・・なんでこんなにも怒ってるの?」
「冷たい・・・ただ怒っていて・・・冷たい・・・」
「・・・この感じ・・・私を殺そうとした人間達に似ている・・・」
「じゃあ先生は、誰かを殺そうとしているでござるか!?」
横島が誰かを殺すなんて想像も付かないシロ、アリス、ルシオラの3人。
特にルシオラは信じられないでいた。
「うそ・・・だってヨコシマは・・・敵だった私を・・・」
「そうじゃないわ・・・この感じは・・・他の人間が思う『妖怪だから殺す・・退治する』ってのに、似てるの。」
「じゃ、じゃあ先生はその考えを!?」
「違うわ・・・そんな考えをヨコシマは持ってない・・・それは私達がよく知ってるでしょシロ?」
そう言ってタマモは震える体を押さえて・・・話を続けた。
「多分・・・世界でたった一人に、その考えを持ったんだわ・・・『コイツは~だから殺す』って考えを・・・他の人や妖怪には考えもしなかったソレを・・・」
「いったい誰に・・・」
敵であろうとなんだろうと、横島がそんな考えを持つ、なんて事は今まで無かった。
敵であっても助けて、幽霊であってもナンパして、妖怪であっても押し倒した横島(女性限定)
そんな横島を誰が一体、其処まで横島を怒らせた?
皆がそう思っていると、美姫が・・
「此処・・・・私のお家だった場所・・・・」
と言って、皆を驚かせた。
「美姫殿!?」
「怒らせたのは、多分私のお父さん・・・・」
新しく出来た優しいお兄ちゃんと、嫌だけど血の繋がった自分の父。
その2人が、直ぐ近くで殺し合う。
優しい兄の怒りが伝わってくる。
美姫と血の繋がりがあるけど・・・・・コイツは美姫の親父じゃない・・・・・
美姫を苦しめた・・・泣かせた・・・・嫌というほどに・・・・
笑顔を忘れるぐらいに・・・・
それでいてコイツはいまだに美姫は自分の娘だとぬかす・・・・
美姫は私のモノだとぬかす・・・
殺す・・・・・
「急がなきゃ!お兄ちゃんが・・・お兄ちゃんが・・・・」
体が震えて満足に走れないでいるが、それでも急ごうとする美姫。
呼び方もお兄ちゃんに戻っている。
「忠夫さんが、どうしたの美姫ちゃん!?」
「お兄ちゃんが・・・・殺しちゃう・・・・」
「ヨコシマが、人を殺す・・・・・させない・・・ダメよ!!」
「は、早く行くでござる・・・先生を止めねば・・・」
「アイツに、人殺しなんて似合わないわよ・・・たく・・・」
震える体を押さえ、なんとか歩き出す美姫達。
向かうは横島の元へ。
ねえ・・・・なんで止めようなんて思ってるの?
「え!?」
彼は今、化け物と化した鷹条・・・・つまり美姫ちゃんのお父さんね・・・それと戦ってるんだ。
で、その化け物は、屋敷から出たら、まず間違いなく人を襲うよ?
それに彼は別に、化け物と化した鷹条を殺す事を罪だなんて思ってない。
飛んでいる蚊を・・・自分の血を吸っている蚊を見つけて殺すのと同じ感覚なんだ。
「そ、そんな・・・でも・・・」
鷹条を殺しても罪にはならないし、別に殺しても彼はなんとも思わない。
いや、ムカついてる分、スッキリするだろうね・・・・
それでも止めるの?
「そ・・・それは・・・・・」
「・・・ス!・・ア・・ス!!・・・・アリス!!」
「あ・・・・蛍?」
「一体どうしたのよ?」
バイクから降り、歩き出したとたんに聞こえてきた声。
なぜ止める必要がある?という声。
「わからない・・・声が聞こえて・・・」
「声って・・・今はそんな事言ってる場合じゃ「違うのよ!!その声が忠夫さんの事を言うのよ!!」・・!?」
ルシオラもアリスの能力の事は知っている。
だから何時もみたいに、他の生き物が助けを求める声を聞いたんだと思った。
アリスの上げた声に、皆の歩みが止まる。
「なんで忠夫さんを止める必要がある?って・・・そう言うのよ!!」
「止める必要って・・・止めるのが当たり前でござろう!?」
どこか苦しそうに叫ぶアリスに、即座に反応するはシロのみだった。
「・・・・その声はなんて言ってるのアリス?」
「・・・美姫ちゃんのお父さんを殺しても、罪にはならないし、今の彼はなんとも思わないって・・・」
「・・・・・そう・・・・」
アリスの言葉に動けなくなる美姫とシロ以外の3人。
法律上は罪にならない。
鷹条春樹を殺しても、横島は傷つかない。
止める必要は何処にある?
化け物と化した鷹条を殺す事。
それは人を傷つける妖怪を、殺すのと大差ない。
人を傷つける妖怪ぐらいなら・・・横島だって殺した事があるし、いちいち罪を感じてはいない。
鷹条は人を傷つける以外に横島を怒らせた。
で、怒った横島が鷹条だった化け物を殺す。
何処に止める必要がある?
答えが出せないで立ち止まるアリス、ルシオラ、タマモの3人。
その事に不満を感じるは・・・
「なんで・・・立ち止まるでござるか?」
シロだった。
「・・・・なんで先生を止めようとしないでござるか!?」
「止める必要が・・・無いからよ馬鹿犬・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
タマモの言葉を黙って肯定するアリスとルシオラ。
だが、タマモの一言にシロが叫ぶ。
「馬鹿はどっちでござるか大馬鹿狐!!!!!」
「あんたでしょ・・・どうして止める必「そう思う事事態が馬鹿でござる!!何処の声だかわからぬ声に惑わされて!!」
静かに答えるタマモの声を遮り、シロが叫んだ。
「止める必要なら沢山あるでござろう!?殺す相手は美姫殿の父上でござるよ!その父を殺した腕で、美姫殿を抱きしめさせるつもりでござるか!?」
「「「あ・・・・」」」
「それに先生を・・横島先生を人殺しにしたんいんでござるか!?罪にはならない・・・先生は傷つかないかもしれない・・・・でも拙者は・・・そんな先生は嫌でござる!!」
そう叫んで、シロは鷹条自宅へ向かう。
残り100メートル。
震えるせいで走れなくとも、其処まで時間がかかる距離ではない。
「拙者は絶対に止めるでござるよ!!」
シロは出来るだけ早く・・・前を行く美姫の後を追い、
「そうね・・・・そんなヨコシマなんて・・・似合わないもんね・・・」
「美姫ちゃんのためにも・・・」
「・・・あ~あ・・・馬鹿犬に教えられるなんて・・・ほんと、私もヤキが回ったわ・・・」
残った3人も、シロの後を追った。
ジュシャ!!
ブシャ!!
「ア・・・・ガガガ・・・・ヒィー!?」
倒れている屑から生える触手を握り・・・引き千切る。
棘が手に刺さっても気にせず、電撃をくらっても気にせず、倒れている屑の体を足で押さえ、引っこ抜く。
ブシャ!!
「ギャアアアアアアアアアア!?」
引っこ抜くたびに五月蝿く吠える屑の顔面を・・・鉄の顔面を、足形が残るぐらい強く蹴っ飛ばす。
口がまがり、銅と鉄で出来ている歯が折れ、飛び散る。
「・・・・屑の癖に丈夫だな・・・コレは・・・」
ドゴン!!
「ゴハ!?」
背中をおもいっきり踏みつけられ、地面と横島の足に挟まれる鷹条。
もう・・・声も出せない。
12本あった触手も残り3本。
鉄の触手と銅の触手。あと普通の触手が1本。
他のはすべて引き千切られた。
「もう、十分だな・・・」
鷹条もボロボロだが、横島も大分、大怪我をしている。
握ってる拳は血でわからないが、骨が皮を破って飛び出してる。
なにせ鉄を殴ってるのだ。普通の状態は保てない。
足も、体も、横島と鷹条の血で染まっていた。
「よ、横島クン・・・も、もういいでしょ・・・」
震える体を抑え、横島を止めようとするのは美神 令子。
「ええ・・・もういいです・・・楽にしてやりましょう」
「楽にって・・・・ちょ、横島クン?」
そう言って横島は血に濡れた右手に霊波刀を作りだした。
だがその霊波刀は、炎が刀の形をしたような・・・そんな霊波刀。
「あれ?」
そう言って横島は鷹条の足を切りつけた。
ブシュー!!
「ギャアアアアアアアア!?」
「ああ~よかった・・・切れるじゃん・・・」
試し切りを鷹条の足でやったのだろう。
横島の出した霊波刀は、すんなりと、まるでよく切れる包丁で、豆腐を切ったかのように鷹条の右足を切断した。
「よ、横島クン・・・?」
「はい?」
美神が呼べば、何時もの横島のように返事をする。
だが、
「ね、ねえ・・・もう止めよ?」
「ど、どうしたんですか美神さん!?」
「どうしたんですか・・じゃないわよ!!アンタ自分で何やってるかわかってんの!?」
「ヒーーーーす、すんません!?って・・・俺・・何かしましたっけ?」
わかってない。
なぜ止めるかを・・・。
「俺はただ・・・コイツを殺そうとしてるだけですよ?」
「だからソレを止めろって言ってるんでしょ!!」
「なぜです?」
「!?」
「コイツは人を殺したし・・・俺の妹・・あ、美姫の事なんですけど、俺の妹になりました・・・で、その美姫を苦しめた。」
「それに、どうやってかは知らないっスけど、化け物になって人を襲った・・此処でどうにかしないと、まずいでしょ?」
「コイツを殺すのと、他の悪霊や人間を襲う妖怪や魔族を殺すのと・・・どう違うんっスか?」
正論だ。
美神は言葉をかえせずに、震える体を押さえながら、横島を見つめた。
反論できない。
違いは無い。
確かに、此処でどうにかしないといけない。
横島に言い負かされる事に不思議と怒りは無い。
だが、横島が、さっきから「殺す」という言葉を本気で使ってる事が悲しい。
美神の目に涙が溜まるが、横島はそれに気づけなかった。
(後は私に任せて令子)
「さてと、それじゃあ極楽に・・いや、地獄におくって「待ちなさい横島君!!」ってきめ台詞なのに!?」
振り上げた霊波刀で、鷹条の首をはねようとした瞬間、美知恵がストップをかけた。
「なんすか隊長!?」
「さっき・・貴方は『此処でどうにかしないと、まずいでしょ?』って言ったわ・・・」
「ええ・・そうっスけど・・・」
「確かに、外に出したらまずいわよ・・・でもね、なんで殺す事しか考えないの?」
「!!??」
「貴方ぐらいの実力があれば・・・ソイツを捕らえる事ぐらい出来るんじゃなくて?」
「そ、それは・・・」
横島は霊波刀を、ゆっくりと鷹条の首から離した。
「おキヌお姉ちゃん・・・」
「あ、美姫ちゃん!シロちゃんとタマモちゃん、それにルシオラさんとアリスさんまで!?」
「あ、おキヌ殿!?」
「なんで此処に!?」
「なにか嫌な予感がして・・・あ、横島さんは!?横島さんは何処!?」
「私達も今来た所なんです。」
「あ、あれ・・・ヨコシマじゃない!?」
美姫達と反対の方角から来たおキヌと門の前で出会い、ともに屋敷の方へ目を向けると、そこにいたのは化け物を踏み、赤い霊波刀を振り上げた横島の姿。
「あれが・・・・お父さん?」
右腕、右足を無くし、体が鉄と銅に変っており、背中から触手を生やした実の父の姿。
いくら自分を捨てた親とはいえ、いささかショックを受ける。
「よくわからないけど・・・なんかやばそうね・・・」
「確かに・・・でも早く止めないと・・・」
「先生は本気で美姫殿の父上を殺すつもりでござる・・・」
そう言ってルシオラとタマモとシロの3人が横島の元へと向かう。
「横島さんが人殺しなんて・・・そんな・・・」
「それを止めに来たんです・・・今の忠夫さんは、怒りで染まってますから・・・」
「・・・行かなきゃ・・・」
おキヌ、アリス、美姫の3人も、横島の元へ向かった。
「そもそも・・・横島君、本気を出してないでしょ?」
「え!?」
「こ、これで本気じゃないのか横島君は!?」
「・・・・・・」
美知恵の言葉に驚く西条と美神。
横島は黙する事で肯定する。
「指輪・・・まだ四つも付けたままだし・・・横島君なら文珠で即効、決着がつくわ。なのに・・・・」
「横島君はそれをせず・・・相手を苦しめた・・・」
「取り押さえる事も出来るのに・・・なぜ苦しめて殺す事ばかりを考えるの?」
「貴方の正論どおりなら・・・貴方は即効で決着をつけなきゃいけないのに・・・・」
其処まで言って・・・美知恵は一呼吸おいた・・・・そして・・・・
「貴方は周りがどうのこうのなんて考えてない。ただ、ムカつくコイツを自分の手で拷問して殺したいだけ・・・・そうでしょ横島君?」
「!!」
図星を付かれた気がした横島。
「で、でもコイツは化け物になって人を「確かに化け物になったけど、その化け物を押さえれるなら押さえて、人間に戻せるなら戻して、それから罪を償わせるのが正論・・じゃなくて?」」
横島の反論を潰し、正論を叩きつける美知恵。
「貴方の言った言葉は、ただコイツを殺したいだけの言い訳よ。何で其処まで怒ってるかはわからないけど、だけど「もういいっスよ」」
横島が美知恵の言葉を止めた。
「確かに・・・俺はコイツを殺したいだけっスよ・・・・」
横島の告白。
それは近くまで来ていた美姫達にも聞こえていた。
「自分の娘を利用する事ばっかり考えて・・・人の命をなんとも思わないで・・・」
「お兄ちゃん・・・・」
「前にコイツの依頼で研究所にいったんですけどね・・・・そこにいた化け物・・・コイツの会社のせいで凶暴化した、突然変異の子供だったんっすよ。」
「「「「!!??」」」」
「その子がそうなったのもコイツのせいで・・・」
横島の告白にショックを受ける事務所メンバー達。
「美姫も、そしてその子も、コイツのせいで傷ついて・・・・・・なのにコイツは、また誰かを傷つけようとして・・・」
グン!
そう言う横島の霊波刀が、更に大きくなる。
「なんでこんな屑のせいで・・・美姫が傷つく必要があるんですか!?」
グン!!
「なんでこんな屑のせいで・・・あの子が死ななきゃいけなかったんっすか!!??」
ググン!!!
「なんでこんな屑が・・・なんで・・・なんでまだ生きてるんっすか!!!!!!!!!!!」
ドン!!!!!!
横島の霊波刀が大きくなり地面に刺さった。
「コイツは人を傷つけた。そしてこれからも傷つける・・・・俺はそれを・・・・見たくない!!」
ゴウン!!!!!!!!
更に大きくなった霊波刀。
横島が天に掲げようとすると、地面が割れ、巨大な霊波刀が出てきた。
「俺はコイツに・・・・生きていて欲しくないんだーーーーーーーーー!!!!!!」
ゴオオオオオオオオオオオーーーーー!!!!!!!
横島の掲げた霊波刀。
あまりにも大きく、赤く燃え上がるような霊波刀。
普通の刀の約三倍ぐらいあるその霊波刀を、横島は鷹条の首を目掛けて、振り下ろした。
{あとがき}
とりあえず・・・義王です。
人の感情を表すのってとっても難しいな~・・・。
横島の怒りや、美姫達の思いが皆様に伝わればいいけど・・・(伝わりました?
さ~てレス返し♪
>放浪の道化師様
美知恵 「ご苦労様、道化師クン・・・あとは私達に任せて・・・」だそうですよ?まあ横島の暴走というか・・・怒りを静める事が出来るのは女性だけでしょうから・・。 ご苦労様でした!!(敬礼!!
>D,様
博愛主義が怒る・・・これ以上怖い事はありませんよ。しかも横島・・・・鷹条には地獄を味わってもらいました。
>wey様
優しさを怒りに変え、怒りを殺意に変えた・・・てなぐあいっス。
>空嶺様
粗大ゴミはバラバラにして捨てます。鷹条もバラバラに捨てます。
石に封じたら石が可愛そうです。鉄と銅なので燃えません。
亜空間に捨てたら、亜空間が汚れます。
>nanasi様
横島 「あの瞬間から美姫は俺の妹だ!!」だ、そうです。
>カニ五郎様
初号機はどうやって暴走が止まりましたか?敵の息の根を止めて止まったでしょ?(ニヤリ
美神 「・・・じゃあ500万でどう?」・・・美神、しつこいので縛っておきますね?
>うけけ様
怒りって感情はすぐに変わりやすい感情。
怒りに怒って、逆に悲しくなったり、頭が冷めてしまったり・・・・。
今の横島は、頭が冷めて、それでも殺意が残ってる状態。
親衛隊で止めれるかな・・・?
>オロチ様
美神 「そんなもったいない事、させれるわけ無いでしょ!!」
・・あんた横島が怖くて震えてたんじゃ・・・
美神 「それとこれとは別よ!!」・・あっそ・・。
だそうですオロチ様。
>柳野雫様
西条 「じょ、女性だったのかい!?そ、それなら今すぐにタテとヨコをクビにして・・・そうそう、今晩、その事で話があるんだけ」
ゴス!!バキ!!!ドス!!!!
横島 「義王・・・これ使うか?」『消』『滅』
俺、義王 「お、さんきゅー横島♪」 パシュー(発動)
はい、西条は消滅しました♪
>アンスリウム様
あ~そうかもしれないっすね・・・でも西条・・・さっき消滅しちゃいましたから!!・・・残念!!↑(柳野雫様へのレス返し参照)
と、まあ冗談はおいといて・・横島は自分の手で殺したいんッすよ・・・。
妹を苦しめた鷹条を、自分の手で・・・。復讐に近いかもしれませんけど。
それじゃあまた次回に!♪
シーユー♪