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▽レス始

「横島日誌8(GS)」

マッキー (2005-03-02 20:31)
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あまりに唐突な彼の言葉に、その場に居た全員が咄嗟には対応することができなかった。
やや面食らったような表情で、彼のひねり出したプランについて検証しようとする。


やがて、考えるには情報が足りないと判断した小竜姫が、プランの説明を要求した。

「それは、具体的にどのようにするのですか?」


「つまりですね、何らかの方法で、ルシオラの霊気構造でできたあの蛍を持って、ルシオラが生きていた過去に行くんです。そして、どうにかしてルシオラを説得して、蛍に霊気構造を注ぎ込んでもらえば・・・」

「消える瞬間までの記憶を持ったルシオラちゃんが蘇るんでちゅね!」


「・・・確かに、可能性はあります。いえ、おそらく成功するでしょう。
少なくとも、ルシオラさんの転生が記憶を持って生まれてくるのを待つよりも、遥かに可能性はあると思います。

でも、その方法は、問題点もかなりの数があると思うのですが・・・」

小竜姫の指摘も、至極当然のものであった。何しろ、横島は過去を改竄しようというのだ。それによって生じる問題点は、無視することができるものではない。
横島も、この荒唐無稽なプランが何の障害もなく終わるとは思っていなかった。
成功の可能性を少しでもあげるために、思いつく限りありとあらゆる問題を検証しなければならない。

「ええ、そんなことは覚悟の上です。過去に行ってから問題が見つかる、なんてことがないよう、今のうちに考え付くことは全て言って下さい。皆も、何か思いついたら教えてくれ。」

その言葉を受けて、まず猿神が発言した。その内容は、このプランにおける一番の問題点である、過去の改竄についてのものだった。

「まず第一の問題点は、それをやると歴史が変わってしまうというところじゃな。
お主、そのルシオラという魔族に、なんと説明するつもりじゃ?」


「それは・・・」


「想像してみるがええ、お主、お前はこのあとこの女に恋をするんだ、等と言われて、その後何の拘りもなく過ごせるか?」


「う〜〜〜ん・・・」

その問題については―声がべジータだからではなく―容易に想像が付いた横島は、しばらくその解決策を考える。
五分ほど皆で考えた結果、ヒャクメが解決策を思いついた。先ほどの出来事を参考にして、
“忘”の文殊でルシオラたちの記憶を消そうというものだ。
横島に会ったという記憶を消せば、元の歴史との誤差はほんの数十分の時間だけとなる。
横島自身も、その文殊を食らったことにより、記憶を消されていたと言うことさえも忘れていたという経験があるので、十分に使用可能ということになった。

「次に・・・大戦中は、時間移動が妨害されていたのですが、それはどうしますか?」

「ああ、それはもう考えて有ります。時間移動が妨害されて始めたのは、大戦が始まった後です。ですから、それ以前の時間に移動して、外国かどこかで大戦が始まる前まで待てばいいんです。
あいつは、命懸けで俺を助けてくれたんです。そのぐらい待つなんて、屁でもありません。」

「そうですか・・・」

『ルシオラさん・・・』

小竜姫は、横島にここまで想ってもらえるルシオラを、羨ましいと思う自分に気付いた。そのことを自覚しても、心に何の違和感もない。

『やっぱり私は、横島さんが好きだったんだ。』

いつから、自分は彼に惹かれていたのだろう?
多分、最初に会ったときには、もうその兆しがあったのだろう。だからこそ、二度目に会ったときに彼に期待をかけ、さらには額とはいえ唇をつけたのだ。その後のかれの成長を見て、その気持ちはどんどん高まっていった。
きっかけはおそらく、初対面のときに彼がしたセクハラだろう。
何百年もの間妙神山で人間に修業を付けてきた彼女だったが、その人生であったどんな人物も、彼女を女としては見なかった。
あくまで彼女は、凄まじい力を持った竜神であり、自分に修業をつける者だというわけである。
しかし彼女とて、心は立派な女性である。横島にセクハラをされて怒ったように、ちゃんと心を待っているのだ。妙神山に括られているために神族にもろくに会えずに、彼女は寂しい思いをしていたのだ。
そこに現れたのが、横島である。セクハラという方法は褒められたものではないが、彼は小竜姫のことを、紛れもない一人の女性としてみたのだ。後に修行をしに来たときもそれは変わらなかった。
そんな、種族にとらわれない心を持った彼に、自分は惹かれたのだ。

そこまで考えて、今頃その気持ちに気付いた自分を呪う。いまさら気付いたところで、彼はもうルシオラのものだ。

しかし、だからといってここで手を抜くわけには行かない。そんなことをしたら、二度と横島をまともに見ることはできなくなる。

気を取り直した彼女は、計画を確実なものとするため、更なる意見を出していった。

「時間移動の許可については、文殊を使うことで影響を抑えられますから、多分許可は下りるとして・・・

ルシオラさんたちと接触するのは、いつ頃にする予定ですか?」


「そうですね・・・時間的なことも考えると、できればルシオラたちが人間界に着いた直後、欲を言えば魔界にいるうちが望ましいんですが・・・」


それはそうだ。ルシオラたちが雪之丞と接触してすぐに、過去の横島は彼女らによって轟天号に連れ去られてしまうのだ。過去の自分と鉢合わせ、なんて事態は、できる限り避けることにしたい。イレギュラーは、少ないに越したことはないのだ。


「それが何か?」

「ええ、それだと、彼女たちにとって貴方は初対面ということになってしまうんです。これから神界に対して戦争を仕掛けようというときに、見ず知らずの人間が近づいて来たら・・・」


「十中八九、攻撃されるのね〜」

「その可能性は否定できないでちゅね。とくにべスパちゃんなんか、あの性格でちゅから。」


『お前も十分危ない・・・。』

大戦中にパピリオに殺されかけたことのある横島はそう思ったが、口には出さない。
それは、彼女を傷つけたくないという思いからだった。
無意識のうちに彼女から自分に向けられる好意に気付いていた彼は、この少女が自分を攻撃したことについて悩んでいるのを悟っていたのだ。
だから、彼は何も言わずに、パピリオの頭をなでた。

「気にすんなよ。あの時は、お前らにも事情があった。」

「ヨコチマ・・・」

戦争中のこととはいえ、自分を気遣ってくれた横島を攻撃したことを気に病んでいたパピリオは、彼が自分のしたことを全く気にしていないと言ってくれたことに安心した。
自分をなでるこの少年の手から、自分を気遣う気持ちが流れてくるような気がして、パピリオは気持ち良さげに目を細めた。
ふと、パピリオは小竜姫とヒャクメに目を向けた。その視線に、自分に対する優越感があったような気がして、小竜姫とヒャクメはちょっと腹を立てた。

「「それで、どうする(んですか)(のね〜)」」

自分を非難するような彼女たちのきつい目線に、彼は慌てた。パピリオの頭から手を離して、再び考え始める。
横島を取られた形になったパピリオが二人を睨むものの、まるっきり無視された。
しかたなく、横島と一緒になって解決策を考えることにする。

しかし、いくら考えてもいい案は浮かばなかった。“縛”の文殊で動きを止める、という意見もあったが、相手は寿命と引き換えに強大な力を得た魔族である。生半可な力での術では効かないだろう。文字数を増やしたところで、絶対的な力の差が埋まるとは考えにくかった。
“伝”の文殊で事情を伝える、という案が小竜姫から出たが、これも却下された。相手を説得するという点でこれ以上の方法はなく、良い案だと思われたが、当てられなければ意味がない。
相手は横島に対し相当な警戒をするだろうから、今の横島の実力では無理だという結論に達した。

最後に立ちはだかった問題が自分の力だということで、パピリオは複雑な気分だった。
その負い目から、自分たちに有効な手段を考えようと必死になるが、答えは見つからなかった。自分の力は自分が一番よく知っている。いくら人界では最強クラスの横島とて、自分たち三姉妹に敵うとは思えない。


『あとはこの問題だけだっていうのに、駄目なのか!?』

横島は頭を抱えた。
万が一に希望を託して、今のままで過去に跳ぼうかとも考えたが、もし自分が帰らなかったら、シロとタマモを悲しませることになる。自分は、ルシオラとこの二人の両方を護ると決めたのだ。今のままでは、成功率が低すぎる。
周りの女たちの表情にも、暗い影が落ちる。


一気に重くなった空気の中に、猿神の笑い声が響いた。
あくまでも軽いその笑い声は、嘲笑ではない。この人物がそんな心の持ち主でないことは、その場にいる全員が知っていた。

「老師!!何か良い方法があるんですか!?」

何をそんなに心配しておる?とでも言いた気なその笑い声に、横島は最後の希望を託した。
大戦中にすらほとんど見せたことのない真剣そのものの表情で、叫ぶように聞く。
ほかの三人の女性も、期待に満ちた目で猿神を見詰めた。


自分の言葉にすがる彼の必死の叫びに、猿神は大きく頷いた。咥えていた煙管を取り灰を落とすと、まるで何でも無い事のように告げた。


「なあに、簡単な話じゃ。お主がパピリオたち三人を押さえ込めるくらい強くなればええ。」


老師の口から出たその言葉は、先ほどの横島の言葉に負けず劣らず周りのものに衝撃を与えた。
特に、霊能において日本一の修業場の管理人として長い年月を過ごした小竜姫は、思わず自分の師匠の正気を疑ってしまった。猿神の顔をまじまじと見詰める。

それも無理のないことだった。その何百年にわたる長い生涯において、数多の人間が成長する様を見てきた彼女は、人間が魔族の能力を凌駕することなど信じられなかったのだ。

実際、彼女の疑問は正しいものだった。人間が魔族に勝つことは稀にあるが、それは相手の魔族が弱い者であるか、大戦中にパピリオと戦ったGSチームのように、作戦によるものなのだ。
人間と魔族の間には、どうしても越えられない壁があるのだ。人間にはどう頑張っても超えられない力の限界がある。それは肉体という枷に基づくものであるから、努力で克服できるものではない。
その壁を越えるには、かつての勘九郎のように、自らを魔族と成すしかない。
しかしそれをしたら、横島も彼のように、己の欲望を満たすだけの、文字通り魔物と化してしまう。
横島を想う者として、そんなことをさせる訳には行かない。


「いくら横島さんの素質が並外れているといっても、そんなことが可能とは思えないのですが・・・もし横島さんに魔装術を教えるおつもりならば、賛成できかねます。」

他の者も同意見で、不思議そうな顔で猿神を見詰める。魔装術を知らないパピリオも、周りの者につられて視線を向けた。
しかし、小竜姫の当然の指摘を受けても、猿神の笑顔は子揺るぎもしなかった。小竜姫のさらに何倍も生きている彼である、そんなことは聞くまでもなく分かっている。


「確かに、人間が中級以上の魔族を凌駕することなどありえぬことじゃ。そう、ただの人間ならじゃ。」


「まさか、魔装術ですか?」

横島が心配そうに聞く。
かつて勘九郎と戦い、その変貌振りを目にした彼である、不安になるのも無理はない。


「いや。そんな危険なことをするまでもないわい。実際に見たほうが早かろう、ちょいと修業場まで行くぞ。」


そう言って立ち上がり、皆を促す。いぶかしみながらも全員が立ち上がると、修業場に向けて歩いてゆく。
その後に続く横島も、これから何があるかは分からないまでも、どこか安心した風だった。
何だかんだいって、彼は自分に文殊という能力を覚えさせてくれた猿神を信頼しているのだ。
ほかの者も、妙神山に長くいるので、猿神の凄さはよく分かっている。誰も疑うことなく、後についていった。


例のごとく銭湯の入り口そのものの更衣室を通り、修業場に行く。今回は、誰も着替えないのだから一緒でもいいのだが、普段の習慣から男女別々に入っていった。

「では、横島よ。そこに立って、全力で霊波を放出して見せよ。シャドウは出さんてええから、法円を踏むなよ。」

修業場に付くと、老師は開口一番そう言った。以前美神と共に来たときに、剛錬武や禍刀羅守と戦った、あの闘技場である。
相変わらず、所々に石柱の立った一面の草原が無限に広がっている。
その中央の闘技場の中心を指差す猿神に従い、横島は歩いていった。リングの中央に立ち、精神を集中させる。
普通の修行者ならば念仏なり聖書なりマントラなりを唱えるところであろうが、彼は横島忠男である。彼が意識を集中させているのは、三日ほど前に見たばかりの、美神の入浴シーンであった。
煩悩を使わずとも霊波刀を出す程度の出力は出るのだが、やはり煩悩を使ったほうが最大値は上がる。
己が煩悩を完全に解放した彼の霊力は、美神令子を明らかに上回っていた。


「すごい、以前よりまた強くなっている・・・」

「ヨコチマ、凄いでちゅ。」


小竜姫とパピリオは、ますます成長する彼の霊力に感嘆の声を上げる。しかし、猿神が見せたかったものとは違うような気がしていた。たしかに人間としては驚異的な力ではあるが、べスパたち三人の魔族には遠く及ばない。

「老師、見せたかったものとは一体何なのですか?」

「まだ気付かぬか?ほれ、ヒャクメは気付いたようじゃぞ。」

言われて二人が隣に目をやると、話を振られたヒャクメは、驚愕に目を―額の物まで―見開いていた。彼女を驚かせたもの、それは彼の成長ではなかった。
探査に特化した彼女だから気付いたもの、それは・・・


「ど、どういうことなのね〜?!横島さんから、魔力が感じられるのね〜!」


つづく????
読んでいただきありがとうございました。
期末テストがいよいよ明日なんですが、やっちゃいました。赤点取らないか不安です。
昨日が卒業式だったのですが、来年も見送るなんてことになったら勘当されます。
(誰か微分について教えてください、さっぱり分かりません。)
しかし、SSやり始めたおかげで、情報のテストのタイピングは完璧でした。人間何が役立つか分からないですね。

このルシオラ復活のアイディア、もし問題がないようならどんどん使ってください。
ハッピーエンドが好きな性質なので、ルシオラ復活モノをもっと見たいです。
もしこの方法でルシオラが復活するなら、私なんぞの拙いSSで終わらせるには勿体無いです。


>Dan様
やっぱり私と同じ事考えた人がいたんですね。
このアイディアは結構前からあったんですが、SSを投稿することに抵抗があってなかなかできませんでした。
ジャンプのくだりは完全に遊びすぎでした。申し訳ありません。


>秋斗様
私もそれで数学の授業中に小一時間悩みました。
やはり、六道のクラス対抗戦で成功したことを考えると、“伝”の文殊がよろしいかと。


>猿サブレ様
鬼門ズには、台詞があったほうが自然でした。申し訳ありません。(まあ、いっそあいつららしいか・・・)
済みません、明日から期末テストなんで、しばらく休みます。特に数学がヤヴァイです。


>オロチ様
妨害電波についても、結構悩みました。とりあえずこんな感じにしましたが、
何か不都合はないでしょうか?


>D様
それが可能ならば、パピリオがやったとは思うのですが、う〜ん・・・
こればっかりは、椎名先生に聞いてみないと分かりません。


>くん様
未来の横島がルシオラの霊気構造を回収したというのもアリですね。


>スレイブ様
キテレツ大百科は見てなかったんでよく分かりませんが・・・
難しいですね。自分の頭では結論が出ません。

追伸 ムリっす!!私はまだ十六歳なのです。あれ?でも、注意には書いちゃいけないとは・・・


>MAGIふぁ様!?
おおお、まさか彼方からレスが頂けるとは・・・先生のSSは、以前から好きでした。
粉骨砕身がんばります。


>ジュン九様
済みません、自分静岡の電車もないようなド田舎に住んでいるもので、わかりません。
最後に乗ったのは修学旅行でした。

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