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▽レス始

「横島日誌7(GS)」

マッキー (2005-02-27 15:47)
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事務所を出発した横島は、まっすぐに東京駅へと向かった。切符売り場に並び、妙神山の最寄の駅へのチケットを買う。
普段の彼なら、新幹線より時間はかかるが安い電車を選んだろうが、今日は違う。何しろ恋人の命がかかっているのだ。彼が買ったのは、なんとのぞみのチケットだった。
長年の壮絶な貧乏暮らしの影響は消えず、指定席とまでは行かなかったが、彼にとっては生まれて初めての大奮発であった。
もちろん、この金は彼自身のものだ。先日の初仕事の報酬の一部を、美神から現金で支払ってもらったのだ。いつもなら、このような報酬がらみの話になったら、

「その体でも払ってくださ〜い!!」

などとルパンダイブの一つも出るところなのだが、シロとタマモにキスをしたすぐ後に美神にセクハラをするのは、さすがの彼も気が引けた。
それに、美神を怒らせて金が出ないなんてことになったら、洒落にならない。
そのときの彼の財布の中には、夏目漱石さんも野口英世さんもいらっしゃらなかったのだ。
ルシオラを救うためにはどんな苦労も厭わない覚悟を決めた彼ではあるが、自転車で妙神山まで行くのは勘弁してもらいたかった。

幸い平日ということで、席はかなり空いていた。彼は窓際の席を取ると、隣の席に荷物を置き、上着を脱いだ。すっかりくつろげる体制が整うと、ナップザックから飲み物を取り出し、景色を眺める。
通り過ぎる町並みをなんとなく目で追いながら、この後たどるコースを確認してゆく。
以前に美神の付き添いとして来たとき辿った道は、地図に記されたとおり、崖などを迂回する普通のルートだった。このときは、美神の大量の荷物を背負っていたし、当時の自分はまだ霊能力に目覚めていない普通の人間だったため、そうする他なかったのだ。
しかし、今回彼は、それより多少険しい道を選ぶつもりだった。自分の荷物といえば、ほとんど空のナップザックひとつきりだ。さらに前回と違って、今の自分には霊能力がある。ハンズオブグローリーで崖を登るなど、短縮できる点はかなりあるはずだ。
今の自分は、シロタマとイイところまで行きながら不発に終わったということで、煩悩パワーがマックスになっている。それくらいのことはできる自信があった。

『今なら空が飛べるかもしれない。』
半ば本気でそんなことを考える彼を乗せて、新幹線は妙神山へと迫っていた。


「おいおいL死んじまったのかよ、どうなんだこの後?」

さて、彼の自転車とは違って、新幹線のぞみ号は早かった。ルートの確認も終わった彼が本日発売のジャンプを読んでいるうちに、列車は目的の駅に着いた。時刻は十一時半、ほぼ予定通りの時間だ。

駅から出ると、彼は妙神山の近くへ行くバスを調べ、それに乗った。さすがに秘境だけあって、バスもかなりの時間がかかる。一時間近くかけて、彼は妙神山の麓へとたどり着いた。

「さあて、気合入れていくか!」

鉢巻の代わりにバンダナを締め直すと、彼は眼前に聳え立つ妙神山へ踏み込んでいった。


横島の登山は、至極順調に進んでいった。
もともと、人並みどころか人間の体力の限界から外れかけいる彼なのに、最近は朝晩のシロとのサンポという地獄のようなハードスケジュールをこなしているのだ。
その健脚振りを遺憾なく発揮して、彼は麓付近の比較的緩やかな坂道を、登山家も真っ青のスピードで登って行った。

事務所に住み着いてからというもの、本気で横島を慕うようになった彼女は、彼とサンポにいけるのが嬉しくてたまらなかった。ついついはしゃぎすぎて、隣町どころか隣県にいってしまうことも多かった。そんな彼女の誘いを断りきれない横島は、その地獄のフルマラソンをやり続けることになったのである。最初のうちは自転車を使ってもきつかったのが、慣れてくるに従って、だんだんシロについていけるようになった。
最近では、手加減しているとはいえ生粋の人狼であるシロと、一緒に走れるようになっていた。すぐ傍で並んで走る横島の姿に、シロは大いに喜んだ。そのことをタマモに話して、彼女が不機嫌になるなんて事件もあった。

閑話休題・・・

登っているうちに、横島の目の前に一枚の立て看板が現れる。長い間風雨にさらされ色褪せてはいたが、何とか読み取ることができた。そこには、よく目立つ赤い字で、

この先危険、修行者以外立ち入るべからず。

と書いてあった。
彼は、前回来たときもこれを見たことを思い出した。あのときは、丁度この辺りから、
道が急に険しくなったのだ。
地図には、この先の一般人立ち入り禁止の地帯が色分けされていた。辿ってきたルートから、自分の現在位置を確認する。
どうやら、自分は山の半ば辺りにいるようだ。思ったより早くついたことに、彼は自分を鍛えてくれたシロに感謝した。帰ったら好きな物をたらふく食わせてやろうと決める。

しかし、実際は食べるのは彼になった。何を食べたかは言えないが、食べ物ではないとだけ言っておこう。


看板の前で、彼は遅めの昼食をすることにした。ナップザックから、朝買っておいたパンと、駅で買ったお茶を取り出す。安上がりな昼食であったが、森林の清新な空気の中で食べると、普段とはまるで違う味に思えるから不思議だ。疲れとあいまって、あっという間に平らげてしまう。
ちなみに、ゴミはすべて回収する。こういうところに、彼の心根が表れている。今時の若者ではこうはいかない。


十分に休息をとると、彼は再び歩き出した。距離で言えば半分を過ぎたが、ここまでは登山目的の一般人も入るところだった。ここからの道のりは、それ自体が修行といえるようなきついものになる。
前回でその辛さを身にしみて味わっている彼は、気を引き締めた。


それからの道のりは、前回と同じく、かなり厳しいものだった。
恐ろしく急な斜面、人一人分の幅しかない崖っぷちの道、鬱蒼とした木々、これまでよりさらに細くなった道・・・さまざまな自然の障壁が、彼の行く手を阻む。
しかし、今日の彼は、そんなことではへこたれなかった。超人的な体力と鉄の意志を持って、様々な障害を乗り越えていく。
以前も通ったような歩いて行ける道は、シロとのサンポで培った脚力で、前回の倍に近いペースで進んでゆく。
前回はよけて通った、通常では進めないところも、彼の霊能力があれば進むことができた。
崖の壁面に栄光の手を打ち込んで登り、幅10mに近い川も、延ばした栄光の手を棒高跳びの要領で飛び越える。その結果、前回かかった時間から出した見積もりよりも大幅に速いペースで進むことができた。ほとんど誰も来ないため獣道と化した道を、人間とは思えない勢いで登っていく。


ほとんど休憩もせずに歩き通した甲斐があって、予定より一時間以上も早く到着することができた。さすがに疲れ切って肩で息をする彼の前に、妙神山の入り口が現れる。
アシュタロス大戦の折、断末魔法で一度は破壊されたのだが、以前とまったく同じに修復されていた。相も変わらず、その扉には鬼門の顔がはまっており、両脇には彼らの体が立っていた。
門の前で横島が乱れた呼吸を整えていると、門番である彼らが声をかけてきた。


「おう、誰かと思ったら横島ではないか。久しぶりだな。今日は何の用だ?」

「よう、久しぶり。今日は、ちょっと大事な話が有ってな。」


そこまで言うと、門が凄まじい勢いで内側から開かれた。悲鳴を残して左右に遠ざかっていく左右の鬼門をよそに、中から飛び出してきた人物は、横島の胸に砲弾のような勢いを持って飛び込んでいった。


「ヨコチマーっ!!」

ぐはあぁァッ!!

この建物の中に、このような行動をする人物は一人しかいない。大戦中に知り合った蝶の化身、パピリオである。彼女からすれば、親しい人間に久しぶりに会えた喜びゆえの行動だったのだが、さすがに魔族だけあって、その威力は相当なものがあった。
鳩尾に全体重を乗せた体当たりを食らった彼は、しばらく呼吸不能で悶絶していた。
しかし、女性に優しい彼のこと、何とか復活して彼女の頭をなでてやった。数少ない信頼できる人物との接触に、彼女は心の底から喜んでいる。

そんなパピリオの様子に、なんとか痛みも抜けた彼は微笑していた。座ったまま、しばし再会を喜び合う。

「なかなか会いに来てやれなくて御免な。元気だったか?」

「私は元気でちゅ。それで、今日は何しにきたでちゅか?」

「ああ、じつは・・・」
そこまで言ったところで、開きっぱなしになっていた門から一人の女性が出てきた。この修業場の主、小竜姫である。入り口の掃除を命じたパピリオの様子を見にきて門が開いているのに気付き、様子を見に来たのだ。
横島が来ていると知った彼女は、彼ににこやかに話しかけた。その声には、彼に対する好意が滲み出ている。人里離れたところで暮らしている彼女は、自分を慕ってくれる彼に好意を抱いているのだ。

「まあ、横島さんではないですか。お久しぶりですね。」

小竜姫の登場に、横島はパピリオから手を放した。立ち上がって、小竜姫に笑顔を向ける。

「お久しぶりです、小竜姫さま。今日もお美しい!」

その場にいた誰もが、そのあと彼が小竜姫に飛び掛ると確信した。本人も、即座に対応できるよう身構える。
しかし、誰もが予想したその未来はやってこなかった。パピリオと会うことでルシオラのことを思い出した彼は、そんなことをする気にはなれなかったのだ。どこか拍子抜けしたような顔の彼女に向かって、彼は用件を伝えた。

「今日は、ヒャクメに会うために来たんです。」

「ヒャクメに?残念ながら今は天界に行っていていませんが、急な御用ですか?」

「実は、ルシオラの件で話があるんです。」

「!・・・分かりました。とりあえず、中にお入りください。」

真剣な話になると判断した彼女は、横島を建物の中に促した。横島を取られてむっとしていたパピリオも、話が己の姉のことだと聞いて表情を引き締めると、二人に続いて、建物の中へと入っていった。

あとには、パピリオに開け放たれた拍子に壁に顔面をぶつけて悶絶する、鬼門だけが残されていた。


「それで、お話というのは・・・?」

ところ変わって、ここは建物内部の応接間である。あのあと、相談相手として暇そうにしていた老師が呼ばれ、この部屋に集まったのだ。話が話だけに、いつもは騒がしいパピリオも、真剣な面持ちで横島を見守っている。老師と小竜姫も、自分の愛弟子である横島の真剣な表情に、黙って耳を傾けていた。
一同に、彼は自分が妙神山に来た理由を話してゆく。


「それで、なんとか会う方法を考えるうちに、俺の記憶が消されていることに気付いたんです。その記憶が、ルシオラを復活させるヒントになる気がして・・・」

「それで、他人の記憶を探れるヒャクメに会いに来たわけですね。」

「その通りです。」

「わかりました。さいわい今の彼女は何も任務のない状態ですので、呼べばすぐに来れると思います。30分ほどかかると思いますので、横島さんはお風呂にでも入って、汗を流して来て下さい。」

その申し出は、彼にとってありがたいものだった。先ほどの登山で付かれきった体を休めたかったし、汗の臭いが気になっていたからだ。


ゆっくりと湯船につかり疲れを癒すと、彼は風呂から出てきた。体に付いた水滴をぬぐい、服を着る。服装は老師のような人民服だ。これは妙神山の修業着であり、パピリオが用意してくれたものだ。
みなの集まる部屋に戻ると、すでにヒャクメが待っていた。相変わらず体に密着した奇妙な服を着ており、手には大きな鞄を提げている。

「済まないな、いきなり呼んだりして。」

「別にかまわないのね。そろそろ来ようかと思ってたし、人命に関わることだものね〜。」

『それに、横島さんの頼みだものね〜。』
最後のは、言葉にはされなかったが、彼女の本心であった。小竜姫と同じように、種族や人の心を覗けるという能力と関係なしに自分と接してくれる彼に、好意を抱いていたのだ。
その能力のせいで、神界でさえ敬遠されがちな彼女にとって、誰にでも平等に接する横島は好ましい存在だった。

シロとタマモの二人に告白されてもまだ自信が持てない彼のこと、ヒャクメのそんな気持ちには気付かずに話を進める。


「それじゃ、覚悟はできてる。すぐに始めてくれ。」

「了解なのね〜」

鞄を操作しながら、彼女は嬉しそうな顔をしていた。横島は、自分をそこまで信頼してくれているのだ。いまだかつて、自分に記憶を読んでくれなんて言った者はいない。彼女は、横島に対する好意が強まっているのを感じた。
しかし彼女は、今自分がしているのが彼の恋人を蘇らせることだと思い至った。もしこれによってルシオラさんが生き返ったら、彼は当然彼女と結ばれるだろう。そのことに、ヒャクメは寂しさを感じていた。
そしてそのことは、パピリオや小竜姫にとっても同じだった。

横島が悲しむところは見たくないし、ルシオラは生き返ってほしい。しかし、自分も横島の傍に居たい・・・
三人は、自分の気持ちに苦しんでいた。
実際は、横島は自分を慕うものすべてと共に歩む道を選んでいるのだが、今の彼女たちはそのことを知らない。


そんな彼女たちの思いをよそに、ヒャクメの準備は着々と進んでゆく。横島の頭にコードを取り付け、鞄の中から取り出したパソコン(?)を起動する。
これで、準備は完了だ。

「それじゃ、いくのね〜」

鞄のスイッチのひとつを勢い良く押すと、彼女は作業に取り掛かった。小竜姫、パピリオ、そして猿神までもが、緊張の面持ちでヒャクメを見守っている。
流石に、美神が渾身の力を込めてかけたプロテクトは強力であった。神界の情報操作のエキスパートたるヒャクメでも、なかなか突破することができない。
しかし、そのプロテクトも最後にはとかれた。「これでどうね〜」という声とともに押させたキーにより、ついに横島の記憶が戻った。彼の頭に、事件に関する様々なことが蘇ってくる。

「私もその記憶を見ていい?」

「ああ。知ってるのはなるべく多いほうがいい。」

彼の許しを得て、ヒャクメもまた、横島の記憶を思い出すことになった。
最初のうちは、自分が思い出させた記憶だけを見ようと思っていたヒャクメだが、ふと彼がルシオラの転生をあきらめた理由を知りたくなってしまった。好奇心に負けて、彼女はまずその記憶を読むことにした。
シロとタマモについては面識のなかった彼女だが、大体の話の流れは理解することができた。

『なるほど、確かに一理あるのね〜。』

転生を諦めた理由を知ったら、すぐに探査をやめようと思っていたヒャクメだったが、探った記憶の中に一つ見逃せないものがあった。
それは、タマモが彼に告白したという記憶だ。自らも横島に好意を抱くものとしてその顛末が気になった彼女は、タマモの告白の結果を見ることにした。
彼女は、彼がルシオラを選んで、タマモを振るという予想をしていた。
なにしろヒャクメは、ルシオラを喪って悲しむ彼を見ているのだ。彼女がそう予想することも無理はない。
しかし、彼女の予想は、彼女にとっていい意味で裏切られた。記憶を読む彼女の第三の目
に映ったものは、タマモと口付けを交わす横島の姿だった。

「ヒャクメ、何をそんなに嬉しそうにしてるんだ?」

まさかそんな記憶を読まれているとは知れぬ横島が、嬉しそうに微笑む彼女に声をかける。

「な、なんでもないのね〜」

慌てて誤魔化し、シロタマに関する記憶を探るのをやめ、今度こそ封じられていた部分の記憶を見始めた。横島が美神と結婚したなんていうところに驚愕しながら、すべての記憶を見終える。ほかのメンバーに事件の詳細を説明していく。

「「「「「う〜ん・・・」」」」」

しばらく、各人の唸り声だけが部屋に響く。猿神でさえも、今聞いた話の中にヒントを見出すことができず、腕を組んで考え込んでいる。

その中で、一番必死になって考えている者は、誰あろう横島だった。彼は、この蘇った記憶の中にルシオラを生き返らせるヒントがあるという、不思議な予感を感じていた。未来の自分が美神と結婚したという事実もほとんど気にせず、一心不乱に思考を続けた。

『ポイントは、やっぱり過去に行ったってトコだろうな。でも、たとえ過去に行っても、ルシオラを連れてくることはできない・・・』

横島は、発想を変えてみることにした。ルシオラを連れてくるのではなく、そこで何かをするのだ。その路線で考えを進めるうち、彼の頭にひとつの考えが浮かんだ。

「なあ、過去のルシオラに霊気構造を貰って来ればいいんじゃないか?」


「「「「あっ。」」」」


つづく????
読んでいただきありがとうございます。
期末テスト一週間前なんですが、どうせ勉強しないので
やっちゃいました。
ルシオラ復活のアイディアはこれだけなんですが、どこか矛盾してないでしょうか?不安です。


>之様
私もそう思うのですが、思いつきません。
なにか変化・・キーやんでも入れますか(マテ


>pillage様
赤字でありがとうございます。やっと分かってくれる人に会えました。
〔動〕〔他〕〔自〕(…を)略奪する,ぶんどる・・・テストには出ないけど覚えておきます。


>D様
すみません、どうしてもあの二人は入れたかったんです。


>猿サブレ様
お名前からなんか嫌な物をイメージしてしまいました・・・
ええ、私も小竜姫様は好きです。
胸なんて飾りです、お偉いさんにはそれが分からんのですよ!

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