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「心眼は眠らない その52(GS)」

hanlucky (2005-03-01 20:39/2005-03-01 21:11)
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「どうした? まだ寝るには早いんじゃないか?」

スーツ姿の男が、横島の髪の毛を引っ張り、無理やり立たせる。その行動に情けというのは全く感じられない。

「て、てめぇ……何でここまでやら―――」

ドスッ

「ぐほぉっ!?」

男が横島に強烈なボディーブローを叩き込む。

「何で? 言われなきゃわからないか?」

男は横島のそのまま放り投げて、霊波砲を放つ。
横島は何とか起き上がり、サイキックソーサーでそれを防ぐ。

「お前は、その弱さが、その甘さが、どれだけ悪いことかわかっていない。」

男は横島に歩み寄りながら、話を続ける。
横島は何とか男から逃げようとするが、レベルが違う。
すでに横島の後ろにはあらかじめ霊波の網が張られていて、壁と化していた。

「まぁ、聞けよ……あの時な……お前が!! 俺が!!……」

横島が文珠を発動させようとするが、先ほどと同じように無効化されてしまう。

横島が!! 横島忠夫がしっかりしていれば―――!!

男の叫びは、横島を呆然とさせるには十分だったようだ。


――心眼は眠らない その52――


午前のバイトも終わって、アパートに帰宅中の横島。

「ちきしょう〜〜。あの女!! 自分だってしょっちゅう”しまった”とか言ってる癖に!! 第一、すぐに文珠で対処したんだからいいじゃねえか!!」
『今回は全面的におぬしが悪いのだ。それが何故分からぬ?』

今日の除霊中、横島は些細なミスで危うく皆を窮地に追い込んでしまったのだが、何とか、文珠を使用して危機を乗り越えたのだった。
しかし、美神は横島の油断を追及してかなり怒ったのだが、横島は自分で対処したのだからそれでいいじゃないか、と反発する。

『全く……最近少しばかり、図に乗っているのではないか? 大体あの時も、ワレの判断だろうが。』
「心眼までそういう事いうか!? はぁ〜、お前は俺の味方だと思ったのに……」

確かに文珠で危機を潜り抜けたのだが、それは敵に追い詰められて時、悠闇がサイキックモードを発動させて、横島に文珠を使わせたに過ぎなかった。

『……やれやれ。(誰が、横島の性根を叩きなおしてくれる者がおらぬか。……いや、文珠使いを赤子のように捻る事が出来るとすれば、余程の力の差がないと……)』

戦闘能力ばかり高くて、思考が付いていかなくなりつつある横島。
徳でいえば、唐巣に頼む事が一番かもしれないが、今の横島が素直にそれを聞くかどうか怪しい。

「もういいじゃねえか。結局、今日も無傷で済んだんだしな。」
『その考えが―――!? 横島、部屋に誰か居るぞ。』
「へっ?……アレ? 何か見たことある霊波なんだが……」

アパートに着いた横島は、自分の部屋の前で霊視して見る。
悠闇も霊視を続けて、部屋の中に居る誰かを特定しようとするが、

(な!? 馬鹿な、どういうことだ!? 何故……)

悠闇が驚いているのは、相手の霊波の質がある者と全く同じであったからだ。
そして、ある者とは、

(何故……横島と同じなのだ!?)

自分の主である横島だったからだ。
悠闇が驚いている間にと、横島と同じ霊波がこちらに寄ってくる。

ガチャッ

「おぉ、帰ってきたか。まぁ、入れって言ってもお前の家か。」

スーツ姿の男が、横島に部屋に入るように指示する。
敵意がない事から、横島は中に入るが、どうやら男はテレビを見ていたらしい。それと何故か押入れが壊れていたが、今はこの男の正体が先だった。

「いや〜〜〜懐かしいな!! それに……ゆあ……心眼も久しぶりだな。」

男は、横島には気軽に再開の挨拶のようなモノをすると、悠闇を見て、本当に懐かしい者との再開のような目をしながら、挨拶をする。
そして悠闇は、男のある一言が頭に残る。

「お、おっさん、誰だよ? 俺はお前なんか知らんぞ?」
「はぁ〜〜。心眼はわかっているようだぞ。お前も少しは心眼を見習え。」

男はまだまだだな、と横島に言いながら、免許を取り出す。

「あっ!?」
『やはり…か。』
「そ、俺も横島忠夫。といっても俺は十年後のだけどな。」

免許には確かに横島忠夫という文字が書かれていた。何より、霊視による横島と男の霊波は全く一緒。これが何よりの証拠だろう。


「俺がこの時空に来た理由は二つ。一つは女房の命を助けるため。女房の名は美神―――美神令子だ。」
「へ?……………………………………もう一回言ってくれ。」

未来横島が言った最後のセリフが、横島には理解不能だったらしい。

「だから、俺は女房である美神令子を助けるために時間移動をして来たと言っているんだ。」
「美神令子?……美神さん?……美神さんが俺の女房?…………信じられん!!! さては新手の詐欺だな!!

横島が全く未来横島の事を信じようとしないので、未来横島は数枚の写真を取り出して、横島に見るように言う。

「何だ?……こ、これは!?」

写真は結婚式の時や、新婚旅行の時のモノであった。

「本当か!? 本当に美神さんが俺の!?」
「しつこいヤツだな。あぁ、本当に俺の女房は美神令子だ。」

ここから先、数分間、横島は暴走する。
完全に近所迷惑なのだが、横島の暴走を止める事はかなり危険な事なので、悠闇と未来横島は無視することにしたらしい。

『すまないが、ワレの式神作ってくれぬか?』
「あぁ―――ほれ。」

未来横島はすぐに式神を作り、悠闇はそれに宿る。

「……これが十年後のおぬしの力か……嬉しいぞ。」
「その姿……本当に懐かしいな。」

未来横島の式神は、当たり前だが今の横島とは桁が違ったようで、その成長具合に悠闇は少しばかり感動する。

「……話の前に少しいいか?」
「―――!? あぁ……横島に聞かせるのは何だろう。」

悠闇と未来横島は、横島を部屋に残して、外に出る。

「さて……ここでいいだろう。」

アパートから少し離れた場所で立ち会う二人。

「ワレの聞きたい事が何かわかっているな?」
「あぁ……心眼……いや、あえて悠闇と呼ばせてくれ。何故、俺が久しぶり、懐かしいと言った理由だろ?……」

しばらく沈黙が続き、意を決したのか未来横島は告げる。


「……お前は俺を守って死んだ。」

それは悠闇への死の宣告だった。

「……アシュタロスとの戦いの時にか?」
「あぁ、お前は―――」
「いや、もういい。それが聞ければ十分だ。」

未来横島が喋り切る前に悠闇はそれを止める。

「何故だ!? 自分の死の原因とか、いつ死んだとか、知りたくないのか!?」
「知ってどうする。ワレに未来を変えろと言うつもりか?」

未来横島が熱く悠闇に語りかけるが、悠闇は涼しい顔でどうでもいいと答える。

「な、何考えてるだ!? 俺がこの時空に来た理由のもう一つはお前に死んで欲しくなかったからだ!! いいかよく聞け!! お前は―――」

未来横島は最後まで喋る事は出来なかった。

「黙れ。」

邪眼・開闢

「―――!?(くっ!? 声が出ない!!)」

悠闇の邪眼が未来横島のセリフを遮る。

「悪くない……」

悠闇は淡々と語り始める。

「悪くない結末だ。確かにワレが死んでいる以上、最高の結果とは言わぬ。しかしな……」

それは真意なのだろうか?

「しかし、アシュタロスを倒して、おぬしが生きている。そして、おぬしは十年後、幸せに暮らしている。……これ以上望む必要があるのか?」

唯、悠闇の言葉に嘘は感じられない。
本当にそう思っているのだろう。自分は死んだが、横島は幸せになっている。
ならば―――


「未来を変える必要はない。おぬしの姿こそ、ワレが望んだものなのだから……」


―――迷う必要はない。


「解」

未来横島の呪縛が解ける。

「…………そうだったな。思い出したよ。お前って、そういうヤツだったよな。」
「馬鹿者。忘れるな……そして、すまぬな。」

未来横島の気持ちは嬉しい。自分を救おうとしてくれたのだから。
だがその行為を受け取るわけにはいかない。余分な知識は未来を狂わす。
もし悠闇が、何処で死んだか等の知識が意識したくなくても、意識してしまうのだから。

「戻ろう……そろそろ暴走も収まっているだろう。……そうだ、おぬしに一つ頼みがあるのだが…いいか?」

悠闇の頼み事とは、単純に最近、図に乗っている横島を懲らしめて欲しいというモノだった。未来横島は、お安い御用だ、と承諾する。
悠闇が先にアパートの方に向かい、未来横島はそれについていく。

(……悠闇、お前も忘れているな。)

この時、悠闇が少しでも振り返っていたなら、未来横島の考えも分かっただろう。

(横島忠夫は、ダメと言われたら余計に、やってしまう性格だという事を!!)

未来横島がよからぬ事を考えている内に部屋に戻ってくる。
中では、ようやく暴走も終わって、横島が二人の帰りを待っていたようだ。

「おいおい!! 聞きたいんだが、いつあの女は俺のモノになったんだ!? 頑張れば元は取れるのか!?」

訂正。まだ暴走モードは終わっていないらしい。

「元か?……とれたのかな……赤字って気がするが……」
「そ、そんなに苦労するのか?」

未来横島の、悲壮な顔を見て、今度こそ暴走モードが終了する横島。

「ま、あまり気にする必要はないぞ。未来は常に変化するからな……俺とお前が同じ道を進むとは限らん。いっそ違う道を……進んだ方がいいかもな。」
「何故、ワレの顔を見る。」
「そ、そんなに苦労するのか!?」

未来横島が、未来が変化するといった辺りや、違う道といった辺りで悠闇をジロジロ見ながら、横島に伝える。

「それより美神どのを救うとはどういうことだ?」
「そうだな、今から説明しよう。とりあえずお茶の用意してくれ。」

未来横島の話では、近日の除霊にて美神が遅効性の毒に感染して、それが十年後に発病したらしい。
治すには、同一の毒素を入手して血清を製造するしかないと言われたようだ。

「まぁ、この時期にその除霊があるらしいからな。それに同伴させてもらって、何とかするつもりだ。……そうだ! 偽名を考えておく必要があるな……タダオ…タダヤ…タダミ…タダスケ…うん、タダスケでいこう! お前との関係は親戚にしとくぞ。遠縁で今まで外国にいたから詳しく知らなかったってことで。」
「わ、わかった。」
「なるほどな……もう一つ、聞きたい。どうやって時間移動を?」

横島に時間移動能力など無い。そして未来令子は病に侵されているため、時間移動が出来るとは考えにくい。何より、それでは帰還方法が美神に頼ることになってしまうので、未来横島の正体がバレてしまう。

「横島。今、お前文珠いくつ持ってる?」
「文珠か? 確か……9個だな。それがどうかしたのか?」

タダスケは横島に文珠の数を確認してから、己の文珠を取り出す。

「令子が発病した時には、あまり文珠を持ってなかったからな。えぇと……俺の文珠の数が10個だな。すまんが5個、渡してくれ。」

横島がタダスケに文珠を渡すと、念を籠め始める。

「《時》《間》《移》《動》《二》《零》《零》《七》《年》《五》《月》《十》《三》《日》……これで行けるな。」
「ま、まさか自力で時間移動を!?」
「お、驚いたな……まさか14文字同時制御とは……」

タダスケが何気なくしている動作に、横島、悠闇は共に驚きを隠せない。

「まぁ、十四文字っていうのは、俺の新記録だけどな。だから帰りもうまくいくかは五分五分だ。」
「あ、あんた……ほ、本当に俺か?」
「……そうか。よくそこまで精進したな……本当に嬉しいぞ。」

横島がタダスケに感動している最中、悠闇は自分が横島の導き手に選ばれたことを本当に誇りに思っていた。

「お前のおかげだ。俺はお前のおかげでここまで来れた……」


/*/


夜も更けて、横島たちも就寝している時、

「おい、起きろ。起きろ、横島。」
「う、う〜ん……あ、何だ?」
「し〜〜〜声がでかい。」

タダスケが悠闇を起こさないように、小声で横島を起こす。

「おい、今からいい所に連れっててやるからついて来い。」
「い!? い―――もごもごもご」
「馬鹿野郎!! 声が大きい。折角なんだから、悠闇を起こさずに、男二人きりで行こうじゃないか。」

横島が大声を出そうとした瞬間、タダスケが横島の口を塞いで難を逃れる。
横島とタダスケは悠闇を起こすことなく、そのまま部屋を出た。
正確に言うと、悩んでいる横島を無理やりタダスケが引っ張り出したのだが。

ここでおかしい事は何故、悠闇が目覚めないのかという所だろう。
理由は一つ。

《眠》

タダスケが余分に貰って置いた文珠を使ったのだ。


/*/


「おい、何処に連れて行くんだ?」
「……黙ってついて来い。」

タダスケの口調は有無を言わせぬモノだった。

「おいおい、もしかして……いい所ってあそこか!?」

途中で走り出して、ようやく目的地が見えはじめた二人。
その場所とは、

「……俺たちと悠闇がよく修行に使っていた森だ。」
「帰る。期待して損した。姉ちゃんがいっぱい居る店だと思ったのに!!」

回れ右をする横島を止めるタダスケ。そのままタダスケは横島を森の奥に引きずっていく。
始めは抵抗していた横島も、途中で諦めたのか、そのままついて行く事にしたようだ。

「さて、ここらへんでいいかな。」
「んで、俺をここまで連れて来て何のようなんだ?」

横島が当然の疑問を問いかけるも、タダスケは特に答えず、準備運動を繰り返す。

「ほれ、お前も準備運動しとけよ。足、捻っても知らんからな。」
「はぁっ!? 何、言ってんだ!?」
「理解力の無いヤツだな……今から、俺と、お前が、ここで、戦うんだよ。わかったか?」

タダスケはさっさと準備しろ、と横島を急かす。
横島からすれば、いきなり夜遅くに起こされて、久しぶりの修行場に連れてこられて、それで自分と戦うのだから混乱するのも仕方ないことかもしれない。
といってもタダスケは待つつもりはないようだ。

「ルールはこうしよう。お前が俺にかすり傷でも負わせたら、お前の勝ち。俺は……別に勝ちなんかなくていいぞ。お前をいたぶるのが仕事だからな。」
「ちょ、ちょっと待て!! 何が一体どうなってんだ!? 第一、俺はやるって―――」

サッ

横島が言い終わる前に、タダスケの姿が消えた。

「ほれ、強いんだろ? それを俺に見せてみろよ。」
「えっ!? いつの間に……」

気付けば、横島の後ろに出現して、右手を横島の右肩に乗せていた。

「やる気ないんだったら……そうだな、お前が勝ったら、令子といつエッチをしたか教えてやるよ。」
「―――!? 絶対、聞いたる!!」

ギアを切り替える横島。後ろに居るタダスケに栄光の手で迫ろうとするが、いつの間にか消えていた。

ドスッ

「ぐっ!?」
「気配遮断を、完全に体得しているわけじゃないんだな。それじゃ俺に傷を負わせるのは、5年早い。」

タダスケは、低空姿勢で横島に迫り、ボディブローを決める。
悶絶する横島だったが、休んでいる暇をタダスケは与えるつもりはないらしい。

「ほれほれ、聞きたくないのか?」
「ぐぐ、このアホんだら!! いっぺん死んで来い!!」

横島は文珠と取り出して、念を籠めようとするが、

《滑》

「うぉっ!?」

横島が滑って地面に倒れる。

「馬鹿だな〜。俺とお前は同じ人間なんだ。だったら発動が早い方が勝つ。つまり俺の勝ち。それよりさっさと立たないと、攻撃するぞ。」
「んな、無茶苦茶な!!」

早い話、横島は文珠を使えないという事だ。もちろんタダスケ自身も、帰るために文珠を使うわけにはいかない。
文珠使い同士だというのに、文珠無しで戦闘に行うという事になったようだ。

(だったらサイキック猫だましで、一気に!!)

タダスケはあえて気配遮断を使わずに、横島を待ち構える。ハンデのつもりなのだろう。
そしてその油断を逃がす横島ではない。

「もらった!!」
「……やれやれだな。」

パァァァァァン

サイキック猫騙しによってタダスケの視界を奪う。
たまらずタダスケは後方にジャンプして、距離を取ろうとするが、そこを横島が詰める。


「美神さんとの、甘い一時!! もら―――!?」

ザシュ

タダスケは、後方にジャンプしていた。横島はタダスケの動きをずっと見ていたが、攻撃をした様子は見られなかった。
しかし、今、横島の足からは血が流れていた。

「いぃぃぃぃ!? くっぅぅぅぅぅぅ!?」
「何故、栄光の手もサイキックソーサーも使っていないのに、足を斬られたか不思議か?……まぁ、とりあえず、ヒーリングをしながらでも聞いてくれ。」

タダスケは、何もなかったように淡々と語り始める。
横島の足の傷を見れば、横島がヒーリングを覚えているからこそ、なんとか大丈夫といえるモノだというのに。

「よく考えれば分かることだぞ。俺たちは足に霊波を纏えるんだ。だったら、足から栄光の手のようなモノを出すことも可能って事だ。うん、俺って天才。」

自画自賛をしながら横島の様子を見守るタダスケ。
対する横島はヒーリングに必死で、聞いているかどうかも怪しい。
しばらくして、ヒーリングが終了したのか、横島が立ち上がる。

「いっっっ……もういいや。俺の負けでいい。」
「はぁ!?」

ヒーリングを終えて横島が、いきなり敗北宣言をする。

「いやな、どう考えたって勝てねえだろ。文珠も使えないし……美神さんとのそれは聞きたいが、痛いのは勘弁して欲しいし。」

ヘタレ丸出しの横島に呆れるタダスケ。

「なるほどな……痛いのは嫌か……そうか……それじゃ、これからは―――」


タダスケの霊圧が高まる。
横島がそんな様子を見て、ビビっているがもう知った事ではない。


「―――唯の八つ当たりだ。」


/*/


タダスケは、横島が倒れれば、強力なヒーリングで癒して、何度も強制的に戦わせていた。
横島は何とか、逃げようとするが次元が違う。

「お前は、その弱さが、その甘さが、どれだけ悪いことかわかっていない。」

タダスケは横島に歩み寄りながら、話を続ける。
横島は何とかタダスケから逃げようとするが、レベルが違う。
すでに横島の後ろにはあらかじめ霊波の網が張られていて、壁と化していた。

「まぁ、聞けよ……あの時な……お前が!! 俺が!!……」

横島が文珠を発動させようとするが、先ほどと同じように無効化されてしまう。

「横島が!! 横島忠夫がしっかりしていれば悠闇は死なずに済んだ!!」
「……え?」

コイツは今、何を言った?
横島は頭は、タダスケの言葉を必死に理解しようとしていた。
だが横島が今の言葉を理解する前に、タダスケは話を続けようとする。

「いいか、良く聞け!! お前は―――」

タダスケが何かを言う前に、タダスケと横島、両方の頭に悠闇のテレパシーが届く。

(貴様!! 何を考えておる。確かに横島の性根を叩き直してくれとは言ったが、未来を変える必要はない、と言ったはずだぞ!!)

《眠》の文珠を使われる瞬間、必死に抵抗した悠闇は、何とか目を覚ますことが出来たらしい。
タダスケは舌打ちをしながら、悠闇を説得しようとする。

(いいか。お前はアシュタロスの事件の際、俺を守って死んだ。その時の事を知っていれば、うまく動けば助かるんだぞ!?)
(笑止。横島、よく考えろ。ワレは例え死んでも、時が経てば、蘇ることは可能なのだ。下手に歴史を改変して、負ければそれこそ終わりなのだぞ!?)
(ちょちょちょっと待ってくれ!! 一体どういう事なんだ!? 心眼が死ぬって、物騒過ぎるぞ!!)

悠闇がタダスケと対立して、横島は混乱中。
二人の話は平行線を辿り、決着はつかないか、と思いきや、悠闇が最後のハッタリをかます。

(横島、もしここで下手に歴史の改変を行うとどうなるかわかるか?)
(どうなるって……悠闇が助かって万々歳じゃないのか?)
(もっとよく考えろ。歴史が変われば、おぬしが居た時空は消える。そうなれば、おぬしの愛した美神どのも消えるのだぞ。)

悠闇のセリフは最もらしいが完全にハッタリである。
文珠はイメージが重要なのだから、そのままタダスケが時間移動をすれば元に時空に帰る事になるだろう。
だが、悠闇のハッタリはタダスケを大きく悩ませる。
神族である悠闇はまず嘘を吐かない。その悠闇のセリフだけに騙せる可能性が大いに高かった。もしタダスケがすでに時間移動を何度かしているなら、迷うことは無かっただろう。

(そ、そんな……それじゃ、歴史は変えられないのか? いや、変えるわけにはいかないのか?……!? それじゃ令子を助ける事も!?)
(それに関して大丈夫だ。除霊の際、美神どのが毒に感染してから、血清を打てば何ら問題はない。)

順番の問題という事だろう。
美神が毒に感染するというタダスケの歴史を狂わさずにして、それから血清を手に入れて、血清を打つ。
悠闇は先ほどのハッタリをタダスケに浸透させるために、あえて美神を一度毒に感染させるように、と言う。
それはタダスケなら、絶対に血清を入手することが可能という、信頼の現われでもあった。

(おぬしの忠告は聞き入れた。だから安心せよ……ワレと横島がうまくやる。)

タダスケは何も言わない。女房を失うわけにはいかない。かといって自分の口で、悠闇の生存を諦めるような事は言いたくないのだから。

(……なぁ心眼。つまりアレだよな。)

横島は考えが纏まったのか、タダスケと悠闇の会話に割り込んでくる。

(ようは俺がしっかりしていたら心眼が死ぬことはないって事だよな!!)

横島は、タダスケと悠闇の会話をちゃんと理解したわけではない。
ただ、悠闇の運命を変えるには自分が頑張る必要があると解釈したのだろう。

(……全く……あぁ、期待しているぞ。……)

悠闇は最後にそういい残して、テレパシーを切った。
後に残ったのは、ボロボロの横島とタダスケ。

「横島……お前が悠闇を守れ、これは俺との、自分との約束だ。言っとくが、お前の実力程度でのぼせ上がるな!! 反省しろ!!」
「あぁ、悪かったよ……確かに、調子に乗っていたような気がする。」

完膚なきまでに叩きのめされて、少しは目が覚めたらしい。

「それと…………さっきは八つ当たりをして悪かったな。」
「少し、頭を冷やした方がいいよな…………って八つ当たりだと!?」

横島がタダスケに斬りかかるのも、うまくかわされる。

「謝ってるじゃねえか。そう、怒るな。」
「怒るわい!! 誰だって八つ当たりであそこまでやられたら!!」

結局、横島がタダスケに一撃を喰らわすことはなかったが、

この夜、横島の中で何かが、変わったのは確かだろう。


――心眼は眠らない その52・完――


あとがき

今回がアシュタロス編、最大の伏線かも知れない。
さて、未来は変わるのでしょうか。

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