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「除霊部員と秘密の部屋  第4話  (GS+色々)」

犬雀 (2005-03-01 15:22)
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第4話    「剛剣と不自由な取引」


「ふんどしは嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「わわっ!弓!落ち着け!!」

「弓さん!しっかり!!」

保健室のベッドで飛び起きる弓を魔理とおキヌが必死に宥める。

「嫌あぁぁぁ!金髪の鬼がふんどし一丁でぇぇぇ!!埴輪までふんどし履いてぇぇ!!腰をローリングして見せないでぇぇぇ!!」

「落ち着けって!!おキヌちゃんそこの水とってくれ!」

「は、はい!」

おキヌから受け取ったコップの水を魔理は弓の顔面にぶちまけた。

「きやっ!……ここは…」

「おー。正気にかえったか…心配したぜ。」

「し、試合はどうなりましたの!」

「それが…」

暗い声で俯く魔理に弓はポツリと呟いた。

「私…負けましたのね…」

「いえ…試合は弓さんの勝ちです…。」

「は?」

おキヌの意外な台詞に驚く弓に魔理は彼女が気を失った後に起きたことを説明しだす。
その声はいつもの快活な彼女らしくない苦さを含んでいた。

「実はな…


顔面にノイエ・汁を浴びてぱったりと倒れる弓の姿に六女側応援団は水を打ったように静まり返った。
個人戦では霊能科トップスリーに入る弓かおりがほとんど何も出来ず、一方的に負けたのだから無理も無い。

審判役の鬼道が唯の勝利を宣言しようと審判席から立ち上がろうとして六道理事長に呼びとめられた。
何事かを囁かれた鬼道の顔に一瞬驚愕の色が浮かぶが、六道理事長の言葉を聞くうちに納得したのか大きく頷くとゆっくりと闘場の中央に進み出て、手にしたマイクに向けて大きく宣言する。

「勝者!弓かおり!!」

「ええー!!」

驚く除霊部員たちとその応援団たち。
その中から憤懣やるかたないといった表情でピートが進み出た。

「待って下さい!なぜ唯さんの負けなんですか!」

「反則負けってことやな。」

「なぜですか!」

「一対一の戦いに手助けしたらあかんやろ。」

「唯ちゃんとロボ…いいえ、ゴーレムは彼女の能力のはずです!」

「そっちやあらへん。」

「え?」

「そっちの子や。」

「え?私?」

鬼道に示されて怪訝な顔を浮かべる愛子。
自分は唯ちゃんパーツを射出した後は何もしていないはずだ。
というか…恥ずかしさのあまり産卵直後の海亀のお母さんのようにぐったりしていただけでろくに試合も見ていない。

「あのロボットな…あれが出てきたのは開始の合図の後やろ?つまり試合中に外から手助けしたっちゅうことや。」

「しかし!」

「せやけどその机が単なる運搬道具ってことなら話は別やけどな。」

まだ食い下がろうとするピートを人を食ったような笑い顔で見る鬼道に唯が割り込んだ。

「机って愛子ちゃんの本体のことですかぁ?」

「そや。」

「あ、だったら私の反則ですぅ。」

至極、あっさりと唯は微笑む。
その淡白さに鬼道も驚いたのか、はたまた納得したのか微妙な表情を向ける。

「君はそれでええんか?」

「いいですぅ。だって愛子ちゃんはお友達ですからぁ。道具じゃないですぅ。」

もう一度、きっぱりと言い切る唯に鬼道は口の中で「ええ返事や…」とこっそり呟くと倒れている弓を指しもう一度宣言した。

「勝者!弓かおり!!」

こうして一回戦の勝者は六女代表の弓かおりとなったのである。


…という訳さ…」

「そうでしたの…」

「あ…あの…弓さん…」

「魔理さん…おキヌちゃん…ちょっとだけ私を一人にして下さらないかしら?」

「え…でも…」

「ああ、ゆっくり休みな。ほらおキヌちゃん行くぞ…次の試合が始まる頃だ。」

魔理に促され部屋を出て行くおキヌの背後から押し殺すかのような少女の泣き声が聞こえてきた。


おキヌたちが闘場に戻ってみるとすでに第二戦の出場者、霧島かすみと加藤が対峙していた。
かすみは懐から数枚の破魔札を取り出すと右手に構えた神通棍の先を加藤に向けた。

「そんな俄か作りの霊刀で私の相手が出来るのかしら?一時的に魔力を付与しただけの木刀なら、おそらく一合打ち合うたびに魔力が失われていくわ。」

「それがどうかしたのか?」

「わからないの?闘えば闘うほどあなたは不利になるのよ。」

「ふむ…そうかも知れんな。」

「…大した自信ね…」

「自信?違うな…。唯殿は我らを友と言った。そして彼らは霊能の無い私に力を貸し与え信任してこの場を任せてくれている…。及ばずながらもそれに応えるのが戦友と言うものではないか?」

「あいにく私は女なのよね。」

「確かに…だが、戦士として性別に何の意味がある?」

「そうね。さあ、始めましょうか。」


向き合ったまま距離をとるかすみと加藤。
神通棍を前に突き出し半身で構えるかすみに対して、加藤は木刀をただ下げるだけで構えをとる様子は無い。

「はじめ!」

鬼道の合図とともにかすみは左手に持っていた札を加藤に向けて投げつけた。
札は加藤の周りで爆発し彼の姿は舞い上がった土の中に埋没する。

「あれは爆砕符!」

「何だそれは!」

「霊力を込めて爆発させる札です。込められた霊力次第ではかなりの威力を生み出すことが出来ます。」

ピートの解説に唇を噛む横島。

「えぅぅ。それじゃあ加藤さんがぁぁ!」

朦々たる砂塵の中、かすみは加藤のいた辺りに一直線に突っ込んでいく。

「貰った!…えっ?!」

土煙の中に立つ人影に神通棍の突きを放とうとしたかすみの前にカウンター気味に木刀が突き出される。
かすみは咄嗟に反応し、体を翻すと人影から距離をとった。

土煙がおさまると、その場から一歩も動かず手にした木刀もそのままの加藤の姿が現れた。

「ふむ…物理攻撃が制限されるとは真であったか。」

四散した霊符の破片ででも切ったのか、頬から一筋の鮮血を垂らしながらもこともなげに言ってのける加藤。
持っていた木刀をそのまま体の横に下げながら、呆気に取られるかすみに向けて一歩踏み出した。
その身から立ち上る威圧感に押され半歩後退しながらかすみが叫ぶ。

「さっきの攻撃は何?なんで私に当てなかったの!」

「攻撃なぞしておらぬが?」

「え?でも確かに…」

「どういうことですかいノー」

「闘気によるフェイントだな。打つ!という思いと視線だけで実際に手を出しているかのような錯覚を相手に与える…前に小竜姫様が「もっと目を使え!」って教えてくれたのはこういう意味だったのか。」

タイガーの疑問に横島が答える。
それを聞いていたかすみが加藤に向かって驚愕の思いを含んだ声音で話しかける。

「あなた…かなりの使い手だったのね…」

「私などまだまだ未熟者に過ぎん。」

「いいえ、一度一流の剣士と戦って見たかったのよ。あなたなら相手にとって不足は無いわ…」

「私など一流とはいえぬ。そこにいる横島殿の方が剣の道の深奥に迫っている。」

「嘘っ!あんな屋上でラッパを吹いていたような人がっ?!!」

「何のことかは知らんが…私など足元に及ばぬことは確かだ。」

「横島さん…ラッパって…あっ!」

「今日もいい天気だなぁ〜。あ〜綿アメが美味い…」

怪訝な顔で聞いてくる小鳩の手を握り、その手にある食べかけの綿アメをハムハムと齧る横島に小鳩ちゃん真っ赤っか。

そんなやり取りを横目で見ていたかすみは場外から意識を加藤に戻した。
相変わらず木刀を下げたままだが、その身から立ち上る威圧感はますます大きくなる。
かすみの手にした神通棍に汗が滲み、それを構えなおすことで再び気合を入れた。

「さて…そろそろ抜かせてもらうぞ。」

加藤は静かに木刀を頭上に掲げ左手で軽く支えた。
天にピンと立つ木刀は小枝にとまり獲物を狙う蜻蛉の尾のごとく静かに屹立する。
かすみにはその構えに覚えがあった。

「それは蜻蛉の構え…あなた示現流の使い手だったの…。」

「多少は嗜むが、まだ「雲耀」までは至らぬ…。さて参るぞ!」

言葉とともに加藤の体に気迫が満ちる。
かすみが咄嗟に神通棍を正眼に構えなおした瞬間、加藤の喉から裂帛の気合が放たれた。

「チェストォォォォォ!!!」

ガキン

「きゃっ!!」

八歩ほどの間合いを一瞬に詰められ、頭上を襲う木刀を受け止めようと反射的に差し出された神通棍は加藤の一撃を受けると鈍い音をあげて地面に叩きつけられた。

その一瞬の早業にシーンと静まり返る校庭にカラカラと折れ曲がった神通棍が転がる乾いた音が静まり返った校庭に響く。
戦闘者としてはあるまじきことだが、思わず目を閉じていたかすみが恐る恐る目を開けてみれば、自分の頭上数ミリのところでピタリと止まった木刀。
くたりと膝から力が抜けその場にへたり込むかすみの目に自分の神通棍が無残に折れ曲がった姿となって転がっているのが見えた。

「参りました…」

かすみの口から彼女の意思とは関わり無く降参を告げる言葉が出る。
それに対して不思議と驚きは無かった。かわりにあるのは一つの疑問。

「聞いてもいいかな?」

「何か?」

木刀を脇に納めながら加藤が微笑む。
その武士の笑顔とも言うべき凛々しい姿に彼女の胸は戦いとは別の意味で高揚した。

「あの…えーと…あなたは示現流の使い手だよね?」

「まあ、そうであるが…」

「だったら何でさっきの木刀…私に当てなかったの?示現流の極意は「一撃必殺の二の太刀いらず」でしょ?」

「ふむ…だがそれは違うぞ。」

「え?」

「示現流の極意は「刀は抜くべからずもの」と「一の太刀を疑わず、二の太刀は用いず」と言うものだ。つまり「刀を抜かずにその場を納めることを最上とし、だが一度抜いたなら相手を倒すまで鞘に戻さぬ」ということだと私は理解している。」

「そうか…だから今は刀を戻しているんだね…私、斬られちゃったんだ…」

「貴公がまだやりたいと言うならばお相手いたすが…」

そう言うと加藤はまだへたり込んだままのかすみにづかづかと近づくとその腕を取って強引に立たせた。
近くで見る加藤の顔にますます胸の鼓動が高まるかすみだが不意に右手を加藤に軽く握られて耳まで真っ赤に染める。

「この腕では続けられまい。」

「え?」

加藤に言われて初めて自分の右手が、手首のところから曲がっちゃいけない方にブラブラしているのに気がついた。

「え?え?え?」

「普通はこうなる前に剣がはじけ飛ぶのだが…よほど力を込めて握っていたようだな。」

「嘘…折れてるのこれ?」

自分で言って初めて手首から激しい痛みが湧き上がるのに気がつくかすみ。

「いや折れてはおらぬ。脱臼といったところか。少々痛むが貴公ならば大丈夫であろう。ご免!!」

「え?…イタッ!」

手首をいきなり捻られ苦痛のうめきを漏らすかすみに加藤は怪訝な顔を向けた。

「む?まだ痛むか?」

「当たり前でしょっ!!…あれ?もしかして関節はめてくれた?」

「うむ。とりあえずは大丈夫だと思うが…。横島殿に治してもらうとよかろう。」

そう言って加藤は手首を見て首をかしげているかすみをいきなり抱き上げる。
全校生徒の前で「お姫様抱っこ」され羞恥のあまり顔を真っ赤に染めて声も無いかすみを軽々と運ぶと横島の前にそっと立たせた。

「頼む」と加藤に目で言われて横島は笑顔とともに文珠を渡す。
受け取った文珠に『癒』の文字があることを確認して加藤はそれを発動させた。
光とともに沸き起こる癒しの霊波がかすみの手首から全身に広がっていく。
身を包む、幼き頃、父に抱かれたかのような暖かさと懐かしさが彼女の体を満たして後、唐突に消えた。

その温もりに心残りを感じながら手首を見ればすでに痛みはない。

「え?今のって…文珠!!」

「知っておられるのか?」

「知っているって…授業で習ったわ!伝説のアイテムで、使えるのは神族連なるもので、一個で何億もするって!!」

「ふーむ…左様に貴重なものだったとは…」

「あの人が作ったの?」

「うむ。私も何度か見ているが…やはり横島殿は凄いお人だったのだな。」

「んなことないってば…それを言うなら加藤さんの剣技だって凄いっすよ。」

「ははは。謙譲の美学という奴かな?」

自分にしてみれば大した能力でないと思い込んでいるもんだから赤面しつつも謙遜する横島に加藤は笑って見せた。
その様子を呆然と見ていたかすみは心の底から自分の負けを認めその場にへたり込む。

「う…ぐす…」

自分でもなぜか分からぬが涙が出るのをこらえきれない。

「あああ…どうしたの!!」

女の子の涙に弱い横島君がつい反応して彼女を慰めようとするも、かすみはスイっと体をかわして加藤の胸に飛び込むとぐすぐすとしゃくりあげる。
流石の加藤もこれには戸惑った。

「い、いかがなされたのだ?まだ痛むのか?」

「ううん…そうじゃなくて…私、ここで一生懸命頑張ってきたつもりだったのに…霊能戦で素人の人に負けちゃうなんて…」

「卑下することはなかろう…貴公は立派に…」

「でも…確かに貴方は凄い剣士だと思うけど…ぐす…私だって霊的戦闘のプロを目指すのに…「それは違いますよ。」…え?」

霊能者としての自信を喪失し加藤の胸で泣くかすみに魔鈴が話しかけた。

「古来、モノノフが妖怪や悪霊を退治した話はいくらでもあります。それに彼らの働きによって単なる名刀と呼ばれていた刀が霊剣扱いになったケースもね。」


「え…それはそうだけど…」

「ええ。ですから一芸を極めることは全てに通じるんです。」

「極める?」

「つまり昔の侍は霊能者とは限らなかったということですか?」

「はい。そうですね。言ってみれば「破邪」の闘気を武器に込めて魔を討っていたのかも知れません。」

ピートの問いにも澱みなく答える魔鈴。
古の魔法を現代に蘇らせた彼女の霊的な知識はかなり深い。
彼女の言葉に何か思い当たったか横島が気の抜けた声を出した。

「あ〜。そういえば…」

「横島殿心当たりが?」

「ああ、俺に色々と教えてくれた神様がいるんだけど「刃に意志を込めろ」って言っていたなぁ…」

「意志ですか?」

「ん。こんな感じかな?」

横島は闘場に落ちていたかすみの神通棍を拾ってくるとピートに「ちょっと持ってて」と手渡した。
何事だろう?と見守る一同の前で霊波刀を出現させると「これが普通の状態ね。」と折れ曲がった神通棍を軽く叩く。

「別に何も変わっていないようですがノー」

「ああ、斬ろうと思ってないからな。んで、こいつが「斬る」と意志を込めたやつ!」

「ふん」と軽い音ともに霊波刀を動かすとキンと澄んだ音をたてて神通棍は二つに切断される。
驚き、声を無くす彼らの耳に「シロなら音もさせないで斬れるんだけどなぁ…」と苦笑気味の横島の言葉が届く。横島は魔鈴に向き直ると「こんな感じっすかね?」と微笑んだ。

「でも…私にはそんなの無理だし…」

横島の神技とも言うべき技にすっかり自信を失ったのか、相変わらず加藤の胸でぐずるかすみに横島はいつもの軽い調子で話しかけた。

「あ…でも俺って神通棍使えないし…」

「え゛…う、嘘でしょ!!」

「あー。そういえば…」

「使っているところ見たことないですノー」

ピートとタイガーの肯定は彼女の常識を超えていた。
「こほん」と咳払いして魔鈴はかすみの肩に手を置く。

「横島さんにしろ唯さんにしろその能力は異能と言うべきものです。ですがそれだけでは全ての局面に対応できるわけではありません。実戦の場では貴方のような万能型が必要なんですよ。」

「でも…」

「剣技のことを気にしておられるのか?私は剣のみを修練した来たつまらぬ男ゆえ、それ以外のことは出来ぬ。だが貴公はそれ以上のことが出来るのだ。その一つ一つを磨いてゆけばよいのではないか?」

「そうかな?…剣も含めて私ってまだレベルアップできるかな?」

何かを期待する目で加藤を見上げつつ訴えるかすみ。

「うむ!手合わせした私が保証しよう!!」

「あ…あの…だったらお願いがあるんですけど…」

「何かな?」

もごもごと口篭っていたが、意を決したのか「ふーっ」と大きく息を吐いて加藤の手をとると叫んだ。

「わ、私に稽古をつけてください!!」

「それは出来ぬ。」


「そんなぁ…」

「私とてまだまだ未熟な身、人に教える力量など無いが…」

渾身のお願いと別の期待を一言で粉砕され、萎れる彼女の前髪に隠れた目から涙が一筋。そんな彼女の心情を理解しているのかいないのか、加藤は彼女の肩を手でパンパンと叩くと笑みを見せた。

「ともに切磋琢磨する同志ということでよければいつでもお相手いたそう!」

「は、はいっ!!お願いします!!」

花がほころぶかのような笑顔で加藤に抱きつく少女を見やっていた横島は…。


「なあピート…」

「なんですか?」

「なんか…春が来たって感じがせんか?」

「そうですねぇ…って今は白覆面止めましょうよ…。」

「むう…なんか納得いかんぞ!!」

「へう〜。他人のことには鋭いですねぇ〜。」

「「「「まったく!」」」

期せずして女性陣の声がハモった。


何となく話しかけづらかったのか、今まで静観していた鬼道がおずおずと声をかけてくる。彼も教師として複雑なようだ。
自分の教え子が他校の生徒に弟子入りを願うというのは流石に気まずいのかも知れない。
単に突如として発生した不器用な告白風景に戸惑っているだけかも知れないが…。

「そろそろ次始めてもええかな?」

「はい。どうぞ。」

返答する魔鈴に軽く頷くとマイクを掴む。

「ほな。次の試合やね。選手は闘場に。」

「はい」の返事とともに出てくるのは巫女装束の神宮寺遙。その手に握られた榊が彼女の武器である。

「次はわたくしですわね!」

掛け声とともに勇み出たアリエスがそのドレスを脱ぎ捨てると、そこから表れたのは水着アイドルのような際どいビキニに包まれた豊満な肢体。
その健康的な姿に横島側観客席のところどころから気の早い赤い間欠泉が、六女側観客席と横島側の一部からは羨望と嫉妬のうめきがあふれ出した。
対戦相手の遙もアリエスの何かを企んでいるかのように揺れる胸元に動揺を隠し切れないようだ。

「な、なんて格好してくんのよ!」

「カッパ族の戦闘スタイルですわ!!」

(嘘や。ぜってー嘘やぁ!!)

心の中で突っ込む横島。だって今までそんな格好で闘っているの見たことないし。

「くっ…そういえばあなたってカッパなのよね。」

「その通り!!」

グンと張った胸がタユンと揺れる。
そこから放たれる波動にまたしても観客席から赤い噴水が立ち上る。

「なんか…カッパって気がしないんだけど…まあ、いいわ。私の術が妖怪にも効くところを見せてあげる!!」

「そんな粗末な乳の人の術など効きませんわ!!」

「「乳は関係ないでしょうがっ(ですぅ)!」」

ムラムラと敵意を燃やす遙と観客席の一部、ついでに除霊部の一員の姿に頭痛を抑えながらも鬼道が開始を宣言する。

「バカンスを楽しみなさい!!」

合図とともに榊から放たれた水滴はたちまちのうちにアリエスをハワイへと誘った。

「ほほほほ。どう?あれから勉強して欠点を克服した私の精神攻撃は!!」

自信があるのか勝ち誇る遙だったが観戦している横島たちにはアリエスがどんな幻覚を見ているのかはわからない。
なんとなく予想はついたが…。

「どんな幻覚なんでしょうか?」

「タイガー、中継できるか?」

「やってみますじゃ」

タイガーの力によってアリエスの周りに展開するハワイの光景が横島たちの目にも見えるようになる。

「これがハワイですかあ…」

「へうぅ…綺麗ですねぇ…」

「わーっ!!小鳩ちゃん!唯ちゃん!!しっかり〜!!」

タイガーによって増幅された幻覚の余波を受けたか小鳩と唯が服を脱ごうとして愛子に止められている様子を横目で見ながら遙は高らかにに笑った。

「おーほほほほ。どうかしら?今度の幻覚は!伊達にガイドブックを読み通したわけじゃないのよ!」

だが目の前のアリエスはやれやれと言った風情で肩を竦めるだけ。
そして同情したかのような声で遙に話しかける。

「こんな陳腐な幻覚でどうって言われましてもねぇ…」

「どこが陳腐よ!!」

「だってお車が…」

「何よ!ちゃんと日本とは反対を走っているじゃない!!」

「ええ…ですけど…なんでどれも右ハンドルですの?」

「えっ!!」

ガビーンと効果音とともに後退さる遙にアリエスの追い討ち。

「それに…ナンバーが多摩とか品川とかですわよ。」

「あうっ!!」

ガビガビーン…とさらに後退。

「こんな陳腐な幻覚で騙されるのは行ったことのない方だけですわよ?」

「ま…まさか…あなた…ハワイに行ったことがっ?!」

恐る恐る尋ねてみればあっさりと聞きたくない答えが返ってきた。

「ええ。毎年。」

「カッパのくせにっ!!」

「お友達のカエルさんも行ってますけど?」

「「「カエルまでもっ!!」」」

がっくりと膝をつく遙を勝ち誇ったとも哀れみともとれる目で見つめるアリエス。
呆然と成り行きを見守っていた横島にタイガーが告げる。

「横島さん。念が逆流してますじゃー」

「逆流?」

言われて闘場を見れば…いつの間にかハワイの景色は消え、かわりにまーるい耳で尻尾の太い動物の着ぐるみを着て跪く遙がいた。

「あれはかわうそ!!」

「なんでやっ!」

驚愕の叫びを上げる魔鈴に突っ込みつつ振り返って見れば、同じような着ぐるみを着てフルフルと震えながら立つ小鳩と唯。手にはなんのつもりかやっとこを持っている。

アリエスは優しい目でかわうそに近づくと震えるその手をそっと握って話しかけた。

「ハワイに行きたいですか?」

「え?行けるの!」

「ええ。わたくしの力を持ってすればハワイはおろか南米、カナダ、アメリカ、上海…お好きなところに連れて行けますわよ。もちろんタダで…くすくす」

我を忘れてかわうそはアリエスにしがみついた。

「私をハワイに連れてってぇぇぇぇ!!」

「でもねぇ…敵を連れて行くわけには…」

「降参しますっ!!降参するからぁ!!」

「ではこの書類にサインを…こちらが統括契約書でこちらがハワイの、こちらがアメリカ西海岸の個別契約書ですわね。あとこちらが…」

ビキニの胸元から取り出したやたら古風な羊皮紙と羽ペンを突きつけられたかわうそは勢い込んでサインしようとするが…

「し、しますっ!「待ちなさい!遙っ!!」…えっ!!」

「あなた六道の生徒の自覚ないの!負けちゃうわよ!!」

応援席に居た神野の激に我に返る遙。
怒りを燃やしてアリエスを睨みつける。

「はっ!そうだった!!おのれ〜なんて狡猾な!!」

だがアリエスは淡々と書類をもてあそんでいるだけ。

「別にわたくしはかまいませんけどねぇ…決断するなら早めの方がいいですわよ?」

「どういう意味よ!!」

「んー。そうですねぇ…これからわたくしが3つ数えるごとに行き先が一つ減るってのはどうでしょうか?」

「え゛…」

「一つ…二つ…三つ…はい。南米消えましたぁ〜。」

そういって書類の一枚を破り捨てる。
風に飛んでいく羊皮紙の切れ端を見た遙が絶叫を上げた。

「い、嫌ぁぁぁぁ!!」

「ほーら。早く降参しないと…次は上海が消えますわよ〜♪」

「ああああああ…」

「はい。時間切れ〜。上海消えた〜。ルンルン♪次はどこかな?ハワイかなぁ〜♪」

楽しそうにもう一枚の書類を破ろうとするアリエスの足に再びかわうそと化した遙がすがりついて許しを請う。

「参りましたっ!!降参します!!だから、だからっ!!」

「ではこの書類にサインを…」

「はい!!」

「アリエスちゃんてカッパと言うより…」

「「「鬼ですねー(ノー)」」」

呆然と呟く除霊部員の前でいそいそと内容を確認もせず書類にサインするかわうそ。


こうして六女側は二連敗となり後がなくなったのである。


後書き

ども犬雀です。
ふにゅ〜。疲れました。シリアスとマヌケの混在は時間がかかる…。
でも頑張りますです。
外伝の方なんですけどねぇ…更新が遅れてまして…。
理由は簡単なんです。犬が書いたことのないジャンルなんですよ。
うーむ…使える奴にしたいなぁと思いつつネタを書き溜めてなんとか今週中にあげますです。

では…

1>義王様
ユッキーねぇ…この話に出るんでしょうか?
さてさてどうなりますか。

2>?様
はーい。アビちゃんです。元々アビゲイルのアレもガンバスターのパロっぽいんで違和感なく使わせてもらいました。
今回はマヌケとシリアスの混合バトルを意識してますので次はシリアスになります。

3>法師陰陽師様
おキヌちゃん救済ですか…まあ黒くならないようには頑張ってみますです。
犬も彼女は好きなもんで。

4>AC04アタッカー様
なるほど。声優さんを当てて考えると書きやすいとは…犬、目からうろこが滝のように落ちていきましたです。
今回のテーマはシリアスとマヌケの混在なんすけどね。どんな感じでしょうか?

5>紫苑様
んー。皆さんユッキーが登場すると思っておられるようで…。
読まれまくりですな。

6>ミーティア様
トラウマになっちゃってますねぇ…異界で余計なことした魔神のせいでw

7>伏兵様
ロボは除霊では使いにくいので別形態のロボというかパワードスーツを考えてます。ちょっとシリアスっぽくしようかな?とかは思ってますが…。

8>スザク様
一番最初の唯の設定から霊波のファンネルまたはインコムは考えていたんです。
でも最初の設定の唯が巨乳の20代美女だったのが今は見る影もなくなって…。結果としてゴミファンネルになりました。
ある意味、最強兵器です。

9>ATS様
はい。現代医学のあの先生です。
彼にもいずれ登場してもらおうかと思ってまして。

10>wata様
壊れすぎましたか。そのうちにシリアスやりますんでw。
でもアリエスと絡むと無理かも?!(おいおい

11>あつき様
オッパイミサイルは…流石に唯嬢に合わないので泣く泣く断念いたしました。唯がオッパイ飛ばしてまっ平らになると壊れちゃいそうで…w

12>わがち〜様
はい。正解でした。
えーと。登場なさいますか?レスを頂いたので承諾されたと理解しますです。(ケケケ

13>Dan様
おそらくはマヌケな技では最大最狂かと…。

14>シシン様
おキヌちゃんですねぇ〜。救済と言えるかどうか…。ただ彼女の棘はとってあげたいなぁとは思ってますです。

15>通りすがり様
はい。変身してから乗り込むことに気づかないのが唯の唯たる所以といいましょうか…。霊能というより異能者ですけどね。対戦した弓さんが気の毒でした。

16>ザビンガ様
うーむ…「踏み切り戦士シャダーン」とかも良いかも。
後は思いっきり昔のロボとか…ってGロボも古いですよねw

17>初風様
その通りです。マヌケの戦いで彼女達に勝てるのは…美神さんでも難しいですねぇ。

18>炎様
了解であります。本話後編にて登場して頂きます。
ただし…キャラの一人と相打ちになりますがご了承くださいませ。

19>飛顎将様
アルファ・ア汁ですね。西さんの彼女にでも使ってもらおうかな?と考えつつメモメモ。

20>黒川様
保健室でした…思ったより弓さんの状態が悪かったようです(実際に臨死体験に近いものが…)

ふんどしは六尺がデフォですが加藤君は色々と使い分けているようです。

おキヌちゃん…黒くしない方向でがんばります。

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